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高温浸炭した低合金 2相鋼の機械的性質

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高温浸炭した低合金 2相鋼の機械的性質
Akita University
素材物 性学雑 誌
総
第1
2巻
第1
/
2
号
8
8-9
4(
1
9
99)
説
高温浸炭 した低合金 2相鋼 の機械 的性質
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6日受付
*秋 田大学工学 資源学 部材料工学科
〒01
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02 秋 田市手形学 園町 1
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***秋 田大学鉱 山学部 物質工学科
〒01
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****秋 田大学名 誉教授
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02 秋 田市手 形学 園町 1
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2巻
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2
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高温浸炭 した低合金 2相鋼 の機械的性質
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とが予想 され る。 また,実際 の浸炭材 の機械的性質 は
1
. 緒言
浸炭層の強度 に依存す ることか ら,上述 の非浸炭部 の
著者 らは前報 L
'
1
、く
2
‥において,低合金 2相鋼を浸炭 し,
浸炭後通常行われている 1次焼入れを必要 としない浸
組織か ら予想 され る温度か ら焼入れた浸炭材 の機械的
性質 は不明である。
炭用鋼 と しての適用性 につ いて,主 として組織観察 に
そ こで本研究で は,浸炭層 と非浸炭部双方 の強化 な
よって検討 して きた。 その結 果 ,Siを添 加 す る こと
らびに結晶粒微細化 をはか るために,炭化物形成元素
によ って高温で も安定 な (
α+γ)2相組織 が得 られ
である Nb,Tiを添加 した 2相鋼 を高温浸炭後 1次焼
ることが分か り, 2相域 で浸炭す ることによって非浸
入れを省略 し,種 々の温度か ら 2次焼入れを施 して組
炭部 の結晶粒 はきわめて微細で,結晶粒微細化 のた め
織観寮,硬 さ測定,引張試験,疲労試験,摩耗試 験 を
の 1次焼入れを省略で き,処理時間の短縮が可能 とな
行 い,高温浸炭用鋼 と しての適用性 につ いて機械的性
ることを報告 した。
質 の面 か ら検討 を加 え,同時 に最適焼入れ温度 を決定
しか し,Fi
g.1こ
2
)に示す ように浸炭温度 と 2次焼 入
れ温度が異 なるため浸炭温度で 2相組織 となる組成 の
試料が,必ず しも焼入 れ温度で 2相組織 とな るとは限
らない。例 えば,浸炭温度 を1
3
2
3K とす ると,最適 な
焼入れ温度 な らびに組成 は斜線で示 した範囲 とな るこ
した。
2
. 実験方 法
2
.1 実験試料
2相鋼 を浸炭 した場合,非浸炭部 の結 晶粒 成長 の抑
.
3
-0
.
7で あ る
制 に最適 なオーステナイ ト体積分率 は0
ことが前報 〔
1
)によ って明 らか にされたが,Fi
g.1 〔
2
)に
示す よ うに浸炭 温 度 を 1
3
2
3K と した場合 , この分率
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の 2相組織 が最 も広 い温度範囲で得 られ る炭素量 は約
0
.
0
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% とな ることか ら, 本 実験 で は0
.0
5mas
s
% C2
.
Omas
s% Si
0
.
3mas
s
% Mn0
,
3mas
s
% Crを
基本組成 と し, これに結晶粒微細化 の た め に Nb,Ti
をそれぞれ0
.
0
5mas
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% 添加 した試料 の 3種 類 を供試
0
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材 と した。その化学組成を Ta
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試料 を大気 中で1
0kg高周波溶解 し,約 1
1
2
3K で熱 間
鍛造後,冷間圧延 と1
2
2
3K での焼 なま しを繰 り返 し,
最後 に1
2
7
3K で焼 な ま しを施 した後 に旋削 によ り組
織観察用試料 な らびに材料試験片 を作製 し,以下 の実
験 に供 した。
Tabl
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Akita University
9
0
鎌田真一 ・加藤和夫 ・渡部 克 ・橋浦寅吉 ・永田明彦
2
.2 浸炭および熱処理
浸炭 は,1
3
2
3K で1
0
.8ks固体浸炭を行 った。浸炭
処理後,焼入れは1
1
2
3-1
2
7
3K で1
.
