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『生物ナノフォトニクス』 付 録 朝倉書店 『生物ナノフォトニクス』付録 木下修一 著 朝倉書店 第 1.0 版: 2010.11.25 本資料は,シリーズ〈生命機能〉の第 1 巻 『生物ナノフォトニクス- 構造色入門 -』 (木下修一著,2010 年,朝倉書店)の付録として利用されることを目的としています. 目的外の利用はご遠慮ください. Copyright©2010 Shuichi Kinoshita All rights reserved. 無断転載・複製・改変・再配布等を行うことは法律により禁じられています. まえがき この付録は,シリーズ〈生命機能〉の第 1 巻「生物ナノフォトニクス----構造 色入門----」(朝倉書店刊)の本文を読むときの便宜のためにつくったものであ る.内容は主に,本文中では書ききれない式の導出や本文の理解の助けになる ような現象の背景,および,定理の証明などを載せている.本付録の文章中に 出てくる節や式の番号はいずれも本文中の番号に基づいている.本来このよう な付録は本書の後ろにつけるべきものではあるが,本書の長さの制約のために ダウンロード形式をとることになった.しかし,こうすることにより長さの制 約を受けずに,逆に充分な内容を書くことができるようになり内容の充実につ ながった.この付録が本書を学習するときの助けになり,本文に含まれている 内容のより深い理解に繋がることを望んで止まない. 木 下 修 一 目 次 A. 多層膜による反射スペクトルの計算方法 · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · 1 A. 1 再帰的な方法 · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · 1 A. 2 ハクスレーの方法 · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · 4 B. ミ ー 散 乱 · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · 10 B. 1 ミー散乱の表式の求め方 · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · 10 B. 1. 1 境界条件とデバイポテンシャル · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · 10 B. 1. 2 変数分離と級数展開による解法 · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · 16 B. 1. 3 散乱波の簡単な表現 · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · 23 B. 2 消衰断面積と散乱断面積の求め方 · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · 25 B. 2. 1 消衰断面積の求め方 · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · 25 B. 2. 2 散乱断面積の求め方 · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · 29 C. 種々の定理の証明 · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · 32 C. 1 ガウスの定理の証明 · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · 32 C. 2 グリーンの定理の証明 · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · 33 C. 3 ブロッホの定理の証明 · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · 34 D. コレステリック液晶の光学特性 · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · 38 D. 1 放物線状パターンの成因 · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · 38 D. 2 コレステリック液晶の分散関係と光学応答 · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · 40 iv 目 次 E. 本文への補足 · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · 49 E. 1 吸収のある媒質中での光強度(2.1.5 項への補足) · · · · · · · · · · · · · · 49 E. 2 グリーン関数による微分方程式の解法(6.1.2 項への補足) · · · · · · 51 A. 1 再帰的な方法 付録 A では,多層膜による反射スペクトルの計算方法をいくつか紹介する. 本文中では転送行列法について書いたが,ここで紹介する再帰的な方法もハク スレーの方法も共によく用いられている. 再帰的な方法は,1 層ずつについての反射率や透過率を薄膜干渉の式を用い て書き下していく方法である.多層膜を構成する層のうち j 番目の層について 考えよう.図 A.1 のように,入射光の進行方向を z 軸にとって,+z 方向に進 行する波と −z 方向に進行する波の振幅を,それぞれ uj と vj と書くことにす る.j 番目の層での波の振幅は,j + 1 番目と j − 1 番目の波の振幅を用いて, uj = tj−1,j uj−1 eiφj /2 κj + rj,j−1 tj+1,j vj+1 eiφj κj (A.1) vj = rj,j+1 tj−1,j uj−1 eiφj κj + tj+1,j vj+1 eiφj /2 κj (A.2) のように書くことができる.ここで,tj,k と rj,k は,j 番目から k 番目の層 に入射するときの振幅透過率,振幅反射率を表す.κj と φj は,薄膜干渉の 式から得られ,それぞれ κj = 1/ (1 − rj,j+1 rj,j−1 exp[iφj ]) (式 (3.26)) と φj = 4πnj dj cos θj /λ (式(3.27)) である.これらの式は j 層内部での複数 回の反射を考えることで求められる.例えば,式(A.1)の右辺第 1 項は ¡ ¢ tj−1,j eiφj /2 1 + rj,j+1 rj,j−1 eiφj + · · · uj−1 = tj−1,j eiφj /2 uj−1 κj として計算される. 2 A. 多層膜による反射スペクトルの計算方法 図 A.1 再帰的な方法 式を簡単にするため,式(A.1)と(A.2)を次の形に書き直すことにする. uj = aj uj−1 + bj vj+1 (A.3) vj = cj uj−1 + dj vj+1 (A.4) さらに,vj /uj = ρj とおき,式(A.3)と(A.4)について,aj と cj ,あるい は,bj と dj で割って辺々を引き,uj−1 と vj+1 をそれぞれ消去すると (1/aj − ρj /cj ) uj = (bj /aj − dj /cj ) uj+1 ρj+1 (A.5) (1/bj − ρj /dj ) uj = (aj /bj − cj /dj ) uj−1 (A.6) となる.式(A.6)において,j を j + 1 に置き換えると (1/bj+1 − ρj+1 /dj+1 ) uj+1 = (aj+1 /bj+1 − cj+1 /dj+1 ) uj (A.7) となる.この式から得られる uj+1 を式(A.5)に代入すると (1/aj − ρj /cj ) uj = (bj /aj − dj /cj ) (aj+1 /bj+1 − cj+1 /dj+1 ) uj ρj+1 (1/bj+1 − ρj+1 /dj+1 ) (A.8) 「生物ナノフォトニクス」付録 A. 1 再帰的な方法 3 となり,さらに,辺々に aj cj を掛けると cj − aj ρj = −|Aj | · |Aj+1 | ρj+1 dj+1 − bj+1 ρj+1 (A.9) となる.ここで,|Aj | ≡ aj dj − bj cj である.したがって, 1 ρj = aj µ |Aj | · |Aj+1 |ρj+1 cj + dj+1 − bj+1 ρj+1 ¶ (A.10) となる. cj /aj = rj,j+1 eiφj /2 bj+1 /dj+1 = rj+1,j eiφj+1 /2 |Aj |/aj = dj − bj cj /aj = tj+1,j eiφj /2 κj − rj,j−1 rj,j+1 tj+1,j e3iφj /2 κj = tj+1,j eiφj /2 と aj+1 − (bj+1 /dj+1 )cj+1 |Aj+1 | = dj+1 − bj+1 ρj+1 1 − (bj+1 /dj+1 )ρj+1 = tj,j+1 eiφj+1 /2 κj+1 − rj+1,j eiφj+1 /2 rj+1,j+2 tj,j+1 eiφj+1 κj+1 1 − rj+1,j eiφj+1 /2 ρj+1 = (1 − rj+1,j rj+1,j+2 eiφj+1 )tj,j+1 eiφj+1 /2 κj+1 1 − rj+1,j eiφj+1 /2 ρj+1 = tj,j+1 eiφj+1 /2 1 − rj+1,j eiφj+1 /2 ρj+1 の関係式を用いると ρj = rj,j+1 eiφj /2 + tj+1,j eiφj /2 tj,j+1 eiφj+1 /2 ρj+1 1 − rj+1,j eiφj+1 /2 ρj+1 となる.