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実証が進むドイツの水素利用【PDF:75KB】

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実証が進むドイツの水素利用【PDF:75KB】
NEDO海外レポート
NO.981,
2006.7.5
< 新刊目次のメール配信をご希望の方は、http://www.infoc.nedo.go.jp/nedomail/ >
海外レポート981号目次 http://www.nedo.go.jp/kankobutsu/report/981/
【水素・燃料電池特集】
実証が進むドイツの水素利用
2006 年 3 月、ベルリンに二番目の公共水素スタンドがオープンした。これは、既存
のフランス系ガソリンスタンド TOTAL 内に併設されたもので、ベルリン交通公社の
水素バス用に利用されるものである。ベルリン交通公社はこれまで何度か試験的に水
素を燃料とするバスを運行してきたが、サッカーワールドカップの開催される今年 6
月からバス 2 台を本格的に運行し、
2007 年末までに全体で 14 台に増やす予定である。
いずれも独 MAN 社製の水素燃焼エンジン・バスで、4 台が吸入式エンジン、10 台が
ターボエンジンを搭載している。
ベルリンでは 2004 年末からドイツ政府などが支援する実証プロジェクト CEP
(Clean Energy Partnership)において、16 台の水素自家用車による実証試験が行わ
れている。これらの水素自動車は、英国系ガソリンスタンド ARAL 内に設置された公
共水素スタンドからの水素を日常の交通燃料として利用している。今回のバス・プロ
ジェクトも CEP プロジェクトの一環だが、同時に 2006 年から欧州 8 都市で実施され
る EU の HyFleet:CUTE(Clean Urban Transport For Europe)プロジェクトのひと
つとしても実施されている。
ARAL の自家用車用水素スタンドには、スタンド内の電気分解装置と圧縮装置を用
いて製造された圧縮水素と、独リンデ社の工場で製造された液体水素が供給されてい
る。これに対して TOTAL のバス用水素スタンドでは、主に液体天然ガス(LPG)から
改質器と圧縮装置を使って圧縮水素を製造している。水素はバスに供給されるばかり
でなく、スタンド内に設置される 2 基の燃料電池用にも使用され、燃料電池からスタ
ンドに電気と熱が供給されることになる。
現在、自家用車用水素スタンドでは、1kg 当たり 8 ユーロで水素が販売されている
が、この価格はプロジェクト参加関係者の補助によって低く抑えられている。それで
もエネルギー含有量で比較すると、軽油の 2 倍の価格に相当する。水素価格を下げる
には、水素需要を増やす必要があることから、バスプロジェクトでは実証性ばかりで
なく、燃料消費の多いバスで水素利用を拡大させることも意図されている。
水素の製造法については、世界でいろいろ試験されているが、木屑ないし藁から高
温で水素を含む合成ガスを製造し、そこから水素を取り出すという方法も考えられて
いる。ただこの場合、水素の含有率は合成ガスの 3 分の 1 程度にすぎないが、シュツ
ットガルトの太陽エネルギー水素研究センターでは酸化カルシウムを加えることで含
有率を 65%に引き上げることに成功した。
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ドイツでは今後、洋上風力発電が急増するものと予想されているが、送電線網の問
題から、発電された電力が十分に引き受けてもらえない可能性が指摘されている。そ
のため、その余剰電力を使って電気分解装置で水素を製造することも考えられている。
ドイツのユーリヒ研究センターによると、風力発電所に近い場所で水素を製造すれば
比較的効果的に水素を製造することができるという。また、エネルギー研究も行って
いるドイツ航空宇宙センターでは、太陽エネルギーを集束させ約 800℃で水蒸気から
水素を分離する研究を行なっている。特に、水に強酸を入れると効率がよくなることか
ら、同センターでは他の欧州研究者と共同で高温硫酸蒸気を太陽光線で分解させて水
素を得る方法を研究している。
また、石炭を高温でガス化させると水素と二酸化炭素が発生することから、このプ
ロセスを水素製造に利用することも考えられている。ただこの場合、水素と二酸化炭
素の混合ガスから水素をいかにきれいに分離させるかが問題となる。ドイツのユーリ
ヒ研究センターの試算によると、石炭火力発電の電力を使って電気分解装置で水素を
製造するよりも、石炭のガス化によって直接、水素を製造したほうが環境にやさしく
効率的だという。
水素利用の実証に関しては、ノルウェーが欧州最大規模のプロジェクトを予定して
いる。ノルウェー政府と水素製造技術を有するルスク・ハイドロ社が今後 3 年間で、
首都オスロから南西部のスタヴァンガーまでの高速道路 580km に 7 つの水素スタン
ドを共同設置する計画である。水素スタンドで供給される水素は、それぞれ異なった
方法で製造され、プロジェクトを通じて経済性、効率性などが比較される。利用され
る水素製造法は、水力発電と太陽光発電を利用した電気分解法、バイオマスのガス化、
ごみ堆積場で回収されたガスからの水素分離、塩素工場から排出されるガスからの水
素分離などである。プロジェクト用に 15 台の水素自動車が購入されるが、技術上の問
題からトヨタのプリウスの特別仕様車が選ばれた。プロジェクトには全体で 500 万ユ
ーロが投資される予定である。
以上
〈参考資料〉
1. ベルリン新聞 2006 年 2 月 28 日付け
2. ベルリン新聞 2006 年 3 月 15 日付け
3. CEP-Pressemitteilung, berlin auf dem Weg zur Wasserstoff-metropole – CEP
legt weiteren Grundstein für emissionsfreie Mobilität.
4. neues EU-Projekt stärkt Wasserstoffmetrople Berlin – BVG erhält 14
umweltfreundliche Wassersoffbusse.
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