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mps news No.9 - 東京大学工学部都市工学科/東京大学大学院工学系

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mps news No.9 - 東京大学工学部都市工学科/東京大学大学院工学系
東京大学大学院 工学系研究科 都市工学専攻
社会人のための修士課程|都市持続再生学コース
9
2014.03.15
東大まちづくり大学院
開講式:第7期生18名が入学
2013年10月1日、
工学部14号館にて開講式が行われ、
第7
期生18名が新たにまちづくり大学院に入学されました。
入学式は、都市工学専攻長の森口祐一教授、建築学専
攻長の塩原等教授、社会基盤学専攻長の小池俊雄教授
(代読)
、まちづくり大学院コース長である大方潤一郎教授
より祝辞が述べられました。
その後、
列席した教職員の紹介
とオリエンテーションが行われました。
各専攻長及び大方
コース長の祝辞をご紹介します。
■開講式の様子
都市工学専攻長の森口です。ご入学おめでとうございます。まちづくり大学院は、大学院
工学系研究科の都市工学専攻、社会基盤学専攻、建築学専攻の3専攻を横断的にカバー
する社会人向けの教育プログラムとして、平成19年度に発足しました。
入学された皆様は、都市計画のテーマを選ばれる方が多いわけですが、少数ながら、都市
環境工学のテーマを選択される方もいて、私自身もひとり、まちづくり大学院の院生を指導
させて頂いております。
さて、二度目の東京オリンピック開催が決まりました。前回のオリンピックは1964年です
が、都市工学科の設立は1962年、最初の卒業生が1966年と、まさに前回のオリンピックの
■森口祐一・都市工学専攻長
時期でございました。50年を経て、わが国の人口がピークを過ぎ、都市の再構築、再生が求
められています。また、東日本大震災という大災害を経験し、将来起こりうる大災害に備えることの大切さにも直面してい
ます。私自身、津波被災地の災害廃棄物処理問題や原発事故による汚染地域からの帰還問題にも深く関わっています。そ
こで痛感することは、専門的知識と実務能力の両方を兼ね備えた人材の必要性です。まちづくり大学院の趣旨にも、まち
づくりの現場において、持続的な都市の形成・再生を実践・主導する高度な専門職能人を養成することが書かれています。
現場での実践能力を専門的な学識の修得によって高めることがこの大学院の大切な役割です。社会人としての責務、日常
業務と学業との両立が大変であろうことは想像に難くありませんが、皆さんはそれを充分に認識した上で、高い問題意識
を持ってまちづくり大学院を志されたものと思います。ここで学ぶことができるという機会を存分に活用し、自己を研鑽さ
れ、社会に貢献いただくことを願っております。これをもって、私からのお祝いと期待の言葉とさせていただきます。
建築学専攻長の塩原でございます。
森口先生同様に4月から専攻長を務めています。
ま
ず、
社会人として皆様が仕事を持ちながら、
掛け持ちで東大でも学ぶという姿勢に心から敬
意を表したいと存じます。
私の専門は建築ですが、
建築学も多様で、
建築家の隈先生や、
建
築計画の大月先生、
そして私のような建築構造学の専門家などもいます。
さて、
防災まちづくりの観点から先の東日本大震災を考えれば、
個々の建築物の耐震性能
を高くしても解決しえない問題が明らかになりました。
それは、
巨大地震に伴う複合災害から
都市、
社会、
暮らしを守るには、
個別の建物、
道路、
橋などの個別の耐震設計だけではなく、
都
市全体のあり方を踏まえた個々の地域特性に根ざした独自解を見つけなければならないと
■塩原等・建築学専攻長
の要請です。
皆様にはこうした解を見つけられる多様な知識と専門性をさらに磨いて頂くとい
うことで、
我々は皆さんのお役に立てるものと認識しています。
私個人の話を申し上げますと、
若い頃、
建築研究所に在籍し、
建設省の建築指導課に出向した経験から、
今も様々な人が
相談に来られ、
交流が続いています。
こうした学問や研究を通してできる人の輪、
交流は大変有用だと信じており、
これがで
きるのがまちづくり大学院です。
皆様もこのチャンスを生かし、
指導教員だけではなくて、
建築、
土木、
都市の多くの専門家に