ここで,(1 − rj+1,j rj+1,j+2 eiφj+1 ) = 1/κj+1 という関係を用いた.フ 2 + tj,j+1 tj+1,j = 1 を レネルの公式から導かれる式 rj,j+1 = −rj+1,j と rj,j+1 用い,rj ≡ ρj exp[−iφj /2] とおくと,最終的に j 番目の層に対する振幅反射率 4 A. 多層膜による反射スペクトルの計算方法 の再帰的な形を得ることができる. rj = rj,j+1 + eiφj+1 rj+1 1 − rj,j+1 eiφj+1 rj+1 (A.11) 反射率の計算は次のように行う.N 層ある多層膜では,はじめに N 層目 と透過側の媒質(N + 1 層目とする)との界面での反射率を計算すること から始める.それには,式(A.1), (A.2)において uN と vN を考えると, vN +1 = 0 だから辺々を割ると vN /uN = rN,N +1 exp[iφN /2] の関係が得ら れ,rN = vN exp[−iφN /2]/uN = rN,N +1 という関係式を得る.この結果を, 式(A.11)に代入して,rN −1 を求める.以降,同様の手順で計算を続け,最 後に入射側の媒質からの反射率 r0 を得ると,これが多層膜全体の振幅反射率に なるのである.それぞれの層の界面の振幅反射率と振幅透過率はフレネルの公 式から得られるので,式(A.11)は斜入射の場合の s 偏光や p 偏光のときにも 適用することができる. 再帰的な方法の特徴は,反射率や透過率が任意の多層膜について計算できる ので,層の厚みや屈折率に周期性のない場合にも適用可能な点,それに,数値 計算が簡単な点が挙げられる.反面,ここで得られた式から物理的な意味を読 み取ることは難しい. A. 2 ハクスレーの方法 ハクスレーはまったく異なる方法で周期的な多層膜の反射率を求める方法を 提案した77) .この方法は規則的な周期をもつ多層膜にしか適用できないが,反 射バンドの裾の振る舞いなどについての知見も得られるので有用である.まず, 屈折率の高い層 b が周期的に並んで,屈折率の低い媒質 a の中に埋められてい る場合を考える.層に垂直に z 軸を考え,波が z 軸の正の方向に進む場合を + 記号で,負の方向に進む場合を − 記号をつけて振幅を表すことにする.図 A.2 のように,j 番目の b 層と j + 1 番目の b 層の間の a 層の中心の位置での振幅 を aj と書くと,次のような漸化式を書くことができる. + − a− j−1 = ρaj−1 + τ aj 「生物ナノフォトニクス」付録 (A.12) A. 2 図 A.2 ハクスレーの方法 5 ハクスレーの方法 + − a+ j = τ aj−1 + ρaj (A.13) − ここで,a+ j と aj は j 番目の a 層の中心での +z と −z に伝播する波の振幅で ある.また,ρ と τ は層の中心で評価した振幅反射率と振幅透過率で,薄膜干 渉の式(3.24), (3.25)で,rba = rbc を r に,また,φ を −2φ に置き換え,a 層,b 層に応じて φa と φb とする.ここで,φa,b = −2πna,b da,b /λ で,na,b と da,b はそれぞれ a 層,b 層の屈折率と厚さを示す.その結果, µ ρ= τ= −r + (1 − r2 )re−2iφb 1 − r2 e−2iφb ¶ e−iφa = −r 1 − e−2iφb −iφa e (A.14) 1 − r2 e−2iφb (1 − r2 )e−i(φa +φb ) 1 − r2 e−2iφb (A.15) 2 という関係式が得られる.ここで,tab tbc = 1 − rab という関係式(2.50)を用 いている. ハクスレーは漸化式(A.12), (A.13)の解として + j a+ j = a0 µ , + j a− j = ha0 µ (A.16) A. 多層膜による反射スペクトルの計算方法 6 のような試行関数を考えた.ここで,µ と h は未知の定数である.これらの関 数を漸化式(A.12), (A.13)に代入すると h = ρ + τ hµ (A.17) µ = τ + ρhµ (A.18) が得られる.ここで,µ あるいは h を消去することにより次のような 2 次方程 式を得る. µ2 − µ(1 + τ 2 − ρ2 )/τ + 1 = 0 (A.19) h2 − h(1 − τ 2 + ρ2 )/ρ + 1 = 0 (A.20) また,式(A.17)と(A.18)から今度は右辺にある hµ を消去すると,µ と h が独立ではなく,h = (τ µ − τ 2 + ρ2 )/ρ という関係式で結びついていることが 分かる. 式(A.19), (A.20)の 2 次方程式の解をそれぞれ µ1,2 ,h1.2 とすると,式 − (A.12), (A.13)は a+ j または aj に対し線形なので,h1,2 または µ1,2 の線形 結合が一般解になる∗1) .すなわち, + j + j a+ j = αa0 µ1 + (1 − α)a0 µ2 (A.21) + j + j a− j = αh1 a0 µ1 + (1 − α)h2 a0 µ2 (A.22) である.ここで,α は定数である.式(A.19), (A.20) の解と係数の関係から, µ1 + µ2 = (1 + τ 2 − ρ2 )/τ = 2 cos 2φ − r2 1 − r2 µ1 µ2 = 1 (A.23) (A.24) と h1 + h2 = (1 − τ 2 + ρ2 )/ρ = − h1 h2 = 1 ∗1) 2 cos φ r (A.25) (A.26) 下付きの数字 1,2 は式(A.19) と (A.20)の解のうち,複合がそれぞれ − と + の解に対応し ている. 「生物ナノフォトニクス」付録 A. 2 ハクスレーの方法 7 が得られる.式(A.23)と(A.25)の最後の式は,式(A.14), (A.15)を用い て計算すると得られる.また,式を単純にするため,φa = φb ≡ φ としている. 式(A.22)において,境界条件 a− p = 0 を入れると, p + p αh1 a+ 0 µ1 + (1 − α)h2 a0 µ2 = 0 となるので, α(h2 µp2 − h1 µp1 ) = h2 µp2 から α = h2 /(h2 − m2 h1 ) (A.27) が得られる.ここで,m2 = (µ1 /µ2 )p とおいた.さらに,1−α = −m2 h1 /(h2 − m2 h1 ) を使って,強度反射率と強度透過率は式(A.21), (A.22)から ¯ − ¯2 ¯ ¯ ¯ a0 ¯ ¯ 1 − m2 ¯2 2 ¯ ¯ ¯ ¯ R = ¯ + ¯ = |αh1 + (1 − α)h2 | = ¯ h2 − m2 h1 ¯ a0 ¯ + ¯2 ¯ ¯ ¯ ap ¯ ¯ (h2 − h1 )m ¯2 p p 2 ¯ ¯ ¯ ¯ T = ¯ + ¯ = |αµ1 + (1 − α)µ2 | = ¯ h2 − m2 h1 ¯ a (A.28) (A.29) 0 p と表すことができる.ここで,式(A.24)と(A.26)を用い,また,µ1 = p/2 µ1 · (1/µ2 )p/2 = m という関係も用いている. 式(A.28)の物理的な意味は次の通りである.関係式(A.23)∼(A.26) を用 いて,式(A.19)と(A.20)を書き直すと cos 2φ − r2 µ+1=0 1 − r2 cos φ h2 + 2 h+1=0 r µ2 − 2 (A.30) (A.31) となる.この 2 つの 2 次方程式の根の判別をするため,判別式 Dµ と Dh を考 えよう. µ ¶2 (2 cos2 φ − 1 − r2 )2 − (1 − r2 )2 cos 2φ − r2 − 1 = Dµ /4 ≡ 1 − r2 (1 − r2 )2 2 2 2 4(1 − cos φ)(r − cos φ) = (1 − r2 )2 A. 多層膜による反射スペクトルの計算方法 8 µ cos2 φ r Dh /4 ≡ ¶2 −1= cos2 φ − r2 r2 この結果,2 つの判別式に cos2 φ − r 2 の項があり,その符号が逆になっているた めに,Dµ と Dh は相補的に振る舞うことが分かる.つまり,µ1,2 が実数解をも つときは,h1,2 は複素数解になり,逆もまた真なりである.そこで,cos2 φ − r 2 の符号により 2 つの場合を考えてみよう. 1) cos2 φ − r2 < 0 の場合 このときは,解 µ1,2 は実数となり,h1,2 は式(A.26)から大きさ 1 の複素数 になる.強度反射率(A.28)は変形し,分母を実数部と虚数部に分けて書くと ¯ ¯ R = ¯¯ ¯2 ¯ 1 − m2 ¯ 2 2 (h1 + h2 )(1 − m )/2 − (h1 − h2 )(1 + m )/2 ¯ (1 − m2 )2 = (h1 + h2 )2 (1 − m2 )2 /4 − (h1 − h2 )2 (1 + m2 )2 /4 ½ µ ¶¾−1 4m2 cos2 φ = 1− 1− (A.32) (1 − m2 )2 r2 となる.