8ks真空加熱後水
冷 し,その後4
2
3K で焼 もどしを行 い,組織観察 な ら
びに材料試験を行 った。なお,浸炭処理状態の組織 お
よび機械的性質 について検討す るために,浸炭後直接
水冷 した試料 も作製 した。 これ らの実験方法の詳細 は
前報 (2'において述べてある。
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2
.3 組織観察な らびに硬 さ測定
浸炭 ・熱処理後,光学顕微鏡 によって組織観察を行
は,1
0
5
3K か ら水冷後4
2
3K で焼 もど しを施 した 1
い,浸炭層における旧オーステナイ ト結晶粒径の測定
mas
s% C炭素工具鋼 (
SK3
)を使用 した。また,相
および抽出 レプ リカの透過電 子顕微鏡観察 による炭化
手材 と同一の炭素工具鋼 (
SK3
)を焼入れ ・焼 もど し
物 の確認 を行 った。
さらに,浸炭層表面近傍 の残留 オーステナイ ト量 の
測定 も行 った。その方法 は Ⅹ 繰 回折法 によ って, マ
ルテ ンサイ ト,オーステナイ トそれぞれの積分強度 を
測定 し,Mi
l
l
e
rの方法 ㌧3) によって求 めた。
硬 さ分布の測定 は,浸炭 ・熱処理 した試料の切断面
について微小硬 さ計を用 いて行 った。
比較資料を得た。使用 した試験片 と相手材の回転子 の
形状 な らびに寸法を Fl
g.2に示す。
3
. 結果 および考察
3
.1 組織 と硬さ分布
浸炭 ・焼入れ後の組織 と硬 さ分布の一例 として,痩
2
,4 引張試験
炭後1
2
2
3K か ら焼入れを行 った0.0
5mas
s% Ti鋼 の
本実験で用 いた引張試験片 は JI
S1
4号丸棒試験片 の
組織 と硬 さ分布を Fi
g.3に示す。 この場合 の表面硬
サブサイズ (
標点距離3
5mm,平行部直径 6mm) で
さは約 Hv8
5
0
,有効浸炭深 さは1
.7
5mm で あ る。 一
ある。 これ らの試験片を浸炭 ・熱処理後,平行部 を ェ
般 に,浸炭処理 した材料の表面層 には残留 オーステナ
メ リー紙で研摩 し,アムスラー型万能試験機を用いて
イ トが存在 しやす く,硬 さ,疲労強度,耐摩耗性 な ど
引張試験 を行 った。
の機械的性質 に影響 を及 ぼす ことが知 られ て い る。
2
.5 疲労試験
Fi
g.4に示 す よ うに, 1
1
2
3-1
27
3K か ら焼入 れ した
疲労試験 に用いた試験片の形状および寸法 は,平行
部長 さ4
0mm,平行部 直径 1
2mm で あ り,試験機 は
小野式回転曲げ疲労試験機 (
回転数3
4
0
0r
pm)を用 い
て行 った。なお,試験片 は焼入れにより若干の歪 みを
生ず るため, あ らか じめ試験片 のチ ャ ック部 を ¢1
6
mm に作製 し,全熱処理終 了後 1
5mm に切削 した。
これによってチ ャック部の硬化層が除去 され,試験 中
におけるチ ャック部のすべ りや折損を防止す ることが
できる。
また,疲労試験後 の破断面を走査型電子顕微鏡を用
いて観察 した。
2
.6 摩耗試験
大越式迅速摩耗試験機 を用 い,最終荷重 3
1
.4N,
すべ り距離1
0
0m とし,0
.
