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高温浸炭した低合金 2相鋼の機械的性質
Akita University 素材物 性学雑 誌 総 第1 2巻 第1 / 2 号 8 8-9 4( 1 9 99) 説 高温浸炭 した低合金 2相鋼 の機械 的性質 藤 渡 * 一, *加 柑 彦 夫 明 田 真 浦 虞 和 田 鎌 橋 部 充 , *** 吉 , **** 永 Me c hani e alPrope r t i e sorLow Al l oye dDual Phas e St e e lCar bur i z edatEl e vat edTempe r at ur e by Shi ni c hiKAMADA†,Kaz uoKATO† T,Ml t S ur uWATANABEI I † Koki c hiHAS HI LRAI T † TandAki hi koNAGATAI ABSTRACT I nt hepr e vi ouspape r,wer e por t e dt hel ow al l oye dduaLphas es t e e lc oul d beus e df ore l e vat e dt e mpe r at ur ec as ehar de ni ng s t e e l swi t houtt hef l r S tS t e p quenc hl ngf r om mi c r os t r uct ur eobs e r vat i ons. I nt hepr e s e ntwor k,me c hani c al pr ope r t i e sandopt l mum que nc hi ngt e mpe r at ur eoft hedual phas es t e e l swe r e i nve s t l gat e df orpr ac t l Calcas ehar de ni ngappl i c at i ons. Themi c r os t r uc t ur alandme c hanl C alpr ope rt i e soft he0. 0 5mas s% C2. 0mas s % Si -( 0. 0 5mas s% NbandO. 0 5mas s% Ti )s t e e l sc ar bur i z e dat1 3 2 3K f or1 0. 8ks, que nc he df r om 1 1 2 3K1 2 2 3K andt he nt empe r edat4 2 3K we r es t udi e d. Themaxi mum t ens i l eandf at i guest r e ngt hoft he2. Omas s% Sis t e e landt he2. Omas s% Si -( 0. 0 5mas s% Nband0. 0 5mas s% Ti )St e e lwe r eobt ai ne daf t e rque nc hi ngf r om e 1 1 2 3K and1 2 2 3K,r es pe c t i ve l y. The s epr ope r t i eswe r emuc hhi ghe rt hant hos oft hec onve nt i onalc as ehar deni ngs t e e lobt ai nedbyt wos t e pque nc hi ng. The we arr e s i s t anc ewasnotaf f e c t edbyque nc hi ngt e mper at ur eandwasmuc hs uper i ori nt her e gl OnSOfhi ghe randl owe rs l i di ngs pe e dc ompar e dwi t ht hec ar bon t ools t e e l( SK3 ). Skl ppi ngt hef i r s ts t e pque nc hi ngandc ar bur i z i ngate l e vat e