最後の式では,(h1 + h2 )2 /4 = (h1 − h2 )2 /4 + 1 という関係を用い た.また,m2 = (µ1 /µ2 )p < 1 とし,(h1 − h2 )2 /4 = (cos2 φ − r 2 )/r 2 という 関係を用いている. 層の数 p が増加していくと, m2 → 0 になり,反射率は 1 に近づいていく. したがって,条件 cos2 φ − r2 < 0 は反射バンド幅内での 反射を与えることになるので,この条件はバンド幅を規定するものになる. 2) cos2 φ − r2 > 0 の場合 このとき,解 h1,2 は実数になり,µ1,2 は,式(A.24)から大きさ 1 の複素 数になる.したがって, µ1,2 ≡ exp[∓iθ] とおくことにより,反射率を計算す ると ¯ ¯−2 ¯ ¯ 1 + m2 ¯ R = ¯¯(h1 + h2 )/2 − (h − h )/2 1 2 ¯ 2 1−m ½ ¾ −1 cos2 φ − r2 = 1+ 2 2 r sin pθ 「生物ナノフォトニクス」付録 (A.33) A. 2 図 A.3 ハクスレーの方法 9 ハクスレーの方法による反射率の計算.屈折率 1.5,厚さ 83.3 nm の層が 10 層,屈折率 1.0 の媒質中にある場合を計算している.実線は式(A.28)を用い て計算した反射スペクトル.波線は式(A.34)を用いて計算した包絡線.挿入 図は cos2 φ − r 2 の波長依存性. となる.ここで,(1 + m2 )/(1 − m2 ) = −i cot pθ という関係を用いた. sin2 pθ を含む項の存在は反射スペクトルの裾の部分に現れる振動を表している. sin2 pθ → 0 のときは,R → 0 となり,一方,sin2 pθ = 1 のときは R 6= 0 な ので,後者は裾の部分の包絡線 Renv を表すと考えてよい.したがって, Renv = 1+ (cos2 1 φ − r2 )/r2 (A.34) となる.図 A.3 には,このように計算した反射スペクトルと式(A.34)を使っ て計算した裾の部分の包絡線を示す.挿入図には cos2 φ − r 2 をプロットしてい るが,負になるときが反射バンドに対応していることが分かる. ハクスレーの方法は 1)反射率が解析的な形で表すことができ,2)反射のバ ンド幅や裾の振動の物理的な解釈ができる点に利点がある.これに対して,3) 適用できる多層膜が,周期的でなくてはならないという限界も持っている. B. 1 B. 1. 1 ミー散乱の表式の求め方 境界条件とデバイポテンシャル ミー散乱は,一様な球体が均一な媒質中にあって,それに平面波の光が当たっ たときの散乱を指す.ここでは,ミー散乱の一般的な表式を導いてみよう.以 下,基本的にはボルン・ウォルフの「光学の原理116) 」に沿って導いていくが,途 中,記号を簡素化したところや誤解しやすい記号を使わなかったところもある. 図 6.2 のように,半径 a の球に対して,直線偏光の平面波が z 軸方向に向かっ て入射している場合を考える.入射波の電場の向きを x 軸方向にとると,必然 的に磁場は y 軸方向になる.球の外部の媒質を I とし,内部の媒質を II とする. I と II の媒質は誘電率・透磁率が異なるとする. まず,電場と磁場に関するマクスウェル方程式から出発する. ∂D ∂t ∂B ∇×E=− ∂t ∇×H=j+ (B.1) (B.2) ここで,入射光としては角振動数 ω の単色光が入射しているとし,散乱光を含 めすべての物理量の時間依存する部分は exp[−iωt] 型の依存性を示すとする. また,電流の項は j+ ³ ∂D ∂E σ´ E = σE + ² = (σ − iω²)E = −iω ² + i ∂t ∂t ω (B.3) とし,(² + iσ/ω) → ² とおき直し,誘電率の中に含めることにする.ただし, B. 1 ミー散乱の表式の求め方 11 σ は電気伝導率である.新しくおき直した ² は σ が 0 のときには実数であるが, 0 でないときには複素数になるので,一般に複素誘電率と呼ばれている.以後, 電場と磁場に対して時間に依存する部分を除いた振幅だけの部分にも,E ある いは H などと同じ記号を用いることにする. 時間に依存した部分を除いた式は ∇ × H = −iω²E (B.4) ∇ × E = iωµH (B.5) Ex(i) = eikz (B.6) となる.入射波の電場を とすると,磁場は式(B.5)を用いて, Hy(i) = k ikz e ωµ (B.7) と表すことができる.ただし,電場の振幅を 1 としている. 一様な媒質中に球が存在している場合,光の入射により球の外側には散乱光 が,内部では複雑な電磁場分布が生じるであろう.そのため,球の外部の場は 入射光(i)と散乱光(s)の和となり,内部(w)はこれらとは異なる電場にな るとして, ( E= E(i) + E(s) ······r > a E(w) ······r < a (B.8) と書くことにする. 球による散乱場や球の内部の場を取り扱うには極座標が便利なので,式(B.4), (B.5)を極座標で表してみる.公式(6.32)∼(6.34)を使って書き直すと ½ ¾ 1 ∂(rHφ sin θ) ∂(rHθ ) −iω²Er = 2 − r sin θ ∂θ ∂φ ½ ¾ 1 ∂Hr ∂(rHφ sin θ) −iω²Eθ = − r sin θ ∂φ ∂r ½ ¾ 1 ∂(rHθ ) ∂Hr −iω²Eφ = − r ∂r ∂θ (B.9) (B.10) (B.11) B. ミ ー 散 乱 12 ½ ¾ 1 ∂(rEφ sin θ) ∂(rEθ ) iωµHr = 2 − r sin θ ∂θ ∂φ ½ ¾ 1 ∂Er ∂(rEφ sin θ) iωµHθ = − r sin θ ∂φ ∂r ½ ¾ 1 ∂(rEθ ) ∂Er − iωµHφ = r ∂r ∂θ (B.12) (B.13) (B.14) となる.これらの方程式の解を求めるときは,球の境界 r = a で,球の外部と 内部の電場や磁場の接線成分がそれぞれ等しくなるように接続しなければなら ない. この方程式は 2 階の偏微分方程式なので,2 つの 1 次独立な解をつくり,そ れらの和として一般解を求めていこう.1 次独立な解としてしばしば採用され るものは,磁場の縦波成分を 0 とした TM(transverse magnetic)モードと電 場の縦波成分を 0 とした TE(transverse electric)モードである.TM と TE のそれぞれのモードを e と m という記号を付して書き表し, e Er = Er , eHr = 0, m Er = 0, m Hr = H r が満たされているとする.例えば,TM モードでは,式(B.10)と(B.11)で Hr = 0 とすると, 1 ∂(r eHφ sin θ) r sin θ ∂r 1 ∂(r eHθ ) e −iω² Eφ = r ∂r iω² eEθ = となるが,これを式(B.13)に代入することにより, 1 r sin θ iωµ eHθ = ½ ∂ eEr ∂ − ∂φ ∂r µ − 1 ∂(r eHθ ) sin θ iω² ∂r ¶¾ となり,さらに変形して µ ¶ iω² ∂ eEr ∂2 2 e (r + k H ) = − θ ∂r2 sin θ ∂φ (B.15) となる.ただし,k 2 = ω 2 ²µ としている.一方,式(B.14)に代入すると 1 iωµ Hφ = r e 「生物ナノフォトニクス」付録 ½ ∂ ∂r µ 1 ∂(r eHφ ) iω² ∂r ¶ ∂ eEr − ∂θ ¾ ミー散乱の表式の求め方 B. 1 から µ 13 ¶ ∂2 ∂ eEr 2 e + k (r H ) = iω² φ ∂r2 ∂θ (B.16) が得られる. これらの方程式を解くにあたって,TM モードでも TE モードでも 0 とおい た 1 つの成分を除いて,最終的には電場・磁場ベクトルのすべての成分を決定 しなければならない.この操作を簡単に行うため,スカラー関数を用いて電場・ 磁場ベクトルを書き表すことを試みる.それには,式(B.12)に注目する.TM モードではこの式の左辺が 0 であるので, ∂(rEθ ) ∂(rEφ sin θ) = ∂θ ∂φ という関係が常に満足される.この関係はスカラー関数 U を用いて, e Eφ = 1 ∂U , r sin θ ∂φ e Eθ = 1 ∂U r ∂θ (B.17) と表すことができる.さらに,U として U= ∂(ru) ∂r (B.18) のようにスカラー関数 u と r の積の微分で表すことにする.この式を式(B.17) に代入することにより, 1 ∂ 2 (ru) r ∂r∂θ 1 ∂ 2 (ru) e Eφ = r sin θ ∂r∂φ e Eθ = (B.19) (B.20) という関係式が得られる.また,式(B.10)で eHr = 0 とおき,eEθ に上式を 代入することにより, −iω² 1 ∂ 2 (ru) 1 ∂(r eHφ sin θ) =− r ∂r∂θ r sin θ ∂r から e Hφ = iω² ∂(ru) r ∂θ (B.21) B. ミ ー 散 乱 14 が得られる ∗1) .