3-2
.9
m・
S二のすべ り速度
で非潤滑摩耗試験を行 い,比摩耗量 (
単位荷重,単位
すべ り距離当 りの摩耗体積)を求めた。相手材 と して
Fi
g.3 Mi
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第 12巻
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999〕
91
高温浸炭 した低合金 2相鋼 の機械 的性質
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が内部で増加す るためと考え られ る。 ここで,直接焼
入れ した試料 と,1
1
2
3K か ら焼 入 れ た試料 の有効 浸
炭深 さが同程度 とな っている。 これ は,直接焼入 れ し
た試料 は浸炭処理 のみの浸炭深 さであるが,焼入れ温
度が高 いために内部 のオーステナイ ト体積分率が高 く
な りその結果焼入 れによ って硬質 なマルテ ンサイ トの
生成量が増加 し内部 の硬 さが高 くな る。一万 ,1
1
2
3K
u e nO
^ ) Tt
か ら焼入れた試料 で は再加 熱 に よ り C は内部 まで拡
散 し,浸炭層 は厚 くな るが,焼 入 れ温度 が 1
1
2
3K と
比較的低 いためフェライ ト相が多 くな り硬 さはそれ ほ
ど増加せず,硬 さ測定 によって求 めた有効浸炭深 さは
Fi
g.4 Eff
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試料 の表面硬 さが約 Hv8
5
0-8
9
0であるの に対 し, 痩
増加 しない もの と考え られ る。
3
.2 引張強 さ
浸炭後種 々の温度か ら焼入れ した 2相鋼 の引張強 さ
を Fi
g.
、
6に示す。Nb,Ti添加鋼 の引張強 さは,11
2
3
K か ら焼入れた試料で約 1
.
2GPaであ り,焼入れ温度
炭後直接焼入 れ した試料 で は約 Hv81
0-8
3
0とな り,
の上昇 に伴 い増加 し, 1
2
2
3K で約 1.4GPa と最大 と
表面か ら約 0
.
7mm 付近で最高硬 さ Hv8
5
0を得 た。 こ
な りそれ以後若干減少す る傾向を示す。浸炭後 2段焼
れ は,浸炭後再加熱 して焼入 れ した言
式料 の表面付近 の
入れ した従来 の浸炭用鋼 の引張強 さと比較す ると,本
残留 オーステナイ ト竜 は約 1
0
%以下 であるが,直接焼
供試材 は 1次焼入 れを省略 したに もかかわ らず ,1
1
2
3
入れ した試料 で は2
0%∼2
5% とな り,再加熱 して焼入
1
.6
れた喜
式料 の 2倍以上 にな って いるため と考え られ る。
次 に,種々の温度か ら焼入れ した試料 の有効浸炭 深
上昇 に伴 い増大 している。 これ は,焼入れ温度 の上 昇
J BD
によって Cの拡散量が多 くな ることと,焼入れによっ
1.
4
1
.2
≡ \ 棚.
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.L
1
1
て硬質 なマルテ ンサイ トに変態す るオーステナイ ト量
E
こ 9
さを Fi
g.5に示す。有効 浸 炭深 さは,焼 入 れ温 度 の
1
.0
0.8
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p3
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0.4
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11
73
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223
1
273
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3 1
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Akita University
9
2
K か ら焼入れた場合浸炭用合金鋼 (
SCM 42
1
,SNCM
次 に,本実験 にお ける供試材 の疲労強度 と焼入れ温
41
5
) と同程度であ り,1
2
2
3K で は SNCM 81
5よ り優
度 の関係 を Fi
g.8に示す。 また, 比較 の ため に浸 炭
れている。 また,2
.