d t e mpe r at ur e smaket hepr oc e s s l ngt i mes hor t e rande ne r gyc ons umpt l Ont Of ab平成 11年 4月2 6日受付 *秋 田大学工学 資源学 部材料工学科 〒01 085 02 秋 田市手形学 園町 1 1 **オイ レスアメ リカ コーポ レー シ ョン 01 1 e sAme r l C aCo r p ‥1 49 41C l e a tS t r e e t ,Pl y mo u t h,MI481706015,US A. ***秋 田大学鉱 山学部 物質工学科 〒01 085 02 秋 田市 手形学 園町 ト1 ****秋 田大学名 誉教授 〒01 085 02 秋 田市手 形学 園町 1 1 IDe p a r t me n to fMa t e r l a l sS c i e n c ea n dEn g l n e e r l n g,Fa c u l t yo fEng l n e e r l n ga n dRe s o u r c eS c i e n c e ,Ak l t aUn l V e r S l t y,1-1 Te g a t aGa k u e nc h o,Ak l t a01085 02,J a p a n . †IOl l e sAme r l C aCo r p . ,1 49 41C l e a tS t r e e t ,Pl y mo u t h,MI481706015,US A. ††TDe p a r t me n to fMa t e r l a l sEn g l n e e r i n ga n dAp p l l e dCh e ml S t r y,Ml n l ngCo l l e g e ,Ak l t aUn l V e r S l t y,ト1Te g a t aGa k u e nc h o, Ak l t a01085 02, Ja p a n . g a t aGa k u e nc h o,Ak l t a01085 02,J a p a n . IT††Pr o f e s s o rEme r l t u S ,Ak l t aUn l V e r S l t y,ト1Te 8 8 Akita University 第1 2巻 第l / 2 号 ( 1 9 99) 高温浸炭 した低合金 2相鋼 の機械的性質 8 9 r i c at emat e r i al ss mal l er. Th us,t heduaLphas es t e e li sc ons i de r e dt o hav ea pot e nt i alf orpr ac t i c alus ef ort hee l e vat e dt e mpe r at ur ec as ehar de ni ngs t e e l . Ke yWor ds:Dual phas es t e e l ,El e vat e dt e mpe r at ur ec ar bur i z l ng,Har dne s s, Te ns i l es t r e ngt h,Fat i gues t r e ngt h,We arr e s i s t anc e とが予想 され る。 また,実際 の浸炭材 の機械的性質 は 1 . 緒言 浸炭層の強度 に依存す ることか ら,上述 の非浸炭部 の 著者 らは前報 L ' 1 、く 2 ‥において,低合金 2相鋼を浸炭 し, 浸炭後通常行われている 1次焼入れを必要 としない浸 組織か ら予想 され る温度か ら焼入れた浸炭材 の機械的 性質 は不明である。 炭用鋼 と しての適用性 につ いて,主 として組織観察 に そ こで本研究で は,浸炭層 と非浸炭部双方 の強化 な よって検討 して きた。 