同様に,式(B.11)から e Hθ = − iω² ∂(ru) r sin θ ∂φ (B.22) が得られる.さらに,これらを式(B.9)に代入することにより, e Er = − 1 r sin θ ½ ∂ ∂θ µ sin θ ∂u ∂θ ¶ + 1 ∂2u sin θ ∂φ2 ¾ (B.23) が得られる. 式(B.21)∼(B.23)を式(B.15)と(B.16)に代入することで, µ ∂2 + k2 ∂r2 ¶ ∂(ru) ∂φ ½ · µ ¶ ¸¾ ∂ ∂ 1 ∂u 1 ∂2u = − sin θ + ∂φ r sin θ ∂θ ∂θ sin θ ∂φ2 ¶ µ 2 ∂(ru) ∂ + k2 ∂r2 ∂θ ½ · µ ¶ ¸¾ ∂ 1 ∂ ∂u 1 ∂2u = − sin θ + ∂θ r sin θ ∂θ ∂θ sin θ ∂φ2 となるが,これは同じ関数 µ · µ ¶ ¶ ¸ ∂2 ∂ ∂u 1 ∂2u 1 2 sin θ + + k ru − ∂r2 r sin θ ∂θ ∂θ sin θ ∂φ2 (B.24) を θ で微分しても,φ で微分しても共に 0 になることを意味している.した がって, 1 ∂(ru) 1 ∂ + 2 r ∂r2 r sin θ ∂θ µ sin θ ∂u ∂θ ¶ + 1 ∂2u + k2 u = 0 2 r2 sin θ ∂φ2 (B.25) という関係式が得られる∗2) .この式は,u を振幅とする,極座標で表した波動 ∗1) ∗2) ここには,本来,定数項 C(θ, φ) がつくはずだが,(iω²/r)∂(ru)/∂θ − C(θ, φ)/(r sin θ) = (iω²/r)∂(ru0 )/∂θ が成り立つように,ru0 を新たに定めると考えればよい. このとき,実際には左辺は 0 にはならず,r の任意の関数に等しいとしなければならない.この関数を C(r) とすると,(∂ 2 /∂r 2 +k2 )(ru)+F (ru) = C(r) となる.ここで,F (ru) は式(B.24)の残り の項である.この項を関数 u に繰り込むため,(∂ 2 /∂r 2 +k2 )(ru)−C(r) = (∂ 2 /∂r 2 +k2 )(ru0 ) となる新たな関数 u0 を考える.さらに,C(r) = −(∂ 2 /∂r 2 + k2 )D(r) となるように関数 D(r) を決めると,(∂ 2 /∂r 2 + k2 )(ru + D(r)) = (∂ 2 /∂r 2 + k2 )(ru0 ) となり,したがって, ru0 = ru+D(r) とすることができる.この ru0 を用いると,(∂ 2 /∂r 2 +k2 )(ru0 )+F (ru0 ) = 0 とすることができる. 「生物ナノフォトニクス」付録 B. 1 ミー散乱の表式の求め方 15 方程式にほかならない.また,この式を用いると式(B.23)は簡単になり, e Er = ∂ 2 (ru) + k 2 ru ∂r2 (B.26) となる. TE モードに対しては e ←→ m −iω² ←→ iωµ E ←→ H u ←→ v という置き換えをすることで同様の結果が得られる.ただし,TM モードでの 関数 u の代わりに,TE モードでは関数 v を考えることにする. 一般解は,TM モードと TE モードの結果を足し合わせたものである.すな わち, ∂ 2 (ru) + k 2 ru ∂r2 1 ∂ 2 (ru) 1 ∂(rv) = + iωµ r ∂r∂θ r sin θ ∂φ 1 ∂ 2 (ru) 1 ∂(rv) = − iωµ r sin θ ∂r∂φ r ∂θ 2 ∂ (rv) = k 2 rv + ∂r2 1 ∂(ru) 1 ∂ 2 (rv) = −iω² + r sin θ ∂φ r ∂r∂θ 1 ∂(ru) 1 ∂ 2 (rv) = iω² + r ∂θ r sin θ ∂r∂φ Er = (B.27) Eθ (B.28) Eφ Hr Hθ Hφ (B.29) (B.30) (B.31) (B.32) となる.境界条件は,球の表面で電場と磁場の接線成分 Eθ ,Eφ ,Hθ ,Hφ が 等しくなることである.このためには, ²ru, µrv, ∂(ru)/∂r, ∂(rv)/∂r が境界の前後で等しければよい. (B.33) B. ミ ー 散 乱 16 B. 1. 2 変数分離と級数展開による解法 関数 u あるいは v は式(B.25)の波動方程式を満足する.そこで,この方程 式を変数分離の方法を用いて解いてみよう.まず,u を u = R(r)Θ(θ)Φ(φ) (B.34) とおいて,式(B.25)に代入してみる. 1 ∂ 2 (rR) 1 ∂ ΘΦ + 2 2 r ∂r r sin θ ∂θ µ ∂Θ sin θ ∂θ ¶ RΦ + 1 ∂2Φ RΘ + k 2 RΘΦ = 0 r2 sin2 θ ∂φ2 この式の両辺を RΘΦ/r 2 で割り,r の関数を含む項を左辺に,それ以外を右辺 に移項すると µ r ∂(rR) 1 ∂ + k2 r2 = − 2 R ∂r Θ sin θ ∂θ ∂Θ sin θ ∂θ ¶ − 1 ∂2Φ ≡ α (B.35) Φ sin2 θ ∂φ2 となる.この式では,左辺が r だけの関数,右辺が θ と φ だけの関数であるか ら,この両者が等しいときは式の値が定数になるときだけである.そこで,そ の定数を α とおいている.これより, ∂ 2 (rR) ³ 2 α´ + k − rR = 0 ∂r2 r2 (B.36) という r だけの方程式が得られる.さらに,式(B.35)の右辺を変形して, sin θ ∂ − Θ ∂θ µ ∂Θ sin θ ∂θ ¶ − α sin2 θ = 1 ∂2Φ = −β Φ ∂φ2 とすると,左辺は θ だけの関数,右辺は φ だけの関数になるから,この等式が 成り立つのも式の値が定数になるときである.したがって,その値を −β とお くと,次の 2 つの式が導かれる. µ ¶ µ ¶ 1 ∂ ∂Θ β sin θ + α− Θ=0 sin θ ∂θ ∂θ sin2 θ ∂2Φ + βΦ = 0 ∂φ2 式(B.38)は簡単に解けて, Φ = a cos( 「生物ナノフォトニクス」付録 p p βφ) + b sin( βφ) (B.37) (B.38) B. 1 ミー散乱の表式の求め方 17 となる.ここで,a と b は任意の定数である.さらに,角度 φ に対して関数 Φ が 2π 周期であるという条件を課すと,m を整数として β = m2 でなければな らないという条件がつく.したがって, Φ = am cos(mφ) + bm sin(mφ) (B.39) となる. 式(B.37)は,ξ = cos θ とおいて変数変換を行うと,dξ = − sin θdθ から, d dξ ½ ¾ µ ¶ dΘ m2 (1 − ξ 2 ) + α− Θ=0 dξ 1 − ξ2 (B.40) となり,α = l(l + 1) のとき Θ はルジャンドルの陪微分方程式を満たす.した がって, Θ = Plm (ξ) = Plm (cos θ) (B.41) と表される.ただし,l は l > |m| を満たす整数である. 最後に,式(B.36)の両辺を k 2 で割ると, 1 k2 µ dR d2 R 2 +r 2 dr dr ¶ ½ ¾ l(l + 1) + 1− 2 2 rR = 0 k r となり,さらに,kr = ρ とおいて変数変換すると ½ ¾ d2 R 2 dR l(l + 1) + 1− + R=0 dρ2 ρ dρ ρ2 (B.42) となる.この微分方程式の解は球ベッセル関数として知られていて,その解は 次の 4 つの球ベッセル関数のうち任意の 2 つで与えられる. r π J 1 (ρ) 2ρ n+ 2 r π nn (ρ) = N 1 (ρ) 2ρ n+ 2 r π (1) h(1) H 1 (ρ) = jn (ρ) + inn (ρ) (ρ) = n 2ρ n+ 2 r π (2) h(2) (ρ) = H 1 (ρ) = jn (ρ) − inn (ρ) n 2ρ n+ 2 jn (ρ) = (B.43) (B.44) (B.45) (B.46) B. ミ ー 散 乱 18 (1) (2) ここで,Jn+ 1 と Nn+ 1 はベッセル関数とノイマン関数を表し,Hn+ 1 と Hn+ 1 2 2 2 2 はそれぞれ第 1 種,第 2 種ハンケル関数である. これから扱う解の場合,最終的に球面波の形 rR になっているので, r πρ Jn+ 21 (ρ) r2 πρ χl (ρ) = −ρnl (ρ) = − N 1 (ρ) 2 n+ 2 ψl (ρ) = ρjl (ρ) = (B.47) と変換すると便利である.したがって,式(B.36)の一般解は rR = cl ψl (kr) + dl χl (kr) (B.48) となる.以上をまとめると,ru に関する波動方程式(B.25)の一般解は ru = l ∞ X X {cl ψl (kr) + dl χl (kr)}Plm (cos θ){am cos(mφ) + bm sin(mφ)} l=0 m=−l (B.49) となる. 入射光の電場や磁場についても同様の展開を行ってみる.そのため,電場や 磁場ベクトルの各成分を極座標で表す.例えば,電場の動径部分に関しては入 射光の電場が式(B.6)の様に表されるから, Er(i) = eik (I) r cos θ sin θ cos φ のようになる.