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高精度放射線治療について こ 聴神経鞘腫を中心に
4 6 3 綜 説 高精度放射線治療 につ いて :聴神経鞘腫 を中心 に 青 山 英 史 新潟大学医歯学総合研究科 腫壕放射線医学分野 ・機能画像医学分野 Stereotactic Radiotherapy using Linac System for Vestibular Schwannomas HidefumiAOYAMA ni l , t ' . < i ( ) nofRa dL ' , 7 t j on( ) nL 、 OI 噸丁, . 物 要 t aUnl v e r s 毎′ Gr adu at eSc hoo lo fMed3 ' c a lB ndDe Bi B ISc 3 ' e nc es こ 買 司 ‡ ∃ 【 新潟大学病院 において高精度放射線治療装置の本格的稼働 が開始 となった.本 システムは優 れた画像誘導機能 が搭載 されてお り,非観血 的に 1mm 未満の物理精度 を担保 した定位照射 を 行 うことが可能で ある.聴神経鞘腫への定位照射の有効性 は既 に広 く認識 されてい るが,我 々 の検討 によ り腺癌径 巨 2c m 以下 かつ有効聴 力が保 たれ た状態 で治療 した場合 ,9 9%の腺癌制 御率 と 5-7割 の症例 で有効聴 力温存 が可能 で あ ることが示 され た.今後 ,当県 において も, 様 々な疾患 で有害反応 が少ない高精度の放射線治療が展開 され るであろう. も e r e o t a c t i c , r a di o t he r a p y, v e s t i bul a rs c hwa nnoma キ-ワー ド :S は じめ に 射 線 治療 も高 い精度 で行 うこ とがで きる最 新鋭 の 照射 装 置 で あ る.現 在 は高 精 度 照射 の基 本 と もい 本年 9円よ り新潟 大 学病 院 にお いて,高精度 放 え る転移 性 脳 腫 壕 の定位 照 射 を 9札 下 垂 体腫 壕 射 線治療 装置 ( No va l i sTX) が稼働 開始 とな った. な ど他 の頭 蓋 内疾 患 へ の定 位 照 射 を 1 0札 前 立 本装 置 は秀逸 な画 像 誘導機 能 に よ り,頭蓋 内や体 1月か らと,潔 腺 癌 へ の強 度 変 調 放 射 線 治 療 を 1 幹 部 の小 病 変 に対 す る定 位 放 射 線 照 射 ,頭 蓋 底 , テ ップ を踏 み なが ら適 応 を拡 大 して い る段 階 で あ 頭 頭部腺癌 や前 立腺 癌 な どへ の強度 変調放射線 治 l i sTXの特性 につ いて脳定位照 る.本稿 で は Nova 療 を比 較 的容 易 に行 うこ とがで き,また通常 の放 射 に絞 って概 説 し,聴 神経 鞘腫 に フ ォー カス を あ Re pr i ntr e que s t st o: Hi d e f u i Ao m y AMA Di v i s i o no fRa di a t i o nOn c o l o gy Ni i ga t aUni v e r s i t yGr a dua t eSc ho o lo fMe di c a l a ndDe n t a l Sc i e nc e s 1-7 5 7As a hi ma c hi -do T iChu o-ku, Ni i ga t a9 5 1-8 5 1 0J a pa n 別刷請求先 :〒9 51-8 5 1 0 新潟市中央区旭町適 1-7 5 7 新潟大学大学院医蘭学総合研究科放射線医学分野 青山英史 4 6 複 新潟 医 学 会雑 誌 第 1 2 5巻 第 9号 平成 2 3年 ( 201 1 )9円 図 ト a 図 1-b 図 1-ぐ 図 1 脳 定 位 照 射 にお け る固定 具 :観 血 的 ピ ン固定 を伴 った定 位 照 射 用 フ レ-ム ( a) ,熱 可塑性 プ ラスチ ックシェル ( b) ,No va l i sで使 用 す る プ ラスチ ックシ ェル ( C) てて,定位放射線治療橡の長期機能予後 につ いて 置す る小病変 に対 して通常の放射線治療 よりも高 自駿例 を元 に して私見 を述べ る. い放射線量 を照射す る.そのため患者 セ ッ トア ッ プ時の位置再現性 と照射 中の固定精度 を 巨 2mm Nova l i sTX を用いた脳定位照射 未満 に保つ必要 がある.