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第5回会合(議事概要)(PDF:58KB)
公共調達と競争政策に関する研究会(第5回)議事概要 平成15年9月 8 日 公 正 取 引 委 員会 1 日 時 平成15年9月2日(木)13:00∼15:05 2 場 所 公正取引委員会大会議室 3 議 題 (1) 入札談合に対する発注者の取組 (2) 米欧における公共調達制度の概要 4 議事概要 (1) 最初に村上会員から「入札談合に対する発注者の取組」について,また,京都産 業大学法学部の楠講師から「米欧における公共調達制度の概要」について,それぞ れ資料に基づき報告が行われ,その後,会員間で自由討議が行われた。会員の発言 の概要は以下のとおりである。 (入札談合に対する発注者の取組) ○ 指名停止はペナルティとして有効であるという議論があるが,他方,指名停止は単 に指名しないというだけであり,行政処分ではないとされる。実際のところ,指名停 止という手段はどこまで使えるのか。 ○ 現在の法解釈では,行政機関が行う入札は,契約自由の原則が適用される私法行為 であり,行政処分ではないと考えられている。そのため,発注者がある業者に入札へ の参加を認めなかったからといって,そのことについて業者は争うことはできない。 なお,会計法は発注者たる行政機関の内部規律を定めたものであり,受注者との関係 に影響を及ぼすものではないと考えられている。 ○ 発注者に寄せられる談合情報は,具体的なものから漠然としたものまで様々である。 談合情報が寄せられると議会やマスコミが注目するため,何らかの形で調査を実施せ ざるを得ないが,最近は件数も多く発注者にとっては負担である。 ○ 指名停止は,6か月以上の長期間にわたって実施された場合には,業者は相当の不 利益を被ることとなり,談合抑止の観点から有効である。 ○ 指名停止は,業者に経済的不利益を課すものであり,これにより業者のコンプライ アンスが促進されるので抑止効果がある。 (米欧における公共調達制度の概要) ○ 米国の公共調達制度については,1984年の「契約における競争法」の制定前後 の大幅な制度改革の後,90年代のクリントン政権時代にも制度改革が行われている。 後者は,現在の我が国のような最低価格自動落札制ではうまくいかないという共通認 識の下,交渉方式の導入がポイントであった。そうした制度改革の流れもフォローす る必要があろう。 ○ 中小企業の保護に関する施策と,地元企業の保護に関する施策は,分けて議論する 必要がある。 ○ 米国では,ある入札で談合した業者に対して,すべての発注者(行政機関)が横並 びで公共調達への参加を禁止する措置を採っているが,これは制裁という位置付けな のか。 1 ○ 米国における法令違反者等に対する禁止措置は,将来にわたる政府契約の健全性を 確保するための措置であり,過去の違反行為に対する制裁である刑事罰とは性質を異 にする。 ○ 米国やEUの一般競争入札では,資格要件を満たした業者にのみ入札参加を認めて いるようであるが,一般競争入札に資格要件を設けることは可能なのか。 ○ 一般競争入札に資格要件を設けることは可能であり,我が国の一般競争入札におい ても何らかの資格要件が設定されている。例えばEUでは,財務の状況や技術のほか, 社会性の要件があり,公的保険を支払っていない業者は公共調達には参加できない。 ○ 米国やEUでは,我が国のような競争入札方式のほか,交渉方式など多様な契約者 選定方式があるが,どの場合にどの方式を用いるのかという点について,法令の規定 だけでなく,実際の運用についてもフォローする必要があろう。 ○ EUでは,公開入札方式にするか制限的入札方式にするかについての基準はなく, 各発注者の判断に委ねられているが,当該判断についての情報を公開する必要がある。 ○ 契約者選定に当たっての評価要素が価格のみのものと,価格以外の要素も含めて判 断されるものとの仕分けの基準は何か。 ○ 米国では,競争入札が時間的に可能,スペックが明確といった4条件を満たす場合 には,競争入札が行われ,価格だけで判断される。 ○ (4条件が満たされない場合については,競争的プロポーザルにより価格や技術等 の要素で総合評価が行われることになるが,その場合には)価格や技術といった要素 をどのような優先順位としているかの情報について公開する必要がある。 ○ 米国では不服申立制度についてこれまでも様々な取組が行われているが,有効に機 能するための条件は必ずしも明らかではない。業者にとって発注者に不服を述べるこ とが難しいのは各国共通の問題であろう。 (2) 最後に,金子座長から,米欧では,社会環境の変化に伴って生じた発注者側の多 様なニーズと公共調達制度との乖離を解消するために制度改革を実施してきてお り,我が国においても時代の進展に即した公共調達制度の見直しが必要であるとの 発言があった。 (3) 次回の開催日時は 10月7日(火) 午前10時とされた。 以上 (文責 公正取引委員会事務総局。速報のため事後修正の可能性あり) 問い合わせ先 公正取引委員会事務総局経済取引局総務課 電話 03−3581−5476(直通) ホームページ http://www.jftc.go.jp 2 資料1 入札談合に対する発注者の取組について 1 談合情報の取扱等 ・ 事情聴取の実施状況 ・ 発注者における過去の入札結果の分析 ・ 公正取引委員会への情報提供の運用の現状等 2 指名停止の運用の現状と課題 ・ 指名停止基準(どこまでを対象とするか等) ・ 指名停止の時期 ・ 指名停止の期間 3 損害賠償の運用の現状と課題 ・ 損害賠償請求の現状と課題 ・ 損害額の認定 ・ 違約金特約条項の創設 4 関連事項 ・ 入札監視委員会等への苦情申立制度 ・ 発注者側の関与 本研究会の主要論点 2 個別論点 (関係箇所抜粋) 参 考 以下の論点に沿って,具体的な解決策の在り方について検討する。 (2)入札談合に対する発注者としての厳正な対処 ア 入札談合は,発注者側に提出される工事費内訳書等の入札関係資料や,落札者や入札価格の推移により相当程度推測されるもの であるため,発注者側が入札情報に基づき入札談合を常時監視する体制を構築することは,入札談合の防止に有効と考えられる。 このため,発注者においても,形式に流れることなく有効な調査を実施するため,発注担当部局から独立した,専門家による監視 機関を設置し,入札情報の分析を行うべきではないか。また,事情聴取については,情報分析において有意な結果が得られた場合 に限り行うべきではないか。 イ 発注者における措置(指名停止・損害賠償)の厳正な運用は,入札談合の防止に有効と考えられる。他方,例えば指名停止措置 を課すタイミングや入札談合が行われた場所等の扱いについて発注者間でばらつきがあり,事業者に過度な負担となるケースもあ る。指名停止の運用については,中央公契連において一定の運用基準が示されているが,発注者間の運用のばらつきについて調整 を行うとともに,現在必ずしも積極的に行われていない損害賠償請求についても,運用基準の作成を行うべきではないか。 ウ 発注者から公正取引委員会に寄せられる談合情報は増加傾向にあるが,具 体性に乏しい情報も多く,必ずしも入札談合事件の摘 発につながらないケースが多い。このため,公正取引委員会と発注者が連携・協力して,発注者における入札談合の監視に係る具 体的手法等について研究するべきではないか。また,電子入札への本格移行を踏まえ,電子的に保存されている入札関係データを 公正取引委員会及び発注者の情報分析に活用しうるシステムの構築について検討してはどうか。 1 資料2 米欧における公共調達制度の概要 平成 15 年 9 月 2 日 報告者:楠茂樹 <注記> この報告の内容は、 2003 年 3 月及び 6 月に行った海外現地調査及びその前後における資料調査に基づいている。 <謝辞> ・ 本研究会会員の鈴木一・(財)建設経済研究所常務理事から,諸外国の制度概要につき貴重な資料提 供、アドバイスを賜った。 ・ 海外現地調査に当たり、佐藤潤先生から貴重な協力を賜った。 1 公共調 達制度 改革の 背景と 改善点 米国 欧州(EU)及び各構成国(特徴的なもののみ記載) ○「価格」のみを基準に契約者選定を行う競 争入札を原則としつつ、例外としての随意契 約が横行し、国家予算が非効率に使用された という問題性 ○「競争」が徹底されることで、効率性が向 上することのコンセンサス ○公共調達に求められる「競争性」の理解の あいまいさ、過去の改革の不徹底 ○「競争」が徹底されつつも、発注者側の多 様なニーズに対応するスキームの必要性 域内市場の統合の必要性 ○構成国間での経済取引の自由なアクセス実現 EU(各構成国は ○構成国内企業と構成国外企業との間の不平等な取り扱 省略:基本的に い禁止 EU指令の趣旨を 踏まえその規定 最近の改革動向としては、多様な発注機関のニーズに対 内容を踏襲して 応するスキーム作りの必要性(現在、EU指令改正作業 いる) 中) 1 日本 2 交渉の余地(契約 契約者選定に当 (交渉の余地: 者選定後、契約 たっての評価要 契約者選定前) 前) 素 (方式) (競争性:入札参 加者選定まで) (競争性:入札 時) 一般競争入 札 入札参加希望者す べてに開かれてい る 公開(但し、資格 価格のみ(総合 要件を満たすこと 評価落札方式の なし が必要) 余地あり) なし 公募型指名 競争入札 入札参加希望者す べてに開かれてい る 資格要件を満たす 価格のみ(総合 者から発注者が指 評価落札方式の なし 名した者による競 余地あり) 争 なし 指名競争入 札 開かれたものでは ない(発注者側の 判断) 資格要件を満たす 価格のみ(総合 者から発注者が指 評価落札方式の なし 名した者による競 余地あり) 争 なし 見積もり合 わせによる 随意契約 発注者が指定した者が契約者になる (競争性なし) コンペ方式 に基づく随 意契約 提出されたプロポーサルの比較を通じ て、発注者側が契約者決定(競争性あ り) 契約者選定プロセ スと「競争性」 2 総合評価 入札不調時の随意 契約において価格 交渉あり ? 米国 (方式) 完全かつ公開 の競争 契約者選定に当たって (交渉の余地:契約 交渉の余地(契約者 の評価要素 者選定前) 選定後、契約前) (競争性) 競争入札 価格のみ なし ? 競争的プロポーサ ル 総合評価 あり ? 受注を希望する (資格要件を満た 総合評価(二段階方式 競争手段の組み合 した)者がすべて の場合、二段階目は価 あり わせ 競争できる 格のみ) その他の競争手段 2 契約者 選定プ ロセス と「競 争性」 大企業を除いた上 での「完全かつ公 開の競争」:中所 一定のソース 企業保護のため を除いた上で の「完全かつ 公開の競争」 ソール・ソース化 している企業を除 いた上での「完全 かつ公開の競 争」:代替的ソー ス確保のため ケースによる ケースによる ? ? 一定規模以上の企 業を除いて、受注 ケースによる(「完全 ケースによる(「完 を希望する(資格 かつ公開の競争」型参 全かつ公開の競争」 ? 要件を満たした) 照) 型参照) 者がすべて競争で きる ソール・ソース化 している企業を除 ケースによる(「完全 ケースによる(「完 いて、受注を希望 かつ公開の競争」型参 全かつ公開の競争」 ? する(資格要件を 照) 型参照) 満たした)者がす べて競争できる 非競争的手段(典 非競争的手段 型的には、ソー 上記以外の手法 ル・ソース契約) ケースによる(ソー 総合評価(技術の唯一 ル・ソースの場合 あり 性などを考慮) は、なし) 3 欧州(EU)及び各構成国(特徴的なもののみ記載) 2 EU(各構成 国は省略:基 契約者 本的にEU指 選定プロ 令の趣旨を セスと 踏まえその規 「競争性 定内容を踏 襲している) (方式) (競争性) 契約者選定に当 (交渉の余 たっての評価要 地:契約者 選定前) 素 交渉の余地(契約 者選定後、契約 前) 公開入札方式 受注を希望する(資 格要件を満たした) 者がすべて競争でき る 価格のみの判 断、又は総合評 なし 価 ? 