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表紙・はじめに・目次[1.1MB] - 一般社団法人 全国介護者支援協議会

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表紙・はじめに・目次[1.1MB] - 一般社団法人 全国介護者支援協議会
平成24 年度 セーフティネット支援対策等事業費補助金
社会福祉推進事業
都内の大規模集合住宅団地における
孤立死の取り組みに関する調査研究事業
報
告
平成25年3月
書
はじめに
平成 23 年3月 11 日の東日本大震災以降、絆や地域コミュニティの重要性が見直され
たのは記憶に新しいことですが残念なことに 30 代 40 代の親子世帯での孤立死が都内の
集合住宅で立て続けに起こりました。
これまでは、単身高齢者や高齢者のみ世帯での孤立死が問題となっていましたが、これ
らの孤立死がきっかけとなり、世代に関係なく孤立死は起こるという警鐘が鳴らされるこ
となったのです。
戦後の高度成長期に、団塊世代と呼ばれる約 800 万人のうち 6 割から 7 割が、地方か
ら都市部へ就職し、その多くは都市部において団地といわれる集合住宅に居を構えたの
です。
一方集合住宅団地が建設されるということは、そこに新しい地域社会が誕生することで
もありました。それぞれの団地で、住民が一から自治会を組織し地域社会を作って今日に
至っています。しかし、自治会の加入率の低下や自治会そのものが崩壊している団地もす
でにあるのが現状です。
団地住民が地域社会と無縁であっても、なんら不便なことはありません。しかし、立川
市などでの孤立死のように、地域社会は住民と無縁であるような社会であってはならない
のではないかと考えます。
本事業は、厚生労働省社会福祉推進事業の一環として、「都内の大規模集合住宅団地に
おける孤立死の取り組みに関する調査研究」を行ないました。本調査研究事業の成果が、
今後、団地の自治会、民生委員、行政、福祉団体など、それぞれの立場での、孤立死に対
する活動の一助となれば幸いです。
さ ら に、 東 日 本 大 震 災 の 被 災 地 で は 今 後 復 興 住 宅 が 集 合 住 宅 を 中 心 に 建 設 さ れ ま す
が、 そ こ で も 孤 立 死 を 防 ぐ 取 り 組 み に こ の 調 査 研 究 が 少 し で も 役 立 つ こ と が で き れ ば
幸いです。
最後になりましたが、住民アンケート調査を行なうにあたり、この調査の主旨をご理解
頂き、団地住民向けアンケート調査票の配布・回収という大変な作業を快く引き受けてく
ださった、光が丘団地、高島平団地、白鬚東団地の各自治会、管理組合の役員の皆様に、
この場を借りて心より御礼申し上げます。
平成 25 年 3 月
一般社団法人 全国介護者支援協議会
理事長 上原 喜光
−ⅰ−
平成 24 年度 都内の大規模集合住宅団地における
孤立死の取り組みに関する調査研究事業
●本調査研究の社会的背景と事業の目的
戦後の高度成長期、地方から都市部への大量の人口移動による住宅需要に応じ
るため大規模集合住宅が建設され、団地という新しい地域社会が形成されていっ
た。しかし、間取りなど住環境の問題から2世帯住宅とはならず、子ども世代は
独立して団地を出て行き、残された親世代だけとなった団地は、高齢化が急速に
進んでおり、限界集落同様となるケースも出てきている。 団地ができるということは、その地域とは無縁の人々がその地域に集まり、新
しいコミュニティが作られることでもあり、住民は自治会を中心に新しい地域社
会を形成していった。しかし現在、日本全体が地域コミュニティの崩壊の危機に
瀕しているが、特に団地における自治会の加入率の低下は顕著で、すでに自治会
が消滅している団地もある。
一方、様々な理由により地域社会とのかかわりや行政支援を拒否し、社会的に
孤立した結果、死後数日以上経過した後に発見される「孤立死」が増加している。
また、阪神淡路大震災で問題にされた被災者の仮設住宅や復興住宅での「孤立死」
は、東日本大震災においても繰り返されている。孤立死する人の多くは、高齢者、
障害者、生活保護世帯、母子家庭など社会的弱者と呼ばれる人たちで、地域コミュ
ニティが崩壊した社会の犠牲者であるといえる。
本調査研究事業では、今後急速に高齢化が進む都内の大規模集合住宅団地に焦
