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特 許 公 報 特許第5753387号
〔実 7 頁〕 特 許 公 報(B2) (19)日本国特許庁(JP) (12) (11)特許番号 特許第5753387号 (45)発行日 (P5753387) (24)登録日 平成27年5月29日(2015.5.29) 平成27年7月22日(2015.7.22) (51)Int.Cl. FI A01N 25/20 (2006.01) A01N 25/20 101 A01N 53/06 (2006.01) A01N 53/00 506Z A01N 53/02 (2006.01) A01N 53/00 502A A01N 25/22 (2006.01) A01N 25/22 A01P (2006.01) A01P 7/04 7/04 請求項の数2 (全12頁) (21)出願番号 特願2011-3645(P2011-3645) (22)出願日 平成23年1月12日(2011.1.12) 大日本除蟲菊株式会社 (65)公開番号 特開2012-144476(P2012-144476A) 大阪府大阪市西区土佐堀1丁目4番11号 (43)公開日 平成24年8月2日(2012.8.2) 審査請求日 (73)特許権者 000207584 (74)代理人 100141586 平成25年12月18日(2013.12.18) 弁理士 (72)発明者 川崎 前置審査 沖中 仁 倫久 大阪府豊中市大黒町1丁目1番11号大日 本除蟲菊株式会社内 (72)発明者 浅井 洋 大阪府豊中市大黒町1丁目1番11号大日 本除蟲菊株式会社内 審査官 瀬下 浩一 最終頁に続く (54)【発明の名称】蚊取線香及びこれを用いた害虫防除方法 1 2 (57)【特許請求の範囲】 【発明の詳細な説明】 【請求項1】 【技術分野】 燃焼基材と、30℃における蒸気圧が2×10 ×10 − 2 − 4 ∼1 mmHgであるエムペントリン、メトフルト 【0001】 本発明は、蚊取線香及びこれを用いた害虫防除方法に関 リン、プロフルトリン、トランスフルトリンから選ばれ するものである。 る少なくとも1つであるピレスロイド系殺虫剤を有効成 【背景技術】 分として含有し、更に2,6−ジ−ターシャリーブチル 【0002】 −4−メチルフェノール(BHT)をジ−t−ブチル− 従来、蚊等の飛翔害虫や吸血性害虫を駆除する方法とし フェノール系安定剤として含有した渦巻状の線香であっ て、燻煙させて用いる蚊取線香、加熱蒸散させる蚊取り て、その断面積が40∼80mm 2 であって、その断面 10 マットや液体式電気蚊取り、あるいは、風力ならびに遠 の幅が厚さより1.2∼1.7倍大きく、前記ジ−t− 心力を用いる回転式(ファン式)蚊取り、殺虫成分を含 ブチル−フェノール系安定剤を、前記ピレスロイド系殺 む液体を空中に噴霧するスプレー、噴射ガスを利用した 虫剤に対して、0.07∼0.2倍量配合した蚊取線香 エアゾールなどが広く用いられている。屋外での防除に 。 あたっては、人体に直接塗布する人体用忌避剤も用いら 【請求項2】 れており、電池を用いた回転式蚊取りも携帯できるため 請求項1に記載の蚊取線香を燃焼させ、有効成分を防除 に屋外でも使用できる。とりわけ蚊取線香は燃焼熱によ 必要な空間に揮散させることによって忌避、防虫、殺虫 り殺虫成分が煙を伴って広がる点で非常に効果的である 効果を発現させることを特徴とする野外の害虫防除方法 。近年では園芸ブームやアウトドアブームといった屋外 。 シーンの多様化に伴い、蚊等に悩まされる場面が増えて ( 2 ) JP 5753387 B2 2015.7.22 3 4 きている。そのため、屋外で使い勝手が良く、従来の線 は断面積が大きく燃焼部分の進行速度が遅いため、熱分 香より広い空間に対して防除効率の高い製剤が望まれて 解を受ける温度領域に達するまでには時間がかかる。