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山本委員プレゼン資料
資料6−2 山本委員プレゼン資料 野村リサーチ・アンド・アドバイザリー(株) 山本大輔シニアマネージャー主任研究員 ■ 技術の経済的価値評価が必要となるケース 1.ライセンス契約のサポート(○) ⇒自社の特許価値を分析し、M&Aやライセンス交渉の材料として活用 2.研究開発戦略の策定(◎) ⇒企業の研究開発にからむ意思決定(投資、提携、撤退) 3.知的資産取引における税務上の要請(○) ⇒海外関連会社との内部取引、寄付等における受贈益課税回避 ⇒Patent Donationなどにおける第三者機関による特許価値の算定(米国) 4.資金調達のサポート(◎) ⇒知財担保融資による資金調達 ⇒特許の証券化・信託スキームによる資金調達 ⇒技術型ベンチャー企業の私募増資(第三者割当増資等) 5. 技術移転のサポート(○) ⇒大企業やベンチャー企業の持つ未使用特許の技術移転 ⇒大学の持つ基礎技術の技術移転 (国立大学、私立大学を中心としたTLOの成立) 6.知的資産を時価評価する国際的なトレンド(△) ⇒将来的な知財会計の導入の可能性 ◎ 必要、○ケースにより必要、△将来的に必要とされる ■ 評価手法の比較 評価手法 対象となる特許 適用ケース スコア化による評価 個別特許 ・権利を維持するか否かの判 モデル 断、防衛的役割の判断(特許棚 概要 長所 短所 備考 権利範囲、先行出願度合い、代替技術の有無、基 本特許・周辺特許、市場規模など、主に個々の特 許の定性的な評価要因を点数化して、保有特許 のランキングを行うモデル。 ・ライセンス実務者になじみやすい ・評価手法がわかりやすい ・評価額は経済的な価値でないため、 主に社内での使用に適している。 企業内での特許の棚卸に主に使用さ れてきた方法。(ex 特許庁 「特許評 価指針」、日本アイアール 「資産評価 支援システム」 etc) 当該特許を排他的に利用して製品を開発した場 合に製品から得られる事業全体のキャッシュフ ローをまず推定し、キャッシュフローの獲得に貢 献した特許の寄与分でキャッシュフローを按分す る。按分後のキャッシュフローの割引現在価値を 特許の価値とする。 ・経済的価値を算定する上での理論 的な頑健性は一番高い。 ・事業価値評価における他の資産価 値との整合性が保てる。 ・ブランド、特許、営業力などの寄与度 を按分する客観的ルールが存在しな い。 ・将来の事業計画がある程度見通せな いと評価できない。 ・将来キャュシュフロー、割引率など評 価パラメータの前提により評価額が大 きく変動する。 ・評価コストが高い。 コーポレートファイナンスにおける資産 価値評価理論 当該特許を排他的に利用して製品を開発した場 合に製品から得られる売上を推定し、特許を第三 者に実施許諾した場合に想定される実施料率を 乗じて直接対象特許の寄与額を算定する方法で ある。特許の寄与額の割引現在価値を特許の価 値とする。 ・ライセンス実務者になじみやすい ・対象製品市場と製品シェアが特定で きれば比較的簡単に評価ができる。 ・評価コストが小さい。(対DCF法) ・個々の特許の個別性を評価に織り 込むことが困難。 ・クロスライセンスなど複雑なライセン ス状況では排他的な使用状況の想定 が困難。 ・事業価値など他の資産との評価の 整合性がとれない。 ・ライセンシング実務、職務発明訴訟 における法廷での評価において使 用。 当該特許を排他的に利用して製品を開発する場 合に、製品開発の過程で想定される事業上のオ プション(開発の中止、開発の延期、開発規模の 拡大等)を積極的に価値評価に織り込む方法。 金融オプションプライシング理論を価値評価に応 用する。 ・開発途上の技術にオプション性を評 価することはきわめて合理的である。 (ex 医薬品関連特許の評価などで顕 著) ・技術開発過程における具体的なオプ バイオ関連特許など特殊なケースの ションの特定が困難。 みに評価が適用できる。 ・複数の特許が相互に関連するような複 雑なケースは理論的に評価不可能。 ・類似技術の市場価値の算定が容易で ない。 ・評価コストが高い。 当該特許を再作成する場合に必要なコストおよび 生涯の維持費用の合計額を特許の価値とする。 ・評価方法が単純 ・評価額は経済的な意味を持たない。 特許においては、個別性が強く通常コ ストアプローチはなじまない。 