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身体活動・座位行動の評価 - 日本モビリティ・マネジメント会議(JCOMM)
第9回日本モビリティ・マネジメント会議 企画セッション:ММと健康(医工連携) (2014年7月26日:とかちプラザ) 身体活動・座位行動の評価 -モビリティ・マネジメント(MM)の効果検討に活かす- 早稲田大学スポーツ科学学術院 岡 浩一朗 本日の話題 【交通行動の健康影響における新しい視点】 「座り過ぎ」の健康問題 長時間の自動車運転がもたらす健康への悪影響 (不)健康行動へのゲートウェイとしての交通行動 自動車運転行動と他の(不)健康行動の関連 【MMの効果評価における新しい視点】 MMの身体活動増進・座位行動減少効果の精確な評価 活動量計(加速度計)の活用 MMの交通行動以外の(健康)行動への影響の評価 新しい身体活動評価尺度の紹介 交通行動の健康影響に関する新しい視点① 「座り過ぎ」の健康問題 -長時間の自動車運転がもたらす健康への悪影響- 成人の一日の覚醒時間における行動割合 中高強度身体活動 (5%) 低強度身体活動 (35-40%) 座位行動 (55-60%) 日常生活(覚醒時間)の2/3近くは座って生活している Owen et al. Exer Sport Sci Rev, 2010 世界20ヵ国における平日の総座位時間 Japan Saudi Arabia Taiwan Norway Lithuania Hong Kong Czech Republic Sweden Spain Canada Belgium Argentina U.S. New Zealand China Australia India Colombia Brazil Portugal (中央値:min/day) 0 50 100 150 200 250 日本人は最も長い Bauman et al. Am J Prev Med, 2011 300 350 400 450 日常生活場面ごとの座位行動 余暇時間 仕事時間 移動時間 自動車乗車時間と冠動脈疾患死亡の関連 -Aerobics Center Longitudinal Study (ACLS)- 2.5 年齢、推奨身体活動充足状況、喫煙状況、飲酒状況、BMI、高血圧、糖尿病、 脂質異常症、冠動脈疾患の家族歴を調整 ハザード比 2.0 1.50 1.5 1.23 1.09 1.0 0.5 1.00 <4 4-7 7-10 自動車乗車時間(時間/週) Warren et al. Med Sci Sports Exerc, 2010 >10 自動車運転と肥満の関連 Frank et al. J Phys Act Health, 2010 Jilcott et al. J Nutr Educ Behav, 2011 Frank et al. Am J Prev Med, 2004 Jacobson & King. Transp Res D Transp Environ, 2009 Behzad et al. Prev Med, 2012 Florez Pregonero et al. Prev Med, 2012 Goodman et al. Environ Health, 2012 Swanson & McCormack. J Phys Act Health, 2012 Nunez-Cordoba et al. Am J Prev Med, 2013 Yang & French. Environ Plan B Plan Des, 2013 8/10研究において、自動車運転の時間・距離が 肥満指標と関連あり McCormack & Virk. Prev Med, 2014 長時間のTV視聴がもたらす健康リスク 4時間/日のTV視聴 ● ● ● ● ● 冠動脈疾患リスク1 過体重・肥満2,3 糖尿病3 メタボリックシンドローム4,5 耐糖能異常6・心血管代謝疾患 バイオマーカー7 ● がん8,9 ● 総死亡・冠動脈疾患死亡10,11 ※身体活動とは独立した関連 1Jakes et al. Eur J Clin Nutr, 2003; 2Ching et al. Am J Public Health, 1996; 3Hu et al. JAMA, 2003; et al. Diabetologia, 2005; 5Bertrais et al. Obes Res, 2005; 6Dunstan et al. Diabetes Care, 2004; 7Healy et al. MSSE, 2008; 8Patel et al. Am J Epidemiol, 2006; 9Howard et al. Cancer Causes Control, 2008; 10Dunstan et al. Circulation, 2010; 11Matthews et al. Am J Clin Nutr, 2012 4Dunstan 座位行動と健康アウトカムの関連のまとめ 肥満 体重増加 糖尿病 がん 冠動脈疾患 死亡 (総死亡・心血管疾患死亡) 正の関連 BMI・性により媒介 関連なし 