そ いる。 の結果、揮散に最適な温度領域が充分時間確保されるこ 【0003】 ととなり、有効成分が熱分解により受けるロスを低減す かかる状況から、蚊取線香についても燃焼性を向上させ ることができ、効率よく揮散させることができる。そし 、殺虫成分の揮散効率を高めるなどの試みがなされてき て、太くなることで燃焼熱も高まり、揮散した薬剤を周 た。例えば、特許文献1(特許第4226093号)に 囲に拡散させる力にも優れている。さらに、太く強度が は、大型筒状形態にして空気取入口を備えることで、着 増すことで衝撃にも強くなっているため、屋外での持ち 火性、燃焼性及び拡散性を向上できること、さらに流動 運びにも好適である。また、従来品同様線香立ても使用 パラフィンや植物油を配合することによって煙量を増や 10 でき、屋外で懸念される湿気の影響も受けにくく渦巻が すことが可能であることが記載されている。このような 垂れにくい。以上のように、本発明品は屋外使用に適し 線香は、従来の渦巻型ではないため、広く市販されてい たものであるとの知見を得て、有用な害虫防除方法を完 る線香立てや線香皿で用いることはできず、使い勝手が 成するに至った。 悪い。さらに、煙が多すぎると使用場所も制約される。 【先行技術文献】 線香直近では多量の煙によって、むしろ作業がしにくく 【特許文献】 、また携帯できないため、移動しながらの使用には適さ 【0005】 ない。そこで本発明者らは、これまで燃焼性や拡散性の 【特許文献1】特許第4226093号 向上に注力されてきた蚊取線香のコンセプトを見直し、 【特許文献2】特許第3554900号 屋外の活動シーンでより使用しやすい蚊取線香の開発に 【発明の概要】 取り組んだ。従来の蚊取線香の煙を単に増やすだけでは 20 【発明が解決しようとする課題】 、実用時の使い勝手が悪いばかりでなく、有効成分の揮 【0006】 散とその後の拡散は必ずしも十分でなく、従って防除効 本発明は、より屋外使用に適した防除効率の高い蚊取線 果の飛躍的な向上が期待できない可能性がある。そこで 香及びこれを用いた害虫防除方法を提供することを目的 、防除効率の向上には有効成分を効果的に揮散、拡散さ とする。 せることが必須と考えて、線香の断面積と有効成分の蒸 【課題を解決するための手段】 気圧に着目することで、有効成分の揮散、拡散性が向上 【0007】 するという知見を得た。さらに、線香の断面形状と煙量 本発明は、以下の構成が前記目的を達成するために優れ 及び拡散性との関係を鋭意検討した結果、本発明が従来 た効果を奏することを見出したものである。 品の渦巻線香と同様の燃焼具を使用でき、煙量を視認し (1)燃焼基材と、30℃における蒸気圧が2×10 やすくなる程度の増加に留め、加えて有効成分を効率よ 30 4 く揮散させ、その後に拡散させるために有用であること フルトリン、プロフルトリン、トランスフルトリンから を見出した。 選ばれる少なくとも1つであるピレスロイド系殺虫剤を 【0004】 有効成分として含有し、更に2,6−ジ−ターシャリー また、特許文献2(特許第3554900)では、揮散 ブチル−4−メチルフェノール(BHT)をジ−t−ブ 率の向上を図る工夫として、ピナミンフォルテを有効成 チル−フェノール系安定剤として含有した渦巻状の線香 分とする蚊取線香の断面積と燃焼速度の最適範囲を示し であって、その断面積が40∼80mm ている。従来、線香の太さを一定以上に大きくすると有 の断面の幅が厚さより1.2∼1.7倍大きく、前記ジ 効成分の揮散率が顕著に低下することが知られていた。 −t−ブチル−フェノール系安定剤を、前記ピレスロイ 特許文献2記載の蚊取線香では、従来の線香よりも断面 ド系殺虫剤に対して、0.07∼0.2倍量配合した蚊 積が小さく細い形状にすることにより揮散率が向上して 40 取線香。 いる。