点をあて、団地住民を対象に、日常生活のニーズ、行政サービス、地域社会等に
関するアンケート調査を行なうとともに、孤立死防止のための見守り支援に取り
組む自治体、地域包括支援センター、社会福祉協議会、自治会、民生委員等に対
して聞き取り調査を行ない、団地における孤立の現状を把握し、支援の事例とそ
の効果について検証し、地域コミュニティの再生と孤立死防止の取り組みに関す
る提言を行なう。
●本調査研究の目的と方法
本調査では、都内の大規模集合住宅団地に居住する住民の日常生活や福祉ニー
ズの把握を行なうと共に、団地内または団地周辺コミュニティとの交流状況、社
会的孤立や孤立死に対する意識についての住民調査を行なうと共に、これら団地
住民に対して孤立死防止支援を提供している自治体、地域包括支援センター、社
会福祉協議会、民生委員、団地自治会および管理組合など、支援を行なう側に対
してヒアリングを実施し、孤立死の現状や地域の住民特性および福祉特性から見
える孤立死防止のための対策孤立死防止に対する意識などについて調査を行ない、
地域コミュニティの現状を把握するとともに、団地という特殊な環境における地
域コミュニティの現状について検証を行なう。
−ⅱ−
本調査の調査対象として、東京都心に立地する3つの大規模集合住宅団地、
「光ヶ
丘団地」「高島平団地」「白鬚東団地」の各自治会に対して調査の協力を依頼し、
承諾をいただいた自治会にアンケート調査の配布を依頼した。
また、アンケート調査と平行して調査対象団地のある自治体、社会福祉協議会、
調査対象団地を担当区域とする地域包括支援センター、民生委員、団地自治会に
対してヒアリング調査を実施した。
●主な調査結果
調査の結果、団地住民の高齢者率が高くなっていることがわかった。また、単
身高齢者世帯および高齢者のみ夫婦世帯が全体の半数以上を占めていることがわ
かった。
生 活 状 況 に つ い て は、 回 答 者 の 6 割 以 上 が 生 活 に 余 裕 が な い と 回 答 し て い る。
また生活保護受給世帯については、都営団地居住者の受給率が極めて高いことが
わかった。
なお、生活費の収入源については、国民年金や厚生年金などの公的年金生活者
が多数を占めている。
居住年数については、多くの団地住民が現在の団地に 10 年以上居住しており、
今後も可能な限り住み続けたいと考えていることがわかった。
日常生活における買物場所については、団地内との回答がほぼ半数、移動手段
については徒歩や自転車、バイクとの回答が8割を占めている。
日常生活における生きがいや不安については、団地住民の多くが友人や知人と
の交流や、家族との時間などに生きがいを感じている一方で、自分や家族の健康
や介護、将来に対する不安や、経済的な問題について不安を感じていることがわ
かった。
東日本大震災以降自然災害に対する防災意識の変化が見られるが、本調査でも
地震や台風などの自然災害に対する不安を持つ団地住民が多いこともわかった。
なお、悩みや不安についての相談先では、家族・親族・友人などを頼りとして
いる団地住民が大半を占めている。また、自治会などの自主組織についても頼り
としている団地住民も多く、いわゆる血縁、地縁など従来の関係が現在も残って
いることもわかった。
その一方で、地域包括支援センターや社会福祉協議会など専門機関との回答は、
血縁、地縁などと比較して圧倒的に少なくなっている。
本調査の目的である孤立死については、団地住民の約半数が身近に感じると回
答している。なお、孤立死の危険性が高くなる単身高齢者や高齢者夫婦のみ世帯
では、この数値が更に高くなっている。
団地住民の周囲に対する意識については、積極的、肯定的な認識を持っている
ことがわかった。
なお、このことは団地住民の地域社会に対する意識からも見て取れる。約8割
の住民が地域に対する関心を持ち、自分を地域社会の一員であると考え、地域に
対する信頼があると回答している。また、約9割の団地住民が自治会などの自主
−ⅲ−
組織を必要と感じている。
地域との交流については、挨拶や世間話などの軽い交流が多いが、
「おすそ分け」
といった、密度の濃い交流を行なっている団地住民も半数ほど見られた。
地域との交流を行なっていない理由については様々だが、知り合うきっかけが
ないと回答している団地住民が多く見られた。なお、地域との交流を拒む団地住