正直な思いをぶつけて頂きたい。
それが各研究の拡がりに必ずや繋がると思っています。
そして、
まちづくりに関する広い知
識と実践例を吸収され、
人間的な繋がりを拡げ、
必ずや、
次世代のまちづくりのリーダーになっていただけると期待して、
私の
お祝いの言葉といたします。
1
■小池俊雄・社会基盤学専攻長(代読)
皆さま、
まちづくり大学院への入学おめでとうございます。
社会基盤学専攻を代表して一言ご挨拶を申し上げます。
現代社会では、
都市が抱えている様々な問題を、
まちづくりを通じて解決していくことが強く期待されています。
災害面では、
先進国、
発展途上国の双方で、
その被害が依然として増加しており、
ひとたび巨大な災害が発生すると、
回復
の道筋すら見えない深刻な被害が生じています。
環境面では、
気候の変化、
水・食料・資源・エネルギーの枯渇、
生態系の破
壊と生物多様性の喪失という様々な課題が環境をますます劣化させています。
また、
これらの影響が一国、
一地域にとどま
らず、
国際的な経済、
社会活動に及んでいます。
いずれも、人口増、貧困、急激な都市化などの人間由来の活動によって地域の脆弱性が増し、災害外力
(ハザード)
や環
境変動の影響を増大させていることが原因です。
また、
複雑化、
巨大化が進んだ社会にあっては、
人々の帰属意識や連帯
感が失われ、
社会サービスの単なる受け手になり、
また過剰な被害者意識が形成され易い状況になるともいわれています。
また、
グローバル化が進む一方で、
経済格差や歴史的・文化的・宗教的な社会の隔たりは依然として大きく、
地域的、
世界
的な合意の形成が難しいことも、
これらの課題の解決を困難にしています。
まちづくりは、
これらを解決に導く基本的な場であり、
そこには分野間の連携並びに科学と社会の連携が必要です。
皆
様が、
本コースにおいて三つの専攻から提供される知識や経験に加え、
積極的に幅広い分野を吸収して、
様々な問題を社
会とともに考え,
解決策を見出だしていくリーダーとなられることを期待します。
4月からコース長になりました大方です。
改めてご入学おめでとうございます。
まちづくり大学院、
正式には、
都市持続再生学コースと言います。
なぜかといいますと、
都市
工学、
建築学、
社会基盤学の3専攻で、
2003年から、
21世紀COEということで、
「都市持続再
生学の創出」
というプロジェクトを始めました。
それを立ち上げるときに、
社会人向けの分野
融合的なコースを創るという公約が実って、
このコースが始まりました。
それ故、
開講式には3
人の専攻長が揃ってお祝辞を申し上げることになっているわけです。
この東京大学まちづくり大学院は、
研究をするには大変素晴らしい環境であると思ってい
ます。
ただあくまで環境であり、
この環境をいかに活用するかは皆様次第です。
図書館もあ
■大方潤一郎・まち大コース長
りますし、電子書籍を検索するようなシステムもございます。
また空間としても、東京の都心
に近いところにあり、
なかなかよい場所だと思っています。
そして何より優れているのは教員です。
教員は元々研究が好き
で、
学生の相手が好きで、
この仕事を続けています。
ですから皆さん遠慮をなさらず、
積極的に迷惑かなとは思わず教員に
ぶつかっていってください。
先生方も、
学生さん、
皆様が育っていくことが何よりの喜びなのです。
ぜひこのプログラムを活用して、
2年間のうちに、
大きく育っていただきたいと思っております。
まちづくり大学院を修了して
3期生 軽部 徹
現象をどう捉え、そこから何を認識
するか? 同じものを見ても、同じこ
とを聴いても、認識できることは人に
よって違います。より多くのことを認
識し、様々な価値に気付ける人は、社
会や人と関わる、より多くの機会を得られるのだと気づきまし
た。
まちづくり大学院で学んだことは、知識を広げ、思考力を
磨き、忍耐力をつけることの重要性と、自らが自分を律して
日々努力を続けるしかないということです。修士研究を通じ
て、よくよく痛感させられました。自分自身に変化を望んでい
るすべての方、まずは、まちづくり大学院の扉を叩いてみてく
ださい。
2
2013年に修了したお二人からコメントをいただきました。
5期生 松田太一
仕事に家庭に子育てに…。社会人
大学院生として、時間に追われる環
境下の修士研究では、幾度となく挫
折しそうになりました。
そんな時、ともに奮闘する級友た
