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こちら - サイペイントジャパン株式会社

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こちら - サイペイントジャパン株式会社
有力各社の遮熱塗料
遮熱塗料の技術と特徴
田 端 伸 行(たばた ・のぶゆき)
サイペイントジャパン㈱ 代表取締役社長 1. 遮熱塗料の技術
遮熱塗料の技術について技術者ではなく経営者
の立場からその内容を考察してみる。
一般的に大手の優秀なメーカーでは,その高い
技術を綿密なデータと理論から説明し,日本の
メーカーであれば,それこそ,そこまでをも研究
されているのか,という書面が多々提示されると
思う。
筆者は技術者ではないため,化学分析的見地か
ら高度な塗料技術を討論する事はおろか,適正に
述べる事も出来ないと思うので,あくまでも経営
的な立場からの主観を述べる。
第 1 図 遮熱塗料技術向上のため,日々研究に勤しむ
また,他書や他項で遮熱塗料の技術的考察が詳
細に述べられているのであれば,その内容はそれ
しかし,繰り返しになるが筆者は技術者ではな
こそ技術専門分野の詳しい化学者が論じているも
い。
のであるので,筆者が異論を唱える必要はないと
また,他の数多くの著名なメーカーの優秀なエ
いう意思を表明させてほしい。
ンジニアの方々が書かれるであろう内容を筆不精
塗料業界においても総てが計算され,地球上で
な筆者が如何に飾って提示しても何の参考にもな
存在する塗料に関する数多くのデータがいつでも
らない事は歴然としている。
入手可能である。詳細な研究により総ての分野で
そこで,筆者は経営者の立場から,また,地球
その技術が高度になっており,それらの詳細な議
上にその存在を許されている人類の立場から,遮
論が交わされている。
熱塗料のあるべき技術論について言及してみた
遮熱塗料は,できるだけ安価に,かつ,反射性
い。
能の良い顔料を用いて,さらにはシリカやセラ
まず,技術志向の目的を的確に定義する必要が
ミックなどの中空ビーズで混合性能としての反射
ある。
率を何処まで上げる事ができるかに,その技術力
遮熱塗料の目的は地球上の構築物や建造物の屋
が問われているのだと思う。
根や屋上について勘案し,今まで塗布されてきた
そして,その細部をいかに理論的に高度な文章で
一般的な屋根用塗料に代えて遮熱塗料を塗布する
綴り,詳細な実例や文献,果ては著名な方の著書の
(べき)ことにある。
文章や歴史的なデータに依存した資料で固められて
これを行うことによって地球上の不必要なエネ
いるかが,評価に繋がる事なのではないかと思う。
ルギー消費を削減し各企業や公的団体,果ては一
Vol.64,No.6(2016)
JETI 1
第2図 世界各地で続く,記録的な暑さ
般家庭でのエネルギー費用をできるだけ減少させ
なコストを計算して当該コストの範囲内で調達で
ることができる。
きる原材料を中心に技術開発がなされる。
加えて,当該エネルギー生産の過程で発生する
そして,
その技術開発も当然に必要な事ではある。
地球温暖化の一原因でもある CO2 を低減させて,
従って,当該議論の後の技術開発論では原則とし
地球上の環境改善に貢献することも可能である。
て一般的な技術を一部(企業機密の部分については
その定義を満たすため,これらの目標をできる
語られることはないだろうから,
,
,
)公開してもら
だけ多く達成せしめることのできる遮熱塗料へと
い,総ての遮熱塗料メーカーのレベルアップの為に
グレードアップをさせる技術が不可欠である。
も参考となる技術所見が開示される事を望む。
各社のその素晴らしい技術開発は他項でいろい
当社が技術論から各メーカー技術者にお声を
ろ掲載されているのである。
かけると,無理な相談とばかりに一蹴されてしま
当社における技術開発力は,遮熱塗料の開発の
うと思うが,文頭からお断りしているように経営
目的を技術部のみならず全役職員がはっきりと共
者の技術論と捉えてほしい。
有している力であり,それこそを「技術力そのも