民も一定数層いることがわかった。
地域社会に対する意識については、多くの団地住民が地域の「しきたり」や「和」
を尊重する意識を持っていることがわかった。
●提言
(1)団地を同室な空間にしないよう、新たな住民を呼び込む工夫をする。
団地はこれからますます高齢化が進み、年齢層の高い住民が多くなる。しかも、その
多くは独り暮らしか、もしくは夫婦のみ世帯であり、同年代しか住まない、同質の空間
になると脆弱性が露呈するのは、先行事例をみてもあきらかであることから、多世代が
住む空間にしておくことが重要になる。団地を多世代が住む、多様な地域に変えていく
ためにも新たな住民を呼び込む工夫が必要になるが、その場合、たとえば家賃補助など
の面で、当該の市区町村が一定の補助をするということも検討されてよいのではないか
と思われる。
(2)団地内の地域活動を活発にすることが、高齢者の孤立死防止につながる。
アンケート調査からは地域社会や地域活動に対してポジティブな回答が多く、あくま
でも3つの団地だけという限定がつくものの将来に明るい展望をもてるのではないかと
思われる。つまり、地域社会に対して一定のアイデンティティを持っていて、さまざま
な地域活動へ参加してくれる可能性を有している地域住民が地域活動に積極的に参加で
きる、何らかの しかけ (装置)をつくることができれば、そのこと自体が参加者の
孤立死防止になると同時に、住民間で団地内での見守り活動などへの協力・協働体制が
広がり、孤立死防止の活動につながると考えられる。
(3)団地内で孤立死しそうなひとたちの情報を把握し、関係者でそれを共有
する。
自治体、地域包括支援センター、社会福祉協議会、民生委員、自治会・老人会などの
アクター(提供主体)を含めた関係者はハイリスク層、すなわち孤立死の危険性の高い
高齢者が一体どこにいるのか把握できていない場合が多い。また、仮に関係者がそれを
把握しても、専門職(準専門職である民生委員も含む)の守秘義務規定や、個人情報保
護法などの制約があり、関係者間での情報共有ができない場合も少なくない。地域に出
てこない人を把握することは容易ではないが、生活状況を把握する糸口は必ず見つかる
はずである。その際、専門職だけでなく、地域住民の果たす役割も大きい。そのため団
地内で関係者が協議できる場(空間)を設置し、そこでの協議をとおしてお互いに連携
を取り合って、問題の解決にあたるのが望ましい。
−ⅳ−
(4)団地の基本コンセプトを考え直し、ハード面での改善・改修なども考える。
現在の団地の基本設計(またはその思想)は、1960 年代に形成されたものである。
当時は、高齢化率も低く、ADL あるいは IADL の低い高齢者がこれほど多くなるとは考
えられていなかった。
そのため、エレベーターのない中層階団地も多く、また、プライバシー保護と防犯が
重視され、近年のマンションのオートロック化は地域の匿名性や、つながりの希薄化を
加速化させており、これらは少なくとも高齢者の孤立死防止に関しては逆機能として働
く結果となっている。例えば、階段を同一棟内にいくつも縦に作るのではなく、階ごと
に横につなぐ方式(=横廊下方式)にすることで住民が横につながりやすい環境をつく
る。このようにハード面についても孤立死防止という機能からみて再検討し、改善・改
修することが必要な場合もあると考えられる。
(5)ITC 機器の活用により、リアルな空間とバーチャルな空間をつなぐ。
現状、高齢者の安否確認のための「緊急通報システム」などは、高齢者がハ
イ テ ク 機 器 に な じ ん で い な い た め 普 及 し て お ら ず、 フ ェ イ ス ト ゥ フ ェ イ ス の 関
係での支援をしなければならない。しかしながら、団塊の世代は、壮年期にイン
ターネット環境になじんでおり、65 歳以上の高齢期になっても、ITC 機器を活用
し て、 ネ ッ ト 上 の バ ー チ ャ ル 空 間 で つ な が る 可 能 性、 つ ま り、 オ ン ラ イ ン・
コミュニティでのつながりが、ファイストゥフェイスの関係を補完するだけでな
く、代替してしまう可能性も生まれる。言い換えれば、リアルな空間だけでなく、
バーチャルな空間でのつながりをとおして孤立死を防止することもできるのでは
ないか。これから設計される住宅(団地)では、こうした点をいわば「前提」と
