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刈払機用丸鋸簡易目立台の考案

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刈払機用丸鋸簡易目立台の考案
刈払機用丸鋸簡易目立台の考案
主任専門技術員
槙
敏夫
要旨:造林地の下刈作業等に使用される丸鋸刃の目立ては高度な技術を必要とするが,これについて次
の 7 つの事項について検討し,自分で作製でき,しかも高度の技能を必要とせず容易に目立ての出来る
構造を有している「TM−A・B 型の丸鋸簡易目立台」を考案した。
(1) 円型の修正――①歯高線(円)の修正,②歯底線を揃える修正
(2) 歯 の 整 理――②ピッチの修正,②歯底の丸みの修正
(3) 鋸身の点検
(4) アサリ出し
(5) すくい面ナゲシのヤスリ掛け
(6) 歯背線のヤスリ掛け
(7) 歯光の押え
1
はじめに
造林地の下刈作業等に使用されている丸鋸の刃は,その切れ味の良否が作業能率の向上,疲労の軽
減,作業の安全などに直接影響を与える。
しかし,この丸鋸の刃の目立ては高度な技能を必要とすることから容易でなく,目立てを自己流で
実施して使いこなせない場合が多い。
そのため,簡単に目立てが実施でき,自分で製作できる簡易目立台を考案したので報告する。
2
刈払機用丸鋸目立台 TM−A 型の構造
林業用刈払機の丸鋸刃は,正直歯が主であり,これを対象に歯数 40 枚,60 枚,80 枚についての目
立てが出来るように設計されている。型式は A 型と B 型の二種類あり,A 型は直径 225mm の丸鋸,
B 型は直径 230mm の丸鋸の目立用に設計されている。
−1−
−2−
刈払機用丸鋸 TM−A 型目立台
−3−
3
歯型の名称
4
目立て順序
(1) 円型の修正
1)
歯高線(円)の修正
円型修正ゲージをスクイ角鋸挿入溝に挿入し鋸刃を鋸刃固定金具で仮固定する。このとき
ゲージと鋸刃との間隔を 2mm 位に調整して鋸刃を回転しながら一番短い歯を探し出す。こ
の短い歯先と歯先角ゲージの頂点とが同じ高さになるように調整してから仮固定した鋸刃
固定金具を固定する。次に平ヤスリを水平にして各歯先角ゲージに当たるまで削ると歯高が
一定となり真円になる。
2)
歯底線を揃える
鋸刃の固定方法は「歯高円の修正」に準ずる。歯高の標準はピッチの
2
3
∼ 程度を目安と
3
3
する。目標歯底を歯先角ゲージ頂点に合わせ,両刃スリ込みヤスリの刃先が 2∼3mm の丸味
のつくヤスリを使用し,歯先角ゲージ頂点にヤスリが当たるまで削る。
(2) 歯の整理
1)
ピッチの修正
円型の修正と同じ方法で新品丸鋸と調べようとする丸鋸刃を重ねて固定する。2 枚の丸鋸
刃のいずれかの歯のすくい面ナゲシ線を揃える。これを基本歯として丸鋸刃を回転しながら,
新品の丸鋸刃とのピッチの違いを調べる。歯先と歯先の距離が目で見て差異が無い程度であ
れば良しとする。1 ピッチを修正すれば,次々と修正を必要とし容易でない。
(注意)
歯高線および歯底線を修正した場合に,このピッチのことを考慮しながら,すくい
面ナゲシ,歯背線にヤスリ掛けを行うように心掛ける。
−4−
歯底の丸み
2)
歯底線を揃える場合に鋸刃を固定した取扱い方法によって両刃スリ込みヤスリの刃先で
直径 2∼3mm の丸みをつける。
(3) 鋸身の点検
目立台を横に倒し,鋸身検査面に鋸刃を置き,ぐるぐる廻しながら軽く指で押さえて見て,鋸
身にガタツキが無ければよい。
(注意) 鋸身にガタツキがある場合,鋸身の修正は容易でないので専門家に依頼するのがよい。
(4) アサリ出し
正面最上部位置に丸鋸刃を固定し,アサリ出し器を使ってすくい面,ナゲシの見える全部の歯
にアサリを付ける。終了したら鋸刃を裏返しすくい面,ナゲシの見える歯(先にアサリを付けてい
ない歯)にアサリ付けを行う。
(5) すくい面ナゲシのヤスリ掛け
丸鋸中央の穴に鋸刃固定金具のボルトを通し,スクイ角鋸挿入溝に丸鋸刃を入れるとともにボ
ルトをスクイ面ナゲシ(表面)固定溝に落とし込む。固定したところでスクイ面ナゲシ固定溝の肩
の線に沿ってヤスリを水平に掛けるとすくい面ナゲシは 15 度に仕上がるようになっている。
全部の歯がスリ終わったら歯を裏返し,反対側(裏スクイ面ナゲシ)を同じように仕上げる。
(6) 歯背線のヤスリ掛け
歯背線鋸挿入溝に鋸刃を挿し込み鋸刃固定金具を通し固定する。固定する場合の位置は正面側
と裏面側に目印してある歯背線固定位置に座金下部を合わせて固定する。
ヤスリ掛けは側面に歯数 80 枚,60 枚,40 枚,と目印を入れてあるので,それぞれの歯数の真
横で目印線に沿って水平にヤスリをかける。
表面の歯背線へのヤスリ掛けが終わると,丸鋸刃を裏返して表面と同じ方法でヤスリ掛けを行
う。
(7) 歯先の押え
目立て作業の中で一番高度な技能を必要とする。この良否によって切削抵抗を減らしたり,切
れ味を持続させる大切な作業である。
正面側に丸鋸を固定する。このとき歯高の
1
1
∼ 位の歯先が歯先角ゲージの上部に突き出るよ
2
3
うに固定する。
ヤスリは歯先角ゲージの左右・前後角に合わせ,平行になるように掛けると歯先逃げ角度およ
びすくい面角度がそれぞれ 15 度に仕上がるようになっている。
表面の加工が終了したら鋸刃を裏返し,反対ゲージを利用して仕上げる。
5
目立台の作り方
(1) 目立台の作り方
1)
作製に必要な資材
−5−
木材ひのきまたは広葉樹
型式 A 型 140mm×120mm 角の長さ 370mm の柱
幅 120mm×厚さ 20mm の長さ約 600mm の板
B 型 140mm×95mm 角の長さ約 370mm の柱
幅 95mm×厚さ約 20mm の長さ約 600mm の板
金具類,蝶ナット付ボルト 長さ約 160mm,直径 9mm…………………………1 本
座
金 外径 40mm,内径 10mm,厚さ 1.5mm……………………2 枚
鋸刃固定座金 外径 40mm,内径 10mm,厚さ 1.5mm……………………1 枚
凸部(24)
(10)
(2.0)
L 型 定 規 長辺 85mm,短辺 40mm,幅 22mm,厚さ 1.5mm………2 枚
(棚受金具で代用する)
丁双(ちょうつがい)……本体と板を釘付けの場合は不要
目立台上面の埋込み金具 長さ 100mm,幅 20mm,厚さ 2mm…………1 枚
(棚受金具で代用する)
上面の埋込み金具(棚受金具で代用)
L 型定規(棚受金具で代用)
−6−
丁双(固定金具)
丁双(固定金具)
(2) 目立台作製の順序
6
おわりに
丸鋸の刃の切れ味を確保し,維持するため比較的容易に手作業によって全部の歯を一定の角度に揃
えることができるが,今後は更に改善を図って目立技術の向上と作業の安全性に努める。
−7−
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