従来 は 1mm 未満 の精度 を担保す るためには定位脳手術 と同 じようなフレ 脳定位照射では危険構造が隣接 した脳深部 に位 -ム ( 図 ト a) を頭 蓋骨 に観 血的 ピン固定 す る 青山 :高精度放射線治療 について :聴神経鞘腫 を中心に 図 211 1 X ィ a yl n l 咽et T u b eり D R Rl m a 9 e a 紬r R e g L S ! t a l 冊1 t T l ・ J b cl l ) D R Rl m L I L _ 1 0 . 1 f l o r R o 印S t l a t i o n( T u b e2 図 2-b 4 6 5 466 新潟医学会錐誌 第ま 2 5巻 第 95 才 平成 2 3隼 は0 1 及 )9月 図 2-。 図 2 新潟 大学 に導 入 され た 高粗 度 放 射 線 照射 装 置 佃o v a l i STX)( a ) ,逮 視 画像 と DR R( D廟t a He c o n s t r u c t e dr a d i o gr a p h y)による槻琵合 わせ ( b) ,コ-ンビ-ム CT (矢印) と治療計画用 CTによる位置 合わ せ 方法 ,2mm 未満 の精度 を求 め る場 合 には熱可塑 によるナ ビゲ-シ ョンシステムを用いて位置合わ 性 の プ ラスチ ックシェル ( 図 1-b) が用 い られ せ を行 う訳で あるが,当 システムの もう一つの特 て きた.No va l i sで使 用す る固定 貝 もプ ラスチ ッ 徴 は患者 の乗 る天板 にあ る.これ は Ⅹ,Y,Z方 向 図 1-C ),従来 の シェ クシェルの -一 種 で あるが ( に加 え,Ya w,Pi t c h,Rol lの傾 きを 6軸 で補 I 正し, ル と比 較 して骨 格 が強 化 され た構 造 とな って お 精度再現性 を 1mm 未満 にす ることがで きる超精 り,後述 す る画像誘導機 能 によ り位 置再現 精度 , 密 な天板 である.実際の運用ではここまでで照射 固定精度 いずれ も 1mm 莱滴 に納 め ることが可能 va l 豆 Sでは上記方法 して も問題 ないが,新型 の No となる. Tを掘 で位置合 わせ を した状態 で コーンビ-ム C 当 システムの最大の特徴 は,秀逸 な画像誘導機 像 して視覚的にずれがないか を確認す ることも可 能 とい える,これは赤外線 カメラによるナ ビゲ- 図 2-C).これ らの機 能 によ り,安 心 能で ある ( シ ョンシステムと,2つの天 吊 り式 フラ ッ トパ ネ して ピンポイン トに高線量 を処方す る定位照射 を ル X線検 出鼠 安心 して行 うことが可能 となる. そ して 2つの床埋 め込み式高電圧 図 2-a上 直 交す る Ⅹ線 発生 に よって構成 され ( 二軸の透視画像 と治療計 画用 に撮像 され た C Tか 定位手術的照射 と定位放射線治療 ら啓 構成 され た Di g豆 t alr econs も mC t eかa di ogr a phy ( DRR) を画像 7-ジ ョン機能 によ り両 者のずれ 定 位 放 射線 照 射 ( STI :St er eot a e t i ci r r a di a t i on) を 0. 1 mm 単位 で数値 化 す る こ とが 可能 とな る は,-回 に 太線 鼠 を照 射 す る定 位 手術 的 照 射 ( 図 2-ち) .そのずれ量 をもとに して赤外線 カメラ ( SRS:St er e ot a c t i cT a di os t ま T geY y) と物理精度 を保 熟i l:高精度放射線治療 について :聴神経鞘腫 を中心に 467 図 3 定位放射線治療後の画像変化 った まま数 回 に分 けて照射す る定位放射線治療 RSの限界点 で あることを が 1回照射 を用 いた S ( SET:St e r e o t a e も 豆 cr a d i o t he r a p y)に分けて定義 さ れる.観血的 ピン固定 を伴 う S RSはフレームを長 理解 してお く必要がある,現在 は先 に説明 した通 り,観血的 フレーム装着 を行わな くとも 十分な位 期間装着す ることで きない とい う技術的制約があ 置再現精度が得 られ るようになった ことか ら,分 る.そのため 1回,もしくは数回で照射 を終 わ ら RTの役割が増すであろ う 1 ト4 ) 割 を用いた S せ る必要があった. 脳定位照射の有害反応 として重要 なのは放射線 聴神経鞘腫の定位放射線照射 について 脳壊死で ある.これは照射後半年以降 に発症す る 聴神経鞘腫 は前庭神経,樽に下前庭神経か らの ことか ら晩期障害 に分額 され その発生因子とし て 1回線量の多寡 が重要な意味 を持つ.