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ご参考資料 2015年 12月17日 Vol. 9 “欧州クレジット市場の最前線” 欧州クレジット・レター コラム:新資本規制の欧州社債市場への影響 トルコで開かれたG20首脳会合で金融安定理事会(FSB)が自己資本を手厚くし、経営危機に陥った金融機関を 税金を投入しないで破綻処理が行える仕組み(総損失吸収力(TLAC))に最終合意しました。今後詳細をつめる 必要があるものの、TLACの欧州社債市場への影響を概観します。 G20:「大き過ぎてつぶせない(TBTF)」問題 の解決に向けた新資本規制で最終合意 トルコ南部アンタルヤで開かれていた20ヵ国・地域(G20) 首脳会合(金融・世界経済に関する首脳会合)は2015年11 月16日閉幕しました。G20では金融安定理事会(FSB)が 金融機関の自己資本を手厚くし、経営危機に陥っても税 金を投入しないで破綻処理が行える仕組みとして2015年 11月9日付で公表したグローバルなシステム上重要な銀 行(G-SIBs、図表1参照)の総損失吸収力(TLAC)に関す る最終報告の規制内容に最終合意しました。最終報告の 内容はFSBが1年前の2014年11月に公表したTLACに関 する文書(市中協議文書)の内容を概ね踏襲する一方、T LACの最低要求水準等が具体的に示されました(TLAC の概要については欧州クレジット・レター2015年9月8日号 を参照)。 TLAC:最終報告における、G-SIBsへの追 加規制の主なポイント FSBが11月9日付で公表、G20で最終合意されたTLAC の内容で主なポイントは以下の通りです。 1つ目はTLACの最低要求水準がG-SIBsはリスク加重 資産(RWA)に対し2019年1月から16%、2022年1月から 18%となりました。1年前の市中協議文書の16~20%とさ れていましたが、時期、比率共に明示されています。 なお、対象となるG-SIBsのリスト2015年版(図表1参照) を見ると、スペインのBBVAはG-SIBsから外れた一方、 中国は3行から4行に増えています。ただし中国は本社 が新興国にあるとされた場合、TLACの適用は2025年 からと遅れての適用が見込まれます。 2つ目はG-SIBs破綻処理時の資本再構築について事 前の払い込みがある(例えば預金保険制度)場合は最 低水準16%に対しては2.5%、18%に対しては3.5%、TLAC への算入が認められています。日本の当局などが求 めていた処置でもあり、TLACの対象となる日本の3メ ガにとって朗報とも見られます。 欧州社債市場への適用ポイント:最終報告 で注目すべき点 次に、TLACに関する最終報告(タームシート)から欧州社 債市場に影響を及ぼすと思われる点を取り上げます。 図表1:G-SIBs一覧とサーチャージ(追加自己資本) 銀行名 HSBC JP Morgan Chase Barclays BNP Paribas Citigroup Deutsche Bank Bank of America Credit Suisse Goldman Sachs 三菱UFJフィナンシャルFG Morgan Stanley 中国農業銀行 中国銀行 Bank of New York Mellon 中国建設銀行 Groupe BPCE Groupe Crédit Agricole 中国工商銀行 ING Bank みずほFG Nordea Royal Bank of Scotland Santander Société Générale Standard Chartered State Street 三井住友FG UBS Unicredit Group Wells Fargo BBVA 国名 2014年 2015年 英国 米国 英国 フランス 米国 ドイツ 米国 スイス 米国 日本 米国 中国 中国 米国 中国 フランス フランス 中国 オランダ 日本 スウェ ーデン 英国 スペイン フランス 英国 米国 日本 スイス イタリア 米国 スペイン 2.5 2.5 2 2 2 2 1.5 1.5 1.5 1.5 1.5 1 1 1 N/A 1 1 1 1 1 1 1.5 1 1 1 1 1 1 1 1 1 記 2.5 2.5 2 2 2 2 1.5 1.5 1.5 1.5 1.5 1 1 1 1 新規 1 1 1 1 1 1 1 減少 1 1 1 1 1 1 1 1 N/A 除外 記載された銘柄はあくまでも参考として紹介したものであり、その銘柄・企 業の売買を推奨するものではありません。 ※サーチャージ:世界の大手銀行を5つの指標で点数化、一定以上の点数と なった銀行をG-SIBsに選定し、点数に応じてバーゼルⅢにおける自己資本 の水準に自己資本の積み上げを求めること ※銀行名はFSBの表記、ただし日本と中国は漢字表記。FGはフィナンシャ ル・グループ 出所:FSB資料を参考にピクテ投信投資顧問作成 ピクテ投信投資顧問株式会社 2ページ目の「当資料をご利用にあたっての注意事項等」を必ずお読みください。 1 2 ご参考資料 “欧州クレジット市場の最前線” 欧州クレジット・レター 続き)欧州社債市場への適用ポイント:最 終報告で注目すべき点 ①親会社発行以外のTier1、Tier2のTLAC算入 詳細は不確かな部分もありますが、親会社(破綻処理の 対象)以外が発行した既存のTier1、Tier2はTLAC算入要 件を満たしていても、算入できるのは2021年末までと市 場で解釈されている模様です。