座り過ぎが健康に悪影響を与えていることは明らか Thorp et al. Am J Prev Med, 2011 筋収縮をほとんど伴わない座位行動 各動作ごとの脚部筋電図の様相 0.001 0.0008 0.0006 電位 0.0004 0.0002 0 -0.0002 立位 -0.0004 -0.0006 座位 歩行(4歩) -0.0008 -0.001 0 15 椅子からの立ち上がり 30 時間 (秒) Hamilton et al. Diabetes, 2007 立位 45 60 座り過ぎが健康リスクを高める機序 長時間の座位行動 (脚部)筋活動↓ リポ蛋白リパーゼ↓ GLUT4↓ 高血糖症↑ 高インスリン血症↑ 脂質異常症↑ 冠動脈疾患やがん 罹患、死亡リスク↑ Hamilton et al. Diabetes, 2007; Bey & Hamilton. J Physiology, 2003; Bauman et al. Curr Cardiovasc Eisk Rep, 2013 交通行動の健康影響に関する新しい視点② (不)健康行動へのゲートウェイとしての交通行動 -自動車運転行動と他の(不)健康行動の関連- 長時間の自動車運転と不健康行動との関連 -Social, Economic, and Environmental Factor Study- 野菜・果物摂取不足 過剰飲酒 喫煙習慣 1.8 年齢、性、婚姻状況、仕事状況、教育歴、自宅での自 動車保有数、居住地域、地域の社会経済状態を調整 1.73*** 1.6 オッズ比 1.4 1.42*** 1.36*** 1.2 1.04 1.05 1.04 1.0 1.00 1.00 1.00 0.8 0.93 0.96 61120 >120 0.96 0.6 <30 3160 61120 >120 <30 3160 自動車運転時間(分/日) Ding et al. PLoS One, 2014 <30 3160 61120 >120 長時間の自動車運転と不健康行動との関連 -Social, Economic, and Environmental Factor Study- 睡眠不足 長時間座位行動 身体活動不足 2.0 年齢、性、婚姻状況、仕事状況、教育歴、自宅での自 動車保有数、居住地域、地域の社会経済状態を調整 1.86*** 1.8 1.57*** オッズ比 1.6 1.4 1.41*** 1.28*** 1.2 0.99 1.10** 1.0 0.94 1.00 1.00 1.10* 0.88* 1.00 0.8 <30 3160 61120 >120 <30 3160 61120 >120 自動車運転時間(分/日) Ding et al. PLoS One, 2014 <30 3160 61120 >120 不健康行動へのゲートウェイとしての 長時間自動車運転 長時間自動車運転 喫煙習慣 睡眠不足 過剰飲酒 野菜・果物 摂取不足 身体活動不足 長時間座位行動 MMの効果評価における新しい視点① MMの身体活動増進・座位行動減少効果の 精確な評価 -活動量計(加速度計)の活用- 身体活動・座位行動評価のための加速度計 【腰部装着型】 【脚部装着型】 Lifecorder ActiGraph activePAL Active Style Pro 最近では、加速度計の開発が進み、 身体活動・座位行動の精確な評価が可能 加速度計評価による身体活動・座位行動データの例 アクティブカウチポテト 生活活動が多い者 座位中心生活者 中高強度活動が多い者 >1951カウント/分:中高強度身体活動 <100カウント/分: 座位行動 Owen et al. Exer Sport Sci Rev, 2010; Owen et al. Mayo Clin Proc, 2010 座位行動の様相が異なる人の例 座位時間 座位行動をあまり 中断しない人 非座位時間 座位行動を頻繁に 中断する人 加速度計評価による両者の総座位時間は同じ Owen et al., Exer Sport Sci Rev, 2010 MMの効果評価における新しい視点② MMの交通行動以外の(健康)行動への影響の評価 -新しい身体活動評価尺度の紹介- (不)健康行動の評価 ● 喫煙習慣:定期的にタバコを吸っているか? ● 過剰飲酒:週当たり14杯以上アルコール飲料を摂取しているか? ● 野菜・果物摂取不足:一日2種類以上の果物、5種類以上の野菜を摂 取しているか? ● 身体活動不足:週当たりの中高強度身体活動が150分未満か? ● 長時間座位行動:一日8時間以上座っているか? ● 睡眠不足:一日の睡眠時間が7時間未満か? Global Physical Activity Questionnaire(GPAQ)日本語版 まとめ 【交通行動の健康影響】 長時間の自動車運転は、死亡や肥満リスクを高めると ともに、他の不健康行動(喫煙習慣や睡眠不足等)の ゲートウェイとなっている 健康MM展開の際に「座位行動」に焦点を当てる 【MMの効果評価】 MMの身体活動増進・座位行動減少効果を精確に評価 するために… 加速度計の導入、交通行動以外の他の(不)健康行 動への影響も評価する