通常の放 ne u発生 が 多い と され る,また神経線維腫 症 ( 射線照射では晩期有害反応の リスクを低下 させ る r o 且bT O ma t O S i st y pe2,NF-2)で は両側 に発症 す ため 1回線量 を抑 え,数週間に分けて照射す る分 る,臨床症状 と してはめまい,聴 力低下,耳鳴 が RSは物理的線量分布 を 割照射法が用い られ る.S 多 く,腺癌 が大 きくなると三叉神経症状や顔面神 腫癌 に限局 させれば 1回照射のデメ リッ ト ( 晩期 経症状の伴 う症例の割合が多 くなる,治療法 と し 有害反応発生 リスク)は補 えるとい う仮定の もと mを に成 り立つ治療法であるが,現実的 には 2c て は経過観察 ,mi c r os ur ge r y,S RS,S好rがあ る. SRSは 2-2, 5 c m が治療 で きるサ イズの上限 で あ 超 える腫癌では晩期障害の リスクが高 まることか m 以上で も治療可能である. るが,SRTでは 2-3c ら授 与線量 を低 く抑 える必要 があ り,また 3c m Sa ka mo t oらが解析 した経過観察 と SRTの聴 力温 を超 え る腰 痛 で は合 併症 発 生 率 を許 容 範囲内 存率の比較では,SRT後 3年間の経過観察群 と有 ( 3-5%以内)に抑 えた うえで腺癌制御 を得るよ Ga r dne r-Ro be r t s o nio rI を) に 効聴 力温存率 ( うな満足すべ き線量投与がで きない.このあた り RT群 で は 6 0-7 0% 差 はないが,3年 以降 では S 4 6 8 新潟医学会雑誌 第1 2 5巻 第9号 平成 2 3年 は0 1 1 )9月 で固定す るのに対 して,経過観察群では低 下傾向 30 mm を超 えると水頭症 や一過性 の症状 悪化 も が続 くことが示 され た 5).その ため,北海道大学 2-3割の症例 で見 られ ることか ら滅 鼠手術 を行 病院では聴力低 下傾向がある場合には早期か ら機 った篠 にS RTを行 うなど集学 的治療 を考慮す る 極 的にS 打rを行 う方針 をとっていた. 必要があろう.そのためには耳鼻咽喉科医,脳神 以下 に 2008年 までに治療 した聴 神経 鞘腫 201 症例 ( 観察期間 中央値 72か員)の解析結果の概 経外科医と放射線科医が密 にコ ミュニケーシ ョン をとり,診療す る体制 を構築す ることが鍵 となる. 要 を示 す.照射前 の腺癌置太径 は平均 で 20mm, 430 / Oが 20-29mm,11%が 30mm 以上で あった. 参 考 文 献 腫癌径 と治療前の症状の関係では,20mm 以 上の 聴癌 を持 っている症例では 7割で既 に有効聴力は 失 われてお り ( Ga r 血 er-Rober t s oI 用 l以下 )の に対 し,2 0mm 未満 で は 5割で有効聴 力 が温存 ( Ga r dner-Rober t s on IorⅢ) されていた.また 20mm 以上では 1 1%の症例では CSFの吸収障害 が原因 と考 えられる交通性水頭症 を星 していた. SRTは 97%の症例で一回 1 . 8-2. OGyの通常分 割様式 で行 われ,総線 量 中央値 は 5 0Gyで ある. 神経鞘腫の ST王後の特徴的な画像変化 として嚢胞 .我 々 変性 とそれに伴 う一過性膨 大がある ( 図 3) の検討で は約 2割で一過性膨大がみ られサ イズの 大 きな膿癌 で より多 く見 られ る傾 向が示 され た. 冒 Cha ngTC,Shi T a t OH,Ao ya maH,Us hi kos hiS, Ka t oN, Kur odaS,王 s hi ka waT,Ho uki nK, I wa s a ki Ya ndMi ya s a ka紘:St e r e ot a c t i c呈 r r a di a t i o nf or i nt r a c r a ni l a a r t e r i o v e nous ma l f or ma t i on us i ng s t e r e o t a c t i cr a di o s ur ge r y or hypo f r a c t i ona t ed s t e r e o t a c t i cr a di o t he r a p y.I ntJRa di a tOnc oIBi o I Phys6 0: 8 61-87 0, 2 0 0 4. 