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i-dio(V-Lowマルチメディア放送) 放送開始について - ITU-AJ
i-dio(V-Lowマルチメディア放送) 放送開始について ふじ い 東京マルチメディア放送株式会社 CP事業部 だいすけ 藤井 大輔 1.はじめに 2.事業会社の構造について 日本のアナログテレビ終了に伴いVHF帯に新たに導入 i-dioはハード・ソフト分離型の制度となっており、全国 された「V-Lowマルチメディア放送」は、 コミュニケーショ への放送設備の設置と運用、受信環境の整備をハード事 ンネーム「i-dio」 (アイディオ)として2016年3月に東京・ 業者である(株)VIPが、編成・帯域管理などの機能をソ 大阪・福岡でプレ放送を開始し、同7月には東海地域(愛知、 フト事業者であるマルチメディア放送会社6社が放送ブロッ 岐阜、三重の一部)をエリアに加え、グランドオープンを ク別に担当している。実際の放送コンテンツの制作は、マル 迎えた。ここでは、i-dioの関東・甲信越地区における認定 チメディア放送会社と帯域使用契約を締結したコンテンツプ 基幹放送事業者である東京マルチメディア放送(株)に ロバイダ(CP)各社が行う。現在はTOKYO SMARTCAST 所属する筆者から、そのサービスの内容についてご紹介す (株) (TS社)と(株)アマネク・テレマティクスデザイン る。なお、i-dioの制度やインフラ面についてはITUジャー (Amanek社)が全国にコンテンツを供給するCPとして参 ナル2015年1月号(New Breeze 2015年冬号)で解説され 入しており、今後も地域別・全国ともにCPが追加参入予 ているので、あわせてご参照いただきたい。 定である。 現在の放送エリアは東京近郊、大阪近郊、福岡近郊、 東海(愛知・岐阜・三重・静岡の一部)の4地域となって ■図1.事業会社の役割と構造 ITUジャーナル Vol. 46 No. 12(2016, 12) 27 スポットライト いるが、 (株)VIPは2019年までに全国に置局を完了する ンツ編成の変更に対応している。 計画である。 3.進化する放送を実現するためのインフラと受信環境 3.2 受信アプリ i-dioは移動体向け放送として、専用受信機器のほか、既 i-dioはこれまでの放送と異なり、音声や映像に限らず、 存のスマートフォンに小型・充電池式の「i-dio Wi-Fiチュー 多様なコンテンツを放送波で送ることができるプラット ナー」を無線接続した受信環境を主体としており、 「Wi-Fi フォームである。また、コンテンツプロバイダも様々な用 チューナー」は開局に前後して、10万台を無料モニター提 途を計画し、放送以外の異業種から参入するケースがあ 供した。また、i-dioチューナーが内蔵されたSIMフリース る。そのため、放送設備や受信環境も、あらかじめ高い柔 マートフォンも市販化されている。受信に用いるアプリ 軟性が担保されている。 ケーションはiOS、Android向けに(株)VIPが無料提供 する汎用受信アプリのほか、各CPが独自フォーマットの 3.1 放送インフラ データ放送や高度なサービスに対応した専用受信アプリを 各ブロックごとに設置されたマスター設備は、音声・映 提供している。 像・データを混在して取り扱うことができる設備となって TS社は同社のチャンネルに特化し、楽曲購入などの機 いる。各地のマスター設備はセンター設備とネットワーク 能が充実した「TS PLAY」アプリを、Amanek社は自動 を構成しており、ネットワーク上ですべての搬入・監視・ 車内での運転中の聴取に最適化し、音声自動読み上げに 運用作業が行える構成となっている。CP各社はセンター よる情報提供にも対応した「Amanekチャンネル」アプリ 設備にプライベートネットワークで接続し、日々の放送コ を提供している。各社のアプリケーションは自主的にバー ンテンツを投入している。センター設備は頻繁にバージョ ジョンアップがなされており、放送と共に日夜進化を遂げ ンアップが行われており、放送チャンネルの増加やコンテ ている。 ■図2.TS ONE、Amanekチャンネルアプリ概観 28 ITUジャーナル Vol. 46 No. 12(2016, 12) 3.3 IPサイマル補完 マルチメディア放送会社では、地元のFM局と連携した 置局が行き渡り、専用受信機が普及するまでの暫定措 ローカル音声チャンネルを編成し、広域ブロック別放送の 置として、 (株)VIPでは、放送ブロック内で「インターネッ 利点を生かして地域情報を提供している。 ト受信モード」と呼ばれるIPサイマル補完配信サービスを 無料提供している。これにより、受信環境が未整備の地域 5.自治体・法人向け放送サービス でも、インターネット経由でサービスを体験いただくこと i-dioの進化はデジタルラジオ的なサービスにとどまら が可能となっている。 ず、多様な形式のデータが全国に放送できる点である。イ 4.一般視聴者向けに提供されている放送サービス ンターネットに接続される機器が爆発的に増加するIoT時 代において、枯渇が予想される通信インフラを、輻輳しな 現在、一般視聴者向けに提供されている主なサービス い放送インフラで強化していくことは我が国のIoTの発展 は以下のとおりである。いずれの放送も、無料放送として に不可欠であり、 大規模災害時における減災の観点からも、 提供されている。 過去の経験から重要であると考える。 現在i-dioでは、自治体向けに防災情報を専用防災ラジオ 「TS ONE」 に発信し、端末の強制起動も可能な「V-ALERT®」サー TS社が提供する高音質ラジオチャンネル。全チャンネ ビスを提供開始しており、採用自治体が増加している。さ ルで最も高品質な320kbps AAC音源で音楽番組と共にス らに平常時の活用においても、デジタルサイネージへの更 タジオ写真や楽曲購入情報などをデータ放送で提供し、新 新データの配信、車載用機器に向けたファームウェアの放 しい音楽との出会いを可能とする独自の放送を行っている。 送波伝送などのフィールドテストが、参入予定企業との連 高解像度音源(いわゆるハイレゾ)に対する関心が高まる 携で進められている。 中、音質を生かしたライブ中継番組や環境音などの番組に も高い評価がある。 6.今後の展望 i-dioはV-Lowマルチメディア放送の特性を最大限に生か 「Amanekチャンネル」 し、輻輳しない放送波を用いてIoT時代のニーズに対応し Amanek社が提供するドライバー向けデジタルラジオ た、柔軟なコンテンツ配信のありかたを常に追求している。 チャンネル。気象・交通・観光などのデータをビッグデー 例えば、デジタルサイネージ向けに端末によって内容を出 タから提供し、受信機がGPSと連動して最適な内容を判断、 し分けるコンテンツ配信を行ったり、災害時にV-ALERT® 番組に合わせて受信機が発話(TTS=Test To Speech) を用いた詳細地区別の情報提供を行うなどの技術が、既 することで、きめ細やかなサービスを実現している。受信 に実用化されている。 者により内容が変化する未来のカーラジオとして、自動車 ISDB-T方式の地上デジタル放送のノウハウを生かした 業界からも注目を集めている。 導入が可能な移動体向け放送の新たな方式として、海外 そのほか、東京マルチメディア放送ではジャズ、クラシッ からも注目されている。今後も、世界に類を見ない通信と ク、洋楽のセレクション音楽チャンネルと、簡易映像によ 放送の真の融合モデルとして、進化してまいりたい。 る動画チャンネルを全国に提供している。また、各地域の ITUジャーナル Vol. 46 No. 12(2016, 12) 29