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定年退職にあたって

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定年退職にあたって
定 年退 職 に あた って
∼挑 戦 す る こ とで技 術 を研鑚 す る∼
第 三技術室
昭 和39年3月911福
鈴木
重寛
井 大 学 工 学 部 応 用 物 理 学 科 に 着 任 以 来42年
い 返 す と、鉄 筋 コ ン ク リー トで 新 築 され て 間 が な い 建 物(学
の歳 月 が 流れ て しまった 。想
内 の 建 物 は ほ と ん ど 木 造 で し た)で
気
持 ち の 良 い 環 境 で 社 会 人 と して の 第 一歩 を 踏 み 出 す こ と に な っ た 。 し か し 、研 究 憲 に 配 属 され る と
間 も な く 教 授 に よ る 面 接 が あ り、 あ る 文 献 の 真 空 管 回 路 図 で こ の 部 品 は 何 故 あ る の か 、 こ こ の 真 空
管 は ど の よ うな 働 き を して い る の か との 質 問 を 受 け た 。 機 械 系 出 身 の 私 に は 、 何 も 答 え る こ と が で
き ず 悔 しか っ た 。
これ で は い か ん と 、研 究 室 の 仕 事 を しな 逼 ら 、 精 力 的 に 電 気 系 の 学 問 に 取 組 む 決 意 を し た 。 教 員
の 了 解 の も と、 市 内 の 電 気 店 か ら壊 れ た 真 空 管 氏 ラ ジ オ や テ レ ビ を2,3個
も らい受 け、研 究 室 で
真 空 管 回 路 の 動 作 原 理 を 自主 的 に 学 ん だ 。 オ シ ロ ス コー プ で 回 路 の 各 部 の 波 形 を観 測 し実 践 的 な 勉
強 を 重 ね た 。 研 究 室 に は 、 真 空 管 、 抵 抗 、 コ ン デ ン サ ー 、 コ イ ル な ど の 電 子 パ ー ツ が 数 多 く保 管 さ
れ 自 由 に 使 用 で き た 。 そ の 内 に 、 ロ コ ミで ラ ジ オ や テ レ ビの 修 理 が 研 究 室 に 持 ち 込 ま れ た 。
昭 和43年
に 、 新 設 され た 電 子 工学 科 に 上:司と と も に 異 動 した 。 研 究 室 で は 電 子 管 回 路 に よ る電
源 、増 幅 器 、検 波 、変 調 回 路 を 設 計 ・作 製 し学 生 実 験 や 研 究 に 携 わ っ た 。数 年 後 に は トラ ン ジ ス タ 、
ダ イ オ ー ド、 集 積 回 路 αC)な
どの 半 溝 体 製 品 が 主 流 と な り、 新 た な 知 識 が 必 要 と な っ た 。 こ の 知
識 ・技 能 は 、 同 僚 の 技 術 職 員5名
が 勤 務 時 間 外 に トラ ン ジ ス タ 回 路 に 関 す る 勉 強 会 を 開 き 教 え て も
らっ た。 電 気 系 の 技 術職 員 か ら直接 教 わ り、無 知 の私 に は 多 くの こ と を学 ん だ、 お か げで 半 導 体 回
路 の 設 計 も製 作 も可 能 とな っ た 。 ま た 、 廟分 由身 の 能 力 の 向 上 と 知 識 の 整 理 の た め 、所 属 す る研 究
室 の研 究 分 野 で あ る 通 信 工 学 の 学 習 も兼 ね て 、 無 線 従 事 者 の 国 家 試 験 を 目指 す こ と に な っ た 。 幸 い
に も 、 同 僚 か ら の 暖 か い 技 徳 支 援 も あ っ て 最 高 位 の 資 格 が とれ た 。
昭 和 岨6年 頃 か ら、 電 化 製 品 は デ ジ タ ル 化 が 進 み 、 電}回
へ と変 貌 し 、 電 子 部 品 は デ ジ タ ルICが
路 の 信 号 処 理 は ア ナ ロ グ か ら デ ジ タル
研 究 室 で み られ る よ う に な っ た。 こ ん な 時 、 ア ナ ロ グ 回 路
とデ ジ タ ル 凹 路 を 複 合 した 電 子 装 置 開 発 の 依 頼 が あ っ た 。 肖 分 の 能 力 を 超 した 開 発 と知 りっ っ 、 未
知 の 学 問 分 野 へ の 挑 戦 も兼 ね て 、 種 類 の 少 な い デ ジ タ ルIC等
組 ん だ 。 設 計 か ら製 作 に1年
ニ ー ル 線 でIC間
の パ ー ツ を探 しな が ら 回 路 設 計 に 取
か け 、 数 枚 の プ リン ト基 板 に様 々 な デ ジ タ ルICを
を 接 続 し た 。配 線 後 に はICが
半 田 で 固 定 し、 ビ
ビニ ー ル 線 で 全 部 隠 れ て しま う状 態 で あ っ た 。製 作
後 、 電 源 を 入 れ て 動 作 確 認 が 済 む ま で は 非 常 に 不 安 で 、 す ご く緊 張 し た 瞬 間 で も あ っ た 。2、3割
の 賭 け で 開 発 し た 製 は 、 設 計 図 ど お りに 高 速 で しか も正 確 に 動 作 し て くれ た 。 こ の と き の 感 動 は 今
で も鮮 明 に 覚 え て い る。 も の づ く りの 経 験 が な い と こ の 気 持 ち は 味 わ う こ と で き な い で し ょ う。
