Comments
Description
Transcript
三澤 真美恵 - 日本大学文理学部
平成27年度 日本大学文理学部付置研究所 研 究 課 および 報 研究概要 告 の の 結 果 概 要 研 究 の 考 察 ・ 反 省 研究実績報告書 所属・資格 中国語中国文化学科・教授 申請者氏名 三澤真美恵 題 戒厳時期台湾における「中華民国」国歌フィルムの分析 研究目的 研 究 所員個人研究費 1950 年代戒厳令下の台湾で展開されたのが、映画館における国歌斉唱「儀式」であった。本 研究では、こうした国歌斉唱「儀式」でどのような「映像内容」が使用されたのかを明らか にし、その内容を分析する。と同時に、この「国歌フィルム」が異なる経験をもつ台湾住民 (本省人・外省人)によってどのように受容されたかを調査する。本研究の目的は、国民党 政権主導の「中華民国」国民の形成と、台湾住民の脱植民地化が、どのような関係にあった かを明らかにすることにある。 1949 年末の国民党軍の中国から台湾への撤退、朝鮮戦争勃発による内戦と冷戦の結合という 状況下、国民党政権は台湾において「反共抗ソ総動員運動」を実施した。本研究によって、 国歌フィルムの映画館での上映プログラムは、この「反共抗ソ総動員運動」の一環として強 化実施されたことが明らかになった。その背景には、蒋介石が「礼記」から学んだ「国歌」 がもつ効果への期待、映画という視聴覚メディアがもつ大衆教化への期待があり、「反共抗ソ 総動員運動」会合では、蒋介石自身が積極的に映画利用・歌曲利用の指示を出していたこと もわかった。また、その映像内容には初期のものほど一定のパターンがあり、国旗、国土、 孫文、蒋介石、といった不変のナショナル・シンボルが登場し、同時に投映されたスライド による時事に即した政治スローガンと相補的な関係にあった。 国歌フィルム上映プログラムの確立過程からは、国民党政権の映画統制における大陸時期と 台湾時期を貫く連続性も浮かび上がった。ただし、台湾の映画館における国歌フィルム上映 プログラムが、住民にとってどのような意味をもったのかについては、まだ不明な部分が多 く残されている。日本による植民地統治を経験した旧来の住民(本省人)と日本による侵略 戦争を戦った新来の住民(外省人)との間では、「中華民国」の国民としての意識において大 きな違いが存在したと思われる。こうした異なる体験をもつ台湾住民にとっての、国歌フィ ルム上映プログラムの受容について考察することが残された今後の課題である。 ※この欄は,本報告書提出時点で判明している事項についてご記入ください。 研究発表 学会名 発表テーマ 年月日/場所 研究成果物 テーマ 誌名 巻・号 発行年月日 発行所・者 日本台湾学会 第 17 回学術大会第 13 分科会「「戦後」台湾における国民党政権の映像資 料の可能性―統治・宣伝・正統性」における発表:「1950 年代前半台湾の映画館における 「国歌斉唱」プログラムの確立」2015 年 5 月 23 日(土)/東北大学川内北キャンパス International workshop: Nation, Gender, and Genres: Literature and Film from Taiwan and Korea, 1930s ~1960s , “Sinicizing Taiwanese through Singing: Ritual Program of the ROC’s National Anthem Film,” August 7, 2015 /Run Run Shaw Tower, Room 730,Hong Kong University.