その結 果 ,Siを添 加 す る こと らびに結晶粒微細化 をはか るために,炭化物形成元素 によ って高温で も安定 な ( α+γ)2相組織 が得 られ である Nb,Tiを添加 した 2相鋼 を高温浸炭後 1次焼 ることが分か り, 2相域 で浸炭す ることによって非浸 入れを省略 し,種 々の温度か ら 2次焼入れを施 して組 炭部 の結晶粒 はきわめて微細で,結晶粒微細化 のた め 織観寮,硬 さ測定,引張試験,疲労試験,摩耗試 験 を の 1次焼入れを省略で き,処理時間の短縮が可能 とな 行 い,高温浸炭用鋼 と しての適用性 につ いて機械的性 ることを報告 した。 質 の面 か ら検討 を加 え,同時 に最適焼入れ温度 を決定 しか し,Fi g.1こ 2 )に示す ように浸炭温度 と 2次焼 入 れ温度が異 なるため浸炭温度で 2相組織 となる組成 の 試料が,必ず しも焼入 れ温度で 2相組織 とな るとは限 らない。例 えば,浸炭温度 を1 3 2 3K とす ると,最適 な 焼入れ温度 な らびに組成 は斜線で示 した範囲 とな るこ した。 2 . 実験方 法 2 .1 実験試料 2相鋼 を浸炭 した場合,非浸炭部 の結 晶粒 成長 の抑 . 3 -0 . 7で あ る 制 に最適 なオーステナイ ト体積分率 は0 ことが前報 〔 1 )によ って明 らか にされたが,Fi g.1 〔 2 )に 示す よ うに浸炭 温 度 を 1 3 2 3K と した場合 , この分率 f\ 「 ■ 巴 n忘JBd Eやl の 2相組織 が最 も広 い温度範囲で得 られ る炭素量 は約 0 . 0 5mas s % とな ることか ら, 本 実験 で は0 .0 5mas s % C2 . Omas s% Si 0 . 3mas s % Mn0 , 3mas s % Crを 基本組成 と し, これに結晶粒微細化 の た め に Nb,Ti をそれぞれ0 . 0 5mas s % 添加 した試料 の 3種 類 を供試 0 5 5 0 Oー323f ( ち E : ミ 7 Sui t 8b l e a+7 5 0 F 8 2 S 1 α+γ 0. 05 011 0 γ 材 と した。その化学組成を Ta bl elに示す。 これ らの 0 ・ 1 5 Car bo nC ont ent/4 I -8 S I Fi g.1 Sul t abl ec ar bonc ont e ntf orobt ai ni ngf i ne gr ai ns t r uc t ur ei nt hec or eatvar i ousc ar bur i z l ngandque nc hi ngt empe r at ur e . 試料 を大気 中で1 0kg高周波溶解 し,約 1 1 2 3K で熱 間 鍛造後,冷間圧延 と1 2 2 3K での焼 なま しを繰 り返 し, 最後 に1 2 7 3K で焼 な ま しを施 した後 に旋削 によ り組 織観察用試料 な らびに材料試験片 を作製 し,以下 の実 験 に供 した。 Tabl e1 Che mi c alc ompos i t i onofs pe c i me ns( mas s %) 2Si 2Si 0. 0 5Nb . 9 9 弓 0. 3 1 rO. 0 0 1` <0. 0 0 1 0. 2 9 g∼0. 0 5 tl 0. 0 6 2. 0 3 0. 3 0 ≦0. 0 0 1 <0. 0 0 1 0. 2 9 /0. 0 5 4 - Akita University 9 0 鎌田真一 ・加藤和夫 ・渡部 克 ・橋浦寅吉 ・永田明彦 2 .2 浸炭および熱処理 浸炭 は,1 3 2 3K で1 0 .8ks固体浸炭を行 った。浸炭 処理後,焼入れは1 1 2 3-1 2 7 3K で1 . 8ks真空加熱後水 冷 し,その後4 2 3K で焼 もどしを行 い,組織観察 な ら びに材料試験を行 った。なお,浸炭処理状態の組織 お よび機械的性質 について検討す るために,浸炭後直接 水冷 した試料 も作製 した。 これ らの実験方法の詳細 は 前報 (2'において述べてある。 ( a )S t a t o r ( S p e c i m e n ) ( b) R o t o r Fl g.2 Shapeands i z eofwe art e s ts pe c i me n. 2 .3 組織観察な らびに硬 さ測定 浸炭 ・熱処理後,光学顕微鏡 によって組織観察を行 は,1 0 5 3K か ら水冷後4 2 3K で焼 もど しを施 した 1 い,浸炭層における旧オーステナイ ト結晶粒径の測定 mas s% C炭素工具鋼 ( SK3 )を使用 した。