ちの姿や、昼夜惜しみなくご指導下さる先生方の言葉に奮い
立たされました。
「あなたは50年後の日本を救うためにここに来たんでしょ?」
「で、あなたはどう考えるの?」
ここで得た刺激は、修了した今でも私を突き動かし続けてく
れていると感じています。今後も、持続的にインフラ老朽化と
財政問題に関する研究と実践に取り組んでいきたいと思って
います。
東大まちづくり大学院・修了式
2013年9月27日
(金)
、
学位授与式
(修了式)
を開催
2013年9月27日、伊藤国際学術研究センターにて東京大学秋季学位記授与式、また工学部14号館にて学位記伝達式がとり行わ
れ、まちづくり大学院3期生5名、4期生3名、5期生4名の計12名が修了しました。修士論文の題目は次のとおりです。学位授与式終
了後、5期生主催による謝恩会が学士会館で盛大に行われました。その時の記念写真も合わせて掲載します。
■学士会館での記念撮影
■まちづくり大学院生の修士論文
【2013 年 3 月修了】
・所沢市における持続可能な雑木林都市の構築に関する研究
・住環境の社会的包摂に関する基礎的研究─UR 千葉幸町団地を事例として─
・大都市郊外の高齢社会における住民発意の「創発型」まちづくり活動に関する研究
─川崎市宮前区野川の「すずの会」の事例から―
・グローバル化の下での東南アジア地域における都市間関係の研究─空間的相互作用モデルによる分析─
【2013 年 9 月修了】
・市街化調整区域内における住宅建築の背景と住宅の使われ方に関する研究
─茨城県桜川市内の都市計画法第 29 条申請および同法第 43 条申請の分析を通じて─
・工場閉鎖による大規模跡地の土地利用転換に関する 土地利用コントロール手法の研究
─東京都多摩地域を中心として─
・地域ビジネスとしての需要対応型交通(DRT)
の可能性についての研究
・津波に強い小規模下水道の施設配置とその評価選定手法
・都市計画マスタープランの構造に伴う潜在的な課題に関する基礎的な研究
─東京都区市の都市計画マスタープランを題材に─
・まちの活性化に繋がるストーリーブランディング ∼東京・神田エリアを対象として
・地区計画影響分析等による銀座デザインルールの正当性に関する研究
∼ヘドニック分析と互換的利害関係論を活用して∼
・都市内の異領域境界に発生する都市装置の中間言語化の試み∼上海・東京を事例として
・自転車利用者の車道走行促進を目的とした情報提供と意識変化に関する研究
・異なる用途の街区の組み合わせに対するスマートグリッドの適用
・ネットワークの閉路特性に着目した駅周辺街路の回遊性分析
・財務書類を用いた社会資本マネジメント施策の新たな分類フレーム
3
まちづくり大学院に入学して──志望動機と入学後の感想
2013 年度
(第 7 期)
入学のみなさんに、
志望の動機や今後の抱負など、
思い思いに語っていただきました。
■2013年度 教員と第7期生のみなさん
4
■桑島良紀 ─専門新聞社勤務
■坂本将士 ─ビール会社勤務(関係不動産会社出向)
主に住宅や不動産関連の政策を取材し続けて15 年になっ
た。
「この15 年を形にしたい」
。
これが入学を志望した動機だっ
た。東大まちづくり大学院の存在は、発足前から知っていた。
記者発表を自ら記事にしていたからだ。ただ、そのときは入試
を受けることは考えていなかった。
当時、
別の資格試験の勉強
をしていて、そちらで身を立てることを志していたからだ。
そし
て、時は過ぎ、資格試験と関連した専門職大学院も卒業した
が、働きながらの資格試験勉強に限界も感じていた。その時
に頭を過ぎったのが、
まち大のことだった。
2013 年 4月中旬の説明会に参加して願書を提出した。
同年
5月末に資格試験の一次試験が行われたが
「自己採点の結果
が思わしくないなら、まち大に向けた試験勉強を始めよう」
。
予めそう決めていた。そして、試験当日夜の自己採点。試験に
落ちているとわかり、その翌日から約1ヵ月間、まち大の過去
問と格闘する日々となった。15 年間積み重ねた仕事は合格に
導いてくれた。今は、15 年間の仕事を目に見える形にしようと
格闘しつづけている。
初めてラスベガスの上空からまちを見下ろした時、広大に広
がる美しく区画された住宅街を見て衝撃を受けた。
高校生の
私は、そこはカジノとボクシングと犯罪のまちだと勝手に決めつ
けていたのだ。
時は経ち社会に出て早 10 年、不動産を生業と