2)Ao ya maH,Shi r a t o H,Ni s hi o kaT,Ka ge iK, Oni ma r uR,Suz ukiK,Us hi kos hiS,Ho uki nK, Kur o daS, AbeHa ndMi ya s a kaK: Tr e a t me ntout c o me of s i ngl e or hypo f r a e t 豆 ona t e ds i ngl ei s oc e n t r i cs t e r e o t a c t i ci r r a di a t i on ( S T壬 )us i nga l i ne a ra C e e 豆 e r a t orf ori nt r a c r a ni a la r t e r i o v e nous その発生時期 は 6割 が 1年以内,8割 が 2年以内 ma l f o ma t 主 o n. Ra d i o t he rOnc o 15 9 : 3 2 3-3 2 8 , 2 0 01 . 致 して,一部 Ka ge i K, 放e daJ , 3)Ao ya maH, Shi r a t oH, Oni ma m A, I s hi iN,Sa wa mur aYa ndMi y a s a kaK:Hy po 血, a ct i o na t e ds t e r e o t a c t i cr a di o t he r a p ya lo new it ho t i t who l e-br a i ni r r a di a t i o nf orpa t i e nt swi t hs o l i t a r y a ndo h gobr a i nme t a s t A S i sus i ngno nbv a s i v e点Ⅹat i o no ft hes kul l .I ntIRa di a lOnc o IBi o IPhys5 6: 7 9 3-8 0 0, 2 0 0 3. 4)Sa wa mur aY,Shi r a t oH,Sa ka mo t oT maH, Suz ukiK,On豆 ma nlR,I s u T,FukudaS a nd で ある.この一過性膨大の時期 に 一 の症 例 で交 通性 水頭 症 の悪 化 が見 られ ,特 に 30 mm を超 えるような大 きな腺癌では約 3割で シ ャン ト術 が必要 となった.また一過性膨大 を来 し た 症 例 で は 顔 面 神 経 麻 棒 の 程 度 (HouseBF a C kma nngy a deで評価)の一過性悪化 を 3割の . , 丈神締症状U) ・ 適性悪 化も 1割 の症例 症例で, : 過性 膨 太の明 で認めた∴ 方で耳鳴やめまい と 一 らかな関連性 はみ られなかった.。適性膨大 を来 した症例の 8割 は約 1年で縮小 に転 じ,それに伴 って症状の改善 を示 した.治療後 5年 目での最終 的 な腺癌制御率 は 20mm 未満 で 99%,20mm 以 上で 8 9%である.最終的な有効聴力温存率は小 さ な腺癌では約 7害勘 大きな腺癌では 5割であった これ らの結果か ら,20mm 以 下で,有効聴 力が 温 存 されてい る うちに S RTを行 うのが理想的で あ り,そうす ることで 1 00%近い腺癌制御が得 ら れ 5-7割で有効聴 力温存が期待で きることか ら な るべ く早期 に治療 すべ きと私 は考 える,また ,A oy a Mi y a s a kaa Ma na ge me ntofv es t i bul a TS e hwa nnomaby&a c t i o na t e ds t e r e o t a c t i cr a di o t he r a p y a nda s s o c i a t e de e r e br os pi na l触i dma l a bs o r p t i on. JNeur os ur g9 9 : 6 8 5-6 92, 2 0 03. 5)S hi r a t oH, Sa ka mo t oT, Sa wa mur aY, Ka ge iK, I s u T, Ka t eT,FukudaS,Suz ukia,SomaS,王 nuya ma Ya n( 1Mi ys a k; IK:Co mp a l i s onbぐ t W什t lO bs e r vat i o np o i 量 c ya nd血 ・ a c t i or l a t e ds t e r e o も a c t i er a di o t he F a p y( S況T)a sa ni ni t i a lma r i a ge me n tf o rv e s t i bt i 1 a rs e hwa nnoma .I ntIRa di a tOnc o 旦Bi o IPhys4 4: 5 4 5-5 5 0,1 9 9 9.