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千鳥ヶ淵環境再生における景観・利用の考え方(案)
資料5 千鳥ヶ淵環境再生における景観・利用の考え方(案) Ⅰ 景観 【基本的考え方】 ●象徴性と歴史性の継承を基本に景観を形成 ・皇居の森との連続性のある景観の形成を基本とする。 ・近世から近代・現代まで、各時代の歴史的遺構を継承し、顕在化に努める。 ・歴史的遺構に影響を与える植生がある場合は、生物多様性の保全に配慮しつつ歴 史的遺構の保存を優先する。 ●サクラ植栽の歴史を踏まえ、サクラの名所としてのすぐれた景観を保全 ・既存のソメイヨシノ植栽地では、同時期に一斉に開花する景観の継承に努める。 ●変化に富んだ景観を活かし、季節感のある景観を創出 ・皇居の森との連続性に留意しつつ、国民公園としての一般利用を推進する観点か ら、水と緑が一体となった多様な景観の創出を図る。 1.皇居の象徴性を継承する景観の形成 (1)特性・現況 ○皇居の森と連続する景観 ・千鳥ヶ淵周辺から東御苑や吹上御所方面へ樹林が連続。 ・北の丸公園外周植栽は皇居の緑との連続性を意図した植栽。 ・ただし、他の濠に比べ象徴性の側面は低い。 (2)課題と対応方針 ①周囲の都市化、首都高が景観に影響 ・背景となる森の景観との連続性に影響を与える恐れがある。 ・将 来 的 に も 、建 て 替 え に よ る 高 層 化 や 周 辺 の 既 存 高 木 の 伐 採 に よ り 、背 景 と な る 景観の変化が懸念される。 ◆対応方針 ○長期的対応が必要。 ・東京都や千代田区による景観施策などとの連携を進める。 1 ②実生樹木や外来植物を含む植生が皇居の森との連続性に影響する恐れ ・シ ュ ロ 等 の 皇 居 の 森 と の 連 続 性 に そ ぐ わ な い 実 生 樹 木 や 外 来 植 物 の 繁 茂 、が 見 ら れ、象徴的空間としての印象を阻害する恐れがある。 ・ 生 育 す る 植 物 の 一 部 に 園 芸 種 等 が 含 ま れ ( 今 後 も 外 来 種 の 侵 入 の 恐 れ も あ り )、 自然的景観に影響を与える恐れがある。 ◆対応方針 ○シュロ、アオキ、ヤツデ等実生由来の樹木やササ類、ツル植物、低木類の過繁 茂を抑制する植物管理を進める。 一 方 で 、皇 居 の 森 と の 連 続 性 を 生 態 系 的 に も 維 持 す る 観 点 で 、皇 居 周 辺 の 樹 林 、 草地、ツル植物等からなるマント群落等の一体的な保全にも配慮する。 ○堤塘の外来植物の管理や水生植物の再生については、自然的景観や象徴性を損 ねないよう留意する。 ○皇居の森の象徴性や歴史性にふさわしくない樹種については、植栽を控え、既 存木については樹林管理・整備の折に樹種の転換を図る。対象となる樹種につ いては検討する。 ③濠水の水質悪化が景観に影響 ・現状では、夏季の水質悪化が著しく景観を阻害している。 ◆対応方針 ○水質については、別途検討する方策により着実に水質改善対策を進める。 2.江戸城の歴史性を継承する景観の形成 (1)特性・現況 ○江戸城築造以降の歴史が積層された景観 ・濠自体が江戸城の歴史的遺構。 ・濠周辺に石垣や堤塘、門などの近世を継承する遺構が現存。 ・ 近 代 以 降 の 遺 構 も 存 在 ( 旧 近 衛 師 団 司 令 部 庁 舎 、 高 燈 篭 、 高 射 砲 台 跡 、 等 )。 (2)課題と対応方針 ○一部の樹木が歴史的遺構の保存や顕在化に影響 ・法肩部の樹木により、石垣や堤塘が崩壊する危険性がある。 ・ 既 存 木 の 高 木 化 や 植 生 の 繁 茂 に よ り 、 歴 史 的 遺 構 の 顕 在 化 に 支 障 を 及 ぼ す 恐れ が ある。 2 ◆対応方針 ○ 歴 史 的 遺 構 の 保 存 や 顕 在 化 、 眺 望 に 支 障 を 与 え て い る ( 恐 れ が あ る ) 樹 木 等に つ い て 、 他 の 機 能 か ら み て 積 極 的 に 保 存 を 図 る 必 要 性 が 低 い 場 合 は 伐 採 を 含 む 抑制 を進める。 ○ 空 積 み 石 垣 や 堤 塘 な ど の 歴 史 的 遺 構 に つ い て 、 修 復 や 当 初 の 様 式 の 復 元 が 必要 な も の が あ っ た 場 合 、 歴 史 的 遺 構 と 一 体 不 可 分 な 自 然 景 観 の 保 全 に 留 意 し 、 調 査や 工法の検討を行った上で事業を実施する。 ○ 歴 史 的 遺 構 の 保 護 、顕 在 化 に 大 き な 支 障 と な ら な い 場 合 、石 垣 、堤 塘 周 辺 の 植 栽 、 草 地 の 中 に は 、 生 物 の 生 息 環 境 を 提 供 し た り 、 身 近 な 緑 の 空 間 と し て 重 要 な 植栽 もあることを踏まえた管理を行う。 3.都心の中での貴重な水と緑の景観の形成 (1)特性・現況 ○都心にありながら自然とのふれあいが得られる貴重な空間 ・ ビ ル 群 等 の 人 工 的 な 景 観 が 緑 で 遮 蔽 さ れ 、 屈 曲 し た 地 形 に よ る 変 化 に 富 ん だ自 然 的な景観が得られる。 ・ 散 策 や ボ ー ト な ど 国 民 公 園 と し て の 利 用 に よ り 身 近 な 自 然 と の ふ れ あ い が 得ら れ る。 ・代官町通りは、都心には珍しい野趣に富んだ雰囲気が味わえる。 ○近・中・遠景のサクラが折り重なった特徴的な景観 ・ ソ メ イ ヨ シ ノ が 濠 周 囲 で 一 斉 に 開 花 し 、 水 面 と 一 体 と な っ た 変 化 に 富 む 景 観を 形 成している。 ・千鳥ヶ淵周辺のサクラは、近年、首都圏有数のサクラの名所として定着。 ・ 景 観 的 に は 、 ① 千 鳥 ヶ 淵 緑 道 と 濠 の 西 側 堤 塘 、 ② 代 官 町 通 り 沿 い 、 ③ 北 の 丸公 園 堤上から北の丸公園内、の3つに区分される。 (2)課題と対応方針 ○サクラ開花期以外の魅力が乏しい。 ・春季以外は、堤塘には季節を感じられる植物が少ない。 ○過密な植栽状況にあり多様な植栽は難しい。 ・千鳥ヶ淵周辺で新たな植栽地の確保は難しい。 ◆対応方針 ○ サ ク ラ 以 外 の 植 栽 (修 景 植 栽 )に つ い て 、 歴 史 性 や 象 徴 性 、 皇 居 と の 連 続 性 が 確保 できる植栽を検討する。 3 【代官町通り沿いの土手について】 ○野趣に富む現状を活かした植栽や管理を行う。 ・ 広 場 と 疎 林 か ら 成 る 野 趣 に 富 ん だ 雰 囲 気 を 継 承 し 、 皇 居 の 森 と の 連 続 性 が 感じ ら れ る 武 蔵 野 の 雑 木 林 や 路 傍 に 見 ら れ る 種 類 で 、 か つ 、 サ ク ラ 以 外 の 時 期 に 鑑 賞で きる植物の植栽を行う。 ・ な お 、 土 手 上 の 植 栽 は 、 土 手 の 保 全 や 道 路 の 安 全 確 保 に 留 意 す べ き で 有 り 、歴 史 的価値等で保護対象とする樹木以外は、大木とならないように管理を行う。 【サクラについて】 (1)千鳥ヶ淵周辺のサクラの位置づけ・特性 ※勉強会、検討会の中で、千鳥ヶ淵のサクラの位置づけについて議論が必要との 指摘あり、これに対応したもの。 ○ 緑 道 か ら 堤 塘 へ の 景 観 は 、道 が 屈 曲 し 、サ ク ラ が 近 景 、中 景 、遠 景 と 様 々 な 位 置 に 高 低 差 を も っ て 存 在 す る た め 、散 策 す る 人 か ら は 刻 々 と 移 り 変 わ る( シ ー ク エ ン ス 景 観 )サ ク ラ の 景 観 が 味 わ え る 。ま た 、堤 塘 上 の 背 後 の 緑 や 濠 の 水 面 が サ ク ラ の 背 景となり、花が映える景観となる。 こ の よ う な 特 性 は 、濠 の 地 形 、植 栽 か ら も た ら さ れ る も の で あ る が 、近 景 か ら 遠 景まで一斉にサクラの景観となるためには、ソメイヨシノの特性が重要。 