して日本全国のビル、商業施設、住宅、倉庫等を扱ってきた。
1
つ 1 つの物件も色々な特徴があり本当に面白い、ただその集合
である「まち」を私はまだ扱っていない。
個別である物件とその
集合である
「まち」
、切り離せないその両面についての見識を得
ることができたら私はまた一つ成長できるのではないか、そう
思うと居ても立ってもいられず、気づけば東大の門を叩いてい
た。
働きながらの勉強はかなり大変だが同時に最高に楽しい。
最高のクラスメート達もいる。
この環境を与えてくれた会社と家
族には本当に感謝している。
もしかなうならば、いつかまちの美
しさで人を感動させる、驚かせる、そんなことができるようにな
りたい。
それはまさに私が高校生の時に受けたあの衝撃だ。
私
はまだその余韻を楽しんでいるのかもしれない。
■谷 寅司郎 ─ 株式会社オフィスウーノ
■黒須良次 ─元都市未来総合研究所勤務
私がまちづくりと縁を持ったのはここ 2 年ほどのことです。
私の本業は事務アウトソーシング業で、弊社の代表が銀座の
商店会の会長をしていた縁で事務局業務を請け負う様になり
ましたが、当時銀座を騒がせていた松坂屋再開発問題につい
てもピンとは来ていませんでした。
最初のきっかけは、銀座のまちづくり研究組織の事務局長
が在職で都市工学の博士号を取得したことです。まちづくり
について社会人の立場で専門的に学べる道があるという事自
体、学部生時代ろくに勉強してこなかった身には想像もつかな
いことでした。
もう一つのきっかけは、商店会の視察でポート
ランドの成功事例を実際に目の当たりにしたことです。そこで
は生活と商業、交通や社会構造が高度なバランスで「住みや
すさ」を醸しだしており、人とまちと商業の幸せな関係という
概念に触れることが出来ました。
帰国後社会人大学院を探し
たところまち大が最適と思い、受験を志し今に至ります。
今で
は事務局業務を離れていますが、まち大での研究成果を以っ
て専門家としてまた銀座に関われればと思っています。
まちづくり大学院を知ったのは、昨年の春、前職を辞して
新たに再スタートするため GIS 研修中の昼休みでした。散歩
がてら立ち寄った都市計画協会内のポスターに目を奪われた
のです。それは偶然のことでした。まちづくりの実践的活動
を目指していた私は、講座の資料を読むほどに
“ここに来なさ
い!”
と言われたような気になり、よく考えてからにしたらと案
ずる身内の声が耳に入らず、直ぐ受験の意を決めました。そ
んな過剰な思い込みが手伝ってか、幸い高年者にもやさしい
通学定期券を手にし、リカレント学習の生活に入ることができ
ました。
日中、立ち上げたばかりの任意団体やマンション管理組合
の仕事、たまに地元の委員会や市民団体の活動をこなし、夕
方いそぎ足で大学へ向かっています。授業は、凝縮された集
中講義と様々な形のディスカッションが特徴です。そしていま、
都市という舞台、社会の本質・実態・構造を幅広く学び、実
務や実践に活かそうという意欲を持つ仲間に交じって、まち
づくりの思考のバックボーンを鍛え直したいと考えています。
■K.I ─建築設計事務所勤務
■廣瀬雄一 ─大和ハウス工業勤務(東大IOG出向中)
建築設計事務所で市街地再開発事業等の建築にかかる都
市計画の仕事を行っている。東京をはじめとした東京圏が対
象であり、
人口増加を前提とした不動産需要に期待した計画
である。
地方部での業務の経験はなく、
東京圏での都市計画
が最先端で最重要だと思い込んでいた。
一方で近年の我が国
は、少子高齢化が進行し人口減少社会に突入している。東北
の震災復興等とあわせ新たな課題を抱えており、
我が国は新
しい時代を迎えようとしている。
また、
都市計画の分野でも同
様に新たなステージを迎えようとしている。
こうした状況から、
東京圏こそが例外であり、
最新の課題と
は無関係といえる。
しかし将来は、
東京圏でも人口が減少する
ことは確実であり、これまでのような不動産需要に期待した
都市計画は成り立たなくなる。
将来の東京圏を考える上では、
地方部のような最新の都市計画を学んでおかなければならな
い。そんなことを考えている折に、本大学院の存在を知った。
新しい時代に必要な都市計画を学びたく、
入学を決意した。
大学時代、
地域における高齢者の居場所づくり活動の事例
調査を卒業研究として行っていましたが、
学生経験しかない頭
では自分の中で深掘りしきれず、
