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落語から学んだこと

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落語から学んだこと
平成 28 年度新潟県少年の主張大会~わたしの主張~十日町・中魚沼地区大会
【最優秀賞】
落語から学んだこと
新潟県立津南中等教育学校一年
小林
大悟
みなさんは、落語というとどんなイメージをもちますか。古くさい、年寄りくさい、難しそう。
僕も、そう思っていた一人でした。そんな僕は、偶然手に取ったマンガ本との出会いをきっかけに、
落語の魅力にとりつかれ、落語が大好きになりました。そこには、落語に人生をかけている登場人
物たちが生き生きと描かれていました。この本との出会いをきっかけに、僕は次々と落語の本を読
み、CDやDVDでも落語の視聴を繰り返しました。落語の世界を知れば知るほど、その世界の奥
深さに圧倒されます。
舞台はたった一枚の座布団の上。小道具は扇子と手ぬぐいのみ。扇子は箸やキセルや音を出す道
具になり、手ぬぐいは財布や手紙やひもに化けます。一人で上手下手を向きながら、役の上下関係
を演じ分け、手つき一つで頑固親父にも女性にも幽霊にもなれるのです。
「おまえの所はいいどんぶりを使っているね。ものは器で食べさせるというけれど、器がよけれ
ば多少中身はまずくっても……おっ、うまい。いいだしをつかっているねえ。そばも細くていいね
え。江戸前のそばはこうでなくっちゃいけない。ああ、うまかった。幾らだい。」
これは「時そば」という噺です。想像力をかきたてる語りとしぐさ。聴く人は、みるみるその世
界に引き込まれていきます。そして、落語の数ある魅力の中で、僕が最大の魅力だと感じるのは、
「人間のどうしようもなさや情けなさを、明るくみんなで笑ってしまおう!」という考え方です。
登場するキャラクターたちは、長所もありますが、皆どこかしら短所があります。その短所が愛さ
れる要素となって生きてくるのです。
「与太郎」は愛嬌があるけど、間違いばかりでどうしようもない男です。「ご隠居」は物知りな
お年寄りだけど、知ったかぶりがハプニングを生んでしまいます。「若旦那」はおおらかだけど遊
びほうけてばかりで、真面目でケチな「大旦那」にいつも怒られてしまいます。「熊さん」「八つ
ぁん」は、威勢のいい江戸っ子だけど、肝心なところが抜けています。
落語と出会う前の僕は、とてもネガティブな人間でした。些細なことでも、失敗するととても落
ち込んでしまう。嫌なことがあるとうんざりしてしまい、前向きな気持ちになることはなかなかで
きません。だから人の目を気にして、失敗を恐れて、どんどん小さくなっていました。
今、僕は物事を前向きに考えることができるようになりました。自分の短所や失敗も「そんなこ
ともある」と受け入れて、気持ちを切り替えて前に進もうと思えます。
以前、格好もまねてみたくて、家で父の着物を着せてもらったことがありました。着物を着ると、
不思議と背筋が伸びます。気持ちが引き締まります。その反面、布に包まれているという安心感も
ありました。着物もまた、日本を代表する伝統文化の一つです。
現代は「ストレス社会」とも言われます。大人、子どもにかかわらず、多くの人が何かしらのス
トレスを感じながら生活しています。新しいものが次々と登場し、目まぐるしく状況が変化する現
代。しかし、時代が変わり、環境が変わっても、長い間大切に守られ、受け継がれてきた伝統文化
が、この日本にはあります。歌舞伎、能、落語、俳句や短歌等の芸能や、衣食住に関わる文化。そ
こには、いつの時代も人々が求めた心豊かに生きるヒントや知恵が隠されています。古くさいと思
われる中に、僕たち若い世代が知るべき「日本人の心」があると思うのです。僕は誇りをもって、
これからもっともっと、伝統文化に触れていきたいです。
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