マーケットアプロー 個別特許、特許 ・第三者への特許権の売却時 チ 群 の価値評価 過去に実際に売買された類似特許、特許群の売 買価格を参考にして、当該特許、特許群の価値を 類推する方法。 ・取引案件の蓄積が進めば、評価の 客観性は高い。 ・基本的にユニークである特許や技術 に類似取引案件を見つけることは困 難である。 特許流通業者等の取引データが開示 されない場合、評価の客観性が担保 できない 確率的アプローチ 基礎的な技術に関する特許で、具体的に対象と なる製品が想定できない特許の評価に適用。統 計的なアプローチで特許群全体の価値を評価す る。 ・過去の技術移転データを統計的に 処理するため客観性が高い。 ・多数の未使用特許を保有するほど 評価の精度は上がる ・評価された金額は、統計的な期待値 であるため、評価した特許群が最終 的に全くキャュシュフローを生み出さ ないケースも起こりうる。 大学保有の未使用特許の評価などに 適用が可能か 卸) DCF法 製品の一部を 構成する機能 単位での特許 群 ロイヤルティ法 個別特許、特許 ・ライセンス対価の算定(アウトラ 群 イセンス、インライセンス) ・金融機関やVCが資金調達支 援を行う場合の価値評価 ・将来的な知財会計への準備 ・IR(情報開示)による企業イ メージアップ ・M&Aなどによる事業譲渡ま たは事業提携時の価値評価 ・移転価格税制、寄付等における 税務上の対応 ・権利侵害訴訟、職務発明訴訟 時または訴訟回避のための価値 評価 ・パテントプールの実施料率決定 リアルオプション法 製品の一部を 構成する機能 単位での特許 群 コストアプローチ ・金融機関やVCが資金調達支 援を行う場合の価値評価 ・M&Aなどによる事業譲渡ま たは事業提携時の価値評価 個別特許、特許 ・事業譲渡時における未使用 群 特許の評価など 保有する未使 用特許全体 ・公共機関(大学等)への寄付 における税務上の評価(米国) ・大学保有特許の棚卸評価 ・客観性を担保するために業種別、製 品分野別などのライセンス料率データ ベースの構築およびアップデートが必 ● ブランド価値評価モデルの比較 (注1) 評価モデル 1 インター・ブランド社モデル 評価手法 価値評価プロセス ポイント インカム・アプローチ 超過収益力法:(注2) 以下の5ステップでブランド価値を推定 ・ブランド役割係数、ブランドリスクプレミアム(ブラ ンド力スコア)推定方法の妥当性。(詳細開示はな い。) ・構造がシンプルでわかりやすい ・過去に多数の評価事例があるた め、ブランド役割係数やブランドスコ アに過去のデータ蓄積が生かされ ている可能性がある。 ・割引率を直接調整するため、価値に与 える影響が大きい。 ・ブランド継続期間の考え方が不明確 ・事業価値や株主価値(株式時価総額) とブランド価値の整合性がとれていな い。 ・財務データのみでブランド価値を推定している。 ・ブランド寄与度推定に独自の概念を適用してい る。 (広告宣伝費/営業費用) ・ブランド起因利益が将来一定成長することを仮 定。 ・構造がシンプルで、財務データの みで推定が可能。 ・ブランド寄与度推定に新たな考え 方を提供。 ・PD、LD、EDと利益などとの関連性分析 が十分行われているとはいい難い。 ・特にLD、EDの概念は直感的で論理的に は疑問。 ・事業価値や株主価値(株式時価総額)と ブランド価値の整合性がとれていない ・財務データとマーケティング・リサーチデータを融 合してブランド価値を評価。 ・BAV(ブランドアセットバリュエータ)と製品別EVA の関連性の程度。 ・ブランドβの推定方法の妥当性。 ・BAV(ブランドアセットバリュエータ) とEVA(経済的付加価値)の関係分析 を行っていることを公表している。 ・BAVとEVAの関連性が、ブラックボックス 化している。 ・割引率を直接調整するため、価値に与 える影響が大きい ・事業価値や株主価値(株式時価総額)と ブランド価値の整合性がとれていない ・マーケティングリサーチのコスト負担が 重い ⇒ブランド評価単位の決定(セグメンテーション) ⇒無形資産が生み出す利益額の推定 ⇒ブランドの利益寄与率の推定(ブランド役割係数) ⇒ブランド資産のリスクの推定(ブランドスコア) ⇒DCF法によるブランド価値の推定 2 経済産業省 「ブランド研究会」モデル インカム・アプローチ 超過収益力法:(注2) 以下の6ステップでブランド価値を推定 ⇒ブランド価格プレミアムの推定(粗利益率格差) ⇒ブランド寄与度の推定(広告宣伝費率を使用) ⇒ブランド利益(PD)の推定 ⇒ブランドロイヤルティ度(LD)の推定 ⇒ブランド拡張性(成長性)の推定(ED) ⇒DCF法によるブランド価値推定(一定成長モデル) 3 ブランドエコノミクス社 (EVA+BAV)モデル インカム・アプローチ バランスシート法 (注3) 以下の5ステップでブランド価値を推定するモデル ⇒ブランド評価単位の決定(セグメンテーション) ⇒無形資産の生むEVAの推定(時系列) ⇒BAV分析(ブランド寄与度の定量化) ⇒ブランドβの推定(ブランド資本コストの推定) ⇒DCF法によるブランド価値の推定 4 伊藤邦雄モデル(CBバリュ エータ) マーケット・アプローチ(B/S 法) 以下の4ステップでブランド価値を推定するモデル ⇒株式時価総額から各企業の無形固定資産時価評 価額を求める。 (株式時価総額-事業資産-金融資産-含み益) ⇒企業イメージデータ(NIKKEI-NEEDS)、財務データ からCBスコアを求める。 ⇒無形固定資産評価額とCBスコアの関連性を分析 する。(※おそらく回帰モデル) ⇒無形資産時価評価額、CBスコア、関連性データ、 ブランド継続期間からブランド価値を推定する。 長所 ・継続的にマーケティングデータを使 用するため、ブランド力の変化などを 明示的に価値に反映できる。 ・財務データとマーケティング・リサーチデータなど かなり多くの要素を採用してCBスコアを合成して いる。 ・継続的にマーケティングデータを使 用するため、ブランド力の変化などを 明示的に反映できる。 ・CBスコアと無形資産時価評価額の関連性分析を 行っているか否か不明。 ・株主価値(株式時価総額)とブランド 価値の整合性がとれている。 (注1) 各ブランド評価モデルの概略、長所、短所等のコメントは、外部に公表されている情報をもとに一部推定に基づく。 (注2) 超過収益法・・・ブランド評価にノンブランド製品を製造・販売する場合の利益率とブランド製品を製造・販売する場合の利益率格差を使う方法。 (注3) バランスシート法・・・企業全体の最終利益から有形資産が生み出す利益(推定)を減じて無形資産の生み出す利益を推定する方法。 短所 ・CBスコアと無形資産評価額の関連性 がブラックボックス化している。 ・株式市場の変動にブランド価値が影響 される。 ・マーケティングリサーチのコスト負担が 重い ■ ブランド価値評価モデルの主要な論点 ポイント 1 2 3 4 ブランドエコノミクス社 CBバリュエータ インカム マーケット インターブランド社 インカム ブランド研究会 インカム 2 マーケティングリサーチデータを 使用しているか否か 明示なし 使用しない 使用する 使用する(NIKKEINEEDS) 3 ブランドキャッシュフローを割引く 資本コスト(割引率の考え方) 独自推定 安全利子率 独自推定 - 4 ブランドの対象(コーポレートブラ ンド、プロダクトブランド) コーポレートブランド コーポレートブランド ? コーポレートブランド なし なし 1 インカムアプローチ vs マーケッ トアプローチ 5 関連分析データの開示の有無 なし (ただし関連性分析を行っ ていることを明示) なし ■ 知的財産の評価、流動化におけるポイント 著作権 保護の目的 保護の対象 保護の要件 権利内容 評価、流動化におけるポイント 文化の発展 著作物(思想または 模倣でない 複製権、翻案権、 に寄与 感情の創作的表現) 独自創作 貸与権、人格権等 ・権利は半永久的 (創作者の死後50年) ・権利の細分化が可能。 ・収益機会が豊富。(メディアの範囲、リバイバル) ・音楽著作権、映画著作権、地上波テレビ放送権 (著作権の一部)などの流動化の実績がある。 ・リアルオプション的な要素がある。 特許権 産業の発展 発明(自然法則を利 発明該当& 製造、使用、譲渡 に寄与 用した技術的思想の 新規性&進 等 創作) 歩性&先願 商標権 競業秩序の 識別マーク(トレード 商品識別力 差し止め請求、損 維持 マーク、サービス 害賠償 マーク) ・ビジネスプランと切り離して評価することは困難。 ・技術の世代交代があり陳腐化が激しい。 ・権利の期間(出願から20年)が限られていることは 流動化、証券化に不利。 ・リアルオプション的な要素がある。 ・権利期間が永久的 ・継続的な経済的便益を得るためには相当の投資 (広告・宣伝)が必要 (出所)H12 発明協会 知的所有権講座「コンピュータ・ソフトウェア関連発明と特許出願テキスト」等を参考に野村證券 金融研究所作成