社会人経験をしてからもう少
し研究を深めたいという思いを持っていました。
就職した大和ハウス工業の主たる事業は都市開発に伴う建
設業ですが、
超高齢社会に直面してからは、
空き家等のストッ
ク活用、
高齢者のサポート等のように建築工事とは異なるアプ
ローチをいかに事業の柱に育てていくか、
という視点が大切だ
と感じています。
4 年前から東京大学の高齢社会総合研究機
構
(IOG)
に出向しています。
柏市の豊四季台団地というフィー
ルドで研究活動に取り組み、
50 年前に開発されたベッドタウン
の大規模団地が一気に高齢化に直面している様子を目の当た
りにしてきました。
大和ハウスが過去に開発を進めてきたまち
でも同じことが起きています。
ずっと関心のあった居場所づく
りに、
高齢化、
まちづくりというキーワードが自分の頭のなかで
結びつき、
一念発起しまちづくり大学院を志望しました。
■彌吉元毅 ─官公庁
■北脇優子 ─総合建設会社
まちづくり大学院の存在は、専門紙に掲載された初年度の
開講式の紹介記事を見て知りました。もともと都市計画やま
ちづくりの分野に関心があり、公共建築の整備・保全を中心
とする様々な業務に携わる中で、都市計画やまちづくりの観
点から公共建築の在り方について見直す機会を得ることがで
きればと思い入学を志望しました。
大学で建築を学んだ頃は、バブル経済の余韻が色濃く残る
中で全国各地の大規模新規開発が華々しく取り上げられ、環
境問題への対応の必要性とともに開発志向のテーマが多く教
えられた時代であったように思います。
バブル経済崩壊後、成熟社会を迎え社会環境が急激に変
化する中で、都市計画やまちづくりを取り巻く状況や課題も大
きく変化し、これに対応するための知識の再取得と体系的な
判断基準の再整理の必要性を感じていましたが、まちづくり
大学院は、都市計画やまちづくりに関するこれまでの経験と
最新の動向及びこれからの在り方について学び、考察するた
めの最高の機会を提供してくれる場であると感じています。
私の志望動機は、
大きく3 つである。
一つ目は緑化が飛躍的に進む方法がある都市計画の手法
を基礎から学ぶこと。
私は屋上や壁面の緑化を業務としてい
るが、
あるPJ で都市再生特区の仕組みを利用したことにより
通常の10 ∼ 100 倍くらい立派な緑をつくることができた。緑
化技術の研磨、
開発やコストダウンで
「その1円を削り出す」
努
力はもちろん大切だが、
もっと一気に豊かな緑をつくれる方法
があることを知り、
都市計画のことを基礎から学びたいと思っ
た。
二つ目は「環境」は草花だけを見るのではなく、広く地域か
ら考えることが重要と考えており、
それができる人材になりた
いと思ったこと。大学院で学ぶことで学問に裏打ちされた厚
みのあるストーリーが語れるようになりたいと考えている。
三つ目は普段の生活圏以外の方と知り合いになり繋がりを
作りたいと思ったこと。お陰様で向上心豊かな方々と建設的
な交流ができ、日々楽しく通えている。少しずつ前に進み、な
りたい自分になれるよう努力していきたい。
■西田拓泰─東日本旅客鉄道株式会社
① 学生時代に都市計画を学んだものの、鉄道会社に 10 年あまり身を置くうち
に、駅とその周辺を少し見ただけで、その街を
「知った気」
になって仕事を進める癖
が身体に染みついていた。
もう一度、都市・まち全体を俯瞰し、その中での駅とい
う場所を捉え直し、思考回路のリハビリをしたかった。
② 都市計画・まちづくりに
係る法制度と、それらが抱える課題、あるべき像について、一旦実務から離れて体
系的に学びたかった。
民間企業でまちづくりに携わる者として、時に「法制度の壁
を超える政策提言力」を持たなければ、真のプロジェクトリーダーになれないので
はないか、という問題意識があった。
③ 同じ志を持つ社外の方との交流の機会を
得ることが、今後の人生の財産になるのではないかと思った。
今改めて思うことは、
仕事や家庭との両立に日々頭を悩ませ、ハードワークにひぃひぃ言いながらも、こ
れらの志望動機全てが想像以上に充足されているということです。
■演習のようす
5
まちづくり大学院に入学して──2
■三木裕子 ─元・総合商社不動産開発室
現・コンサルティング会社
講義で扱われるまちづくりに関わるテーマは多岐にわたり、
当たり前ですがどれも簡単には答の出せないものばかり。だ
からこそ前向きに大胆に考え抜いていかねばならないと、まち