以上のような特性を持ったサクラの植栽は少なくとも首都圏では類を見ない。 ○千鳥ヶ淵のサクラ植栽は歴史的に古いものではなく濠の史跡と直接関連するもの で は な い( 昭 和 30~ 40 年 代 )。し か し な が ら 、靖 国 神 社 の 植 栽 、英 国 大 使 館 前 の 植 栽 と そ れ に 続 く 内 堀 通 り の 植 栽 は 近 代 以 降 の サ ク ラ( 特 に 、ソ メ イ ヨ シ ノ )の 群 植 の原型であり、千鳥ヶ淵のサクラは結果的にこれを引き継ぐものとの指摘もある。 以 上 の こ と か ら 、現 在 の 千 鳥 ヶ 淵 の サ ク ラ の 植 栽 は 、江 戸 城 と の 直 接 の 関 係 は 低 く 、象 徴 性 や 歴 史 性 よ り 優 先 さ れ る べ き も の で は な い が 、サ ク ラ の 景 勝 地 と し て の 優れた特性等から積極的に継承すべき景観と考える。 (2)課題と対応方針 ①歴史性、象徴性との調整 ・ 史 跡 の 保 存 管 理 に お け る 植 栽 の 考 え 方 と し て 、 歴 史 的 に 関 連 深 い 植 栽 以 外 は基 本 的 に 排 除 の 方 向 。 し か し 、 江 戸 城 外 濠 な ど 、 都 市 の 中 で 重 層 的 な 機 能 を 持 つ 場所 に つ い て は 、 史 跡 の 保 存 管 理 に 支 障 の 少 な い 範 囲 で 認 め ら れ て い る 。 濠 周 囲 のサ クラについて現状の本数より増やさない範囲での管理を認める。 4 ②都心における緑、公園の中での位置づけ ・ サ ク ラ は 緑 、 公 園 の 構 成 要 素 で は あ る が 、 サ ク ラ の 開 花 期 以 外 は 鑑 賞 対 象 とは な り に く く 、 ま た 園 芸 種 で あ り 自 然 景 観 と し て の 評 価 も で き な い 。 皇 居 の 森 と の連 続 性 や サ ク ラ 以 外 の 時 期 に 鑑 賞 対 象 と な る 植 栽 場 所 も 必 要 で あ り 、 そ れ ら と の共 存 が 必 要 で あ る 。 こ の よ う な 考 え 方 の も と で サ ク ラ と 他 の 植 栽 の ゾ ー ニ ン グ を行 う。 ③サクラの老木化、一斉枯死リスクの懸念 ・ 緑 道 、 堤 塘 の サ ク ラ に つ い て は 以 前 よ り 樹 勢 の 衰 退 が 指 摘 さ れ 、 ナ ラ タ ケ の侵 入 も 確 認 さ れ て い る 。品 種 が ソ メ イ ヨ シ ノ で あ る た め 、植 栽 後 60 年 程 度 で 一 斉 に 寿 命がくるとの指摘もあった。 ・ こ の 点 に つ い て は 、 ソ メ イ ヨ シ ノ で あ っ て も 個 々 の 樹 木 の 樹 勢 管 理 が で き れば 寿 命は必ずしも当てはまらず、ナラタケの予防にもなるとの指摘がある。 ・ 現 状 の 堤 塘 の 植 栽 は 、 や や 過 密 な 状 態 に あ り 、 今 後 、 枯 損 な ど の 機 会 で 徐 々に 透 か し て い く 管 理 方 法 が 考 え ら れ る 。 樹 勢 が 維 持 で き れ ば サ ク ラ の 景 観 へ の 影 響は 少 な い( む し ろ 改 善 さ れ る )。積 極 的 に 残 し て い く 樹 木 に つ い て は 、樹 勢 の 観 点 か ら剪定等の管理を進める。後継樹木の植栽も必要に応じて実施する。 ④代官町通り、北の丸公園のサクラについて <代官町通り> ・代官町通り沿いの土手には現在数種のサクラが植栽されているが種類ごとの植 栽本数は少なく、区道にはヤマザクラやオオシマザクラを主体とするサクラの 街路樹植栽がある。代官町通り沿いのサクラに関しては、今後も現在の状況を 維持する。 <北の丸公園> ・北の丸公園内には、多品種のサクラの植栽がある。堤上にはソメイヨシノの植 栽があり、一部は過密な状況にある。 ・また、他の樹種が既に多数植栽されており、新たに樹木を植栽する余地はほと んどない。サクラについては、他の樹種と同様に、既存の樹木を主体に維持管 理に努め、状況に応じ後継木の植栽、品種の転換を行う。 ・現状でも植栽が過密で、生育不良な樹木も多いため、対応の方向としては、積 極的な除間伐の実施により、樹木間隔を確保し、生育状況の向上を図る。 5 Ⅱ 利用 (1)特性と現況 ○千鳥ヶ淵周辺は近世、近代を通じ、親しまれた風景地 ・近世より濠と地形が織りなす特異な風景地として親しまれてきた。 ・明治期の市電開通により靖国神社とともに行楽地として利用されるようにな った。 ○戦後の国民公園化により、皇居外苑濠では唯一、自然とふれあえるレクリエー ションの場 ・国民公園として一般に開放され、ボート場や北の丸公園等の整備・開園によ り、都市住民のレクリエーションの場となった。 ・サ ク ラ の 観 桜 期 以 外 は 、散 策 利 用 や 春 ~ 秋 の ボ ー ト 利 用 が 中 心 と な っ て い る 。 その他、北の丸公園や代官町通り沿いの土手上では、近隣の小学校や幼稚園 等の遠足、中高年の写生利用などが見られる。 ○都内有数の花見の名所・花見の時期には緑道に利用が集中し、サクラの開花期 に は 50~ 100 万 人 が 利 用 (2)課題と対応方針 ○サクラの時期や緑道に集中する利用の分散が必要 ・緑 道 か ら 半 蔵 門 駅 や 代 官 町 通 り 方 面 へ の 案 内 が 乏 し い な ど 、利 用 に 関 す る 案 内 誘 導情報の充実が必要。 ○ サ ク ラ の 時 期 以 外 の 認 知 度 の 低 さ 、 史 跡 や 景 観 、 自 然 に 関 す る 情 報 や 案 内 誘導 の 少なさの改善が必要 ・豊 富 な 歴 史 的 資 源 や 自 然 資 源 を 有 し て い る が 、そ れ ら に 関 わ る 情 報 が 乏 し く 、情 報拠点や情報提供のしくみの検討が必要。 ・利 用 施 設 や 関 係 機 関 ご と に パ ン フ レ ッ ト や マ ッ プ 等 が 作 成 、配 布 さ れ る な ど 、個 別に情報提供が行われ、情報の統一がされておらず、情報の一元化が必要。 ・サ ク ラ の 開 花 期 以 外 の 北 の 丸 公 園 や 千 鳥 ヶ 淵 周 辺 の 認 知 度 が 低 く 、近 隣 か ら の 散 策 利 用 が 中 心 と な っ て い る 。国 民 公 園 と し て 年 間 を 通 じ た 認 知 度 の 向 上 に 努 め る 必要。 ◆対応方針 優れた自然環境や積層された歴史に触れることのできる貴重な空間であること を多くの人に知ってもらい、興味に沿った利用を四季折々にできるような情報の 収集、提供から歩道の整備、ソフト、人材の充実、情報拠点の充実に至る総合的 な対応を、実現に向け、関係者との連携協力のもとで検討を進める。 6 【具体的な対応案】 ○自然資源や歴史的資源に関する調査・資料の収集、アーカイブ化 ○ 自 然 資 源 や 歴 史 的 資 源 の 資 産 台 帳 の 作 成( イ ン ベ ン ト リ ー 化 )、資 源 情 報 の マ ッ プ化 ○周回歩道(周回ルート)の設定と再整備 ・自然資源や歴史的資源の適切な保存、及び資源とのふれあいや体験学習がで きる展示解説の工夫 ・代官町通り沿い土手上の再整備(野趣に富んだ景観を活かした植栽やアプロ ーチ整備等) ・北の丸公園の既存植栽の活用と充実による、千鳥ヶ淵周辺で見られる動植物 やサクラの品種等が学習できる見本園的な整備 ・北の丸公園内の既存施設の利活用による情報発信拠点の設定と情報提供の充 実 ・資源解説や案内誘導のための統一的デザインによる総合案内及びサインの整 備 ○総合的な利用、環境教育プログラムの作成 ○既存のガイド団体等との連携によるガイドツアーの充実・ボランティアガイド 等人材の育成 ・資源マップ等の資料やプログラムの提供 ・ガイド研修等の実施 ○利用資源や利用の基盤となる水質の改善、自然の再生、歴史的遺構の保存・顕 在化、景観の整備 7