まず,現世の需要地域(暑い国の各国)にとっ
の」と呼びたい。
て遮熱塗料とはどのようなものであるかを定義し
製品の技術と言うのは,当該製品の特性をより
なおさなければ,技術開発そのものが停滞してい
高めるためにあらゆる材料について再考する。あ
る現況から脱する事はできないと断言する。
るいは,材料の組み合わせ方法やミキシングの仕
メーカーもディーラーも,そしてユーザーも,
方,混入の順序などそれこそ多種多様な方法が研
それらすべての人々が,遮熱塗料は今まで屋根や
究されているに違いない。
屋上に塗布されている一般的な塗料とはその目的
しかし,これらの技術開発の足かせになってい
を全く異にしていると自覚しなければならない。
るのがコストの問題である。
当社の営業活動中でも必ず出る代理店やディス
コスト計算は直接技術開発そのものには関係の
トリビューターからの言葉は,
ないようにも感じる方もおられると思うが,実は
「もっと安くしてほしい。」
コスト問題が最大の技術向上の障害になっている
「他社製品はもっと安いので価格的に難しい。」
のである。
「この国では安価なものしか売れないので,今の
もちろん,一般的には 技術開発の過程の中でも
ままではコスト的に無理がある。だから早急に現
各製品群に投入できる予算があることから,必要
地生産などをしてさらにコストダウンをしてほし
2 JETI
Vol.64,No.6(2016)
第 3 図 CO2 は地球を救わない?!
第 4 図 皆で支え合い,きれいな地球に戻そう
い。」
などなど,,,,,。
上目的を持った技術開発論にならず,原材料を下
これが,顧客,ディストリビューター,代理店,
げるためだけの方法論になりかねない。
営業職員を通じて工場管理部や技術開発部に届く
つまり,本来技術開発には目標があり,その目
声である。
標が正しいもので,かつ,開発者もその目的を充
そして,だからもっと安くしろ。
分に考えられる環境下において初めて,個別の技
もっと,安価な原料を探せ。
術論を構成すべきであると言いたい。
とにかく今の半額で卸せるよう他社に価格競争
遮熱塗料の目的は,ソーラーシステムや LED
で負けないようコストダウンを図れ,という議論
電球のように環境対策を目的としたものである
の枚挙にいとまがないのである。
が,一般塗料との価格比較をもって目先の販売額
これらの大局的見地からの考察を無くして技術
を膨らませるため技術論になるのは本末転倒であ
開発論は語れないと思う。
る。
技術に関する詳細な化学論は,何処にでも筆者
きちんと性能の良いものを作り,その性能に
よりはるかに詳細な論文を詳述する方々が多くい
よって電力料金が節約できるのであれば,そのコ
ると思う。しかし,その前提となる技術とも言え
ストパフォーマンスをもって,総ての遮熱塗料
る開発前提論を耳にする機会はあまり多くはな
メーカーが品質向上と価格を決定できるはずであ
い。それは,企業営業上の戦略を他社に明かして
る。
しまう恐れもあるので,おいそれと公表する事が
けっして一般塗料との価格差を市場認識させて
できないと言う事でもある。
はならないはずである。
2. 遮熱塗料の特徴
しかし,実際には価格面から営業を行い,その
市場価格を低廉させて自らの品質を落とす製品改
遮熱塗料はとても新しい部類の塗料であり,本
良は,技術的視点からも間違っている発想と思わ
来の塗料の目的とは異なった特徴を持った製品で
なければならない。
ある。
価格至上主義の現在にあって筆者の言わんとし
先ほどの技術論からの続きになるが,製品の性
ている事は古臭く感じる向きもあろうが,今でこ
能を上げるための科学的な根拠に基づいた製品開
そ,価格偏重主義の世の中を是正し,正しい製品
発は本来の技術でもあり,科学的データをもとに
が世に広まるように改革をしなければ,いずれコ
語られる内容も多々存在するが,製品の本質に触
ストに押し倒され,これらの製品市場そのものが
れ,製品本来の目標性能と製品普及目的を忘れて
無くなってしまうかもしれない。
技術論を述べるべきではない。
そうなった場合も大手の塗料メーカーとしては
小さな目標,例えばコストダウンのためだけの
