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水中爆発成形におけるアルミニウム板の変形速度測定と数値解析
水中爆発成形におけるアルミニウム板の変形速度測定と数値解析 ○ 濱田洋史,日向毅(熊本大学大学院),井山裕文(八代工業高等専門学校),伊東繁(熊本大学) 1. 12mm) 立てる. ( 図 2 に示す ) 板がピンにあたる はじめに 爆発成形法は,火薬類の爆発によって生じる高密 度な衝撃エネルギーを破壊エネルギーではなく,成 ことで,オシロスコープに電流が流れ,その時間差 によって変形速度を求めることができる. 形するためのエネルギー源として,金属板や管など □230 の試料に作用させて適当な塑性変形を与え所要の形 Explosive に成形する加工法である.そこで,爆発成形法を用 20 いて難加工材料に関する張出し成形を行い,成形品 30 の材料特性を解析する.ピンコンタクト法を用いて 1 Water 20 Al plate Air r メカニズムの解明を行い数値計算と比較してみた. 50 Die pin 今回の実験では加工材料に,アルミニウム 5052-O φ100 材を選定した.理由として現在,環境問題に対応す べく自動車の燃費向上のため,車体の軽量化が行わ PMMA □130 れており,鉄鋼材料に代わりアルミニウム合金を使 図1 実験概略図 図2 ピンコンタクト法の装置 用した自動車が増えつつある.しかし,アルミニウ ム合金は従来の鉄鋼材料より成形性に限界があり, 成形形状が制約される.そこで,我々は現在爆発成 形法によりアルミニウム合金の成形限界の向上を試 みている.これらの実施にあたり,高速塑性変形に おける素板の変形メカニズムを明らかにする必要が ある. 2. 4. オシロスコープに計測された波形を図 3a , b に アルミニウムの性質 5052-O 材 機械的特性 計測結果 n 値:0.28, r 値:0.74,耐力: 90(N/mm2) ,引張り強さ: 195(N/mm2) ,硬さ (HV) : 52 である.応力を受けると加工硬化し, 強度が増す.ひずみ速度が増加するにつれ,延性が 急激に増加することが報告されている.正に,高ひ 示す.それぞれ半径からの距離20mm,40mmであ る.これをもとにかかった時間を調べて変形速度を 計算した.方法として,それぞれの波形が出始める 地点の間の時間を求めて,それをピンの高さの差で ある 1mm で割って変形速度を求めた. ずみ速度変形形態をとる爆発成形法に,相応しい材 中心からの距離20mm 板厚 1mm ,縦横 230mm 四方である. 3. 7 6 5 4 3 2 1 0 -1-1 -2 中心からの距離40mm 板からの距離10mm 板からの距離11mm 板からの距離12mm 電圧(v) は大きい.実験に使用したアルミニウム板 電圧(V) 料である.軽量で,リサイクル性に優れ,利用価値 1 3 5 7 9 7 6 5 4 3 2 1 0 -1-1 -2 9 時間(μs) 実験方法 図 3a , b ピンコンタクト法によってアルミニウム板の変形 速度を計測する.図 1 に実験概略図を示す.衝撃波 は水中を伝播し,アルミニウム板を変形させる.従 来の実験では爆薬からの距離が30mmで SEP( 旭化 成ケミカルズ ( 株 ) 製の高性能爆薬,爆轟速度約 表4 19 板からの距離10mm 板からの距離11mm 板からの距離12mm 29 時間(μs) オシロスコープに計測された波形 所要時間と変形速度 r=20mm r=40mm Δt1(μs) 3.73 16.72 Δt2(μs) 3.51 18.12 v1(m/s) 268 60 v2(m/s) 285 55 7000m/s,密度1310kg/m3)10gの爆薬を用いたとき に成形限界であった. 1) その成形限界となるときの 板からの距離が10mmのピンに板があたってから 変形速度を測定する.半径から20mmと40mmの地 11mmのピンに当たるまでの時間をΔ t1 ,11mmの 点にピンを 3 本 ( 板からの距離10mm,11mm, ピンから12mmのピンまでをΔ t2 ,これに対応する 39 変形速度をv1 ,v2 として表 4 に示した.半径20mm 速度を示している.アルミニウム板中央部に作用す のときは変形速度が増加しており,逆に40mmのと る衝撃圧が大きく,およそ280m/sまで速度が急激に きは減少している.また中心に近い半径20mmの方 上昇し,その後,大きな圧力作用は起こらず,次第 が変形速度が速いのがわかる. に変形速度は減少する.また,速度上昇はアルミニ ウム板中央部から外周方向へと次第に起こり,その 5. ピーク値も中央部から外周部へと減少する. 数値計算 用いた有限差分法 2) により爆発成形法によるアルミ ニウム板の変形過程について数値シミュレーション を行った. 図 5 はアルミニウム板の変形過程を示している. Velocity(m/s) 次に,同様なモデルにおいてラグランジュ座標を 変形の開始から 300 μ s までは20μ s 毎に示してい る.図中の20μ s から40μ s において,水中衝撃波 350 300 250 200 150 100 50 0 r 0mm 10mm 20mm 30mm 40mm 50mm 0 50 100 図6 が最初に作用し始める,アルミニウム板中央部から 変形が生じる.その後,60μ s においては,水中衝 150 200 250 Time(µ s) 300 350 400 r=0 ,10,20,30,40,50mmにおける アルミニウム板の変形速度 撃波が型の肩部近傍に到達し,開口部両側付近の板 が若干下方に曲げ変形が生じていることがわかる. ここで先ほどの結果と照らし合わせてみると,中心 以後,この曲げ変形が中央方向に移動しているが, から半径20mmのときは268m/sから285m/sに増加して 同時にアルミニウム板中央部が大きく張り出し,最 おり数値計算の結果より若干高めであるが変形速度 終段階では全体が球面状になる. 400 μ s 時におけ のピーク付近であると推測できる.一方,40mmのと るアルミニウム板中央部の外周部表面か中央部底面 きは 60m/s から 55m/s に減少しており変形速度がピ までの変形量は,およそ43.8mmとなった. ークに達してその後減少しているところであると推 測できる. 6. おわりに 本研究では,水中爆発成形によるアルミニウ板 の変形速度測定を行い,また数値計算の結果と照ら し合わせることができた.今後はさらにメカニズム の解明及び,難加工材料のチタンやマグネシウムに 着手していきたい. 参考文献 1) 日向毅,井山裕文,伊東繁 水中衝撃波を利用 したアルミニウム合金の自由張り出し成形に関 する研究(第1報)−アルミニウム合金板の最 適成形法について− Science and Technology of Energetic Materials 第 66 巻 第 3 冊 別刷 2) Hirofumi Iyama , Takeshi Hinata , Shigeru Itoh NUMERICAL SIMULATION OF SHEET METAL FORMING USING UNDERWATER SHOCK WAVE 図5 アルミニウム板の変形過程 PVP-Vol.485-1,Emerging Technology in Fluids,Structures,and Fluids-Structure 図 6 は中心からの半径 r=0 ,10,20,30,40, 50mmにおける,アルミニウム板下面の z 方向の変形 Interactions-2004