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樹木画の統計的画像解析とその解釈(II)
樹木画の統計的画像解析とその解釈(II) 画像解析結果 ○高崎いゆき1・木之下みやま2・佐藤菜生1・岩満優美3・吉田勝明2(非会員) ・竹村和久4 1 2 3 4 ( 早稲田大学大学院文学研究科・ 横浜相原病院・ 北里大学大学院医療系研究科・ 早稲田大学文学学術院) Key words: バウムテスト,画像解析,質問紙心理検査 目 的 “本研究(I)-理論と方法”竹村らにおいて,描画の画像 解析の手法による画像特徴量の形式分析を提案し,樹木画を 用いて事例を示した。本研究では,提案した画像解析手法が 実際に応用可能であることを確認するために,精神病院の通 院および入院患者を対象にバウムテストと質問紙による心理 検査を実施し,樹木画の画像特徴量から得られる総合指標を 抽出し,質問紙結果との相関関係を分析した。また,疾病及 び関連保健問題の国際統計分類・ICD-10 における,うつ病エ ピソード(F32)患者の判別に寄与する画像特徴量を探索した。 2 成分は樹木画右上領域の濃淡差レベルの画像特徴量が影響 していた。特にプラス方向では空間濃度レベル依存法,濃度 レベル差分法・エントロピーの因子負荷が大きかった。第3 成分は樹木画右下領域の画像特徴量,特に空間濃度レベル依 存法・相関の因子負荷が大きかった。 表 2 画像特徴量と YG 性格検査結果との相関関係(N=45) 画像特徴量 AG 相関係数 G R S 空間濃度レベル依存法 左上相関:0゚ 左下相関:0゚ 左上相関:45° 左上相関:90° 右上相関:90° 左上相関:135° 濃度ヒストグラム 左上歪度: .311* .420** .306* .430** .372* .501** .427** .360* .296* 方 法 対象者 Y 病院入院患者および通院患者のうち 20 歳以上で 自記式質問紙への記入可能な患者を対象とし,各患者には研 .350* .318* **p <.01.*p <.05. 究の目的と方法を説明し研究参加に同意を得た。患者は 52 名(入院患者 13 名,外来患者 39 名) , (男性 22 名,女性 30 名) ,年齢(平均 36.5 歳,標準偏差 12.4)だった。Y 病院医 表 3 画像特徴量による 師により ICD-10 に基づき疾病分類された(F10-19 3 名,F30-39 うつ病エピソード群の判別 左 上領 域の 画像 特 19 名,F40-49 20 名,F50-59 1 名,F60-69 9 名) 。 徴量のうち表 3 の 10 画像特徴量 標準化 判別係数 心理検査の 心理検査の実施方法 Y 病院の診療の一環として医師の指示 項目を説明変数とし SGLDM左上エネルギー:0゚ 1.028 のもとに実施した。質問紙は Y 病院が通常使用している て,Y 病院患者の疾病 SGLDM左上エントロピー:0゚ 11.144 SDS(Self-Rating Depression Scale)および YG(矢田部ギルフォ 分類のうち F32(うつ SGLDM左上相関:0゚ -7.074 SGLDM左上局所一様性:0゚ 11.633 ード)性格検査を用いた。バウムテストは A4 用紙縦に B の 病エピソード)とそれ SGLDM左上相関:45° 6.288 鉛筆で描いてもらった。SDS 検査実施は 47 名、YG 性格検査 以外の疾病の判別分 SGLDM左上局所一様性:45° -2.542 実施は 45 名だった。 析を実施した。正準相 -4.973 SGLDM左上相関:90° SGLDM左上相関:135° 4.842 画像解析の 画像解析の方法 画像解析方法は本研究(I)竹村らをご参照。 関.568,p=.112d であ -3.521 GLDM左上エントロピー:0゚ 画像特徴量と 画像特徴量と 質問紙検査結果の 質問紙検査結果の 分析方法 バウムテストで り有意とはいえなか GLDM左上コントラスト:90° 1.788 描かれた樹木画のテクスチャー解析の画像特徴量 144 項目と ったが,全体の 79.2% 正準相関 .568 p p = .112 SDS および YG 性格検査結果との相関分析を実施した。 また, が正しく判別された。 79.20% 樹木画の画像解析から得た 144 項目の特徴量を主成分分析し, 判別率 成分ごとに負荷量の大きい変量から画像特徴量から得られる 考 察 総合的指標を求めた。 本研究では,Y 病院患者の樹木画の画像特徴量を用いた定 画像特徴量の 画像特徴量の判別分析方法 Y 病院患者をうつ病エピソード 量的な評価の可能性を探った。YG 性格検査結果と画像特徴 (F32)とそれ以外の疾病群に分け,樹木画の画像特徴量を説明 量の関係では,性格尺度 Ag(愛想の悪さ) ,G(一般活動性) , 変数として 2 群の判別分析を実施した。 R(のんきさ),S(社会的外交)と左上領域の画像特徴量に 有意な相関が認められ,画像特徴量が活動性因子群(Ag,G), 結 果 衝動性因子群(G,R),主導性因子群(A,S)の評定の一助となる可 画像 特徴 量と SDS 抑 うつ 検査 得点 との 間に は有 意な 能性が示唆された。樹木画の画像特徴量の主成分分析結果か (p<.05.)相関関係は認められなかった。YG 性格検査の性格尺 ら,3 成分が抽出され特に第 1 成分では下側領域の濃淡差レ 度 Ag(愛想の悪さ) ,G(一般活動性) ,R(のんきさ),S(社 ベルの画像特徴量が指標として得られた。また,判別分析結 会的外交)と画像特徴量との間で有意な(p<.05.)相関関係が認 果から Y 病院患者の疾病, うつ病エピソード(F32)の判別に左 められた。表 2 から性格尺度 S と空間濃度レベル依存法・相 上領域の画像特徴量 10 項目(表 3)が寄与する可能性が示唆 関の全ての角度との間に正の相関があることから,左上領域 された。現段階ではサンプル数が少なく,画像特徴量を使っ にいろいろな方向で線を描いている(多く描いている)人は た樹木画の解析結果は必ずしも統計的に有意ではなかったが, 社会的外交性が高い傾向が認められた。 一定の結果は得られたと言える。 樹木画の画像特徴量を変量とした主成分分析の結果 9 成分 が抽出された。その中で 80%以上の説明率を得た 3 成分でバ 引用文献 リマックス回転し,成分ごとに負荷量の大きい画像特徴量を 尾崎弘・谷口慶治 (1988). 画像処理―その基礎から応用まで 抽出した。第 1 成分は樹木画下側領域の濃淡差レベルの画像 共立出版(第 2 版) 特徴量が影響していた。特にプラス方向では空間濃度レベル (TAKASAKI Iyuki, KINOSHITA Miyama, SATO Nao, 依存法・エントロピーの因子負荷が,マイナス方向では空間 IWAMITSU Yumi, YOSHIDA Katsuaki, TAKEMURA Kazuhisa) 濃度レベル依存法・局所一様性の因子負荷が大きかった。第