しかしながら、このような断面積の小さい線香は (2)(1)に記載の蚊取線香を燃焼させ、有効成分を それに応じて燃焼熱が小さい為に揮散した薬剤のその後 防除必要な空間に揮散させることによって忌避、防虫、 の拡散性に劣り、さらに屋外シーンで使用した場合の衝 殺虫効果を発現させることを特徴とする野外の害虫防除 撃にも弱い。本発明では、従来の有効成分より蒸気圧が 方法。 高く適切な範囲にある有効成分を選択することにより、 【発明の効果】 従来品よりもさらに太い形状にしても、広範囲空間の防 【0008】 除に必要な薬剤量を揮散させることができることを見出 本発明の蚊取線香は、従来の蚊取線香による防除方法の したものである。一定以上の太さを有する線香の燃焼条 利点を踏襲しつつ、さらに防除効率を向上させることが 件に適した蒸気圧を有する殺虫成分は、燃焼部分の手前 できたため屋外使用に極めて有効である。また、有効成 の比較的低温領域で揮散が開始される。また、本発明品 50 分の拡散力が高められており、揮散効率も従来線香と同 ∼1×10 − 2 − mmHgであるエムペントリン、メト 2 であって、そ ( 3 ) JP 5753387 B2 2015.7.22 5 6 等程度を確保し、しかも強度が向上しつつも簡便に手で レモンユーカリ油、ヒバ油、ラベンダー油、オレンジ油 折ることができ、煙の量も多すぎることがなく使い勝手 、グレープフルーツ油、シダーウッド油、ゼラニウム油 がよい。 、タイムホワイト油、ハッカ油などの揮散性成分を配合 【図面の簡単な説明】 しても構わない。 【0009】 なお、本発明では、便宜的に蚊取り用の製剤として称す 【図1】本発明の蚊取線香の断面の様子を示す模式図で るが、蚊以外の害虫にも適用されるものであることは言 ある。 うまでもない。本発明を適用し得る代表的な対象害虫と 【発明を実施するための形態】 しては、アカイエカ、コガタアカイエカ、ネッタイイエ 【0010】 カ、ヒトスジシマカ、チカイエカ等のイエカ類、ユスリ 本発明では殺虫成分として、30℃における蒸気圧が2 10 ×10 − 4 ∼1×10 − 2 mmHgであるピレスロイド カ類、チョウバエ類、ノミバエ類、イエバエ類、アブ類 、ブユ類、ヌカカ類、イガ類、ハチ類等の飛翔昆虫を例 系化合物から選ばれた1種又は2種以上が用いられる。 示することができる。 このような化合物は常温揮散性を有するものであり、例 【0012】 えば、メトフルトリン、プロフルトリン、エムペントリ 従来の蚊取線香における拡散性の向上、燃焼時の立ち消 ン、トランスフルトリン、テラレスリン、フラメトリン え、揮散率、強度等の問題点について種々検討した結果 などがあげられ、従来蚊取線香に広く用いられてきたア 、本実施形態の線香の断面積は、40∼80mm レスリン系ピレスロイドはこの蒸気圧の範囲から外れる るものとした。 (例えば、特開2009‐35569、Medical entomo 断面の形状については、四角や丸などいかなる形状でも logy and zoology.55、289-294(2004) 構わない。また、凸型や凹型など必要に応じて溝を形成 等に記載)。こうした蒸気圧の高い殺虫成分は、もとも 20 してもよく、あるいは中空の形状としてもよい。 と蚊取線香用途としてではなく、風力などわずかなエネ 断面については、好ましくは、幅が厚さより1.2∼1 ルギーによって揮散することから、回転式(ファン式) .7倍大きいほうが適している。 蚊取という新しい製剤に利用、開発されてきた背景をも なお、本発明でいう断面の幅とは、図1で示したように つ。 線香の渦巻きで形成される平面に対して水平な方向をい これらの化合物の中でも、蒸気圧や安定性、基礎殺虫効 い、平面に対して垂直な方向を厚さと呼ぶこととする。 力などを考慮すると、本発明の目的には、エムペントリ また、燃焼速度は前記断面に応じて60分/10cm∼ ン、メトフルトリン、プロフルトリン、トランスフルト 100分/10cmと設計することが望ましい。