また,相 および抽出 レプ リカの透過電 子顕微鏡観察 による炭化 手材 と同一の炭素工具鋼 ( SK3 )を焼入れ ・焼 もど し 物 の確認 を行 った。 さらに,浸炭層表面近傍 の残留 オーステナイ ト量 の 測定 も行 った。その方法 は Ⅹ 繰 回折法 によ って, マ ルテ ンサイ ト,オーステナイ トそれぞれの積分強度 を 測定 し,Mi l l e rの方法 ㌧3) によって求 めた。 硬 さ分布の測定 は,浸炭 ・熱処理 した試料の切断面 について微小硬 さ計を用 いて行 った。 比較資料を得た。使用 した試験片 と相手材の回転子 の 形状 な らびに寸法を Fl g.2に示す。 3 . 結果 および考察 3 .1 組織 と硬さ分布 浸炭 ・焼入れ後の組織 と硬 さ分布の一例 として,痩 2 ,4 引張試験 炭後1 2 2 3K か ら焼入れを行 った0.0 5mas s% Ti鋼 の 本実験で用 いた引張試験片 は JI S1 4号丸棒試験片 の 組織 と硬 さ分布を Fi g.3に示す。 この場合 の表面硬 サブサイズ ( 標点距離3 5mm,平行部直径 6mm) で さは約 Hv8 5 0 ,有効浸炭深 さは1 .7 5mm で あ る。 一 ある。 これ らの試験片を浸炭 ・熱処理後,平行部 を ェ 般 に,浸炭処理 した材料の表面層 には残留 オーステナ メ リー紙で研摩 し,アムスラー型万能試験機を用いて イ トが存在 しやす く,硬 さ,疲労強度,耐摩耗性 な ど 引張試験 を行 った。 の機械的性質 に影響 を及 ぼす ことが知 られ て い る。 2 .5 疲労試験 Fi g.4に示 す よ うに, 1 1 2 3-1 27 3K か ら焼入 れ した 疲労試験 に用いた試験片の形状および寸法 は,平行 部長 さ4 0mm,平行部 直径 1 2mm で あ り,試験機 は 小野式回転曲げ疲労試験機 ( 回転数3 4 0 0r pm)を用 い て行 った。なお,試験片 は焼入れにより若干の歪 みを 生ず るため, あ らか じめ試験片 のチ ャ ック部 を ¢1 6 mm に作製 し,全熱処理終 了後 1 5mm に切削 した。 これによってチ ャック部の硬化層が除去 され,試験 中 におけるチ ャック部のすべ りや折損を防止す ることが できる。 また,疲労試験後 の破断面を走査型電子顕微鏡を用 いて観察 した。 2 .6 摩耗試験 大越式迅速摩耗試験機 を用 い,最終荷重 3 1 .4N, すべ り距離1 0 0m とし,0 . 3-2 .9 m・ S二のすべ り速度 で非潤滑摩耗試験を行 い,比摩耗量 ( 単位荷重,単位 すべ り距離当 りの摩耗体積)を求めた。相手材 と して Fi g.3 Mi c r os t r uc t ur eanddi s t r i but i onofhar dne s si nt hel aye rcar bur i z e dat1 3 2 3K f or l O.8ksand t he n que nc he df r om 1 2 2 3K, t e mpe r e dat42 3K. Akita University 第 12巻 第 ㍍号 (1 999〕 91 高温浸炭 した低合金 2相鋼 の機械 的性質 vt l SnV TuO t Pa tl Pau t l L 0 > H tSSauP J eH 心OeiJnS . O t J % が内部で増加す るためと考え られ る。 ここで,直接焼 入れ した試料 と,1 1 2 3K か ら焼 入 れ た試料 の有効 浸 炭深 さが同程度 とな っている。 これ は,直接焼入 れ し た試料 は浸炭処理 のみの浸炭深 さであるが,焼入れ温 度が高 いために内部 のオーステナイ ト体積分率が高 く な りその結果焼入 れによ って硬質 なマルテ ンサイ トの 生成量が増加 し内部 の硬 さが高 くな る。