制限的入札方式 入札参加を希望する (資格要件を満たし た)者のうちから発 注者がセレクトした 者による競争 価格のみの判 断、又は総合評 なし 価 ? 交渉方式 入札参加を希望する (資格要件を満たし た)者のうちから発 注者がセレクトした 者による競争 4 総合評価 あり(但 し、ソー ル・ソース の場合は、 なし) なし(但し、ソー ス・ソースの場合 はあり) 日本 3 予定価格・ 上限価格 (価格を基 準に契約者 を選定する 場合) 競争入札:会計法29条の6第本文:入札が行わ れる場合、「契約担当官は・・・予定価格の制 限の範囲内で・・・最低の価格をもつて申込み をした者を契約の相手方とするものとする」 (地方自治法234条3項同旨) 。 随意契約:予決令99条の5:「契約担当官等 は、随意契約によろうとするときは、あらかじ め・・・予定価格を定めなければならない」と 定めている(地方自治法施行令167条の2第1項1 号:随意契約においても予定価格を算定するこ とが前提)。 米国 欧州(EU)及び各構成国(特徴的なもののみ記 載) なし(但し、上限拘束性のない「合理的価 格」を算定する価格分析技術についての規定 あり(FAR15.404-1(b)(2)) 「合衆国政府は多様な価格分析技術を用いて 公正で合理的な価格を確実なものとすること ができる。 (i) 勧誘に応じて提出され提示された価格の 比較。通常、適切な価格競争は価格の合理性 をもたらす。 (ii) 同様の対象物についての、過去に提示さ なし れた価格及び過去の政府契約・民間契約の価 ※フランスでは、かつて 格と現在提示されている価格の比較。その EU及び Adjudication(価格競争型入札)類 際、比較の有効性と過去の価格の合理性が確 各構成 型において、上限価格制を用いてい 認されうることが条件である。 国 た (iii) 価格設定の追加的な吟味を確実ならし める重要な不一致に焦点を当てる、ラフな指 標上の推測のためのものさしの手法利用と適 用。 (v) 提示された価格と、それと独立した合衆 国政府のコスト推測の比較。 (vi) 提示された価格と同様の対象物に関する 市場調査により得られた価格との比較。 (vii) 申込者により提供された価格設定情報 の分析。」 5 日本 4 官公需法(昭和41年): ○ 国等が契約を締結するにあたり, 予算の適正な使用に留意しつつ,中小 企業者の受注の機会の増大を図るよう に努めなければならない。 ○ 国は,毎年度,国等の契約に関 し,国等の当該年度の予算及び事務又 は事業の予定等を勘案して,中小企業 者の受注の機会の増大を図るための方 中小企 針を作成するものとする。 業保 ○ 経済産業大臣及び中小企業者の行 護・地 う事業を所管する大臣は,当該事業を 域振興 行う者を相手方とする国等の契約に関 し,各省各庁の長等に対し,中小企業 者の受注の機会の増大を図るため特に 必要があると認められる措置をとるべ きことを要請することができる。 ○ 地方公共団体は,国の施策に準じ て,中小企業者の受注の機会を確保す るために必要な施策を講ずるように努 めなければならない。 米国 欧州(EU)及び各構成国(特徴的なもののみ記載) 「一定のソースを除いた完全かつ公 開の競争」による契約者選定手法に 関し、FARは、小企業のみが競争し 得る、又は失業率が高い地域を優先 する類型を設定(FAR§6.2036.205) ①FAR6.203:小企業配慮の 法的要請を実現するために、契約担 当官は小企業のみが競争し得るよう 勧誘を取り分けて置くことが許され EU:なし る(例えば、小企業技術開発法 が 英国:「平等取り扱い」以上の対策はな 各行政機関に対し研究開発予算の一 い。 