これに リンがより好ましい。 より渦巻外寸と燻煙時間を従来線香と同等程度確保した なお、ピレスロイド系化合物の酸部分やアルコール部分 渦巻線香が得られ、実用性が高い。 において、不斉炭素や二重結合に基づく光学異性体や幾 30 こうして本発明品は屋内外問わず広範囲に防除効力を発 何異性体が存在する場合、それらの各々や任意の混合物 揮することが可能となった。市販されている従来線香は も本発明に包含されることはもちろんである。 屋内においては8畳程度、屋外においては線香の近辺が 【0011】 防除可能範囲であるのに対し、本発明品の防除範囲は、 また、本発明の目的に支障を来たさない限りにおいて、 屋内外ともに従来比で20倍以上の広空間を実現した。 前記殺虫成分よりも蒸気圧の低い従来の汎用ピレスロイ 【0013】 ド系化合物、例えばアレスリン、プラレトリン、ピレト 以下、本発明で用いる蚊取線香について述べる。 リン等、あるいはピレスロイド系とは異なる他の殺虫剤 蚊取線香は、上記殺虫成分や揮散性薬剤に、必要ならば や忌避剤成分等、あるいは天然植物精油や天然もしくは ピペロニルブトキサイドやN−(2−エチルヘキシル) 合成香料、例えばジヒドロミルセノール、オクタン酸ア −ビシクロ[2,2,1]−ヘプタ−5−エン−2,3 リル、シクロヘキシルプロピオン酸アリル、イソアミル 40 −ジカルボキシイミドのような効力共力剤を加え、更に オキシ酢酸アリル、シクロヘキシルオキシ酢酸アリル、 粘結剤及び線香用基材を混合して製造される。 テルピネオール、シトロネラール、シトラール、ノナナ 粘結剤としては、タブ粉、澱粉、メチルセルロース、カ ール、ゲラニオール、ネロール、ボルネオール、デカノ ルボキシメチルセルロース等があげられ、一方、線香用 ール、リナロール、ジヒドロリナロール、テトラヒドロ 基材としては、木粉、除虫菊抽出粕粉、柑橘類の表皮粉 リナロール、ロジノール、メントール、p‐メンタン‐ 、ココナッツシェル粉末等の植物性粉末や、木炭粉、素 3,8‐ジオール、チモール、メンタン、カンフェン、 灰などの炭素粉末を例示できる。 ピネン、リモネン、β‐ヨノン、ヘキサン酸アリル、ヘ なお、線香には、必要により、色素、防腐剤、安定剤、 プタン酸アリル、蟻酸ゲラニル、蟻酸シトロネリル、酢 界面活性剤、分散剤、溶剤等が含有されてもよい。色素 酸ゲラニル、酢酸シトロネリル、酢酸ネリル、メチルサ としては、例えばマラカイトグリーンなどの有機染料が リシレート、シトロネラ油、シナモン油、ユーカリ油、 50 あげられ、防腐剤としては、例えばソルビン酸、デヒド 2 とな ( 4 ) JP 7 5753387 B2 2015.7.22 8 ロ酢酸、p−ヒドロキシ安息香酸等の酸、あるいはそれ 製造しても構わない。 らの塩等が代表的である。 【実施例】 【0014】 【0017】 また、安定剤としては、一般に酸化防止剤として知られ 次に具体的実施例ならびに試験例に基づいて、本発明の るジ−t−ブチル−フェノール系安定剤や、前記炭素粉 蚊取線香を更に詳細に説明するが、本発明はもちろんこ 末に対する安定剤としてのポリエチレングリコール等が れらに限定されない。 あげられ、特に、沸点が250℃以上のジ−t−ブチル 【0018】 −フェノール系安定剤を添加することは好ましい。かか 試験例1(各種断面積による有効成分の揮散率) る安定剤には、2,6−ジ−ターシャリーブチル−4− トランスフルトリン0.2部とBHT0.04部を、粘 メチルフェノール(BHT)、2,2’−メチレンビス 10 結剤(タブ粉、澱粉)並びに線香用基材(木粉、除虫菊 (4−メチル−6−ターシャリーブチルフェノール)、 抽出粕粉)99.76部に均一に混合後、色素、防腐剤 2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−ターシャリ を含む水を加えて混練した。