一万 ,1 1 2 3K u e nO ^ ) Tt か ら焼入れた試料 で は再加 熱 に よ り C は内部 まで拡 散 し,浸炭層 は厚 くな るが,焼 入 れ温度 が 1 1 2 3K と 比較的低 いためフェライ ト相が多 くな り硬 さはそれ ほ ど増加せず,硬 さ測定 によって求 めた有効浸炭深 さは Fi g.4 Eff e c tofque nc hi ngt e mpe rat ur eonhar dne s sandvol umef rac t i onofr e t ai ne daus - r . t e nl t el nt hes urf ac eofc ar bur i z e dl aye 試料 の表面硬 さが約 Hv8 5 0-8 9 0であるの に対 し, 痩 増加 しない もの と考え られ る。 3 .2 引張強 さ 浸炭後種 々の温度か ら焼入れ した 2相鋼 の引張強 さ を Fi g. 、 6に示す。Nb,Ti添加鋼 の引張強 さは,11 2 3 K か ら焼入れた試料で約 1 . 2GPaであ り,焼入れ温度 炭後直接焼入 れ した試料 で は約 Hv81 0-8 3 0とな り, の上昇 に伴 い増加 し, 1 2 2 3K で約 1.4GPa と最大 と 表面か ら約 0 . 7mm 付近で最高硬 さ Hv8 5 0を得 た。 こ な りそれ以後若干減少す る傾向を示す。浸炭後 2段焼 れ は,浸炭後再加熱 して焼入 れ した言 式料 の表面付近 の 入れ した従来 の浸炭用鋼 の引張強 さと比較す ると,本 残留 オーステナイ ト竜 は約 1 0 %以下 であるが,直接焼 供試材 は 1次焼入 れを省略 したに もかかわ らず ,1 1 2 3 入れ した試料 で は2 0%∼2 5% とな り,再加熱 して焼入 1 .6 れた喜 式料 の 2倍以上 にな って いるため と考え られ る。 次 に,種々の温度か ら焼入れ した試料 の有効浸炭 深 上昇 に伴 い増大 している。 これ は,焼入れ温度 の上 昇 J BD によって Cの拡散量が多 くな ることと,焼入れによっ 1. 4 1 .2 ≡ \ 棚. L f l d ao 6uaJ1SaT ! S uai .L 1 1 て硬質 なマルテ ンサイ トに変態す るオーステナイ ト量 E こ 9 さを Fi g.5に示す。有効 浸 炭深 さは,焼 入 れ温 度 の 1 .0 0.8 0.6 p3 as 0.4 11 23 11 73 1 223 1 273 QuenchingTemper atur e,T/ K 11 23 117 3 1 223 1 273 Quenchi n gTemperature,T/ K Fi g.5 Ther e l at i ons hi psbe t we e nc as ede pt hand que nc hi ngt e mpe r at ur eaf t e rc ar bur i z e dat 1 3 2 3K f or1 0 . 8 ks . Fi g.6 Ther e l at i ons hi psbe t we e nt e ns i l est r engt h andquenc hi ng t empe r at ur eaf t e rc ar bur i z edat1 3 2 3K f or1 0.8ks. The s es pe c i me nswe r et e mpe r edat4 2 3K af t e rquenc hi ng, Akita University 9 2 K か ら焼入れた場合浸炭用合金鋼 ( SCM 42 1 ,SNCM 次 に,本実験 にお ける供試材 の疲労強度 と焼入れ温 41 5 ) と同程度であ り,1 2 2 3K で は SNCM 81 5よ り優 度 の関係 を Fi g.8に示す。 また, 比較 の ため に浸 炭 れている。 また,2 . Omas s% S i鋼 は浸炭用炭素鋼 ( S 後 2段焼入れ した SAE1 0 2 0 ,SAE31 2 0の疲労 強度 こ 5 〕 1 5CK) と同程度であるが,以後焼入 れ温度 の上 昇 に も示 した。