部を小企業に与えることを義務付け フランス:労働者生産協同組合、農業生産 ている) 団体、工芸家協同組合等に対する優先発注 EU及び各 ②FAR6.204:小企業法 第8 規定がある(公共契約法典54条)。 構成国 条a項は、小企業庁が他の行政機関 ドイツ:分離発注による中小企業の利益考 と契約を締結し、同契約を特定企業 慮の規定があり(競争制限禁止法97条)、 に請負わせる権限を小企業庁に与え 実務上も中小企業優先発注がなされる場合 ている。小企業庁は特定企業の能力 がある。 を当該行政機関に伝え、また特定企 業のビジネス計画に見合う調達を紹 介するよう当該行政機関に要請する ことができる ③FAR6.205:HUBZone 小企業措置 (過剰労働地域における小企業優先 枠) ※なお、州の公共調達において、自 州内の企業を優先する法令・規則を 設けている州は多い。 6 米国 日本 調達機関 (又は調達 指名業者選定委員会等による監視がある 調整機関) 内 5 競争弁護官(Competition Advocate): ①発注機関の契約過程(契約者選定、契 約締結等)を審査し、Agency Senior Procurement Executive(ASPE) に提出する 報告書の確認 ②ASPEに対する年次報告書の作成と提出 ③年度ベースでの競争促進目標・計画の ASPEへの勧告 。 ④ASPEに対する、競争にかかわる個人的 組織的な説明責任のシステムの推奨。 決算が予算執行の状況を正確に表示しているか(正確 性)、会計経理が予算や法令等に従って適正に処理さ れているか(合規性)、事業が所期の目的を達成して いるか、また、効果を上げているか(有効性)、事務・ 事業が経済的、効率的に行われているか(経済性・効 会計検査院 率性)といった観点から、公共工事にかかわる国の会 監視体 計を検査している。 制 検査結果は、① 国会への説明、② 財政当局への説 明、③ 他の監査機関との情報交換、④ 各省庁等への 説明、⑤ 広報業務の展開などに反映されている。 会計検査院長(Comptroller General)は、 発注機関とコントラクターとの契約にお ける記録を調査することができる(資 材・労働・製造などの直接費用に関する 記録に限定される)。その他公共調達に かかわる会計面での検査。 ○公共工事入札・契約適正化指針第2の2(2) 入札及び契約の過程に関する苦情を適切に処理する方 策に関すること…略… 加えて,手続の透明性を一層 高めるため,これらの説明等に不服のある場合にさら に苦情を処理できることとすることも検討すべきであ その他第三 り,必要に応じて各省各庁の長等において第三者機関 の活用等中立・公正に苦情処理を行う仕組みを整備す 者機関 るものとする。この場合においては,入札及び契約に ついて審査等を行う入札監視委員会等の第三者機関を 活用することが適切である。…略… →政府機関、地方自治体に学識経験者などにより構成 される「入札監視委員会」が設置されている。 検査官(Inspector General): ①関連行政機関のプログラム又は業務に 関係する検査又は調査(関係行政機関の 政策又は行為だけでなく、コントラク ターなど連邦予算を受ける者も検査・調 査の対象) ②関連情報へのアクセス権限 ③各政府機関、議会、司法長官への報告 7 欧州(EU)及び各構成国(特徴的なもののみ記載) 英国: ○ 政府契約室(OGC:非軍事的調達を担当)内部に おいて、アカウンタビリティーの観点から、会計担当 官(accounting officer)は契約の付与において金銭的 価値(value for money)が得られたかを確認し、予算 の適正な拠出を監視している ○ 英国会計検査院(National Audit Office:NAO): NAOはOGCの拠出した予算を全体としてチェックす るが個々の契約に関するフォーマルなチェックは行 わない フランス: ○ 契約者選定に関して入札委員会が関与している ことが特徴的である。入札委員会は、例えば地方自 治体の公共調達の場合、地方自治体の知事、地方 議会の議員等によって構成される 。