Omas
s% S
i鋼 は浸炭用炭素鋼 (
S
後 2段焼入れ した SAE1
0
2
0
,SAE31
2
0の疲労 強度 こ
5
〕
1
5CK) と同程度であるが,以後焼入 れ温度 の上 昇 に
も示 した。本供試材 の疲労強度 に及 ぼす焼入 れ温度 の
伴 い引張強 さは低下す る。
影響 は引張強 さの場合 と同様 である。本実験で は 1次
浸炭材 の機械的性質 に影響 を及 ぼす因子 と して は,
焼入れを省略 しているに もかかわ らず,0.0
5mas
s%
有効浸炭深 さ,浸炭層 の旧オー ステナ イ ト結 晶粒 径 ,
Nb鋼,0
.
0
5mas
s% Ti鋼 の疲労強度 は浸 炭後 直接 焼
炭素濃度 や残留 オーステナイ ト量,非浸炭部 の結晶粒
入れ した試料以外 は5
9
0MPa以上 とな り,2段焼 入 れ
径 な らびにオーステナイ ト体積分率 などが考え られる。
した SAE31
2
0と同程度 の強度 が得 られ た。特 に1
2
2
3
これ らの因子 は焼入 れ温度 の上昇 によ り, 1) 有効 浸
炭深 さの増大,2)旧 オーステナイ ト結 晶粒 径 の粗大
化,3)浸炭層表面近傍の炭 素 濃度 低下,4) 非 浸炭
T t孟
V
によって Nb,Ti添加鋼 の有効浸炭深 さは増大 し, 旧
P
a
材 の場合,前報 く
2
〕で述 べ た よ うに焼 入 れ温度 の上 昇
S
このよ うに,焼入れ温度 を変 え ると機械的性質 を向上
させ る現象 と低下 させ る現象が同時 に起 こる。本供試
C
2
drJ I Sa
Jt
S
部 のオーステナイ ト体積分率 の増加 などの変化を示す。
オーステナイ ト結 晶粒 径 は, 1
2
2
3K まで はほ とん ど
粗大化せず,1
27
3K で若干 の成長 が認 め られ る程度
である。以上 の ことか ら,Nb,Ti添加鋼 の引張 強 さ
には,一般 に言われているよ うに主 と して浸炭層 の強
皮 (
特 に有効浸炭深 さと旧オーステ ナイ ト結 晶粒 径)
が影響 を及 ぼ して い る もの と考 え られ る。一 万 , 2
mas
s% Si鋼で は焼入 れ温度 の上昇 によ って有効浸炭
深 さは増大す るが,旧 オーステナイ ト結晶粒径が粗 大
化 してい る 〔
2
)
o この ことか ら,2mas
s% Si鋼 の引張
105
106
1
0'
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強 さは旧オーステナイ ト結 晶粒径の租大化 によ って著
しく減少 し,有効浸炭深 さの増大 による強度増加 を大
き く上回 っていると考え られ る。以上 のよ うに,本実
験 における供試材 の引張強 さは,主 に有効浸炭深 さと
浸炭層 の旧オーステナイ ト結晶粒径 (
特 に旧オーステ
ナイ ト結晶粒径)の影響 を受 けて いることが分 った。
3
.3 疲労強度
Fi
g.7に種 々の温度か ら焼入れた 2mas
s% Si
0.0
5
mas
s% Ti鋼 の S八 線図 を示 す。 ここで, 1
3
2
3K で
浸炭後直接焼入 れ した試料 と浸炭後 1
1
2
3K か ら焼 入
れ した試料 の SN 線図 の途 中 にお いて屈 曲点 が認 め
られた。 このよ うな現象 は,破壊形態が粒界破壊 か ら
粒内破壊へ移行す る際 に現われ る と言 われ て い る \
4
㌔
しか し,屈曲点 の上下 の応力 レベルにお ける疲労破 断
面 を走査型電 子顕微鏡で観察 した結果破壊形態 の相違
は観察 されなか った。
Fi
g.8 Ther
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,
Akita University
第1
2
巻
第y
2号 (
1
9
99)
高温浸炭 した低合金 2相鋼 の機械的性質