ここで,k (I) は媒質 I 内での入射光の波数ベクトルで,入射光 が z 軸方向に進むことを考慮に入れている.この式を入射光に対する関数 u(i) で表すために,式(B.27)を用いて Er(i) = eik (I) r cos θ sin θ cos φ = ∂ 2 (ru(i) ) + k (I)2 ru(i) ∂r2 (B.50) とし,この微分方程式を解いて u(i) を求めることにする.そのために,公式 eik (I) r cos θ = ∞ X il (2l + 1)jl (k (I) r)Pl (cos θ) l=0 = ∞ X l=0 「生物ナノフォトニクス」付録 il (2l + 1) ψl (k (I) r) Pl (cos θ) k (I) r (B.51) B. 1 ミー散乱の表式の求め方 19 を用いる.さらに, eik (I) r cos θ sin θ = − 1 ∂ ik(I) r cos θ e ik (I) r ∂θ (B.52) という関係を用いると, eik (I) r cos θ sin θ cos φ ∞ 1 X l ψl (k (I) r) ∂ = − (I) i (2l + 1) Pl (cos θ) cos φ ik r l=0 k (I) r ∂θ = 1 (k (I) r)2 ∞ X il−1 (2l + 1)ψl (k (I) r)Pl1 (cos θ) cos φ (B.53) l=1 となる.ここで,∂/∂θPl (cos θ) = −Pl1 (cos θ) という関係式を用いた.また, P01 (cos θ) = 0 という関係を用いて,l = 0 を総和から除いた. 式(B.50)の微分方程式を解くため,式(B.53)と同形の関数 ru(i) = 1 k (I)2 ∞ X αl ψl (k (I) r)Pl1 (cos θ) cos φ l=1 を解として考え,式(B.50)の右辺に代入して両辺の項を比較すると ½ ¾ ∂ 2 ψl (k (I) r) ψl (k (I) r) (I)2 (I) l−1 αl k ψl (k r) + = i (2l + 1) ∂r2 r2 (B.54) となる.この式は既知の ψl (k (I) r) という関数に対して,常に満足する式でな ければならないので,どのような r をとっても成り立つように α を決める必要 がある.波動関数を満たす rR の一般解は rR = cl ψl (k (I) r) + dl χl (k (I) r) と書 けるが,入射波も波動方程式を満たし,また,ψl (k (I) r) だけで表されるので, cl = 1 と dl = 0 とすると,rR = ψl (k (I) r) となる.式(B.36)から µ ¶ d(rR) l(l + 1) 2 + k − rR = 0 (B.55) dr2 r2 となるが,式(B.54)を変形すると, µ ¶ d il−1 (2l + 1) (I) (I)2 ψ (k r) + k − ψl (k (I) r) = 0 l dr2 αl r2 (B.56) B. ミ ー 散 乱 20 となるから, αl = il−1 (2l + 1) l(l + 1) (B.57) であることがすぐ分かる.係数 αl が分かったので,これから ru(i) を書き下 すと ru(i) = ∞ X 1 k (I)2 il−1 l=1 (2l + 1) ψl (k (I) r)Pl1 (cos θ) cos φ l(l + 1) (B.58) となる. v (i) については,v だけで表されている式(B.30)を用いて計算を行う.磁 場については,まず,式(B.7)を極座標で表すと, Hr(i) = k (I) ik(I) r cos θ e sin θ sin φ ωµ(I) となるので,電場の場合と係数を比較することにより, rv (i) = = 1 k (I)2 ∞ X il−1 l=1 k (I) (2l + 1) ψl (k (I) r)Pl1 (cos θ) sin φ ωµ(I) l(l + 1) ∞ X i (2l + 1) il−1 k (I) ψl (k (I) r)Pl1 (cos θ) sin φ l(l + 1) k (I)2 iωµ(I) l=1 (B.59) を得る. 入射場(i)に対する関数 u(i) と v (i) が求まったので,次は,未知の散乱場 (s)と球内部の場(w)を求めてみよう.境界条件から φ 依存性は入射場と同 じであるはずで,u と v それぞれに対して cos φ と sin φ を入れておく必要があ る.また,ベッセル関数の形については,球内部の場では原点での発散のない (1) ψl 関数が,散乱場では遠方で exp[ikr]/r 型の漸近形をもつ hl が適当と考え られる.そこで, ru(w) = rv (w) = 1 k (II)2 ∞ X e Al ψl (k (II) r)Pl1 (cos θ) cos φ ∞ X i k (II) iωµ(II) l=1 「生物ナノフォトニクス」付録 (B.60) l=1 m Al ψl (k (II) r)Pl1 (cos θ) sin φ (B.61) ミー散乱の表式の求め方 B. 1 ru(s) = rv (s) 1 k (I)2 ∞ X 21 (1) e Bl ζl (k (I) r)Pl1 (cos θ) cos φ (B.62) l=1 ∞ X i = (I) k iωµ(I) l=1 m (1) Bl ζl (k (I) r)Pl1 (cos θ) sin φ (1) (B.63) (1) とおくことにする.ここで,ζl (ρ) = ψl (ρ) − iχl (ρ) = ρhl (ρ) である. これらの関数が球の境界で,式(B.33)で表す 4 つの関数の値がそれぞれ等し くなるという条件を課して,未知の係数の値を求め,球内部の場や散乱場が求ま ることになる.以後, 「光学の原理116) 」の原文と変数を合わせるため,k1 = iω², k2 = iωµ という置き換えをして,4 つの条件を書いていこう.まず,²ru に関 しては l についての項を比較すると, (I) (I) (II) k1 l−1 2l + 1 k1 k1 e e Bl ζl (q) + (I)2 i ψl (q) = (II)2 Al ψl (n̂q) (I)2 l(l + 1) k k k となる.ここで,k (I) と k (II) は,それぞれの媒質中での光の波数ベクトルを 表す.また,簡単のため q ≡ k (I) a とおき,さらに,媒質 I に対する媒質 II の 屈折率の比を n̂ = k (II) /k (I) = n(II) /n(I) とおくことにより,k (II) a = n̂q と 表した.同様に,∂(ru)/∂r という条件については, 1 Bl ζl0 (q) + 1 e k (I) k (I) il−1 1 2l + 1 0 ψl (q) = (II) eAl ψl0 (n̂q) l(l + 1) k となる.ここで,ζl0 (q) と ψl0 (q) はそれぞれ q についての微分を表す.k 2 = −k1 k2 の関係を使い,さらに計算を行っていくと,境界条件は以下の 4 つの関係式に まとめられる. 2l + 1 0 1 ψ (q) = eAl (II) ψl0 (n̂q) l(l + 1) l k 0 1 2l + 1 1 1 (1) m ψl0 (q) = mAl (II) ψl0 (n̂q) Bl (I) ζl (q) + (I) il−1 l(l + 1) k k k e Bl 1 (1)0 ζl (q) (I) k + 2 1 (1) Bl (I) ζl (q) k2 e 1 k (I) il−1 2 + 1 2 l−1 2l + 1 1 ψl (q) = eAl (II) ψl (n̂q) l(l + 1) k i (I) k2 2 1 (1) 1 l−1 2l + 1 1 m m Bl (I) ζl (q) + (I) i ψl (q) = Al (II) ψl (n̂q) l(l + 1) k k k B. ミ ー 散 乱 22 e e m この式は, Bl と Al , Bl と mBl をそれぞれ未知数とする 2 組の 2 元連立 1 次方程式になっている.連立 1 次方程式の解についてのクラメールの公式を 使って ¯ ¯ 1 0 ¯ k(II) ψl (n̂q) ¯ ¯ 1 ψ (n̂q) ¯ k(II) l 2l + 1 e l+1 ¯ 2 Bl = i ¯ l(l + 1) ¯ 1 ψ 0 (n̂q) ¯ k(II) l ¯ 1 ψ (n̂q) ¯ k(II) l 2 ¯ ¯ 1 0 ¯ (II) ψl (n̂q) ¯ k2 ¯ 1 ¯ k(II) ψl (n̂q) m l+1 2l + 1 ¯ Bl = i ¯ l(l + 1) ¯ 1 ψ 0 (n̂q) ¯ k2(II) l ¯ 1 ¯ k(II) ψl (n̂q) ¯ ¯ 0 ψ (q) ¯ k(I) l ¯ ¯ 1 (I) ψl (q) ¯ k 1 ¯ ¯ (q) ¯ ¯ (1) 1 (q) ¯¯ (I) ζl k (B.64) 2 (1)0 1 k(I) ζl 2 ¯ ¯ ψl0 (q) ¯ ¯ ¯ 1 ¯ ψ (q) l (I) k 1 (I) k2 ¯ ¯ (q) ¯ ¯ ¯ (1) 1 ¯ ζ (q) k(I) l 1 (I) k2 (B.65) (1)0 ζl となる.