Comments
Description
Transcript
撮影条件とCTDI値について
+CT&学術コラム101205 11.3.28 4:21 PM ページ 25 (1,1) CT コラム 撮影条件とCTDI 値について GE ヘルスケア・ジャパン株式会社 CT 技術部 西出明彦 最近、アメリカのいくつかのメディアが CT による被曝の記事を なZ方向幅の X 線ビームが当たるようにしています。 取り上げたことにより CT による被曝に対して、関心が上がってき X 線管でX線を発生させていると、回転陽極に溜まった熱によ ているようです。今回は、X 線被曝情報である CTDI について、撮 り回転陽極を支えるZ方向の軸が Z 方向に膨張したり、その熱が 影条件と CTDI の変化という観点で書いてみたいと思います。 冷却し軸が収縮したりすることで X 線焦点位置が Z 方向移動しま X 線 CT で撮影条件を設定 す。また、ガントリ内の回転部が遠心力で回転中にたわみ、X 線 すると図 1 のように CTDI vol 焦点位置が Z 方向にずれたりもします。 表示、DLP 表示などの X 線 これらの X 線焦点移動にもかかわらず、X線ビームトラッキン 線量情報が出て来ます。こ グ制御は、スキャン中も常にX線検出器開口の最適な位置にX線 れらの表示は IEC の規格 ビームが照射されるように働いています。図 3 に示す Z 方向の+ (IEC60601-2-44)で義務付 側、−側の両側にあるX線コリメータが、常に Z 方向の+、−側 けられています。ご存知の に動きX線ビーム幅・位置を制御します。これがビームトラッキ 通り、この CTDI 表示は図 2 ング制御です。図 4 では青の 40mm 開口、赤の 20mm 開口、ピン クの 1.25mm 開口に応じて X 線コリメータが開いたり閉じたりす のような頭部用 16cm アク 図 1 : CTDI 表示 リルファントム、または腹 る様子がわかります。 部用 32cm アクリルファントムを用いて CT プローブで中心部 A、 X 線 CT の走査ガントリが回転中に多少たわんで、X 線管焦点位 周辺部 B、C、D、E の平均 X 線線量を求めて図 2 に示す CTDIw の加 置や X 線検出器位置が多少ずれても、このビームトラッキング制 重加算計算で求められています。撮影条件を変えた時に CTDI 値は 御を X 線データ収集中に各ビューまたは数ビューおきにリアルタ どのように変わってくるのでしょうか? イム制御することで、常に最適な X 線幅、位置で X 線ビームを所 定の X 線検出器位置に正確に照射できます。これにより被検体に 照射される被曝 X 線量も最低限に押えられます。また、このよう にスキャン中にも高速に精密にビームトラッキング制御を行える ような X 線コリメータ機構を用いています。 しかし、このビームトラッキング機能があっても、X 線開口幅 図 2 : CTDW 計算 を多少広めにせざるを得ません。その理由は X 線の半影です。X 線検出器開口に X 線ビームが照射される時は、X 線ビームの Z 方向 実際に撮影条件を設定した時に表示される CTDI 値に影響する撮 影条件は X 線管電圧、X 線管電流、X 線コリメータ幅(開口幅)、 影、橙色の部分が半影となります。 ビーム形成 X 線フィルタの大きさ(撮影視野の大きさ)、X 線焦点 ビームトラッキング機能では X 線焦点の半影の大きさは制御で の大きさ、ヘリカルスキャンのピッチ、コンベンショナルスキャ きません。図 4 の 4A、4B 列に示すように、X 線ビームの端の X 線 ン・シネスキャンの同一 Z 方向座標位置での回転数があります。 検出器列にはなるべく多くの全影と、わずかな半影を X 線検出器 反対に影響しない撮影条件としては、画像再構成関数、ノイズフ 開口に照射するのですが、ビームトラッキングの余裕幅分とこの ィルタ、画像再構成領域の大きさ、スライス厚などには影響され 半影の幅分を考慮し、X 線ビーム幅を最適な Z 方向幅よりも幅δ分 ません。スライス厚に影響されない理由としては、CTDI 値はスラ だけ大きめにせざるを得ません。上記のX線ビーム幅を 40mm 幅 イス厚 10mm に換算されているためです。 