...

水産資源の適切な利用・維持増大 その3

by user

on
Category: Documents
20

views

Report

Comments

Transcript

水産資源の適切な利用・維持増大 その3
アユ資源増大対策事業
<これで太公望もご満悦!>
内水面試験場
研究の背景
・ 本県河川漁場におけるアユの漁獲量は内水面漁業生産量の約4割を、アユの出漁者数は延べ出漁
者数の約半分を占めており、アユはとりわけ重要な魚種となっている。
・ 従前から漁業権対象魚種の種苗放流などの増殖事業が積極的に行われているところであるが、こ
れらは、資源や環境の人為的な管理を適切に行うことによって、大きな効果が期待できることを
示す一方、昨今は、増殖事業のあり方をめぐる多様な生物の保全への配慮も必要となっている。
研究のねらい
・ 種苗放流や環境整備(漁場造成)等の資源増殖手法を同一の基準で評価するための基礎知見の集
積をし、河川漁場の特性に応じたアユ種苗の適正放流量や増殖手法の開発を図るため、河川にお
ける藻類生産力及びアユの環境収容力等の調査・研究を行った。
これまでの研究成果(新規研究は除く)
・ 調査地点(相模川大島地先)における付着藻類の平均生産力は、0.33 ㎎/c ㎡、優占種は、藍藻
類の Homoeothrix janthina であった。
・ 調査区域(相模川の小倉橋∼高田橋まで)における平成 14 年漁期の出漁者数は 35,934 人、
漁獲量は 5,118kg であると推定された。
本年度の特記事項(研究成果の中間報告)
・ 早川(太閤橋上流)におけるアユの生息密度と成長率の関係を得ることができた。
(図)。
・ 相模川(大島地先)の 15 年漁期における出漁者数は、29,085 人と推定された。
波及効果(普及の状況)
・ 本研究は始まったばかりのため、環境収容力の調査を今後も続け、精度を高め、アユ種苗の適正
放流量や増殖事業の一助としていきたい。
図 アユの成長率と生息密度の関係
成長率
0.04
0.03
y = -0.0007x + 0.0445
0.02
0.01
0
0
10
20
生息密度(g/㎡)
35
30
40
魚病対策技術・ワクチン推進研究
<進化する魚病対策、ワクチンの開発!>
内水面試験場
研究の背景
・ 全国的にまん延しているアユ冷水病について、簡易なワクチン投与法の開発が求められてい
る。
・ 食べるワクチンといわれる経口ワクチンは、胃液の消化作用によりワクチンが変性するため
効果が低下する問題があった。
研究のねらい
・ 胃で溶けず、腸で溶ける性質のカプセルにワクチンを内包すれば、ワクチンが変性すること
なく腸から吸収され、経口ワクチンの問題が解決すると考えられた。
これまでの研究成果(新規研究は除く)
・ アユ冷水病ワクチンを腸溶性マイクロカプセルに内包することに成功した。
・ 同カプセルを投与した全てのアユから抗体を検出することに成功した(表)
。
表
区
初回ワクチン投与から 28 日後のアユの血中凝集抗体価*
分
検体 No.
無処理対照群
1
2
3
4
5
6
7
8
9
―, ―, ―, ―, ―, ―, ―, ―, ―,
10
―
経口ワクチン群
2, 2, 2, 2, 2, 4, 4, 4, 4,
8
*アユ血清を2倍、4倍、8倍と希釈して行き、各希釈血清の冷水病菌に対する凝集反応の
有無を判定する。凝集の確認された最高希釈倍率が抗体価。なお、
「―」は抗体未検出を示す。
本年度の特記事項(研究成果の中間報告)
・ アジュバント(免疫機能を高める物質)を添加した経口ワクチンにおいて、へい死率が低下
した研究例を得ることが出来た(図)
。
累積へい死率(%)
100.0
無処理対照群
80.0
経口ワクチン群
60.0
アジュバント添加経口ワクチン群
40.0
20.0
0.0
1
3
5
7
9
攻撃後経過日数
11
13
図 人為感染試験における累積へい死率の推移
・ 実用化のためには、更に効果を高めるためアジュバントの濃度や種類などの研究を進める必
要がある。
波及効果(普及の状況)
・ 簡易なワクチン投与法の開発により、経口ワクチン開発の展望が開かれた。
・ 魚類への新しいワクチン投与法として、他種ワクチンへの応用が期待される。
36
Fly UP