押出機と打抜機にかけて渦 ーブチルフェノール、4,4’−ブチリデンビス(3− 巻型に成型し、一定の長さに切り風乾にて乾燥したもの メチル−6−ターシャリーブチルフェノール、4,4’ を蚊取線香とした。この蚊取線香について、殺虫成分の −チオビス(3−メチル−6−ターシャリーブチルフェ 揮散率を測定したところ下記表1の結果を得た。なお、 ノール)、2−ターシャリーブチル−6−(3−ターシ 殺虫成分の揮散率は蚊取線香を燻煙させ、揮散した有効 ャリーブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル) 成分をトラップして、分析することによって測定した。 −4−メチルフェニルアクリレート、2,4−ジ−ター 【0019】 シャリーブチルフェニル 【表1】 3,5−ジ−ターシャリーブ チル−4−ヒドロキシベンゾエート等が挙げられる。 20 このような安定剤を添加することにより、ピレスロイド 系化合物の保存時における経時的な安定性のみならず、 従来品よりも太い形状の本発明線香の燻煙時の安定性も 著しく増強させ得るものである。安定剤の添加量として は、ピレスロイド化合物に対し、0.01∼0.5倍量 を配合するのが好ましい。 【0015】 界面活性剤や分散剤は、殺虫成分等を含む分散液の調製 に適宜用いられ、このようなものとして、例えば、ポリ オキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレ 30 ンアルキルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンポ 【0020】 リオキシプロピレンアルキルエーテル類、ポリオキシエ 表1の考察 チレンアルキルアミノエーテル類などのエーテル類、ポ 市販されている従来の蚊取線香の断面積は20∼25m リエチレングリコール脂肪酸エステル類、ポリオキシエ m2であり、それより大きくなると揮散率に微弱な低下 チレンソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレ が見られるが、緩やかであった。ただし、80mm ングリセリン脂肪酸エステル類などの脂肪酸エステル類 超えると顕著な低下が見られた。結果として従来線香と 、ポリオキシエチレンスチレン化フェノール、脂肪酸の 同等程度の揮散率を確保できる断面積の最適範囲は20 ポリアルカロールアミド等を例示できる。 ∼80mm また、上記分散液の調製に用いる溶剤としては通常、沸 有効成分を選択することで、断面積を増大させても有効 点が150∼350℃の飽和炭化水素系溶剤が好適であ 40 成分の揮散率を適正水準に維持できることが示された。 る。 なお、本発明の断面積が80mm 【0016】 BHTを配合しないものについても揮散率を測定したと 本発明に係わる蚊取線香を調製するにあたっては、公知 ころ62%で、BHTの配合が燻煙時のトランスフルト の製造方法を採用できる。例えば、プレミックス粉(殺 リンの安定性を向上させ得ることが認められた。 虫成分や効力増強剤などを線香用基材の一部に含有させ 一方、蚊取線香に従来汎用されてきたピナミンフォルテ たもの)と残部の線香用基材及び粘結剤を混合したもの 等を有効成分とする場合には、断面積の増大に伴い揮散 に水を加えて混練し、続いて、押出機、打抜機によって 率が顕著に低下すると言われており、特許文献2では断 成型後、乾燥して蚊取線香を製造すればよい。また、粘 面を2倍太くすることで、揮散率が通常時の3分の2ま 結剤及び線香用基材のみを用いて成型後、これに殺虫成 で低下する旨が報告されている。 分等を含む液剤をスプレーあるいは塗布または含浸して 50 【0021】 2 2 を であった。