一95一
昭 和50年
頃 に な る と 、研 究 室 で は 当 時1千
万 円 規 模 の 電 子 計 算 機 が 導 入 され 、 研 究 室 の 研 究 体
制 が 大 き く 変 わ っ た 。 学 生 等 は 高 級 言 語 の フ ォ ー トラ ン しか 理 解 で き な い 。 研 究 室 の ス タ ッ フ か ら
は 、 プ ロ グ ラ ム か ら磁 気 デ ィ ス ク 装 置 、 ア ナ ロ グ 入 出 力 装 置 、XYプ
ロ ッ タ装 置 等 の 周 辺 装 置 を 自
由 自在 に 制 御 し た い 。 しか し周 辺 装 置 を 制 御 す る
ア プ リケ ー シ ョン は 、 非 常 に 高 価 で 購 入 す る 予 算
が な い。 こ の よ うな研 究 室 の状 況 下 で、 フ ニ
ォー ト
ラ ン言 語 の サ ブ ル ー チ ン で 電 子 計 算 機 の 周 辺 装 置
ド寄
を コ ン ト ロー ル す る プ ロ グ ラ ム パ ケ ー ジ の 開 発 が
必 須 と な っ た 。 私 に と っ て ソ フ トウ ェ ア 開 発 へ の
新 た な 挑 戦 と な っ た 。 ア セ ン ブ リ言 語 は 、1ス
ップ1命
テ
令 の た め プ ロ グ ラ ム の 大 き さ は1000行
か ら2000行
とな っ た。 制 御 プ ログ ラム が 完 成す
巴 践1
懐か しい研究室の電子計算機
る と、 フ ォ ー トラ ン 言 語 で 音 声 デ ー タの 入 出 力 、
磁 気 デ ィ ス クや フ ロ ッ ピ ー デ ィ ス ク の フ ァイ ル 管 理 、XYプ
面 に グ ラ フ の 出 力 な ど がCALL文
ロ ッ タ や グ ラ フ ィ ッ ク デ ィ ス プ レイ 画
で 簡 単 に で き る よ うに な っ た 。見 学 に き た メ ー カ は 絶 賛 して い た
が 、 学 生 も非 常 に 喜 ん で くれ た 。 ハ ー ドウ ェ ア の 開 発 と違 っ た も の づ く りの 喜 び を感 じた 。 そ の 時
開 発 し た100個
昭 和63年
以 上 の プ ロ グ ラ ム は 、 そ の 後10年
ば か り研 究 開 発 に 活 用 さ れ て い た.
に 情 報 工 学 科 に 異 動 し、 研 究 室 の プ ロ グ ラ ム 開 発 等 の 情 報 処 理 及 び 電 子 計 算 機 の 運 用
管 理 、 平 成13年
に研 究 室 か ら総 合 情 報 処 理 セ ン タ ー に 移 り 、福 井 大 学 全 域 の 教 職 員 等 を 対 象 と し
た マ ル チ メ デ ィ ア(動
画 、 静 止 画)、 電 子 計 算 機 、 ネ ッ トワ ー ク に 関 す る 教 育 支 援 、 技 術 支 援 、 シ
ス テ ム 運 用 管 理 が 主 とす る 業 務 と な っ た 。
最 後 に、 お 世 話 に な った 西堀 栄 三郎 先 生 の こ とを述 べ ます 。先 生 は、 京 都 大 学 理 学 部 出 身 で 、 登
山 家(雪
山 賛 歌 の 作 詞 者 で も あ る)、 真 空 管 の 発 明 、 日本 初 の 南 極 観 測 越 冬 隊 長(NHK番
ェ ク トXで
も放 映 され た)と
組 プ ロジ
して 著 名 な 方 で 、 「
チ ー ム ワ ー ク 」 と題 目 した 講 演 会 を 学 生 在 籍 中 に
企 画 し福 井 で 実 現 し ま した 。 先 生 は こ の 講 演 の 中 で 「
組 織 で 新 しい こ と に 挑 戦 す る に は 組 織 内 の チ
ー ム ワー ク が 不 可 欠 で あ る 」 と 強 調 され て い ま した 。 も の づ く り或 い は 新 しい も の を 開 発(挑
戦)
す る に あ た っ て 、 「同 じ性 格 の 人 た ち が 一 致 団 結 して も 、 そ の 力 は 和 の 形 で しか 増 や せ な い 。 異 な
る 性 格 の 人 た ち が 団 結 す れ ば 積 の 形 で 大 き くな る 」 とい う言 葉 を 残 して い ま す 。 個 々 の 優 れ た 技 術
を も つ 技 術 職 員 と 異 な る技 術 分 野 の 技 術 職 員 との 相 互 協 力 の 体 制 が 確 立 す れ ば 、そ れ ぞ れ が 得 意 と
す る技 術 分 野 は 融 合 して 更 に 高 度 な 技 衛 開 発 が 可 能 で あ る と の 意 味 で あ ろ う と解 釈 し ま す 。 技 術 部
職 員 の プ ロ ジ ェ ク トで 、 技 術 相 談 等 の 技 術 支 援 に 対 応 で き な い だ ろ うか 。 技 術 部 が 福 井 大 学 に お け
る 技 術 支 援 の 中 核 と して 今 後 益 々 活 躍 され る こ と を 期 待 し て お りま す 。
福 井 大 学 技 術 部 の 皆 様 に は 、 大 変 永 い 間 お 世 話 に な りあ りが と う ご ざ い ま した 。
一96一
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