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CO2回収型高効率IGCCシステムにおけるガス タービン燃焼特性
電力中央研究所報告 火 力 発 電 CO2 回収型高効率IGCCシステムにおけるガス タービン燃焼特性 -第2報 排気循環・O2 量論比燃焼ガスタービンの排気特性に関する解析的検討- キーワード:CO2 回収型 IGCC,閉サイクルガスタービン,O2 量論比燃焼 燃焼排気ガス特性,反応動力学解析 背 報告書番号:M10005 景 当研究所は、石炭ガス化複合発電(IGCC)に CO2 回収システムと閉サイクルガスター ビンを組み合わせた CO2 回収型高効率発電システム(図 1)を提案し、各開発要素につい て検討を進めている。排気循環による IGCC 用閉サイクルガスタービンでは、一酸化炭素 (CO)リッチな石炭ガス化燃料を酸素(O2)で量論比燃焼させ、排気ガスをリサイクル してガスタービンに供給し、燃焼器での燃焼温度を調整する。また、排気ガスの一部はガ ス化炉への石炭搬送用媒体として使用するため、ガスタービン排気ガス中の未燃焼成分 (CO、H2)の低減に加え、残留 O2 成分をできるだけ少なくする必要がある。しかしながら、 排気循環によるガス化燃料の O2 量論比燃焼特性についてはほとんどわかっていない。 目 的 モジュラーモデルを用いた反応解析*1 により、排気ガスを希釈剤とするガス化燃料・ O2 量論比燃焼ガスタービン燃焼器の基本的な排気ガス特性を把握する。 主な成果 1. 本ガスタービンシステムの定格条件(燃焼器出口ガス温度1350℃、O2 過剰率1.04) では、排気ガスはO2成分が1.5vol%、未燃焼COおよびH2成分がそれぞれ2.3、0.3vol% と高い濃度で排出され、燃焼効率は約82%にとどまった*2 (図1)。このため、本シ ステムでは燃焼促進技術の検討が必要であることがわかった。 2.ガス化ガスによるO2量論比燃焼閉サイクルガスタービンでは、他の燃料種に比較して 燃焼反応が大幅に抑制されることがわかった(図2)。これは、主に、循環する排気ガ ス中のCO2により燃料の主成分であるCOの酸化反応が抑制されるためである(図3)。 3.排気ガスによる希釈に伴い燃焼ガス温度が低下すると、燃料の酸化速度が低下して 反応が緩慢になるものの、一方で燃料の酸化反応の可逆性*3 が低下して燃焼生成物 の還元反応が抑制される。その結果、希釈比率が約 3 の場合に最も高い燃焼効率を 示し、燃焼反応が促進することがわかった(図 4)。 今後の展開 当量比条件の適正化や希釈剤の供給法などについて検討し、燃焼改善を図る燃焼器設 計に向けた課題を明らかにする。 *1 燃焼器バーナ部は乱れが強く、燃料と酸化剤の混合は速やかに進行するため均一反応器を仮定し、 二次酸化剤等の供給後はプラグ流反応器を適用する燃焼器解析モデル。本件では二次供給は設け ていないので均一反応器とした。反応モデルは素反応248式、化学種50成分から構成され、解析 方法はGEAR法を用いた。 *2 O 2 過剰率(0.8~ 1.3)の上昇に伴い排気ガス中の残留O 2 は0.8から 2.3vol%に上昇するものの、 一 方でCOは3.7から1.3vol%(H 2 は0.5→0.2vol%)に低下し、燃焼効率は約90%に向上する。 *3 高温下では、燃料の酸化反応の可逆性(例えば、燃焼生成物(CO 2 )→燃料(CO)の還元反応) が高く、燃料の酸化が抑制されることがある。 ガスタービン燃焼器解析条件表(定格条件) ガス化 酸化剤 希釈 ガス ガス 成分 0 0 CO [vol%] 66.2 0 0 H2 [vol%] 23.8 0 0 CH4 [vol%] 0.3 0 70.5 CO2 [vol%] 4.9 0 27.2 H2O [vol%] 3.2 2.5 2 N2 [vol%] 1.5 97.5 0.3 O2 [vol%] 0 圧力[MPa] 3.0 O2 過剰率 1.04 希釈比率 5.06 3087℃ 燃焼温度 1350℃ 燃焼ガスの特徴 O2 =1.5% CO=2.3% H2 =0.3% 燃焼効率=82% CO2 回収型高効率 IGCC システムの概要 2.0 (参考) 1.0 0 ガス化ガス LNG H2 1350℃ 5.0 90 ②極小値 3.0 80 2.0 70 1.0 60 0 (★は公開試験データ) 50 2 3 4 5 6 7 8 9 10 希釈剤/燃料の比率(希釈比率) 図 2 各種燃料による O2 量論比燃焼排気特性の 比較(総括 O2 過剰率=1 での比較) 図4 ガス化燃料の酸化反応は LNG や H2 の場合に比べ て緩慢で、多量の未燃焼成分が排出される。 燃焼排気ガス特性に及ぼす希釈比率の 影響 ①希釈に伴い酸化反応は緩慢になるものの、 一方で燃焼生成物の還元反応も抑制され る。その結果、燃焼効率を最大にする希釈 比率が存在する。 燃焼時間 ★ 燃焼効率 % (定格条件) 4.0 H 2-1700℃ WE-NET 100 ①燃焼効率が最大 燃焼効率 η % 3.0 100 95 90 85 80 75 70 65 60 濃度 vol% 濃度 vol% 4.0 燃焼効率 η % 図1 ②希釈比率が 6 の場合、CO の酸化反応は最も 緩慢になり、反応時間 20ms で比較すると燃 焼効率は最も低下する。 ★ 燃料組成 ガス化ガス 反応時間 ms 図 3 O2 量論比燃焼時の燃焼効率に及ぼす燃料 中 CO 濃度の影響 燃料中 CO 濃度が高いほど、循環する排気中の CO2 濃度が高くなり、酸化反応が抑制される。 研究担当者 長谷川 問い合わせ先 (財)電力中央研究所 エネルギー技術研究所 研究管理担当スタッフ Tel. 046-856-2121(代) E-mail : [email protected] 武治(エネルギー技術研究所 高効率発電領域) 報告書の本冊(PDF 版)は電中研ホームページ http://criepi.denken.or.jp/よりダウンロード可能です。 [非売品・無断転載を禁じる] C 財団法人電力中央研究所 平成23年5月発行 ○ 10-007