K か ら焼入れた試 料 の疲労 強度 は約 6
4
0MPa と最 大
s% Si鋼 の疲労 強度 は1
1
2
3
値を示 した。一万,2mas
K か ら焼入れた試料が約5
7
0
MPaと最大 とな り,2段
焼入れ した SAE1
0
2
0よ り高 い強度 が得 られ た。以 後
2
2
3K, 1
2
7
3K
焼入れ温度 の と昇 に伴 い低下す るが,1
か ら焼入れた試料で も SAE1
0
2
0と同程度 で あ る。 ま
た,全 ての試料 において直接焼入れ後 の疲労強度が低
くな っている。 これ は有効浸炭深 さが浅 い ことと浸炭
層の旧オー ステナイ ト結晶粒径が粗大であ るため と考
え られ る。再加熱 して焼 入 れ した場 合 ,2mas
s% Si
鋼 の疲労強度が焼入 れ温度 の上昇 に伴 い低下 す るが,
これ は焼入れ温度 の上昇 によって有効浸炭深 さが増大
し,非浸炭部 のマルテ ンサイ ト量 も増加 して疲労強度
を向上 させ るが,浸炭層 の旧オ-ステナイ ト結晶粒 径
の粗大化 による疲労強度 の低下が大 きいため,結果 的
に焼入 れ温度 の上昇 によって疲労強度が低下す るもの
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SK3
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1
2
2
3K まで は疲労強度 は増 大 す るが, 1
27
3K で若干
低下す る。 これ は,浸炭層 の旧オーステナイ ト結 晶粒
Nb,Tiを添加 した に もか か わ らず耐 摩耗性 は SK 3
径 は1
2
2
3K まで はほとん ど変化せず,有 効浸炭 深 さ,
と同程度である。 これ は Nb,Tiの添加量が少 な いた
非浸炭郡 のマルテ ンサイ ト量 の増加 によって疲労強度
め炭化物 の析出量が耐摩耗性 に影響 を及 ぼす ほどには
が向上す る。 しか し, 1
2
7
3K で は浸 炭層 の旧 オー ス
多 くな く, また炭素濃度 も 1mas
s% 程度 とSK3とほ
テナイ ト結晶粒径がわずかなが ら成長す るため疲労強
とん ど変 わ らないためである。
度が低下 した と考 え られ る。以 Lのように,疲労 強度
には浸炭層 の旧オーステナイ ト結晶粒径が最 も大 きく
影響す るもの と考 え られ る。
3
.5 最適焼入れ温度
浸炭後焼入れ温度 を変 えて種 々の機械的性質 を測定
した結果,表面硬 さ,耐摩耗性 は焼入 れ温度 の影響 を
3
.4 耐摩耗特性
受 けないが,引張強 さ,疲労 強 度 はそ の影響 を受 け,
摩耗 は材料表面で起 こる現象 であ るため,表面硬 さ
2mas
s% Si鋼 の場合 は焼入れ温度が1
1
2
3K,Nb,Ti
の影響 を大 き く受 ける。 また,浸炭材の表面層 は高炭
添加鋼で は焼入 れ温 度 が 1
2
2
3K で最 大 とな る ことが
素 となるため残留 オーステナイ トの存在が表面硬 さに
分か った。
大 き く影響 をお よぼす。そ こで ,1
3
2
3K で 1
0.8ks浸
s% Si
0.0
5mas
s% C を基本
以上 のよ うに,2mas
炭後 1
1
2
3K か ら焼入 れ した各種 試料 の比 摩耗量 と摩
組成 とす る 2相鋼 を高温浸炭 し,1次 焼 入 れ を省 略 し
擦速度 との関係 を 1mas
s% C工具鋼 (
SK3) の結 果
た場合 は 2mas
s% Si鋼 で 1
1
2
3K,Nb,Ti添加 鋼 で
とともに Fi
g.9に示 す。 一般 に鋼 の乾燥 摩耗 は低摩
は1
2
2
3K が最適焼入れ温度であることが明 らかになっ
擦速度域 の酸化摩耗 (
非付着摩耗), 高摩 擦速度域 の
た。
溶融摩耗 (
付着摩耗) とその中間域 に大別 され る 〔
6
\
.