大生の使命を感じています。
小学生の子どもがいる「お母さん
学生」なので夜間の講義に出席するには会社勤めの主人の協
力が不可欠です。それでも曜日によって関心ある講義を履修
できず残念なのですが、代わりに昼間の学部授業で違った刺
激をうけています。
時間に追われる通学で、美しいキャンパス
内を巡ることも生協を利用することもほとんどできずもったい
ない気もしますが……。
また、多士済済の同期の存在はとても
大きく、議論は発見の連続です。
レポートの締切と仕事のヤマ
が重なって知力体力の限界に挑む苦しい時期が何度かありま
したが、励まし合って乗り越えました。
子育て期のブランクの
間にも時代はどんどん変化しました。
いままた始められるいま
の自分にできること、社会へ貢献できること。
必ず見つけたい
と思っています。
■小峰良介 ─新日鐵住金株式会社
希望していた通り、都市計画史や現代都市計画制度・まち
づくりなどの理論と実践の状況を広くそして深く学んでいる。
講義は東大院の教授、准教授陣や外部の学者、実務経験者
によって行われ、短時間ではあるが実に中身の濃い授業が熱
心に進められる。
学生からは自ら抱える質問が多く出され、他
の学生にとっても参考になっている。
講義後、国内外の情報源を利用すれば、貴重で、幅広いそ
して厚みのある知識が得られる。
また、情報収集・加工力を
駆使することにより、土曜日の必修科目である演習において
は、GIS や PPT を活用し、説得力のある成果を出すことがで
きる。
学習期間は最短で 2 年間、最長で 4 年間。
長期履修制
度がある。
未だ、最初の 4 カ月、冬学期が過ぎたところだが、2
年間で修士課程を終えるのは相当の覚悟と努力が必要である
と感じている。
私のように、業務の関係で平日には二日程度し
か受講できないものにとっては、4 年まで学習期間を延伸でき
る長期履修は実に都合がいい。
これからも、初志貫徹、同期生
と共に大いに学んでいこうと考えている。
■演習での発表風景
6
■チームワークで課題を解決
■高橋圭一 ─不動産投資家
まち大の講義は極めて実践的な内容であり、
他の社会人大
学院と比較しても
(実際、
私の場合、
社会人大学院は二校目に
なります)
、
豪華なゲスト講師陣にその特徴があると言えます。
第一線で活躍する先生方のお話を間近で拝聴できる環境は、
本当に贅沢なものだと思います。
そしてこのような恵まれた環
境を活かすため、学生たちは皆いつも名刺を携帯し、先生方
にお渡ししています。こうした光景は、社会人大学院ならでは
のものと言えます。
このような環境に触発され、
私自身、
以前に
も増して行動的になることができたと感じられます。
最も大き
な変化としては、
まち大のご縁で、
都市計画の分野に新たな職
を得ました。そのほか、大学内のイベントスペースで建築・都
市計画の展覧会を企画するなど、
現在の環境を活かした様々
な活動に関わっています。
言うまでもなく、
学生の本分は学業
にありますが、
単に知識を得るだけなら独学で足ります。
大学
で学ぶ意義はそれを超えたところにも様々あるはずであり、
ま
ち大にはそのための極めて恵まれた環境があります。
■古井(杉田)樹彦 ─独立行政法人国際協力機構
毎回密度の濃い授業、アカデミックとフィールドが融合する
質疑応答、ワークショップでの尽きない議論。工学系ならでは
の理系よりのアプローチではあるが、
まち大を通じて得られる
知識・経験は、
どれも期待以上。
日本の、
世界の都市が抱える
困難な課題を解決していくための、
リソースとネットワークがま
ち大にはある。
一方で何ともしがたいのが、
社会人学生ならではの難しさと
も言える時間との闘い。情報収集もレポート作成もプレゼン
準備も、どれも時間が足りない。また家族とも仕事とも厳しい
調整が必要となる。限られた時間、リソースを最適化しながら
課題解決を図ることは、まちづくりのプロセスにも等しいチャ
レンジであり、
この環境を支えてくれる家族、
同僚、
そして会社
には感謝の念に堪えません。
改めて都市が複雑な対象であることを認識するとともに、
成
熟社会の日本が抱える都市課題にも眩暈を覚えるほどである
が、
自分自身がテーマとする発展途上国の復興支援・人を中
心とするまちづくりに向けて、まち大という「場」を通じて得ら
れる成果を海外発信にもつなげられるよう、積極的に取り組
んでいきたい。
■笈田幹弘 ─株式会社 LIXIL