このことから、蒸気圧の適切な 2 の蚊取線香につき、 ( 5 ) JP 9 5753387 B2 2015.7.22 10 試験例2(各種断面積による強度) し、風乾にて乾燥したものを蚊取線香とした。この蚊取 メトフルトリン0.1部とBHT0.02部を、粘結剤 線香の煙量を求めたところ下記表3の結果を得た。なお (タブ粉、澱粉)並びに線香用基材(木粉、除虫菊抽出 、煙量は透明円筒内(直径19cm、高さ43cm)で 粕粉)99.88部に均一に混合後、色素、防腐剤を含 線香を所定時間燻煙させ、その後線香を取り出し2分間 む水を加えて混練した。押出機と打抜機にかけて渦巻型 煙を拡散後、センサー(OMRONスマートセンサー、 に成型し、風乾にて乾燥したものを蚊取線香とした。こ ZX−LT010透過型センサーヘッド)により、円筒 の蚊取線香について、強度を測定したところ下記表2の 内を通過するレーザー光の受光レベルを検知した。円筒 結果を得た。なお、強度はフォースゲージ(IMADA 内に何も入れないブランクの表示値と、線香を用いた測 電動式計測スタンド、MV−500NII)を用いて、 定終了時の表示値との差を煙量指数として求めた。表3 厚み方向に力を加えることにより破断強度を測定して求 10 では、比較例の煙量指数を基準とする相対値で示した。 めた。 【0025】 【0022】 【表3】 【表2】 【0026】 表3の考察 従来線香の煙量指数に対して、本発明品の煙量は微増程 【0023】 度であり、必要以上に多くなく使いやすい適度な量であ 表2の考察 った。また、断面積の幅を厚さより1.2∼1.7倍大 市販の従来線香の強度2.3kgfに対して、本発明品 きくすることで、つまり同じ断面積でも幅を大きくする は断面積が大きくなるので3倍以上の十分な強度を備え ことで、煙の立ち昇る帯状の幅が大きくなる様子が確認 るが、従来品の厚さと幅の比をそのまま適用しても、使 でき、屋外でも煙を認識することが容易であった。 い勝手がよく、渦巻外寸と燻煙時間を従来線香と同等程 30 比較例で示した特許文献1に該当する線香は10倍近い 度確保できるものにはならない。そこで本発明に係わる 煙量となり、燃焼性は高いものの屋内閉鎖空間では瞬時 線香の太さに適応した厚さと幅の比の最適領域を探索し のうちに煙が充満するため使用には適さず、野外におい たところ、その比が1.2∼1.7が良好であることが ても多量の煙により使用場所が制約される上、作業スペ 判った。これにより、屋外に持ち出す上で衝撃にも強い ース近辺での使用にはふさわしくなかった。 という利点がある。それだけでなく、渦巻線香を使用す 【0027】 る分だけ手で折って燻煙することも実用上望まれるので 試験例4(各種断面積による拡散威力) 、手で折れる程度の強度を確保する必要がある。そのた プロフルトリン0.3部とBHT0.03部を、粘結剤 2 めには断面積が40mm 以上で、かつ幅を厚さより1. (タブ粉、澱粉)並びに線香用基材(木粉、除虫菊抽出 2∼1.7倍大きくすることで、強度は向上しつつも簡 粕粉)99.67部に均一に混合後、色素、防腐剤を含 便に手で折ることができるような、取り扱い上便利な適 40 む水を加えて混練した。押出機と打抜機にかけて渦巻型 度な強度を確保することが可能となった。さらに、市販 に成型し、風乾にて乾燥したものを蚊取線香とした。こ の線香皿にスムーズにセットでき、従来線香と同様に携 の蚊取線香について、燃焼時の上昇気流の速度と煙の拡 帯使用も可能で線香皿表面温度も従来品並みである実用 散速度を測定したところ下記表4の結果を得た。なお、 上優れた形状であった。 上昇気流の速度の測定には、線香の燃焼部分の1cm上 【0024】 方にガラスシリンダ(内径3cm、長さ20cm)を縦 試験例3(各種断面積による煙量) 向きに設置し、その中を上向きに通過した煙がシリンダ エムペントリン0.3部とBHT0.02部を、粘結剤 のさらに1cm上方に設置した風速計(KANOMAX (タブ粉、澱粉)並びに線香用基材(木粉、除虫菊抽出 6004)のセンサー部を通過する速度を測定して求め 粕粉)99.68部に均一に混合後、防腐剤を含む水を た。