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プレス発表資料
プレス発表資料
平成26年2月24日
琉
球
大
学
琉球大学医学部附属病院での治療例における取材について
早期浸潤子宮頸がんの妊婦(妊娠 17 週)さんに施行した、子宮と胎児を残し
たまま患部を切除する手術(広汎子宮頸部摘出術)
琉球大学医学部附属病院産科婦人科において、昨年8月、早期浸潤子宮頸がん
の妊婦(妊娠17週)さんに、子宮と胎児を残したまま患部を切除する手術(広
汎子宮頸部摘出術)を行い、満期まで妊娠を継続し、患者は本年1月妊娠38週目
に帝王切開で無事健常児を出産しました。出産後、母児ともに健康で経過は順
調です。今後も新たに妊娠、出産できる可能性があります。
30代の県内在住の女性。妊娠14週で子宮頸がん(IB1期)が見つかり、妊娠17週
目の昨年8月に手術を行いました。腫瘍の大きさは2センチ。がんのある子宮頸
部だけを切り取る「広汎子宮頸部摘出術」を、約6時間にわたって行いました。
妊娠中に子宮頸がんが見つかった場合、通常は妊娠継続・出産を諦めて子宮
を摘出します。胎児を残したまま患部を切り取る手術は世界でこれまで10例し
か報告がありません。国内では、手術後無事に妊娠継続し満期で出産したのは、
大阪大学の1例に次いで今回の患者さんが2例目です。なお新潟大学でも2人の患
者さんに行われ、現在、手術後で妊娠継続中です。 子宮頸がんは近年、20代、
30代の女性に急増しており、妊娠をきっかけに見つかるケースも増えています。
本手術の普及には安全性の確立が必要であるが、出産を強く望む患者にとって、
治療の新たな選択肢になることが期待できます。
記
日 時:随時連絡可
場 所:琉球大学医学部附属病院 産科婦人科
内容等:上記および別紙参照
【問い合わせ】
琉球大学医学部附属病院 産科婦人科
教授 青木 陽一
TEL:098-895-1177
FAX:098-895-1426
E-Mail: [email protected]
Ⅰ. 子宮頸がんに対する手術
子宮頸部円錐切除術:子宮の入口だけ小さく円錐形に切除
上皮内がんや微小浸潤がんの一部
広汎子宮全摘術:子宮を周囲組織とともに広く全部摘出
臨床進行期 IA2, IB, II 期
広汎子宮頸部摘出術:子宮頸部のみを周囲組織とともに広く摘出
1.子宮頸部円錐切除術
近年、子宮頸がんは 20 歳代、30 歳代の若い患者さんの増加、および晩婚化とい
う社会的背景から、妊孕能温存治療を希望する患者さんが増加しつつある。現在の
ところ、妊孕能温存を希望する上皮内がんや微小浸潤がんの一部の症例に対しては
子宮頸部円錐切除術による妊孕能温存手術を行うことのコンセンサスは得られて
いる。
2.広汎子宮全摘術
しかしそれよりも進んだ症例(臨床進行期 IB, II 期)に対しては標準治療とし
て広汎子宮全摘術または全骨盤照射による放射線治療が選択されることが殆どで
あり、その場合、その後の妊娠分娩は不可能である。
1
3.広汎子宮頸部摘出術
この様な患者さんの中で腫瘍サイズが 2cm 以下場合(臨床進行期 IA2, IB1 期)
、
近年、妊孕能温存を目的として、広汎子宮頸部摘出術が行われるようになってきた。
本術式は広汎子宮全摘術と同様に子宮頸部を広く摘出し、子宮体部と腟の縫合、骨
盤内リンパ節郭清を含むものである。報告によると広汎子宮頸部摘出術後の再発率
は 4.4%であることから、広汎子宮全摘術と比較しても安全な術式であるとされて
いる。
琉球大学医学部附属病院産科婦人科においても 2008 年より本術式を取り入れ、
現在までに 18 例に対して施行し、再発症例は認めていない。
Ⅱ. 妊娠中の広汎子宮頸部摘出術
妊娠を契機に子宮頸がんが診断されることは稀ではなく、その中で妊娠継続を希
望する症例はしばしばみうけられます。妊娠中に子宮頸がんが見つかった場合、通
常は妊娠継続・出産を諦めて子宮を摘出します。最近、欧米から妊娠中の初期浸潤
癌症例に対し強い妊娠継続希望のある症例に、胎児を子宮内に残したまま、子宮頸
部のみを広く切り取る手術 (広汎子宮頸部摘出術)を施行した報告がみられる。
Ungarらは妊娠中の広汎子宮頸部摘出術施行症例について5例中2例で生児を獲得し
たと報告した。その後、計10例の報告があり、5例で生児獲得が得られている。
日本国内では、大阪大学での1例、新潟大学での2例の3例のみである。手術後無
事に妊娠継続し満期で出産したのは、当科の患者さんが大阪大学の1例目に次いで2
例目になります。なお新潟大学の2例は現在、妊娠継続中です。このように臨床的
にしばしば遭遇することのある妊娠中の子宮頸癌症例で、妊娠継続を強く希望する
症例に対する広汎子宮頸部摘出術は検討すべき治療optionと考えられます。
2
Ⅲ. 参考文献
1) Ungár L, Smith JR, Pálfalvi L, Del Priore G. Abdominal radical trachelectomy during
pregnancy to preserve pregnancy and fertility. Obstet Gynecol 108: 811-4, 2006.
2) Mandic A, Novakovic P, Nincic D, Zivaljevic M, Rajovic J. Radical abdominal
trachelectomy in the 19th gestation week in patients with early invasive cervical carcinoma:
case study and overview of literature. Am J Obstet Gynecol 201: e6-8, 2009.
3) Karateke A, Cam C, Celik C, Baykal B, Tug N, Ozbasli E, Tosun OA. Radical
trachelectomy in late pregnancy: is it an option?
Eur J Obstet Gynecol Reprod Biol 152:
112-3, 2010.
4) Abu-Rustum NR, Tal MN, DeLair D, Shih K, Sonoda Y. Radical abdominal trachelectomy
for stage IB1 cervical cancer at 15-week gestation. Gynecol Oncol 116: 151-2, 2010.
5) Iwami N, Ishioka S, Endo T, Baba T, Nagasawa K, Takahashi M, Sugio A, Takada S,
Mariya T, Mizunuma M, Saito T. First case of vaginal radical trachelectomy in a pregnant
Japanese woman. Int J Clin Oncol 16:737-40, 2011.
6) Enomoto T, Yoshino K, Fujita M, Miyoshi Y, Ueda Y, Koyama S, Kimura T, Tomimatsu T,
Kimura T. A successful case of abdominal radical trachelectomy for cervical cancer during
pregnancy. Eur J Obstet Gynecol Reprod Biol 158:365-6, 2011.
平成26年2月13日
琉球大学医学部附属病院産科婦人科
教授 青木 陽一
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