■細田 隆 ─埼玉県庁
仕事をしながら大学院に通う大変さについて、ある程度の
覚悟はしていたつもりでしたが、
予想以上に大変!というのが
正直な感想です。
自分の場合、
火曜日から土曜日までフルに受
講しようと取り組んだこともあり、仕事と大学とで毎日ヘロヘ
ロになりながら何とか通っている状況です。
そうやって何とか
通えているのも、
素晴らしい先生方や同級生のおかげかな、
と
思っています。まちづくり大学院の先生方は本当にすごい方
ばかりで、
超一流の講義をして下さっているのですが、
自分は
おそらくその半分も理解できないような状況で、
何やら申し訳
なく思うところもありますが、
都市計画やまちづくりというこれ
まで自分がほとんど接することのなかった世界を知ることで、
自分の視野が広がり、新しい考え方を身に付けることができ
ていると思います。また、同級生も多様な業界の知識や経験
が豊富なすごい方ばかりで大変刺激を受けています。
これか
らしっかりと研究し、修士論文が書けるのか、卒業できるの
か、
まだ不安もいっぱいありますが、
楽しみながら取り組んで
いきたいと思います。
1964年、
東京オリンピックが開催された年に石川県で生まれ、
1982年に上京した当時の僕は、
東京の人と車の多さに閉口して
いたけれど、
神宮外苑の国立競技場と、
絵画館前の銀杏並木だ
けはお気に入りだった。
通りに面するカフェで苦いコーヒーを飲みながら、
すっかり東
京人を気取っていたのは、
決して私だけじゃないはず。
「君の嫌い
な東京も、
秋は素敵なまち」
って言ったのは、
確か小田和正だっ
たっけ。
銀杏並木とくれば、
やはりジャズの名曲
「Autumn Leaves
(枯葉)
」
だ。
万人に愛されるこの曲はヨセフ・コスマ作のシャンソンで、
ジャ
ズマンの名演が多くある。
特に、
ジャズピアニスト、
ビル・エバンスの
1959年のアルバム
「PORTRAIT IN JAZZ」
での、
ピアノ、
ベース、
ドラムスの3者のスリリングな緊張感のあるインプロビゼイション
が、
その後のピアノトリオのフォーマットとなったことはあまりに有
名である。
まちづくりもジャズとよく似ている。
参加する個々のプレイヤー
の自由度を最大にしつつも全体としてはビジョンを共有し実現し
ていく……部分最適を図りつつも全体最適を図ることを目指す
というか……。
なんてことを考えている僕は、
また銀杏並木を歩いている。
で
も、
そこは神宮外苑ではなく、
本郷キャンパスなのだけれど。
■足立茂章 ─東京地下鉄株式会社
平日夜の講義と土曜日の演習、果たしてこなせるのかと不
安に思いながら入学しましたが、
始まってみると忙しさも忘れ、
あっという間に時間が過ぎていきました。それは、素晴らしい
講師陣による講義と演習に加え、素晴らしい同期に恵まれ、
夢中になってこの生活を楽しめているからだと思います。
社会
人として再び学べる喜びは何にも代えがたい経験だと思いま
す。受動的であった学生時代の学びとは異なり、社会人の経
験を生かした実社会の視点と思考は、
実践的な講義や演習を
通して新たな学びへと発展し、
仕事にも生かせると実感してい
ます。また、講義に出席するために、自然と仕事も効率的に行
うようになり、
仕事・勉強・プライベートにメリハリをつけるこ
とを意識し、自己管理という意味でも非常に良い勉強になっ
ています。
このような生活をできるのは、
家族や会社など周りの理解と
協力があって初めて成り立つものです。
このことに感謝しなが
ら学生生活を充実したものにしていきたいと思います。
■戸田利則 ─(株)片平エンジニアリング・インターナショナル
海外勤務が多い方も競ってまち大にチャレンジされるよう紹
介します。
まち大の授業は、
東日本大震災等を教訓とした復興
や防災まちづくり、少子高齢化対策、また都市発展と持続性
など国内の最新の事例や海外事例が紹介され、海外の都市
の課題を考える際に非常に役に立っています。私は海外の建
設系開発コンサルタントで、社会に出て20 年後、開発援助の
世界での立ち位置を求めて、
ロンドン大学
(Imperial Collage)
のDistant Learningで
「開発と環境」
を学び直しました。
さらに、現在取り組んでいる「交通とまちづくり」の政策具
体化と実践のため、まち大に入学し、最長の4年コースを選
び、学ぼうとしています。国内勤務時は、毎日授業に出席し、