また、煙の拡散速度の測定には、円筒(内径20c 加えて混練した。押出機と打抜機にかけて渦巻型に成型 50 m、長さ86cm)を横向きに設置し、その一端に線香 ( 6 ) JP 11 5753387 B2 2015.7.22 12 を設置してすぐにその一端を締め切り、他端から煙が出 させ、各線香から風下1mから3mまでの1m刻みの位 てくるまでの時間を測定した。 置に被験者が立ち、10分までに集まってくる蚊の数を 【0028】 数え、コントロール(線香に火をつけていない状態)と 【表4】 比較して飛来抑制率を求め、下記表5の結果を得た。 【0031】 【表5】 【0029】 表4の考察 本発明品の煙の上昇速度は1.4∼1.7倍、また拡散 【0032】 速度は1.8倍向上した。この結果で示されたように、 表5の考察 本発明品は煙がすばやく立ち昇り周囲に拡散する様子が 20 従来の断面積の蚊取線香では、燻煙した線香の近辺では 目視で観察された。このことから有効成分も同様に広い 一定の効果が示されたが、離れていくにつれて防虫効果 範囲にすばやく運ばれることが推察された。 は低下し、3m以上離れた空間では実用効力は得られな 本発明品は屋外でも使いやすい煙の量で、拡散性に優れ くなった。 たものである。 一方、本発明品では、線香から3m離れた広い空間にお 【0030】 いても十分な防除効力が示された。本発明品の煙は必要 試験例5(広い空間での防除効力) 以上に多すぎることはなく、より広い範囲まで効果を示 トランスフルトリン0.1部とBHT0.02部を、粘 したことから、殺虫成分を効率よく揮散させることで、 結剤(タブ粉、澱粉)並びに線香用基材(木粉、除虫菊 快適に野外で使用できることが可能となった。 抽出粕粉)99.88部に均一に混合後、防腐剤を含む 【産業上の利用可能性】 水を加えて混練した。押出機と打抜機にかけて渦巻型に 30 【0033】 成型し、風乾にて乾燥したものを蚊取線香とした。この 本発明の蚊取線香は、広範な害虫防除分野において須ら 蚊取線香について、屋外で従来の渦線香と比較して燃焼 く利用可能である。 【図1】 ──────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 米国特許出願公開第2005/0249766(US,A1) ( 7 ) JP 5753387 B2 2015.7.22 特開2010−100603(JP,A) 特開2008−137987(JP,A) 特開2008−013547(JP,A) 個人のブログ,2006年 7月,[平成26年10月23日検索]、インターネット<http://k yoto.air-nifty.com/uramichi/2006/07/index.html> パワー森林香,[平成26年10月23日検索]、インターネット<http://item.rakuten.co.jp/ kodamaichiba/428618/> 森林香,[平成26年10月23日検索]、インターネット<http://item.rakuten.co.jp/kodama ichiba/428617/> 断面積写真,[平成26年10月23日検索]、インターネット<http://store.shopping.yahoo. co.jp/diy-tool/4971833010145.html> 虫除け商品,[平成26年10月23日検索]、インターネット<http://outback.cup.com/insec t_repellent.html> (58)調査した分野(Int.Cl.,DB名) A01N 25/20 A01N 25/22 A01N 53/02 A01N 53/06 A01P 7/04