これらを書き下すと (I) e Bl = il+1 (II) 2l + 1 k2 k (II) ψl0 (q)ψl (n̂q) − k2 k (I) ψl0 (n̂q)ψl (q) l(l + 1) k (I) k (II) ζ (1)0 (q)ψl (n̂q) − k (II) k (I) ψ 0 (n̂q)ζ (1) (q) 2 2 (II) l (I) l l 2l + 1 k2 k (II) ψl (q)ψl0 (n̂q) − k2 k (I) ψl0 (q)ψl (n̂q) m Bl = il+1 l(l + 1) k (I) k (II) ζ (1) (q)ψ 0 (n̂q) − k (II) k (I) ψl (q)ζ (1)0 (n̂q) 2 l l 2 l (B.66) となる. さらに,式(B.62), (B.63)を式(B.27)∼(B.32)に代入し,式(B.55)を 用いれば次の散乱場の表式が得られる. (s) Eθ ∞ cos φ X (1) l(l + 1) eBl ζl (k (I) r)Pl1 (cos θ) k (I)2 r2 l=1 ∞ ½ 0 1 cos φ X e (1)0 (I) = − (I) Bl ζl (k r)Pl1 (cos θ) sin θ r k l=1 ¾ 1 (1) −i mBl ζl (k (I) r)Pl1 (cos θ) sin θ Er(s) = 1 「生物ナノフォトニクス」付録 (B.67) (B.68) ミー散乱の表式の求め方 B. 1 (s) Eφ = − Hr(s) (s) Hθ (s) 1 sin φ r k (I) ∞ ½ X e 1 sin θ l=1 ¾ 0 (1) −i mBl ζl (k (I) r)Pl1 (cos θ) sin θ (1)0 Bl ζl (k (I) r)Pl1 (cos θ) (B.69) ∞ sin φ X (1) = l(l + 1) mBl ζl (k (I) r)Pl1 (cos θ) (B.70) (I) r 2 (I) k k2 l=1 ∞ ½ 0 1 sin φ X e (1) (I) 1 = − (I) Bl ζl (k r)Pl1 (cos θ) r sin θ k2 l=1 ¾ (1)0 (I) m 10 +i Bl ζl (k r)Pl (cos θ) sin θ (B.71) Hφ = i ∞ 1 cos φ X (I) r k 2 ½ 0 (1) e Bl ζl (k (I) r)Pl1 (cos θ) sin θ l=1 (1)0 +i mBl ζl B. 1. 3 23 (k (I) r)Pl1 (cos θ) 1 sin θ ¾ (B.72) 散乱波の簡単な表現 前項で得た散乱波の電場と磁場の表式を,遠方での場を表す,より簡単な表 現に変えていこう148) .まず,式(B.67)∼(B.72)を見ると,縦波成分である (s) Er (s) と Hr は共に,球からの距離 r に対して r −2 の依存性をもっているが, 横波成分である,その他の項はすべて r −1 の依存性である.したがって,充分 遠方の場を考えると,縦波成分は消えて横波成分だけになると考えられる.そ (s) (s) (s) (s) こで,横波成分である Eθ ,Eφ ,Hθ ,Hφ だけを考えることにする. (1) 関数 ζl (ρ) は次のように定義されたものであった. r (1) ζl (ρ) = πρ (1) (1) H 1 (ρ) = ρhl (ρ) 2 l+ 2 (1) 球ベッセル関数 hl (ρ) は充分遠方(ρ → ∞)では次のような漸近形をとるこ とが知られている. (1) hl (ρ) ∼ (−i)l+1 eiρ /ρ そこで,充分遠方(ρ → ∞)では (1) ζl (ρ) ∼ (−i)l+1 eiρ (B.73) B. ミ ー 散 乱 24 (1)0 ζl (ρ) ∼ (−i)l eiρ (B.74) で表すことができる.さらに,ファン・デ・ハルストに従って148) ,次のような 置き換えを行う. πl (cos θ) = Pl1 (cos θ)/ sin θ 0 d 1 τl (cos θ) = Pl (cos θ) = − sin θPl1 (cos θ) dθ (B.75) (B.76) さらに, 2l + 1 al l(l + 1) 2l + 1 m Bl = il+1 bl l(l + 1) e Bl = il+1 (B.77) (B.78) とおくことにする. (s) このような置き換えをすると,Eθ (s) Eθ は ∞ = cos φ ik(I) r X e (−i)l {eBl τl (cos θ) + mBl πl (cos θ)} k (I) r l=1 = i cos φ ik(I) r X 2l + 1 {al τl (cos θ) + bl πl (cos θ)} e l(l + 1) k (I) r l=1 ∞ となる.そこで, S2 (θ) ≡ ∞ X 2l + 1 {al τl (cos θ) + bl πl (cos θ)} l(l + 1) (B.79) l=1 とおくと, (s) Eθ = i cos φ ik(I) r e S2 (θ) k (I) r (B.80) と表される.まったく同様にして, (s) Hφ = − になる.一方, 「生物ナノフォトニクス」付録 cos φ (I) k2 r eik (I) r S2 (θ) (B.81) 消衰断面積と散乱断面積の求め方 B. 2 (s) Eφ = − =− sin φ ik(I) r e k (I) r ∞ X i sin φ ik(I) r e k (I) r 25 (−i)l {eBl πl (cos θ) + mBl τl (cos θ)} l=1 ∞ X l=1 2l + 1 {al πl (cos θ) + bl τl (cos θ)} l(l + 1) と書くことができる.そこで, S1 (θ) ≡ ∞ X 2l + 1 {al πl (cos θ) + bl τl (cos θ)} l(l + 1) (B.82) l=1 とおくことによって, (s) Eφ = − i sin φ ik(I) r e S1 (θ) k (I) r (B.83) となる.同様にして, (s) Hθ =− sin φ (I) k2 r eik (I) r S1 (θ) (B.84) が容易に得られる. これらの関係から, s (s) Hφ (s) Hθ = =− ik (I) (s) E (I) θ k2 ik (I) (I) k2 (s) = s Eφ = − ²(I) (s) E µ(I) θ (B.85) ²(I) (s) E µ(I) φ (B.86) という関係が導かれる.式(B.86)に − がついているのは,右手系の座標を用 (I) いているからである.また,k2 = iωµ(I) と k (I) = ω/c = ω p ²(I) µ(I) を用 いた. B. 2 B. 2. 1 消衰断面積と散乱断面積の求め方 消衰断面積の求め方 消衰断面積∗1) Cext は入射光強度が球により散乱や吸収を受け強度がどれだ け減少したかを示すために断面積という量で表したものである.つまり,一様 ∗1) extinction に対応する言葉として,消衰,消散,消尽,減衰,吸収など多くの訳語が用いられ ている.ここでは消衰と書く. B. ミ ー 散 乱 26 に入射した光のうち,この面積に相当する分だけ光が減少したことを示してい る.したがって,この断面積を求めるには,平面波の入射方向での光強度の減 少分を計算すればよい.媒質 I の中では入射光と散乱光だけが存在し,電場と 磁場は上記のような関係で結ばれているから,光強度は (E(i) + E(s) ) · (E(i)∗ + E(s)∗ ) に比例するとしてよい.今,入射光として電場が x 方向を向いた偏光した光を 考えているので,入射光の減少に関わる散乱光の電場は x 成分のみ,すなわち (s) Ex となる.極座標で表されている散乱光の電場を直交座標に変換すると Ex(s) = Eθ cos θ cos φ − Eφ sin φ となる.そこで,上記の光強度を計算すると (E(i) + E(s) ) · (E(i)∗ + E(s)∗ ) = |Ex(i) |2 + 2Re{Ex(i) Ex(s)∗ } + E(s) · E(s)∗ となる.ここで,入射光と散乱光の電場はそれぞれ (I) Ex(i) = eik z (I) i Ex(s) = (I) eik r {S2 (θ) cos θ cos2 φ + S1 (θ) sin2 φ} k r (B.87) と表される.さらに,観測する点(座標 (x, y, z))は光の進行方向付近で球か ら充分離れているとして(z > > x, y ),r = p x2 + y 2 + z 2 ≈ z{1 + (x2 + y 2 )/(2z 2 )} = z + (x2 + y 2 )/(2z) と近似する.散乱光の電場の式(B.87)の中 で,分母については r ∼ z とし,指数の肩にあるものについてはそのまま代入 することで, (E(i) + E(s) ) · (E(i)∗ + E(s)∗ ) · ¸ ª −i −ik(I) (x2 +y2 )/(2z) © 2 2 ≈ 1 + 2Re (I) e S2 (θ) cos θ cos φ + S1 (θ) sin φ k z (B.88) 「生物ナノフォトニクス」付録 B. 2 消衰断面積と散乱断面積の求め方 を得ることができる.ここで,散乱光の電場同士の積は z 27 −2 に比例するので, 充分離れたところでは無視できるとしている.