本供試材 の疲労強度 に及 ぼす焼入 れ温度 の 伴 い引張強 さは低下す る。 影響 は引張強 さの場合 と同様 である。本実験で は 1次 浸炭材 の機械的性質 に影響 を及 ぼす因子 と して は, 焼入れを省略 しているに もかかわ らず,0.0 5mas s% 有効浸炭深 さ,浸炭層 の旧オー ステナ イ ト結 晶粒 径 , Nb鋼,0 . 0 5mas s% Ti鋼 の疲労強度 は浸 炭後 直接 焼 炭素濃度 や残留 オーステナイ ト量,非浸炭部 の結晶粒 入れ した試料以外 は5 9 0MPa以上 とな り,2段焼 入 れ 径 な らびにオーステナイ ト体積分率 などが考え られる。 した SAE31 2 0と同程度 の強度 が得 られ た。特 に1 2 2 3 これ らの因子 は焼入 れ温度 の上昇 によ り, 1) 有効 浸 炭深 さの増大,2)旧 オーステナイ ト結 晶粒 径 の粗大 化,3)浸炭層表面近傍の炭 素 濃度 低下,4) 非 浸炭 T t孟 V によって Nb,Ti添加鋼 の有効浸炭深 さは増大 し, 旧 P a 材 の場合,前報 く 2 〕で述 べ た よ うに焼 入 れ温度 の上 昇 S このよ うに,焼入れ温度 を変 え ると機械的性質 を向上 させ る現象 と低下 させ る現象が同時 に起 こる。本供試 C 2 drJ I Sa Jt S 部 のオーステナイ ト体積分率 の増加 などの変化を示す。 オーステナイ ト結 晶粒 径 は, 1 2 2 3K まで はほ とん ど 粗大化せず,1 27 3K で若干 の成長 が認 め られ る程度 である。以上 の ことか ら,Nb,Ti添加鋼 の引張 強 さ には,一般 に言われているよ うに主 と して浸炭層 の強 皮 ( 特 に有効浸炭深 さと旧オーステ ナイ ト結 晶粒 径) が影響 を及 ぼ して い る もの と考 え られ る。一 万 , 2 mas s% Si鋼で は焼入 れ温度 の上昇 によ って有効浸炭 深 さは増大す るが,旧 オーステナイ ト結晶粒径が粗 大 化 してい る 〔 2 ) o この ことか ら,2mas s% Si鋼 の引張 105 106 1 0' N u r r b e ro fC y c l e st oF a l l u 「 e ,∼ Fi g.7 SNc ur ve sof2Si 0 . 0 5Tidual phas es t e e l que nc he df r om var i oust e mpe r at ur eaf t e r c ar burl Z l ngat1 3 2 3K f or1 0.8ks. The s e s pe c i me nswe r et e mpe r e d at4 2 3K af t e r que nc hi ng. 強 さは旧オーステナイ ト結 晶粒径の租大化 によ って著 しく減少 し,有効浸炭深 さの増大 による強度増加 を大 き く上回 っていると考え られ る。以上 のよ うに,本実 験 における供試材 の引張強 さは,主 に有効浸炭深 さと 浸炭層 の旧オーステナイ ト結晶粒径 ( 特 に旧オーステ ナイ ト結晶粒径)の影響 を受 けて いることが分 った。 3 .3 疲労強度 Fi g.7に種 々の温度か ら焼入れた 2mas s% Si 0.0 5 mas s% Ti鋼 の S八 線図 を示 す。 ここで, 1 3 2 3K で 浸炭後直接焼入 れ した試料 と浸炭後 1 1 2 3K か ら焼 入 れ した試料 の SN 線図 の途 中 にお いて屈 曲点 が認 め られた。 このよ うな現象 は,破壊形態が粒界破壊 か ら 粒内破壊へ移行す る際 に現われ る と言 われ て い る \ 4 ㌔ しか し,屈曲点 の上下 の応力 レベルにお ける疲労破 断 面 を走査型電 子顕微鏡で観察 した結果破壊形態 の相違 は観察 されなか った。 