困る事はないのかもしれないが,遮熱塗料だけを
技術論は,技術が伸び悩むだけではなく本来の向
製造しているメーカーには嬉しくない事であり,
Vol.64,No.6(2016)
JETI 3
なにより,暑い中で暮らしている多くの人々や,
とが地球への恩返しと思い,それをビジネスに連
多大なエアコン電力を消費している企業にとって
関させて営んできている小さなメーカー経営者で
も相当な損失である。何にもまして,無駄なエネ
あるが,自社でできることに全役職員が誇りを持
ルギーをせっせと費消され,たっぷりの CO2 を排
ち,本当に正しい知識で全世界に拡散されるビジ
出される地球にとってはいい迷惑である。
ネスとして日々勤しんでいる。
価格を比較して考えるのであれば,他の塗料で
地球環境改善や省エネルギー,さらには人類の
はなく,ソーラーシステムや LED システムを導
平和と繁栄を考え,できるだけ多くの人々の生活
入する場合のイニシャルコストとランニングコス
環境を少しでも向上させるためには,どんな製品
トの比較をすべきである。
でもその開発や技術論を論じる際に常に大義と誠
エネルギー節約の効果と地球環境への配慮を考
意を持つべきことを,本当の進歩的技術論と考え
えれば,これらに代えて遮熱塗料を採用する事が
ていただきたい。
如何に正しい事かが誰にでも簡単に理解できるは
そして,そう考えているのは世界の中でけっし
ずである。
て筆者だけではないと思う。
筆者はこれまでにも単に地球環境を改善するこ
■トピックス ■
東レ
を開発,世界初の水溶性インキ
水なし UV 印刷システムを開発
を用いる水なし UV オフセット印
刷システムの実現に成功した。
東レはこのほど,
「東レ水なし
し平板」は印刷時に揮発性有機
今回開発した水なし UV オフ
平板」と新開発した親水性ポリ
溶剤を含む湿し水を用いないこと
セット印刷システムでは,インキは
マーの適用により,揮発性有機
から,環境面に配慮した製品とし
揮発性有機溶剤を含まず,また
溶剤を用いない究極のエコ印刷
て認知されている。しかし,オフ
水溶性のため,水系洗浄剤で洗
法である水溶性インキを用いた水
セット印刷には油性インキが使用
浄可能であることから,印刷工程
なし UV 印刷システムを開発し
されているため,版や設備を洗浄
で発生する揮発性有機溶剤の排
た。
する際には揮発性有機溶剤を用
出・使用を削減することが可能に
東レはオフセット印刷に用いる
いる必要があった。そこで,東レ
なる。さらに,温度などの印刷条
印刷版材である「東レ水なし平
はコア技術である機能性高分子
件のマージンが拡大し,より簡便
板」を展開してきた。
「東レ水な
設計技術を用いた親水性ポリマー
に安定な印刷工程を実現できる。
日本電気硝子
製品の開発に取り組む。
NS マテリアルズに出資
量子ドット技術はナノサイズの
半 導 体 結 晶 物 質を用いて, 入
日本電気硝子と NS マテリアル
通じて,両社は NS マテリアルズ
射した光を別の波長(色)の光
ズは,日本電気硝子が第三者割
が開発・製造を進める量子ドッ
に高純度で効率良く変換するこ
当増資により NS マテリアルズが
トと,日本電気硝子がもつ特殊
とができる。液晶ディスプレイの
新規発行する普通株式を引き受
ガラス材料とを組み合わせ,優
バックライトに応用すれば,ディ
けることに加え,NS マテリアル
れた色再現性とともに高い耐熱
スプレイの広色域化,高輝度化,
ズの既存株主より発行済み株式
性・耐環境性を備える高輝度光
高コントラスト化などに貢献でき
を取得した。日本電気硝子は 7
変換ガラス部材などに適した量子
る。NS マテリアルズは今回の資
億 3,530 万円を出資し,出資比
ドット蛍光体の開発を協力して進
金調達により久留米・広川新産
率は 15.9%となる。
め,バックライト製品などの電子
業団地内の新工場における量子
今回の日本電気硝子の出資を
部品照明デバイスへの応用や新
ドットの量産体制を拡充する。
4 JETI
Vol.64,No.6(2016)
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