この式で,θ → 0 とすると →1+ 2 k (I) z · Re ¸ ª 1 −ik(I) (x2 +y2 )/(2z) © e S2 (0) cos2 φ + S1 (0) sin2 φ i (B.89) となることが分かる.そこで,S1 (0) と S2 (0) の値を調べてみよう. 関 数 S1 (θ) と S2 (θ) の 中 で θ に 関 係 す る 部 分 は ,Pl1 (cos θ)/ sin θ と (d/dθ)Pl1 (cos θ) である.ルジャンドル陪関数 Pl1 (cos θ) は次のようにべき展 開で表すことができる. Plm (cos θ) = l−m (l + m + r)! sinm θ X θ (−1)r sin2r m 2 r!(m + r)!(l − m − r)! 2 r=0 そこで,m = 1 として,Pl1 (cos θ)/ sin θ について θ → 0 としてみよう.総和 の部分は r = 0 以外は 0 となるから 1 (l + 1)! 1 Pl1 (cos θ) → = l(l + 1) sin θ 2 0!1!(l − 1)! 2 となる.一方,(d/dθ)Pl1 (cos θ) は d 1 P (cos θ) dθ l ∞ (l + m + r)! cos θ X θ (−1)r sin2r = 2 r=0 r!(m + r)!(l − m − r)! 2 + ∞ sin θ X θ 1 (l + m + r)! θ (−1)r · 2r sin2r−1 · cos · 2 r=1 r!(m + r)!(l − m − r)! 2 2 2 → 1 (l + 1)! 1 = l(l + 1) 2 0!1!(l − 1)! 2 となる.すなわち, πl (cos 0) = τl (cos 0) = 1 l(l + 1) 2 となるので,したがって,式(B.79), (B.82)から ∞ S1 (0) = S2 (0) = 1X (2l + 1)(al + bl ) 2 l=1 (B.90) B. ミ ー 散 乱 28 となる.この関係を用いると,式(B.88)は, (E(i) + E(s) ) · (E(i)∗ + E(s)∗ ) → 1 + ½ 2 k (I) z Re ¾ 1 −ik(I) (x2 +y2 )/(2z) e S2 (0) i (B.91) とすることができる. z >> x, y が成り立つとし,z = z 平面内の z 軸を含む適当な領域 A で光強度 を積分することを考える.式(B.91)の両辺を領域 A 内で積分すると, ZZ A dxdy(E(i) + E(s) ) · (E(i)∗ + E(s)∗ ) · ½ ¾¸ ZZ 2 1 −ik(I) (x2 +y2 )/(2z) = dxdy 1 + (I) Re e S2 (0) i k z A 4π = A − (I)2 Re{S2 (0)} (B.92) k となる.ただし, µZ ZZ e −ik(I) (x2 +y 2 )/(2z) dxdy ≈ A e −ik(I) x2 /2z A Ãr ≈ 2πz ik (I) !2 = ¶2 dx 2πz ik (I) という関係を用いた.ここで,A の領域の積分を矩形領域の積分にし,矩形領 RR 域を無限大に拡大して計算をしている∗1) .また, A 1 · dxdy = A としている. 式(B.92)は面積 A の領域に平面波の光が入射したときに,球があると右辺第 2 項に示すような光強度の減少が見られることを意味している.この光強度の 減少はちょうど光が吸収や散乱によって減少したことを示す衝突断面積に相当 していて,消衰断面積と呼んでいる.すなわち,消衰断面積を Cext とすれば, Cext = ∞ 4π 2π X (2l + 1)Re{al + bl } Re{S (0)} = 2 k (I)2 k (I)2 l=1 (B.93) と表すことができる.あるいは,消衰断面積を球の幾何学的な断面積 πa2 で割っ て無次元化した ∗1) 指数の肩に虚数単位 i と x2 のような 2 乗の項を含む積分をフレネル積分と呼んでいる.有限 の領域での積分はフレネル回折を計算するときに用いられる. 「生物ナノフォトニクス」付録 B. 2 消衰断面積と散乱断面積の求め方 Qext = Cext /(πa2 ) = 2 (k (I) a)2 ∞ X (2l + 1)Re{al + bl } 29 (B.94) l=1 もよく用いられる. B. 2. 2 散乱断面積の求め方 散乱断面積は横波として伝播していく散乱波を全立体角で積分することによ り求めることができる. 式(B.80), (B.81), (B.83), (B.84)を用いると,散 乱光強度はポインティングベクトルを用いて計算することができ, I (s) Z Z ³ ´ (s) (s)∗ (s) (s)∗ dφ Eθ Hφ − Eφ Hθ 0 0 Z π Z 2π r (I) ª 1 © 1 µ |S2 (θ)|2 cos2 φ + |S1 (θ)|2 sin2 φ = sin θdθ dφ (I) (I)2 2 0 ² k 0 r Z π (I) © ª 1 µ π = |S2 (θ)|2 + |S1 (θ)|2 sin θdθ (B.95) 2 ²(I) k (I)2 0 1 = 2 π 2 2π r sin θdθ となる.ここで, Z 0 2π Z cos2 φdφ = 2π sin2 φdφ = π 0 という関係と式(B.85), (B.86)を用いた.また,1/2 の因子はサイクル平均 による項である. 式(B.95)の計算をする前に,関数 S1 (θ) と S2 (θ) に含まれる πl (cos θ) と τl (cos θ) について関係式を導いておこう.それぞれの定義式(B.75), (B.76) から Z 0 π πl (cos θ)τl0 (cos θ)dθ Z π d = Pl1 (cos θ) Pl10 (cos θ)dθ dθ 0 Z π ¤π £ 1 d 1 1 = Pl (cos θ)Pl0 (cos θ) 0 − Pl (cos θ) · Pl10 (cos θ)dθ dθ 0 となる.ところで,ルジャンドル陪関数のべき級数展開の表示から,θ = 0 ま たは π のときは Pn1 (cos θ) = 0 になることが示せる.したがって, B. ミ ー 散 乱 30 Z π {πl τl0 + πl0 τl } sin θdθ = 0 (B.96) 0 となる.ここで簡単のため,πl (cos θ) = πl などと表記した. また,公式 Z ½ π 0 ¾ m2 m d m d m m P (cos θ)Pl (cos θ) + sin θ Pn (cos θ) Pl (cos θ) dθ sin θ n dθ dθ 0 n 6= l = 2(n + m)!n(n + 1) n=l (n − m)!(2n + 1) を用いると, Z π 0 0 2 2 (πl πl0 + τl τl0 ) sin θdθ = 2l (l + 1) 2l + 1 l 6= l0 l = l0 (B.97) という関係式も得られる. これらの関係式を用いて,式(B.95)の計算を進めてみよう. Z π ª |S1 (θ)|2 + |S2 (θ)|2 sin θdθ 0 X X 2l + 1 2l0 + 1 Z π = {(al πl + bl τl )(a∗l0 πl0 + b∗l0 τl0 ) l(l + 1) l0 (l0 + 1) 0 0 l © l +(al τl + bl πl )(a∗l0 τl0 + b∗l0 πl0 )} sin θdθ (B.98) となるから,積分の計算だけを行うと, Z π 0 2 = (al a∗l0 + bl b∗l0 )(πl πl0 + τl τl0 ) + (al b∗l0 + a∗l0 bl )(πl τl0 + πl0 τl ) sin θdθ 2l (l + 1)2 (|al |2 + |bl |2 )δll0 2l + 1 という結果を得る.これを式(B.98)に代入すると, Z π © X ª |S1 (θ)|2 + |S2 (θ)|2 sin θdθ = 2 (2l + 1)(|al |2 + |bl |2 ) 0 となる.したがって,散乱断面積を 「生物ナノフォトニクス」付録 l (B.99) B. 2 消衰断面積と散乱断面積の求め方 Csca ≡ I (s) 31 (i) /I 2π X = (I)2 (2l + 1)(|al |2 + |bl |2 ) k l (B.100) (i) と表すことができる.ここで,入射光強度 I (i) は |Ex | = 1 としたので, (i) (i)∗ I (i) = (1/2)Ex Hy p = (1/2) µ(I) /²(I) としている.散乱断面積を幾何学的 断面積で割って無次元化した値を Qsca とすると, Qsca = ∞ X Csca 2 = (2l + 1)(|al |2 + |bl |2 ) πa2 (k (I) a)2 l=1 (B.101) となる.さらに,消衰断面積から散乱断面積を引いたものは吸収断面積となる ので Qabs = Qext − Qsca とすることができる. (B.102) C. 1 ガウスの定理の証明 閉じた空間 V を考える.この空間の内部が,一辺それぞれ ∆x,∆y ,∆z の 直方体で区切ってあると考えよう.そのうちの 1 つの直方体を考える.