して基本設計を行なう必要があり、将来の高齢者の質的変化を見据えて、関係者
は ITC 機 器 の 活 用 に よ る、 孤 立 死 防 止 に つ い て 研 究・ 開 発(R&D: Research &
Development)をしておく必要がある。
−ⅴ−
目 次
はじめに ……………………………………………………………………………………………………… ⅰ
平成 24 年度 都内の大規模集合住宅団地における孤立死の取り組みに関する調査研究事業 ………………………………………………………………………………………………………………… ⅱ
目次 …………………………………………………………………………………………………………… ⅵ
第1章 事業実施概要 ……………………………………………………………………………………… 1
1.事業の背景と目的 ……………………………………………………………………… 1
2.実施体制 ………………………………………………………………………………… 2
(1)調査検討委員会の設置と開催日程 ………………………………………………… 2
(2)調査作業部会の設置と開催日程 …………………………………………………… 3
3.事業の内容 ……………………………………………………………………………… 4
(1)調査対象団地の概要 ………………………………………………………………… 4
(2)アンケート調査の実施概要 …………………………………………………………10
(3)ヒアリング調査の実施概要 …………………………………………………………12
第2章 調査の結果 …………………………………………………………………………………………13
1.アンケート調査結果 ……………………………………………………………………13
(1)回収状況 ………………………………………………………………………………13
(2)アンケート集計結果 …………………………………………………………………14
(3)クロス集計 ……………………………………………………………………………82
2.ヒアリング調査結果 ………………………………………………………………… 122
(1)ヒアリング調査概要 ……………………………………………………………… 122
(2)ヒアリング調査結果 ……………………………………………………………… 123
◆自治体 ……………………………………………………………………………… 123
◆地域包括支援センター …………………………………………………………… 126
◆社会福祉協議会 …………………………………………………………………… 130
◆民生委員 …………………………………………………………………………… 132
◆自治会・老人会 …………………………………………………………………… 134
◆サロン活動 ………………………………………………………………………… 136
−ⅵ−
第3章 調査の総括と提言 ……………………………………………………………………………… 141
〈1〉総括 …………………………………………………………………………………… 141
はじめに ………………………………………………………………………………… 141
Ⅰ.2つの調査研究のまとめ ………………………………………………………… 142
1.アンケート調査のまとめ ……………………………………………………… 142
2.ヒアリング調査のまとめ ……………………………………………………… 144
3.まとめにかえて ………………………………………………………………… 147
〈2〉提言 …………………………………………………………………………………… 149
参考資料 …………………………………………………………………………………………………… 153
地域住民の日常生活と地域社会に関する意識調査アンケート調査票
光が丘 …………………………………………………………………………………… 155
高島平 …………………………………………………………………………………… 163
白鬚東 …………………………………………………………………………………… 171
執筆者一覧 ………………………………………………………………………………… 179
−ⅶ−
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