1年前の市中協議文書で は見られなかった項目と理解しています。これにより想定 される対応は、親会社以外、例えば子会社が発行した社 債で2021年末までにコール(早期償還)等がある場合、 コールを行使して親会社(持ち株会社)の発行にスイッチ する動きなどが想定されます。 ②ドイツの無担保優先債務に関する法案 ドイツでは、新たに法律を制定して、銀行が発行する優先 債の返済順位を預金やデリバティブ負債より低くすること で、TLAC算入を目指す動きが見られます。特定の無担 保優先債務をマネーマーケット商品など他の優先債務よ りも返済順位を低くすることを可能とするものです。最終 報告でもドイツの提案は明確に否定されていないとおも われます。したがって、ドイツ(またはこの方式を採用する ほかの国)で、仮に破綻認定された銀行では無担保シニ ア債の弁済順位が他の優先債務より低くなるケースが想 定されます。 ただし、このドイツの提案が広がるか疑問もあります。確 かに、シニア無担保債権などをTLAC算入できれば、資産 に対する自己資本の最低比率水準をクリアしやすくなる ことは期待されます。一方で投資家は、シニア無担保債 券にプレミアムを求めると思われます。他国では反対の 立場を示す銀行も見られます。例えばオランダのラボバ ンク・グループは投資家向け資料でドイツの提案に同意 せず、高い資本バッファーを積み上げ無担保シニア債を 保護する方法を選択する意向を述べています。 金融機関破綻処理:欧州社債市場で今後、 話題となりそうなトピック 公的資金によらない破綻処理プロセスには、まだ今後の 検討課題も多々ある中、最後に欧州社債市場で今後、話 題となる可能性のあるトピックとして、シングル・ポイント・ オブ・エントリー戦略(SPE)とマルチプル・ポイント・オブ・ エントリー戦略(MPE)について述べます(図表2参照)。 SPEとは、子会社の銀行や現地法人で発生した損失を (何らかの方法で)持ち株会社で破綻処理を行う仕組みで す。通常、金融グループは子会社の銀行レベルで預金や デリバティブ取引を行っています(持ち株会社は行ってい ない前提)。そこで、持ち株会社で破綻処理が行われ、持 ち株会社発行のシニア(社債)が破綻処理(損失吸収)に 使用されても、子会社で取引される預金やデリバティブへ の影響が避けられるという考え方です。これは持ち株会 図表2:SPE(Single Point of Entry)とMPE(Multi Point Of Entry)のイメージ図、持ち株会社の破綻処理例 SPE 破綻処理当局が 一本化でき簡潔 A国当局 破綻処理の範囲 A国 持株会社 B国 銀行(子会社) 現地法人 ※SPE:破綻金融機関グループの持ち株会社の母国当局(A国当局)が、グ ループ全体を一体として(B国現地法人も含め)破綻処理を実施 MPE 当局同士連携が 必要な分、複雑 A国当局 破綻処理①の範囲 A国 持株会社 B国 銀行(子会社) 現地法人 B国当局 破綻処理 ②の範囲 ※MPE:破綻金融機関グループに対して、関係する各国当局が自国内の拠 点に対し破綻処理を実施(B国現地法人はB国当局が)破綻処理を実施 出所:金融庁の資料などを参考にピクテ投信投資顧問作成 社の発行したシニア債が形の上では子会社の預金など に劣後する構造となるため、TLACでは持ち株会社のシニ ア債も算入できるとされています。これは、現地法人の場 合もスムースに適用されることが期待され、米国などでは 主流の考え方です。 一方で、現地法人の資本を現地で調達する形態で運営さ れる場合、破綻処理はそれぞれの国の当局で行われる MPEが選ばれる可能性があります。欧州では米国ほど明 確な指針は見られず、各銀行の判断に委ねられている状 況です。ただし、欧州のG-SIBsも多くはSPEを採用する模 様ですが、MPEを主体に破綻処理計画を策定する銀行も あると見られます。 SPEかMPEかは、白か黒かという問題ではなく、各巨大銀 行(グループ)がビジネスの形態に合う最適解を求めるべ き問題とみられ、欧州の今後の展開に注目しています。 当資料をご利用にあたっての注意事項等 ●当資料はピクテ投信投資顧問株式会社が作成した資料であり、特定の商品の勧誘や売買の推奨等を目的 としたものではなく、また特定の銘柄および市場の推奨やその価格動向を示唆するものでもありません。●運用による損益は、すべて投資者の皆さまに帰 属します。●当資料に記載された過去の実績は、将来の成果等を示唆あるいは保証するものではありません。●当資料は信頼できると考えられる情報に 基づき作成されていますが、その正確性、完全性、使用目的への適合性を保証するものではありません。●当資料中に示された情報等は、作成日現在 のものであり、事前の連絡なしに変更されることがあります。●投資信託は預金等ではなく元本および利回りの保証はありません。●投資信託は、預金や 保険契約と異なり、預金保険機構・保険契約者保護機構の対象ではありません。●登録金融機関でご購入いただいた投資信託は、投資者保護基金の 対象とはなりません。●当資料に掲載されているいかなる情報も、法務、会計、税務、経営、投資その他に係る助言を構成するものではありません。 ピクテ投信投資顧問株式会社 2 2