ー. はじめに 前報[ー]において, 両耳間差と正中面=RTFによ って任意の

両耳間差と正中面HRTFによる3次元音像定位＊
一 日．側方角知覚に及ぼすITDとILDの効果−
◎伊藤元邦（神戸大・工） 飯田一博（松下通信・MS研） 林英吾 森本政之（神戸大■工）
1．はじめに
前報［日において，両耳問差と正中面目RTFによ
って任意の方向の音像定位が可能であることを
示した．ここでは，両耳間時間差（lTD）と両耳間
レベル差（TLD）を別々に与えた定位実験を行い，2
つの両耳間差が側方角知覚におよばす影響につ
いて検討する，
2．実験方法
前報と同じである．
3．実験結果と考察
Fig」 と2に，両耳間差の手がかりとしてITD
もしくはILl）だけを与えた場合の，実験結果の一
例（被験者TT）をそれぞれ示す．rrhblelとTable2
は，前報と同様に求めた平均定位誤差である．
まず，側方角について検討する，ITI）だけを与
えた場合には，前報において両方の両耳間差を与
えた場合とほぼ同程度に，シミュレート（提示）
した角度の近くに回答している．Tablelに示すα
の平均定位誤差も，両方の両耳間差を与えた場合
（前報Tablel参照）よりやや大きいが，同じよ
うに変化している．
しかし，回答の分布を詳細に見ると，知覚した
側方角は，音像が前方に生じた場合よりも，上方
や後方に生じた場合のほうがやや正中面寄りで
ある，この傾向は、前報で示した両方の両耳間差
を与えた場合でも見られた．Wightman が示した
ITDの実測値［2］によると，あるITDの値をとる側
方角は，音源が前方にある場合よりも，上方や後
方にある場合のほうが小さいという傾向がみら
れる．従って，ITDの小さくなる正中面方向に回
答がずれたものと考えられる．
一一一一万，ILDだけを与えた場合には，回答した側
方角が提示角から外れ，すべて正中面近くに分布
している．3名中2名の被験者について，このよ
うな傾向が見られた（1名については，ITDだけの
場合と同程度に，側方に定位した）．このため
1もbl62に示すαの平均定位誤差は，側方になるに
従って大きくなっている．
Wightman［3］が示しているように，音源が低周
波成分を含む広帯域信号である場合には，ITDが
事Three＿dimensional
他の手がかりに比べて優位に働くことが知られ
ている．従って本実験でも，ITDだけを与えた場
合には音像が正しく側方に生じ，ILDだけを与え
た場合には，「時間差が0である」という情報の
方が優位に働き，音像が正中面近くに生じたと考
えられる．
次に，上昇角について検討する，いずれの場合
もほぼ同じような分布を示しているが，平均定位
誤差は提示した側方角が600 のとき，ITDだけ
を与えた場合の方が，他の2つに比べるとやや小
さい．
なお，ILDだけを与えた場合には，全回答630
回のうち41回，ITDだけを与えた場合には6回，
複数の音像を知覚したり，方向間のない音像を知
覚したり，耳元や近くに音像を知覚したと回答し
た．実音源による両耳間レベル差は，低周波数域
では小さく高周波数域では大きいという周波数
依存性を持っている．しかし本実験では，全ての
周波数に対して等しいレベル差をつけている．こ
のため，被験者は不自然な両耳間差を知覚し，定
位精度の悪化や耳元に音像を生じるといった現
象を引き起こした可能性がある．ただし，前報に
示した両方の両耳間差を与えた場合では，これら
の現象はあまり発生していない．さらに被験者か
らは，両方の両耳間差を与えた場合のほうが，距
離感のある，より自然な音像を知覚したという内
観報告があった．
従って，ILDについても音像定位に関して何ら
かの寄与があると考えられる．
4．まとめ
両耳間差の手がかりとしてITDとILDを別々に
与えた定位実験を行い，側方角知覚にはITDが優
位に作用することを示した．
文献
［1］飯田他，普請論，457−458（2001．3）
［2］wightman etalリJ．Acoust．Soc．Am．，105（5），
pp．2841−2853（1999）
［3］wightmanetal．，J．Acoust．Soc．Am．，91（3），pp．
1648−1661（1992）
SOundimagelocalizationbyinterauraldi飴renceandthemedianplaneHRTF・
−H．EffbctsofITDandILDonperceptlOnOflateralangle−
ByM．TTOH（Fac．ofEng．，KobeUniv．），K．IIDA（MultimediaSolutionLabs・，MatsushitaComm・），E・
RTN，andM．MORIMOTO（Fac．ofEng．，KobeUniv．）
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Fig・l・Examplesofresponsestothestimulisimulatedbyus7ngmedianplaneHRTFandaninterauraltime
dif托rence（ITD）・Boldlinesindicatesimulatedlateralangleαandverticalangleβ．
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Fig・2・ExamplesofresponsestothestimulisimulatedbyuslngmedianplaneHRTFandaninteraurallevel
difRrence（lLD）tBoldlinesindicatesimulatedlateralangleαandverticalangle B．
Tbblel・Meanlocalizationerror（ITDonly）・ Tbble2．Meanlocalizationerror（ILDonly）．
Sourceangleα
00 300 600 900
Perceivedangleα 1 13 22 29
Perceivedangleβ 13 14 16
Sourceangleα
00 300 600 900
Perceivedangleα 1 15 33 67
Perceivedangleβ 15 15 21