Fi g.8 Ther e l at i ons hl pSbe t we e nf at l gueS t r engt h andque nc hi ng t e mpe r at ur e af t e rcar bur i z e dat1 3 2 3K f or1 0.8ks. The s es pe c 1 me nswe r et e mpe r e dat4 2 3K af t e rque nc hl ng. SAE31 2 0andSAE1 0 2 0We r eque nc he dt wi c ef orgr al nr e f i ne me nt , Akita University 第1 2 巻 第y 2号 ( 1 9 99) 高温浸炭 した低合金 2相鋼 の機械的性質 K か ら焼入れた試 料 の疲労 強度 は約 6 4 0MPa と最 大 s% Si鋼 の疲労 強度 は1 1 2 3 値を示 した。一万,2mas K か ら焼入れた試料が約5 7 0 MPaと最大 とな り,2段 焼入れ した SAE1 0 2 0よ り高 い強度 が得 られ た。以 後 2 2 3K, 1 2 7 3K 焼入れ温度 の と昇 に伴 い低下す るが,1 か ら焼入れた試料で も SAE1 0 2 0と同程度 で あ る。 ま た,全 ての試料 において直接焼入れ後 の疲労強度が低 くな っている。 これ は有効浸炭深 さが浅 い ことと浸炭 層の旧オー ステナイ ト結晶粒径が粗大であ るため と考 え られ る。再加熱 して焼 入 れ した場 合 ,2mas s% Si 鋼 の疲労強度が焼入 れ温度 の上昇 に伴 い低下 す るが, これ は焼入れ温度 の上昇 によって有効浸炭深 さが増大 し,非浸炭部 のマルテ ンサイ ト量 も増加 して疲労強度 を向上 させ るが,浸炭層 の旧オ-ステナイ ト結晶粒 径 の粗大化 による疲労強度 の低下が大 きいため,結果 的 に焼入 れ温度 の上昇 によって疲労強度が低下す るもの S l i di n gSp eed/m・S 1 Fi g.9 Wearr at eorduaLphas es t e e l scar bur i z ed at1 3 2 3K f or1 0.8ksand t he n que nc hed f r om l 1 2 3K,t e mpe r e dat42 3K. Re s ul t oolst e e l onor di nar i l yhe att r e at e d1% Ct ( SK3 )ar eal s ogl Ve n. 1 2 2 3K まで は疲労強度 は増 大 す るが, 1 27 3K で若干 低下す る。 これ は,浸炭層 の旧オーステナイ ト結 晶粒 Nb,Tiを添加 した に もか か わ らず耐 摩耗性 は SK 3 径 は1 2 2 3K まで はほとん ど変化せず,有 効浸炭 深 さ, と同程度である。 これ は Nb,Tiの添加量が少 な いた 非浸炭郡 のマルテ ンサイ ト量 の増加 によって疲労強度 め炭化物 の析出量が耐摩耗性 に影響 を及 ぼす ほどには が向上す る。 しか し, 1 2 7 3K で は浸 炭層 の旧 オー ス 多 くな く, また炭素濃度 も 1mas s% 程度 とSK3とほ テナイ ト結晶粒径がわずかなが ら成長す るため疲労強 とん ど変 わ らないためである。 度が低下 した と考 え られ る。以 Lのように,疲労 強度 には浸炭層 の旧オーステナイ ト結晶粒径が最 も大 きく 影響す るもの と考 え られ る。 3 .5 最適焼入れ温度 浸炭後焼入れ温度 を変 えて種 々の機械的性質 を測定 した結果,表面硬 さ,耐摩耗性 は焼入 れ温度 の影響 を 3 .4 耐摩耗特性 受 けないが,引張強 さ,疲労 強 度 はそ の影響 を受 け, 摩耗 は材料表面で起 こる現象 であ るため,表面硬 さ 2mas s% Si鋼 の場合 は焼入れ温度が1 1 2 3K,Nb,Ti の影響 を大 き く受 ける。 また,浸炭材の表面層 は高炭 添加鋼で は焼入 れ温 度 が 1 2 2 3K で最 大 とな る ことが 素 となるため残留 オーステナイ トの存在が表面硬 さに 分か った。 大 き く影響 をお よぼす。