経済財政産業 各構成国 省・競争消費不正抑止総局県支分局長の代理者は (各構成 委員ではないが、委員会に参加することができる 。 国の公共 同省は違法行為についての監視・監督を行ってい 調達の監 る。 視体制に ○ 1991年1月3日付け法によって公共調達及び公共 ついては 基本的に 事業の民間委託に関する調査のための省庁間会議 各構成国 が設立された 。この省庁間委員会は公共調達あるい に委ねら は公共サービスの民間委託契約あるいは地方団体、 れている)公設法人、第三セクターによって締結された全ての 契約の合法性を審査する(例えば、公務員の特定事 業者の不当な優遇を禁止する刑法典432−14条違 反行為の検査を行う権限など)。 ドイツ: ○ 公共工事については連邦交通建設住宅省が一 括して契約を担当する(物品調達に関しては内務省 調達局 )ので、公共工事に関しては同省が第一次 的な監視・監督機関となる。 ○ 連邦会計検査院は発注機関による予算の拠出が 適正になされたかの全体的なチェックを行うだけでな く、1000万ユーロ以上の大型工事の調達について契 約人が義務的に提出する建設計画を連邦会計検査 院が検査し連邦議会に直接報告する、という形で 個々のプロジェクトを監視・監督している 。 日本 6 禁止・ 概要 停止措 置 司法 審査 欧州(EU)及び各構成国(特徴的なもののみ記載) 米国 指名停止: 指名停止とは、公共工事の請負業者として適切でな い事由が認められる場合には、一定期間、当該業者 を「指名しない」こととする措置である。具体的に は、指名競争入札においては、指名業者の選定対象 から除外され、一般競争入札においては、競争参加 資格を認めないこととしている。国の機関・公団等 からなる中央公共工事契約制度運用連絡協議会(中 央公契連)においては、中央公契連指名停止モデル を策定しており、国土交通省を含め中央公契連のメ ンバーは、それに準拠した指名停止措置要領によ り、実際の運用を行っている。 参考: 【中央公共工事契約制度運用協議会における指名停 止措置の見直し(平成15年5月29日総会決定) ① 組織ぐるみの刑法談合等については贈賄を除いて ブロック単位で従来対応していたが,悪質性が認め られる場合には,自機関発注,他機関発注にかかわ らず全国に拡大して対応し,代表権を有する者が逮 捕された場合には,指名停止期間を加重(ただし, 独占禁止法案件については,違反行為実行者の役職 が判然としないので,従来どおりブロック対応を原 則とする。)。 ② 談合情報があった案件において,誓約書提出にも かかわらず,独禁法違反等があった場合,指名停止 期間を加重。 ③ 官製談合の場合,事業者側から働きかける等悪質 な場合には,指名停止期間を加重。 ④ 昨今の社会的影響を考慮し,独占禁止法違反に対 する指名停止期間の長期を,刑法談合等と平仄を合 わせ,9か月から12か月に引上げ。 ⑤ 独占禁止法違反行為に関する指名停止のタイミン グについて,勧告応諾時,課徴金納付命令の審判開 始請求期間の経過時又は審判開始決定時としている が,勧告応諾拒否等の場合は違反ありの審判審決等 が出た時点とする。 ⑥ 他機関発注案件の独占禁止法違反の刑事告発につ いて,告発対象者が責任者以上の場合には,上記① の刑法談合等の場合を準用して,全国対応とする。 ⑦ 指名停止回避のためだけの不純な動機等による審 判開始を牽制するため,違反ありの審判審決等の結 果,当該審決に至る経緯,内容等を勘案した上で, 部局長の判断により,指名停止の期間を加重して運 用できることとする。 禁止措置:法令違反等を行った企業に対する、 公共調達への参加を認めない措置 手続:禁止措置の手続きは次のように進められ る。各行政機関は禁止措置の発動を検討する場 合、コントラクターに対し不服を述べ、情報を 提供させる機会を与える 。禁止措置の手続きは コントラクターに対し禁止措置が検討されてい ることを通知することで開始される。