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4.2 可処分所得の推計

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4.2 可処分所得の推計
ことにする。
a.年間収入の算出
『全消』では、事業等による収入として経費
まず世帯員の収入に対応する年間所得につい
を除いた純益がデータとして与えられているた
ては、世帯主・配偶者・その他世帯員の 3 者に
め、現行所得税制の定義による収入と『全消』
ついて、勤め先からの収入、年金・恩給、事業
の個票から作成した粗所得が、完全には対応し
等による収入(農林漁業収入、農林漁業以外の
ていない。たとえば、
『全消』における事業等に
収入、内職、仕送り金、家賃・地代、その他収
よる収入は、必要経費を差し引いたデータとな
入、現物消費)
、利子収入、配当収入、株式のキ
っていることに注意すべきである。
ャピタルゲイン収入の 6 分類で収入を集計する。
図 4.2.2.1 1984 年の所得税制
図 4.2.2.2 所得税額の推計方法(注:下線_は推計または算定したもの)
-70-
図 4.2.2.3 1984 年の住民税制
図 4.2.2.4 住民税額の推計方法
b.課税標準の算出
除)については世帯主及び配偶者は、その年齢
特別控除を除くと、課税標準の算定に当たっ
より控除の額が明らかとなるが、その他の世帯
て問題となるのは年金に対する控除、いわゆる
員については世帯主と配偶者を除く 65 歳以上
マル優粋の推定と分離課税額の算定である。
の世帯員の人数分だけ控除を行った。
まず年金に対する控除(老齢者年金特別控
つぎに、マル優枠については、定期性銀行預
-71-
金については世帯人員分とし、財形については
c.課税所得の推計
常用雇用労働者数分とし全ての人が信託銀行に
課税標準から課税所得を推計するに当たって、
おいて利用していると仮定してそれぞれ推計し
基礎控除・配偶者控除・扶養者控除・老年者控
た。分離課税については、次節の課税所得の推
除・社会保険料控除の 5 つの所得控除のみを考
計とも関連するが、課税所得にかかる限界税率
慮している。他の控除に関しては、
『全消』から
が源泉分離課税税率以上になった時点で利子・
の情報がなく、額も少額なので、考慮の対象と
配当ともに分離課税を選択するとして推計を行
はしなかった。
っている。勤め先からの収入に関しては、給与
配偶者控除及び扶養者控除については、各世
所得控除を適用して課税標準の推計を行ってい
帯の無業者及び各世帯員の課税標準に基づいて
る。ただし、その他の世帯員については、その
控除の対象となるかどうかを判断した。老年者
他世帯員のうち有業者相当人数でその他世帯員
控除については、世帯主・配偶者分はその年齢
所得を割った値を各人収入とした上で諸控除を
より判断し、その他の世帯員分は単純化のため
行っている。
控除がないと仮定している。
表 4.2.2.5 所得税の税率表
税
表 4.2.2.6 市町村民税の税率表
- 50 10.5%
率
税
- 20
2.5%
50- 120 12
20- 45
3
120- 200 14
45- 70
4
200- 300 17
70- 95
5
300- 400 21
95- 120
6
400- 600 25
120- 220
7
600- 800 30
220- 370
8
800-1000 35
370- 570
9
1000-1200 40
570- 950 10
1200-1500 45
950-1900 11
1500-2000 50
1900-2900 12
2000-3000 55
2900-4900 13
3000-5000 60
4900-
5000-8000 65
8000-
給与所得控除
率
人的控除
表 4.2.2.6 道府県民税の税率表
- 165 40%
税
165- 330 30
人的控除
600-1000 10
-150 2%
4
各 26 万円
注)課税所得の単位は万円。
5
各 33 万円
*
老 年 者 年金
率
150-
330- 600 20
人 的 控 除
各 26 万円
70
最低保証 57 万円
1000-
14
78 万円
特 別 控 除
* 老年者控除は世帯主のみ 25 万円。
注)課税所得の単位は万円。
-72-
d.税額の算定
前節で求めた課税所得に対して、表 4. 2.