から 2.5mm 幅に狭めたら、CTDI 値が約 1.7 倍に高くなったという 例えば、120kV 100mA X 線開口幅 40mm、Small Body の撮影 のは、このδ分の X 線線量分が効いているためです。図 5 に CTDI 視野、X 線小焦点で撮影した場合の CTDI 値を 1.00 とした場合に、 値から推測される各開口幅での余裕幅を示します。ここでは開口 これに対して、120kV X 線開口幅 2.5mm、Small Body 40mm 幅の CTDI 値を 1.00 として、各開口幅の CTDI 値の比率で 撮影視野、X 線小焦点では CTDI 値は約 1.7 倍と高くなります。何 1.00 以上に増えている分をδとしています。δは約 1.5mm 強 故でしょうか? で+、−側の片側では約 0.8mm 程度です。X 線焦点の大きさが 100mA 図 3 に示すように、X線 CT のデータ収集系には、X 線管の下側、 つまり、X 線検出器側に Z 方向に X 線ビーム幅を調整する X 線コリ 25 の端に半影ができます。図 4 の赤い部分の X 線ビームの内側が本 1mm 程度であることを考えると、ビームトラッキングの余裕幅分 δが約 0.8mm 程度で半影の幅程度になることがわかります。 メータが、ビーム形成 X 線フィルタとともに存在します。このX しかし、上記のような正確なビームトラッキング制御を行って 線コリメータの役割は、X 線開口幅が狭くなっても、広くなって いる X 線 CT ではまだ良いのですが、世の中には多列 X 線 CT の中 も、常に照射すべき X 線検出器開口の Z 方向に幅に合わせた最適 にはビームトラッキング制御を行っていない X 線 CT もあります。 ASiR 特集号 December 2010 +CT&学術コラム101205 11.3.28 4:21 PM ページ 26 (1,1) もし X 線ビームトラッキングを行わない X 線 CT ならば、このδに は、ビームトラッキングの余裕分、この半影の幅分だけでなく、 熱による回転陽極軸の Z 方向に膨張・収縮による X 線焦点移動幅 分や、走査ガントリ内の回転部のたわみによる X 線焦点位置移動 幅分を考慮した余裕分が加わるため、1.7 倍程度では収まらず、も っと大きな値になり、つまり無駄な被曝が増える可能性がありま す。また、この時に X 線焦点が大きいほど半影の幅も大きくなり、 無駄な被曝量が大きくなります。 また、ビーム形成 X 線フィルタによる X 線線量 CTDI 値はどのよ うに変わるのでしょうか? 図 3 に示すビーム形成 X 線フィルタ は大、中、小と 3 種類、または腹部用、頭部用の大小 2 種類ぐらい 種類があります。大きなビーム形成 X 線フィルタは腹部用で中心 部の X 線透過経路の短い部分が大きく開いています。小さなビー ム形成 X 線フィルタは主に頭部または小児の頭部・腹部用で中心 部の X 線透過経路の短い部分が小さくなっています。小さなビー ム形成 X 線フィルタでは周辺部の X 線線量値が低くなり、CTDIw 値 も約 15 %程度小さくなります。被検体の大きさに応じて最適なビ ーム形成 X 線フィルタを選択することが被曝を押さえるのに大切 です。 このように X 線 CT では被曝が小さくなるように、ビームトラッ キング制御機能のある X 線コリメータやビーム形成 X 線フィルタ の切換という X 線データ収集系のハードウェアの設計で工夫を行 っております。撮影条件設定においてもこれらを考慮して使用し ていただけると、設計者冥利に尽きます。 GE today X 線管 陰極 回転陽極 回転陽極軸 ビーム形成 X 線フィルタ X 線コリメータ B側 A 側 X 線ビーム Z nB 1B nA 1A 32B 32A 多列 X 線検出器(64 列× 0.625mm) 図 3 : X 線ビームトラッキング制御機構 X 線焦点 X 線コリメータ X 線ビーム Z 4B 1B 1A 4A δ 多列 X 線検出器(64 列× 0.625mm) 図 4 :本影と半影 開口幅(mm) CTDI の倍率 δ:開口幅× (CTDI の倍率-1) (mm) 20.00 1.07 1.40 2.50 1.70 1.75 1.25 2.40 1.75 図 5 : CTDI 値から推測される各開口幅での余裕幅 26