有罪判 決、民事判決に基づく場合、あるいは事実に争 いがない場合には、禁止措置担当官は、停止措 置がとられていなければ、コントラクターから 情報を受けてから一定期間(30営業日)以内に 行政記録又はコントラクターからの情報を元に 禁止措置の決定を下す 。事実に争いがあれば、 コントラクターは事実認定にかかわるヒアリン グを要請することができ、事実認定担当官が事 実認定を行い、これと行政記録又はコントラク ターからの情報を併せ、禁止措置担当官が禁止 措置の決定を下す。この際、コントラクターに 対しては、弁護士同伴、証人尋問等の適性手続 の保障がFAR上明記されている 。 禁止措置の期間は原因の重大性により決まる が、通常三年を超えるべきでないという意見が ある 。なお、禁止措置の以前に停止措置がなさ れている場合には、禁止措置の期間を判断する にあたり停止措置の期間が考慮される 。なお、 同時に科されている刑罰の重さと禁止措置の期 間は無関係であるとされる。刑罰は過去の違反 行為に対する制裁であるのに対し、禁止措置は 現在または将来にわたる政府契約の完全さを確 保するための措置であり、両者は趣旨を異にす るからである 。 対象外(処分性なし) あり 停止措置:捜査又は法的手続きが完了する間に (暫定的に)公共調達への参加を認めない措置 手続:提訴状を根拠になされる。この事実以外 は、停止措置は禁止措置と同様の手続きがとら れる。停止措置は暫定的措置であるため、捜査 又は法的手続きが終了すると停止措置も終了す る。停止措置の通知後12ヶ月経った段階で司法 長官補が延長を要請しない限り、停止措置は終 了する。 ○一般調達庁 (General Service Agency)は禁止・ 停止措置を受けた 企業のリストを取 りまとめ維持して いる 。 ○禁止・停止措置 が対象コントラク ターの特定部署に 限定されていない 限り、当該措置は コントラクターの すべての部著に適 用される 。 ○各行政機関の長 または代理人が書 面により当該コン トラクターと事業 関係を継続する必 要性があることを 正当化しない限 り、禁止・停止措 置は全行政機関に 対し適用される。 (英国) ○公共工事入札参加資格審査(ロングリス ト)あり。 ○政府調達庁(OGC) ・競争法により談合罪が確定した企業が、入 札段階で応札した場合には、受注者を絞り 込む段階(ショートリスト)から排除している。 その期間は不定。 ・各公共発注機関は、契約に伴う汚職があっ た場合、契約完了後(工事進捗中)であって も、契約を取り消すことができる。これは、当 該工事に限らず、該当企業が別の公共発注 機関の発注工事で 汚職を行った場合でも適用できる。 ・工事進捗中の契約解除により発生する損 害は、企業が負担する。これは、入札契約書 に明記されている。 (フランス) ○公共工事入札参加資格審査(リスト)なし。 ○反競争的行為による競争法違反のみで は、公共契反競争的行為による競争法違反 のみでは、公共契約から排除されることはな い。 各構成国 (1986年の同法改正までは、公共工事の応 札資格を5年停止。) ○ただし、談合行為による競争法上の違反と 同時に贈賄罪などで刑法典により処罰され るような場合、公共契約法に基づき、公共契 約から排除される(通例では、5年から10 年)。 (ドイツ) ○公共工事入札参加資格審査(リスト)なし。 ○建設工事請負契約規程(VOB−A)の基 づき公共工事からの排除を行うが、入札参 加資格の停止、その期間は各発注機関で決 定する。 ○停止期間は6カ月 現在確認中 8 日本 7 調達 機関 各発注機関では不服申立にかかわる規程・要 綱を作成、これに対処している。 