海外出張中は東大ネットの授業ビデオや講義資料を利用しま
す。
東大ネットでは、
様々な論文や文献も読みます。
特に学友と
の交流を通じて、
意見や物の見方の違いを知ることは、
とても
貴重です。
今、
私が学生時代に影響を受けた故宇井純先生も
在籍された都市工学で学べる…、
夢のような思いです。
■平江良成 ─東京急行電鉄株式会社
まち大に入学するまでは、高いレベルについていけるか、心
配でした。
入学してみると、先生方の講義の進め方も早いです
し、予想通りレベルは高いものだったのですが、講義がとても
面白いので、大変ながらも積極的に講義を受けることができ
ています。
想定外だったのは、体力的に大変ということ。
体力
には自信があったので、仕事の後でも大丈夫であろうと高をく
くっていましたが、これが結構きつい。
仕事を 6 時前には終わ
らせて、
その後 3 時間勉強というのは、
思ったよりかなり辛い。
レポートも出ますし、土曜日の演習は中間発表もあり、班に
よっては、平日の講義の後に残って、演習内容の協議を行うこ
ともしばしばあって、かなり大変です。
けれども、普通では絶
対に話しがきけないような先生方の講義が聞けるなど、とても
充実した講義ばかりですし、演習やレポートなどで、苦労を分
かち合う仲間も得ることができます。
あとは自分の努力次第!
頑張っていきます!
■親睦会
7
大西隆東大名誉教授
就任記念シンポジウム開催される
2014年2月24日、東京大学武田ホール
にお いて、東 大 まちづくり大 学 院 の 初 代
コース長を務められた大西隆先生の東京大
学名誉教授就任記念シンポジウムが盛大に
開催されました。
瀬田史彦准教授の全体進行のもと、
大方潤一郎教授
(まちづくり大学院コース長)
の挨拶、城所哲夫准教授
の趣旨説明の後、大西隆先生、小林光先生
(慶応義塾
大学大学院教授)
、
山崎亮先生
(studio−L代表、
京都造
形芸術大学教授)
の3名からご講演を頂きました。
■(左から)大西 隆先生、小林 光先生、山崎 亮先生
■シンポジウムの様子
大西隆先生は
「まちづくりの新たな課題」
と題し、
人口
減少社会や被災地復興へのアプローチとして
“緩やかな
コンパクトシティ”
“減災思想の具体化”
をキーワードに、
持続可能な開発の世界的枠組みの重要性などをご講演
されました。
小林光先生は
「環境共生のまちづくり」
と題し、環境
性能を高める仕掛けの現状と課題を通して、
都市が自然
に溶け込むような環境まちづくり、
都市こそ省資源・省エ
ネの相乗効果があることなどをご講演されました。
山崎亮先生は
「まちづくりとコミュニティの力」
と題し、
延岡市のえきまちプロジェクトや観音寺市のまちなか再
生計画を通して、まちづくり・まち育ては、合意形成とと
もに
“主体形成”
が大切であることなどをユニークにご講
演されました。
その後、
城所哲夫先生の司会で、
パネルディスカッショ
ン
「まちづくりの展望」
が行われ、
“地方分権を背景にし
た新しい都市計画制度の方向”
や
“被災地復興とまちづ
くり”
などのテーマで会場と一体になった熱い議論が展
開されました。
■パネルディスカッションの様子
2014年 東大まちづくり大学院入試情報
2014年度の入学試験を右記
のように行います。募集要項
の取り寄 せ 方 法 など 詳しく
は、東大まちづくり大学院の
ホームページをご覧下さい。
募集要項・入学志望者案内配布開始日 4月1日
(火)
説 明 会 :4月14日
(月)
19:00∼ 本郷キャンパス工学部14号館141講義室
出 願 :5月13日
(火)
∼23日
(金)
入学試験 :6月28日
(土)
入 学 :10月1日
(水)
URL:http://www.due.t.u-tokyo.ac.jp/mps
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■発行:東京大学大学院工学系研究科都市工学専攻 都市持続再生学コース・同寄付講座 〒113-8656 東京都文京区本郷7-3-1 TEL. 03-5841-6221
■ [email protected] ■ http://www.due.t.u-tokyo.ac.jp/mps/
■編集人:松本 昭
協力:PRISM inc.
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