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うつ病の基礎知識

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うつ病の基礎知識
うつ病
うつ病の発症率
1.25人に一人(4%)の割合でみられる。
2.過去にうつ病に陥った経緯がある人を含めると5人あ
るいは7人に一人(25%∼14%)。
3.他の統計では男性7%、女性19%がうつ病を経験
しており 、米国における男性10%、女性25%
とほぼ一致する。
4.実際に治療を受けたのは1割程度で、他は未治療と
いわれている。
うつ病の自覚症状
1.気が晴れず、ゆううつになる
2.元気がでない
3.不安になりやすく、いらいらが続く
4.やらなければと思っても気がすすまない、体が動かない
5.楽しいと思えることがなくなった
6.考えがまとまらず、決断力がなくなったと感じる
7.自分のふがいなさに打ちひしがれる
8.何か大変なことをしてしまったように感じる
9.家族や周囲に迷惑をかけているように考えてしまう
10.不治の病にかかってしまったと思う
11.生きる希望を見出せない
12.死にたいと思うようになった
13.人には会いたくない
14.食欲がない
15.眠れない
16.疲れやすく、体がだるい
うつ病の他覚的症状
1.動作が少なく、表情が暗くて意気消沈しており、視線をそらしてしまう
2.声が小さく、あまり話をしない
3.時に奇声を張り上げたり、髪をかきむしったりする
4.質問への返答が遅い
5.考えるのが遅く、内容に豊かさがない
6.患者様の半数はうつ感情を否定するが、ゆううつ感がある
7.趣味に手をださなくなり、テレビ、新聞、ラジオにも興味がなくなった
8.食事をおいしそうに食べなくなり、不眠もみられる
9.自分を過度に責める、自己批判する
10.自分の短所を強調し、長所を過小評価する
11.自分の症状や障害、人生上の問題を過度に強調する
12.罪悪感、無価値観、貧困、失敗、迫害、不治の病といった妄想を抱く
13.家に引きこもっている
14.人に会いたくない
15.死にたいと繰り返し述べ、死のうとする
高齢者のうつ病
1.米国の統計では、65才以上の人口3300万人のうち500万
人(15%)が重度のうつ病であり、100万人(3%)が
大うつ病であった。
2.わが国においても高齢者のうつ病は多くみられ、老人
ホームや一般病院において高い頻度でみられる。
3.うつ病とともに脳卒中、パーキンソン病、心疾患、肺
疾患などの身体疾患を合併していることが多い。
4.脳卒中後遺症の5人に一人(25%)が大うつ病、5人に
一人(25%)が軽症うつ病という統計があり、抗うつ
薬の投与により脳卒中の生存率が高くなったとする報
告がある。
うつ病の自殺
1.毎年3万人以上の自殺者のうち、7割近くがうつ病性疾
患によると考えられている
2.1980年から1992年の間に65才以上の自殺率は9%増加、
80才から84才では35%増加した。85才以上のうつ病に
よる自殺は他の高齢者の6倍(米国)
3.自殺するうつ病患者の大半が1ケ月以内に一般医を受
診、40%近くが一週間以内に主治医を受診している。
しかし、うつ病と気づかれることは稀で治療は行われ
ていなかった(米国)
うつ病の原因
1.モノアミン仮説
神経細胞の刺激伝達は、神経伝達物質が次の神経細胞の受容体に接合
して伝えられます。うつ病ではノルアドレナリン、セロトニンという
神経伝達物質の放出量が低下しています。抗うつ薬はその両方あるい
は片方の量を増加させ、機能の回復が図られます
2.脳の扁桃核の異常な代謝亢進
抗うつ薬は扁桃核の亢進した糖代謝を低下させ、改善します
3.遺伝説
・そうとうつを繰り返す双極性障害の場合、遺伝子の塩基配列が一つ 違うだけで、発症率は4.6倍になる