2. 5、表 4. 2. 2. 6 の税率表を適用し、
税額を各世帯員について算定した。税額控除に
ついては、配当収入がある場合にのみ配当控除
を制度に従ってい、また他の控除に関してはゼ
ロと仮定した。以上の手順で所得税及び住民税
の所得割分について各世帯員ごとに算定を行っ
た。また住民税の均等割部分については、道府
県民税 700 円、市町村民税 2000 円として計算
した。このようにして得られた所得税額を、
『国
税庁統計年報書』
と比較してみよう。
『税務統計』
によると、所得税総額は 11 兆 6 千億円である
のに対し、
『全消』では 10 兆 6 千億円である。
単身者の存在を考えるとほぼ同一であるとみな
してよいであろう。
4. 2. 3 社会保険料の算定(被用者負担
分)
社会保険料については、年金保険料と医療保
険料の本人負担分のみを別個に算定した。雇用
保険の推計はしなかった。
4.
2. 3. 1 年金保険料
年金保険料は、
厚生年金保険、
共済組合年金、
国民年金の 3 種類について算出した。各個人が
いずれの制度に属するかは、その職業により分
類した。各制度別の年金保険料の算定方法は次
のとおりである。
a.厚生年金保険料
厚生年金保険料の算定式は次式で与えられる。
標準報酬月額×12×5.3%
(45000≦標準報酬月額≦410000)
本稿では、この算定式にしたがって計算を行
った。標準報酬月額には、
「勤め先収入」の月収
を用い、その値が 4 万 5 千円以下の場合には 4
万 5 千円に、41 万円を超える場合には 411 万
円とした。
b. 共済組合年金
共済組合年金の保険料は次式で与えられる。
本俸月額×12×5.15%
(本俸月額≦450000)
この算定式に基づいて保険料支払い額を計算
した。ただし、本俸月額を(勤め先収入/1.25)
で求め、その値が 45 万円を超える場合には、
45 万円とした。
c.国民年金
国民年金制度の保険料は報酬比例部分が存在
しないため、定額である。1984 年の国民年金保
険料は、月額 6220 円である。被保険者につい
ては、任意加入に関する情報がないため、強制
適用のみを考慮した。したがって、
表 4.2.3 健康保険料率
企業規模
産 業 区 分
企業規模 30 人未満
企業規模 30 人以上
保険料率(%)
4.200
農
業
4.200
鉱
業
4.300
建
築
3.600
製
造
2.592
卸 小 売
4.500
金
融
3.900
不 動 産
4.500
運
輸
4.100
電 気 ガ ス
3.900
サ ー ビ ス
4.500
そ の 他
4.500
公
4.500
-73-
務
6220×12×被保険者数(強制適用)
『国民健康保険事業年報』
(厚生省)より求め
で年間保険料を求めた。
た 1 人当り年間負担額 38,787 円で計算し、世
4.2.3.2 医療保険
帯当りの限度額を 35 万円とした。
医療保険料については、個人の職業によって
『健康保険』と『国民健康保険』の 2 つの制度
4.2.3.3 社会保険料家計負担のマクロ集
に分けて算定した。
計値
a.健康保険
本稿の社会保険料の推計値を実際のマクロデ
世帯主の健康保険料率は、健康保険組合に
ータと比較してみよう。表 4.2.3.3 は、
『社
よって被用者負担比率が異なっているため、企
会保障統計年報』から各社会保険の個人負担分
業規模、産業区分によって平均負担率を『健康
のマクロ集計値を求めたものである。これによ
保険事業年報』
(健康保険組合連合会)
から求め、
ると 1984 年度の社会保険料の個人負担総額は、
その料率を「勤め先収入」に乗じて保険料とし
約 11 兆円である。次に、本務の普通世帯の社
た(表 4.2.3)
。ただし、公務員については、
会保険料負担合計額は約 9.3 兆円となっている。
本俸を基準に保険料を支払うため、「勤め先収
単身者世帯の社会保険料は 0.9 兆円である。し
入」を 1.25 で割ったものを本俸とした。
たがって、