そ こで ,1 3 2 3K で 1 0.8ks浸 s% Si 0.0 5mas s% C を基本 以上 のよ うに,2mas 炭後 1 1 2 3K か ら焼入 れ した各種 試料 の比 摩耗量 と摩 組成 とす る 2相鋼 を高温浸炭 し,1次 焼 入 れ を省 略 し 擦速度 との関係 を 1mas s% C工具鋼 ( SK3) の結 果 た場合 は 2mas s% Si鋼 で 1 1 2 3K,Nb,Ti添加 鋼 で とともに Fi g.9に示 す。 一般 に鋼 の乾燥 摩耗 は低摩 は1 2 2 3K が最適焼入れ温度であることが明 らかになっ 擦速度域 の酸化摩耗 ( 非付着摩耗), 高摩 擦速度域 の た。 溶融摩耗 ( 付着摩耗) とその中間域 に大別 され る 〔 6 \ . 。 本供試材 の場合,SK 3と比 較 す る と巾問域 で の耐 摩 4. 結言 耗性 は同程度 であるが,低速度域 と高速度域で は優 れ 前報 ぐ 2 、で報告 した よ うに, 高温 浸炭 用鋼 と して組 た耐摩耗性 を示す ことが分か る。 このような摩耗挙動 織 的に適 して い る と思 われ る Fe 0.0 5mas s% C2 .0 は他 の焼入れ温度 の試料 で も同様である。 これは Fi g. mas s% si( 一 0 . 0 5mas s% Ti ,0 . 0 5mas s% Nb)2相 4に示 したよ うに表面硬 さが焼入れ温度 の影響 を ほ と 鋼 を1 3 2 3K で高 温浸炭 後種 々の温度 か ら焼 入 れ し, ん ど受 けない ことか らも明 らかで あ る。 この よ うに, 硬 さ分布測定,引張試験,疲労試験,摩耗試験を行い, Akita University 9 4 1次焼入れを必要 と しない高温浸炭用鋼 と して の適 用 .O mas s% Sl鋼 で る。 この場合 の最適焼入れ温度 は 2 性 につ いて,機械的性質 の観点か ら検討 した結果 を ま は1 1 2 3K,Nb,Ti添加鋼 の場 合 に は1 2 2 3K で あ り, とめると以下 のようになる。 浸炭処理 を高温 で行 うことと,1次焼入 れ を省 略す る ( 1) 硬 さ分布か ら求 めた有効浸炭深 さは焼入れ温度 の上昇 に伴 って増大す る。 ( 2 )2 . Omas s% Sl鋼 の引張強 さは1 1 2 3K か ら焼入 れた試料で最 も高 く,焼入れ温度 の と昇 によって減少 す る。一方,Nb,Ti添加鋼 の引張 強 さは焼入 れ温度 の上昇 によ って1 2 2 3K で最大 とな り,2段焼入 れ した 浸炭用合金鋼 ( SNCM 8 1 5 )よ り高 い強度 を示す。 ( 3) 焼入れ温度 と疲労強度 の関係 も引張強 さと同様 ことによって全処理時間の短縮が可能 とな り,省 エ ネ ルギーの観点 か らも有望 な鋼種であると考え られ る。 文 献 ( 1) 鎌 田真一,橋浦広 吉,西沢泰二 :日本金属学会誌, 4 7( 1 9 8 3 ) ,3 5 9 . ( 2) 鎌 田真一,小倉 慧史,渡部 充,橋浦広吉 , 永 m 明彦 :素材物性学雑誌,( 1 9 9 9 ) . の挙動 を示 し,Nb,Ti添 加鋼 で は 2段 焼入 れ した ( 3 ) R.L.Mi ll e r:Tr ans .ASM. ,5 7( 1 9 6 4 ) ,8 9 2 . SAE3 1 2 0と同程度 の強度が得 られた。 ( 4) 横堀 武 夫, 市川 昌弘 :金属 の疲労 破 壊 , 丸 善 , ( 4) 耐摩耗性 は SK3と比較す ると, 高遠城 と低速 域 で優れてお り,焼入れ温度 の影響 を ほとん ど受 けな い。 以上 のよ うに,低合金 2相鋼 は 1次焼入れを必 要 と しない高温浸 炭 用鋼 と して十 分 な実用性 を有 して い ( 1 9 7 5 ) ,3 5 . ( 5) H. F.Moor eandN.J.Al l e man:Tr ans .ASM. , 1 3( 1 9 2 8 ) ,4 0 5 . ( 6) E.E,BI S S On:Eval uat i on ofWe arTe s t i ng, ASTM, ( 1 9 6 8 ) ,1 .