裁判 所 ○行政処分取消訴訟=判例は否定的 自治体による業者指名及びその通知に関し て、「契約成立に向けた普通地方公共団体の 私法上の行為(契約の申し込みの誘引)に該 当すると解されるものであり、指名競争入札 参加資格がありながら氏名を受けられなった 者が、行政不服審査法に基づく不服審査や行 政訴訟等の救済方法により指名の請求をでき ないことは明らかである」(宮崎地都城支平 成10・1・28) ○国家賠償訴訟=判例は肯定的 「指名競争入札の性質上、普通地方公共団体 の長が行う指名に関する裁量は、恣意的に参 加資格を有する者のうちの一部の者を排除し たり、一部の者を偏重したりし、長自ら策定 した指名基準に反する行為を行った場合には 裁量権の範囲の喩越又は濫用に該当するとし て国家賠償法1条1項にいう違法となる場合が あり得るというべきである」(同) 不服申 立制度 米国 発注機関 連邦地方 裁判所 連邦抗告 裁判所 (CFC) 連邦会計 検査院 (GAO) その 他 General Services Board of Contract Appeals (GSBCA) ○不服申立可能な調達対象:限定されない ○スタンディング:(契約の付与、非付与により直接の影響を受ける)利 害関係人 ○救済内容:申立後35日以内の発注機関による「最良の努力」、及び結果 通知 ○更なる不服申立:下記の4機関いずれに対しても可 ○不服申立可能な調達対象:限定されない ○スタンディング:発注機関の行為によって不利益を被った又は害を受け た者 ○救済内容:契約付与後のエクイティー上の救済を認めないことでは判例 は一致している 。しかし契約付与前のそれについては判例上見解が一致 していない。 ○更なる不服申立:連邦巡回区裁判所 ○不服申立可能な調達対象:限定されていない ○スタンディング:限定されていない ○救済内容:CFCは発注機関が契約付与する前に 申し立てがなされれ ば、差し止め決定または宣言的判決をすることでエクイティー上の救済を することができる 。ただ、巡回区裁判所判決は、FCIAは、CFCの、契約 付与後のエクイティー上の救済は認めないとしている。 ○更なる不服申立:連邦巡回区裁判所 ○不服申立可能な調達対象:限定されていない ○スタンディング:(契約の付与、非付与により直接の影響を受ける)利 害関係人 ○救済内容:不服申立が契約付与後10日以内になされていれば、自動的な 結果の凍結が認められる。なお、発注機関は、緊急でやむをえない状況が その結果を維持することを必要としていると判断する場合には、一方的 に、当該契約を進めることが許されている。 ○更なる不服申立:CFC又は連邦地裁 ○不服申立可能な調達対象:自動情報処理装置及び通信機器に限定 ○スタンディング:(契約の付与、非付与により直接の影響を受ける)利 害関係人 ○救済内容:不服申立が契約付与後10日以内になされていれば、自動的な 結果の凍結が認められる(命令的)。 ○更なる不服申立:連邦巡回区裁判所 9 欧州(EU)及び各構成国(特徴的なもののみ 記載) 英国: ○ 問題があれば調達担当官に苦情を申 し立てることができる ○ 不服である供給者は高等裁判所 (High Court)に苦情を申し立てることがで きる 。事件は欧州裁判所(European Court of Justice)に控訴することができる 。 フランス: ○事業者は、契約付与の前後を問わず、 経済財政産業省又は裁判所に不服を申 し立てることができる。不服申立人は損害 賠償請求をすることができる。 ドイツ: ○ 委託発注審査部の決定に対して、同 審査部の手続参加人は裁判所(連邦カ ルテル庁委託発注審査部の場合は デュッセルドルフ高等裁判所)に対して 異議申し立てを行うことができる。 ○ 500万ユーロ以上の調達の場合、苦 情申立て人(発注手続にかかわる利害関 各構 係者)は調達手続きがVOBに従っていな 成国 いことを理由に事後に異議申し立て (Sofortige Beschwerde)を行うことができ る。連邦の調達の場合、連邦カルテル庁 (Bundeskartellamt)委託発注審査部 (Vergabekammer)が担当機関である。各 州の調達の場合、各州の苦情申立て機 関(州法による)に苦情を申し立てること ができる。これら機関は異議申立てから5 週間以内に決定を下さなければならな い。