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大気・降水中の水銀の発生源評価 -日本海側におけるアジア大陸からの

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大気・降水中の水銀の発生源評価 -日本海側におけるアジア大陸からの
背 景
欧米における最近の研究から、水銀は地球規模での環境汚染物質として認識され
ている。水銀の主な人為発生源は石炭燃焼とごみ焼却であるため、石炭の利用に当
たっては、広域の発生源とその影響を評価しておく必要がある。そこで、当所では東
アジア地域で発生した水銀がわが国へ及ぼす影響を評価するため、日本海側に位置
する島根県松江市において、大気・降水中の水銀等微量金属及び鉛安定同位体比の
観測を進めている。
目 的
松江市における大気・降水中の水銀濃度に及ぼす物質の発生源を推定する。
主な成果
(1)大気・降水中の成分濃度の主成分分析
大気中の粒子状水銀及び降水中の水銀には、主に人為起源物質と土壌起源物質が
寄与していると推定された。とりわけ、大気中の粒子状水銀は、人為起源と推定さ
れる鉛と高い正の相関(相関係数 0.71, 危険率 1%で有意)を示した。また、土壌
起源であるアルミニウム等と同様に、春先の黄砂発現時に濃度が高くなる傾向がみ
られた。このような傾向は降水中の水銀やアルミニウム等の濃度にもみられた。
(2)気塊の履歴に基づく観測値の分類
松江市の大気中の鉛/亜鉛比、鉛同位体比( 207Pb/206Pb、 208Pb/206Pb)、鉛濃度及び
粒子状水銀濃度は、気塊が中国中部から朝鮮半島(エリア 2)を経由して松江市の
上層に到達したときに、他のルート時よりも高かった(図 1)。このときの鉛同位体
比は、エリア 2 内の北京や大連での報告値(1)に近かった。また、このルートを通過
した気塊の 80%以上が冬季から春季(12 月∼5 月)のものであった。
以上のことから、松江市の大気中の粒子状水銀及び降水中の水銀は、中国中部や
朝鮮半島を起源とする物質の長距離輸送による影響を強く受けており、それには冬
季の北西季節風や春先の黄砂現象による物質輸送が関与していると推測される。な
お、春季の黄砂現象では、黄砂粒子が水銀の輸送媒体として機能している可能性が
ある。
(1)Mukai, H. et al.(2001)Environ. Sci. Tecnol., Vol.35, No.6, 1064-1071.
0.025
Area 1
0.010
0.005
松江市
Area 3
Area 4
Pb / ng m-3
Area 2
30.0
25.0
0.000
20.0
15.0
10.0
5.0
0.0
2.16
2.12
2.10
0.80
208Pb/206Pb
2.14
Pb/Zn
Hg / ng m-3
0.020
0.015
2.08
0.60
0.40
0.20
0.00
Area 1 Area 2
Area 3 Area 4
図1 各エリアを経由した気塊が松江市に到達したときの大気中の粒子状水銀
濃度、鉛濃度、鉛同位体比、鉛/亜鉛比
Area 2における大気中の粒子状水銀濃度、鉛濃度、鉛同位体比及び鉛/亜鉛比は、他のAreaの
これらの値と危険率1%で有意な差がみられた。しかし、Area 1の鉛/亜鉛比、粒子状水銀濃
度、鉛濃度とは危険率5%で有意であり、鉛同位体比とは有意な差はみられなかった。
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