。
本供試材 の場合,SK 3と比 較 す る と巾問域 で の耐 摩
4. 結言
耗性 は同程度 であるが,低速度域 と高速度域で は優 れ
前報 ぐ
2
、で報告 した よ うに, 高温 浸炭 用鋼 と して組
た耐摩耗性 を示す ことが分か る。 このような摩耗挙動
織 的に適 して い る と思 われ る Fe
0.0
5mas
s% C2
.0
は他 の焼入れ温度 の試料 で も同様である。 これは Fi
g.
mas
s% si(
一
0
.
0
5mas
s% Ti
,0
.
0
5mas
s% Nb)2相
4に示 したよ うに表面硬 さが焼入れ温度 の影響 を ほ と
鋼 を1
3
2
3K で高 温浸炭 後種 々の温度 か ら焼 入 れ し,
ん ど受 けない ことか らも明 らかで あ る。 この よ うに,
硬 さ分布測定,引張試験,疲労試験,摩耗試験を行い,
Akita University
9
4
1次焼入れを必要 と しない高温浸炭用鋼 と して の適 用
.O
mas
s% Sl鋼 で
る。 この場合 の最適焼入れ温度 は 2
性 につ いて,機械的性質 の観点か ら検討 した結果 を ま
は1
1
2
3K,Nb,Ti添加鋼 の場 合 に は1
2
2
3K で あ り,
とめると以下 のようになる。
浸炭処理 を高温 で行 うことと,1次焼入 れ を省 略す る
(
1) 硬 さ分布か ら求 めた有効浸炭深 さは焼入れ温度
の上昇 に伴 って増大す る。
(
2
)2
.
Omas
s% Sl鋼 の引張強 さは1
1
2
3K か ら焼入
れた試料で最 も高 く,焼入れ温度 の と昇 によって減少
す る。一方,Nb,Ti添加鋼 の引張 強 さは焼入 れ温度
の上昇 によ って1
2
2
3K で最大 とな り,2段焼入 れ した
浸炭用合金鋼 (
SNCM 8
1
5
)よ り高 い強度 を示す。
(
3) 焼入れ温度 と疲労強度 の関係 も引張強 さと同様
ことによって全処理時間の短縮が可能 とな り,省 エ ネ
ルギーの観点 か らも有望 な鋼種であると考え られ る。
文
献
(
1) 鎌 田真一,橋浦広 吉,西沢泰二 :日本金属学会誌,
4
7(
1
9
8
3
)
,3
5
9
.
(
2) 鎌 田真一,小倉 慧史,渡部
充,橋浦広吉 , 永 m
明彦 :素材物性学雑誌,(
1
9
9
9
)
.
の挙動 を示 し,Nb,Ti添 加鋼 で は 2段 焼入 れ した
(
3
) R.L.Mi
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ans
.ASM.
,5
7(
1
9
6
4
)
,8
9
2
.
SAE3
1
2
0と同程度 の強度が得 られた。
(
4) 横堀 武 夫, 市川 昌弘 :金属 の疲労 破 壊 , 丸 善 ,
(
4) 耐摩耗性 は SK3と比較す ると, 高遠城 と低速
域 で優れてお り,焼入れ温度 の影響 を ほとん ど受 けな
い。
以上 のよ うに,低合金 2相鋼 は 1次焼入れを必 要 と
しない高温浸 炭 用鋼 と して十 分 な実用性 を有 して い
(
1
9
7
5
)
,3
5
.
(
5) H.
F.Moor
eandN.J.Al
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,
1
3(
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)
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.
(
6) E.E,BI
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1
9
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8
)
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