・神経末端から放出されたセロトニンを再び取り込む5‐HTTの遺伝子 にてs/sあるいはl/s型はうつ病の発症率が高い
うつ病になりやすい性格
うつ病にかかりやすい性格の特徴を一つにしぼることはで
きないが、以下のような性格傾向との関連があるとされて
いる
執着気質
几帳面、凝り性、完璧主義、責任感や義務感が強い、仕事熱心、
真面目、正直
循環気質
社交的、親切、人情が厚い、気遣い、同調、敏感、明朗、活発
メランコリー親和性性格
几帳面、律儀、綿密、正直、小心、真面目、仕事中心、献身的、
頼まれると断れない、人と争えない、融通性がない
うつ病の分類(ICD10)
軽症うつ病エピソード(F32.0)
中等度うつ病エピソード(F32.1)
重症うつ病エピソード(F32.2 F32.3)
うつ病の分類(DSM‐Ⅳ)
米国精神医学会による疾患分類
1.大うつ病性障害
2.気分変調性障害
3.気分循環性障害
4.抑うつ関連症候群
①小うつ病性障害
②反復性短期抑うつ障害
③月経前不快気分障害
5.一般身体疾患に起因する気分障害
脳血管障害、痴呆、パーキンソン病、甲状腺機能低下症など
6.物質(薬剤等)誘発性気分障害 7.特定不能の気分障害
大うつ病の診断基準(DSM‐Ⅳ)
A.以下の症状のうち5つ以上が2週間の間に存在し、病前の機能からの変
化を起こしている。これらの症状のうち少なくとも一つは、以下の1
または2である。
1.ほとんど一日中、ほとんど毎日の抑うつ気分
2.ほとんど一日中、ほとんど毎日の、すべてあるいはほとんどすべての活動に おける興味、喜びの著しい減退
3.食事療法をしていないのに著しい体重減少あるいは体重増加(例えば、1ヶ月
で体重の5%以上の変化)、またはほとんど毎日の食欲減退あるいは増加
4.ほとんど毎日の不眠あるいは睡眠過多
5.ほとんど毎日の精神運動性の焦燥あるいは制止
6.ほとんど毎日の易疲労性あるいは気力の減退
7.ほとんど毎日の無価値感あるいは過剰であるか不適切な罪責感
8.思考力や集中力の減退あるいは決断困難がほとんど毎日認められる。
9.死についての反復思考、特別な計画はないが繰り返す自殺念慮や自殺企図、 あるいは自殺するためのはっきりとした計画
B.症状は混合性のエピソードの基準を満たさない。
C.症状は臨床的に著しい苦痛を認め、社会的、職業的、他の重要な領域
における機能の障害を引き起こしている。
D.症状は、物質(乱用薬物、投薬など)の直接的な生理学的作用や一般
身体疾患(甲状腺機能低下症など)によるものではない。
E.症状は死別反応ではうまく説明されない。すなわち、愛するものを失
った後、症状が2ヶ月を越えて続くか、あるいは著名な機能不全、 無価値感への病的なとらわれ、自殺念慮、精神病性の症状、精神運動
制止があることで特徴づけられる。
うつ病の治療
1.薬物療法
2.精神療法
認知療法、対人関係療法、行動療法、家族療法
うつ病の治療薬
第1世代
三環系
抗うつ薬
第2世代
イミプラミン(トフラニール)
アミトリプチリン(トリプタノール)
トリミプラミン(スルモンチール)
ノルトリプチリン(ノリトレン)
クロミプラミン(アナフラニール
アモキサピン(アモキサン)
ロフェプラミン(アンプリット)
ドスレピン(プロチアデン)
四環系
抗うつ薬
マプロチリン(ルジオミール)
ミアンセリン(テトラミド)
セチプチリン(テシプール)
SSRI
フルボキサミン(ルボックス、デプロメール)
パロキセチン(パキシル)
第3世代
その他
第4世代
SNRI
トラゾドン(レスリン、デジレル)
スルピリド(ドグマチール、アビリット)
ミルナシプラン(トレドミン)
その他のうつ病治療薬
1.その他の治療薬
リチウム(リーマス)
カルバマゼピン(テグレトール)
2.併用療法
抗不安薬
睡眠薬
整腸剤、下剤などの対症療法薬
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