不動産 [ 賃貸 ] 事業のための マネジメント

Book Review
不動産 [ 賃貸 ] 事業のための
マネジメント・ハンドブック
不動産投資は、簡単である…。こと、アクイジョンについては。高値を
提示すれば、いくらでも取得できるのだから（笑）
。
買い場と思われる場面では、負けじ魂が仇となる。他社に負けまいと
入札で高値を付け、まだまだいけると猫も杓子も皆おしなべて、値上がり
期待に胸膨らませ、売り抜けられれば大喜び、だが、たいがい、高値掴
みして後で泣くのである。このようなありがちなプロセスを経験したプレー
ヤーの方もいらっしゃるのではないだろうか？恥を忍んで打ち明けるなら、
少なくとも私には、多少なりともこの類の苦い記憶がある。
しかし、よくよく考えてみると不動産事業は、短期間で転売を繰り返し、
利益を得る狩猟型のビジネスではなく、取得した不動産について地道なプ
ロパティマネジメント、バリューアップを行うことを通じて、稼いでいく、農
耕型のビジネスではないだろうか。
目先の利益にとらわれると、当たり前であるにもかかわらず重要なこと
をおろそかにしてしまい、あるいは、顕在化する可能性が高いリスクの存
在を忘れてしまい、思わぬトラブルに見舞われ損をこくのである。
編　著
発行所
発行年
定　価
トーマツ　不動産インダストリー
株式会社プログレス
2011 年 6 月
本体 2,800 円＋税
また、不動産投資を行うに当たっては、取得、保有、売却のいずれの
時期においても、会計や税務の知識は、不可欠である。不動産投資の収
支を考えるにあたり、重要な影響を与えるこれらの点については、現場に
いるときは、常識に思えるのだが、多少現場から離れるとすぐに忘れてし
まう。しかし、恥ずかしいので、｢どうだったっけ？｣ と、なかなか他人に
は聞きづらい。
本書の前半では、
「不動産賃貸事業の経営戦略」と題し、マーケットや
法制度といった不動産賃貸事業の外部環境の見方やテナントリーシング、
プロパティマネジメント等の不動産賃貸事業の経営管理についてのイロハ
から、実務のポイントに至るまで、非常にわかり易く解説している。これ
に加えて、グリーンビルディングやリスクマネジメント等の比較的新しい論
点についても要点がコンパクトにまとめられている。
そして、後半では、
「不動産賃貸事業の会計」と題し、棚卸資産、固定
資産の減損会計、資産除去債務、リースと言った必須の会計知識に加え、
「不動産賃貸事業の税務」と題し、取得税や登免税、固都税をはじめと
する、知っていないと恥ずかしい、でもたまに忘れてしまう知識がまとめ
られている。
本書の編者は、監査法人だが、執筆陣をみると不動産、会計、税務の
専門家が寄ってたかって書き上げた不動産賃貸事業のノウハウが詰まった
一冊であることは、明かだ。不動産賃貸事業に既に携わっている方は、も
ちろん、これから携わろうとする方にも、手許において気軽に参照される
ことをお勧めしたい。
橋谷 聡一
一般社団法人不動産証券化協会 広報部広報課長
明海大学不動産学部 非常勤講師
（ARES マスター　M0600221）
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