『全消』からの推計結果は 10.2 兆円
である。1984 年度の国民年金の任意加入者数は
配偶者については、勤め先収入(月収)が
4 万 5 千円以上のものについてのみ計算した。
703.8 万人であり、の保険料は 5253 億円になる。
ただし、勤め先の企業規模に関するデータがな
これをわれわれの推計に加えると 10.7 兆円に
いため、産業区分のみを考慮した。
なる。ほとんど正確に社会保険料を算出してい
b.国民健康保険
るとみてよいであろう。
表 4.2.3.3 (1) 1984 年度決算(収入保険料) (単位 億円)
保 険 種 類
(1)政府管掌健康保険
総
額
31,293
内本人負担
50.0%
家 計 負 担
15,646
102
50.0
51
(3)組合管掌健康保険
29,491
42.9
12,651
(2)日雇労働者健康保険
(4)国民健康保険
17,779
100.0
17,779
(5)厚生年金保険
65,764
50.0
32,882
(6)国民年金
15,007
100.0
15,007
529
100.0
529
3,107
100.0
3,107
共済組合(公企体)
2,221
100.0
2,221
地方公務員等共済
8,642
100.0
3,642
(9)私立学校教職員共済
1,661
50.0
830
(10)農林漁業団体職員共済
1,247
50.0
623
(11)船員保険
1,872
50.0
936
(7)農業者年金
(8)共済組合(連合)
合
110,904
計
(12)厚生年金基金
10,829
50
5,415
83,004 億円(71.4%)
勤労者世帯負担額合計
(1+2+3+5+8+9+10+11+12)
33,315 億円(28.6%)
一般世帯負担合計
(4+6+7)
(資料出所『社会保障統計年報』
)
-74-
(2)
『全消』による推計値
(単位 億円)
公 的 年 金
普通世帯
単身世帯
全 世 帯
(1) 常用労務者世帯
12,696
1,611
14,307
(2) 日雇労務者世帯
94
24
118
(3) 民間職員世帯
16,214
2,332
18,546
(4) 官公職員世帯
5,722
808
6,530
勤労者世帯合計
34,726
4,775
39,501
(5) 商人・職人世帯
6,241
110
6,351
(6) 個人経営者世帯
834
7
841
(7) 農業従事者世帯
4,015
19
4,034
(8) 法人経営者世帯
1,599
18
1,617
(9) 自由業者世帯
766
37
803
(10)そ の 他
431
6
437
1,244
103
1,347
15,130
300
15,430
49,857
5,076
54,933
公 的 医 療 保 険
普通世帯
単身世帯
全 世 帯
(1) 常用労務者世帯
9,553
1,176
10,729
(2) 日雇労務者世帯
79
17
96
(3) 民間職員世帯
12,889
1,734
14,623
(4) 官公職員世帯
5,581
706
6,287
勤労者世帯合計
28,102
3,633
31,735
(5) 商人・職人世帯
6,158
88
6,246
(6) 個人経営者世帯
824
5
829
(7) 農業従事者世帯
3,872
22
3,894
(8) 法人経営者世帯
1,835
24
1,859
(9) 自由業者世帯
753
35
788
(10)そ の 他
431
15
446
1,390
318
1,708
43,365
507
15,770
43,365
4,140
47,505
普通世帯
単身世帯
全世帯
金
49,857
5,076
54,993
公 的 医 療 保 険
43,365
4,140
47,505
合
93,222
9,216
102,498
(11)無職世帯
一般世帯合計
合
計
(11)無職世帯
一般世帯合計
合
公
計
的
年
計
-75-
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