図 C.1 のように,x 軸に沿って考えると, ∂Ex Ex (x + ∆x, y, z) − Ex (x, y, z) ∆x∆y∆z → ∆x∆y∆z ∂x ∆x = {Ex (x + ∆x, y, z) − Ex (x, y, z)}∆y∆z = {E(x + ∆x, y, z) · n0 + E(x, y, z) · n}∆y∆z となる.ただし,n,n0 は面に垂直で外側を向く単位ベクトルである.直方体 の各面で考えると X E · n∆S = µ ∂Ex ∂Ey ∂Ez + + ∂x ∂y ∂z ¶ ∆x∆y∆z = (∇ · E)∆V (C.1) となる.ただし,左辺は直方体の表面全体での和を表している. 同じような計算を空間 V 内のすべての直方体で行う.すると,隣接した直方 体について向かい合う面の n ベクトルは逆向きとなるが,E ベクトルは同じ向 きなので,互いに打ち消し合い,左辺については内部の直方体からの寄与は消 えてしまう.したがって,空間全体で積分すると空間 V の表面 S だけが残る. 一方,右辺についてはすべての直方体の和となるから, Z Z E · n dS = S ∇ · E dV V (C.2) C. 2 グリーンの定理の証明 z E n 33 n E( x , y , z ) n' S E( x + x, y , z ) V y x 図 C.1 ガウスの定理 となり,ガウスの定理が証明された. C. 2 グリーンの定理の証明 グリーンの定理はガウスの定理を用いて証明する.閉じた空間を考えて,内 部を V ,その表面を S と書くと,ベクトルで表される物理量 A に対して,体 積積分と表面積分の間には次のガウスの定理が成り立つ. Z Z ∇ · AdV = V A · ndσ (C.3) S ここで,n は表面から外側を向く法線ベクトルである.A がスカラー関数 u と v を使って A = u∇v と表せるとすると, ∇ · A = ∇ · (u∇v) = ∇u · ∇v + u∇2 v ∂v A · n = un · ∇v ≡ u ∂n と書ける.これらの関係を用いると,式(C.3)は (C.4) C. 種々の定理の証明 34 Z Z Z 2 u∇ vdV + (∇u · ∇v)dV = V V u ∂v dσ ∂n (C.5) v ∂u dσ ∂n (C.6) S となる.また,A = v∇u とおくと Z Z Z v∇2 udV + V (∇v · ∇u)dV = V S が成り立つ.式(C.5)から式(C.6)を辺々引くと Z µ Z (u∇2 v − v∇2 u)dV = V u S ∂v ∂u −v ∂n ∂n ¶ dσ (C.7) となる.これがグリーンの定理である. C. 3 ブロッホの定理の証明 フォトニック結晶中の電磁場の振る舞いを論ずるときには,通常の結晶と同 様にブロッホの定理が使われる.ここでフォトニック結晶に即してブロッホの 定理を証明してみよう. フォトニック結晶中で電場は次の波動方程式を満足する. ∇ × (∇ × E(r)) = ²0 ²(r)µ0 ω 2 E(r) (C.8) ここで,²(r) は空間についての周期関数で,逆格子ベクトル G を用いて次のよ うに展開できる. ²(r) = X ²G eiG·r G = ²(0) + X ²G eiG·r G6=0 (0) ≡² + ²(1) (r) (C.9) ²(1) (r) は,基本並進ベクトルの 1 つを R で表したとき, ²(1) (r + R) = ²(1) (r) という周期関数になっている.今,式(C.8)を変形して 「生物ナノフォトニクス」付録 (C.10) C. 3 ブロッホの定理の証明 n o ∇ × ∇ × −²(1) (r)µ0 ω 2 E(r) = ²0 ²(0) µ0 ω 2 E(r) 35 (C.11) と書き,左辺の演算子を L(r) という記号で書くことにする.すると,式(C.11) は L(r)E(r) = ²0 ²(0) µ0 ω 2 E(r) (C.12) となり,固有値方程式に帰着する.ここで,L(r) は誘電率 ²(r) が実数値をと る限りエルミートになる.このように書くと結晶中において電子の運動を記述 するシュレーディンガー方程式と等価になり,同じ議論で進めることができる. 今,任意の関数を基本並進ベクトル R だけ移動させる並進操作の演算子を TR と書くことにする.誘電率の周期性から, L(r + R) = L(r) (C.13) となるから, TR L(r)E(r) = L(r+R)E(r+R) = L(r)E(r+R) = L(r)TR E(r) (C.14) と表すことができる.この関係から,交換関係 [L(r), TR ] = 0 が成り立つこと が分かる.したがって,演算子 L(r) も TR も共通の固有関数をもっている.そ こで, TR E(r) = C(R)E(r) (C.15) と表すことにする.ここで,C(R) は演算子 TR に対する固有値である. さらに,もう一度並進演算子 TR0 を作用させると TR0 TR E(r) = TR0 C(R)E(r) = C(R0 )C(R)E(r) (C.16) となる.並進操作の性質から,上の操作は TR0 TR E(r) = TR0 +R E(r) = C(R0 + R)E(r) (C.17) と書くこともできる.このことから, C(R0 + R) = C(R0 )C(R) (C.18) C. 種々の定理の証明 36 が成り立つ. 並進操作の演算子を用いて,基本並進ベクトルによる並進操作を何度も繰 り返せば,任意の周期に対する並進操作を行うことができる.このときは, R = n1 a1 + n2 a2 + n3 a3 とおいて, C(R) = C n1 (a1 )C n2 (a2 )C n3 (a3 ) (C.19) と表すことができる.ここで,aj は基本並進ベクトルである.これらの関係が 常に成り立つのは, C(aj ) = exp[2πixj ] (C.20) となるときだけである.ここで,xj は実数である∗1) . これより,式(C.19)は C(R) = exp[2πi(x1 n1 + x2 n2 + x3 n3 )] = exp[i(x1 Ga + x2 Gb + x3 Gc ) · (n1 a1 + n2 a2 + n3 a3 )] = exp[ik · R] (C.21) となる.ここで,Gj は逆格子ベクトルのそれぞれの成分であり,Gj ·al = 2πδjl という関係を用いた.また,k = x1 G1 + x2 G2 + x3 G3 とおいた.波数ベク トルの意味をもつ k をこのようにおいたのは,得られた電場ベクトルが,並進 操作に対する固有関数であると同時に,L(r) の固有関数でもなければならない からである∗2) .したがって, TR E(r) = E(r + R) = exp[ik · R]E(r) (C.22) となる.この式はブロッホの定理の 1 つの表現となっている. さらに, ∗1) ∗2) 一般的には任意の複素数でよいが,フォトニック結晶中で減衰しない波を与えるためには実数に しておくことが必要となる. 一様な誘電率の場合も並進対称性をもっているが,この場合は,L(r) の第 2 項は 0 となる.こ のとき,式(C.24)において u(r) は空間座標について一定値になるべきである.そこで,L(r) に関する固有値方程式(C.11)に入れると,k2 = ²0 ²(0) µ0 ω 2 となり,k が一様な媒質中での 波数ベクトルとなっていることが分かる. 「生物ナノフォトニクス」付録 C. 3 ブロッホの定理の証明 u(r) = exp[−ik · r]E(r) 37 (C.23) と書くと u(r + R) = exp[−ik · (r + R)]E(r + R) = exp[−ik · r]E(r) = u(r) となり,ベクトル関数 u(r) も同じ周期性をもつ.したがって, E(r) = exp[ik · r]u(r) (C.24) と書くこともできる.つまり,周期的な誘電率をもつ媒質中の電場は,同じ周 期性をもつ関数に,指数関数の項を掛けたものとして表される.この表式はブ ロッホの定理のもう 1 つの表現である. さらに,別の表現として, u(r) = X ûG exp[iG · r] (C.25) G のように結晶の周期をもつベクトル関数 u(r) を逆格子ベクトルで展開する.こ れを上記の式に入れると, E(r) = exp[ik · r]u(r) X = ûG exp[i(k + G) · r] G となるが,これもブロッホの定理の表現の 1 つである. (C.26) D. 1 放物線状パターンの成因 甲殻類や昆虫の表皮を斜めに切った切り口に放物線状のパターンがあること は,20 世紀初頭にヤスデの表皮で観察されたのが最初で,その後いろいろな動 物で次々と発見されていった(図 3.34a 参照).ブーリガンドは 1965 年に,そ の要因は繊維状の分子が表面に沿って並んでいるときに,表面から深くなるに つれ少しずつ向きを変えていくラセン構造をとっていることと深く関係してい ることを明らかにした107) .ここでは,彼の幾何学的な考察に従って,その成因 を説明してみよう. 図 D.1 に示すように,xy 面を表面に平行な面として,深さ方向に z 軸をとるこ とにする.今,xs 面を斜めに切った切断面としよう.この面は xy 面に対して α だけ傾いている.xs 面の上に P 点をとり,その座標を xyz 座標系で (xP , yP , zP ) とする.この座標は xs 面上の座標 (xP , sP ) と対応している.このとき,zP と sP は zP = sP sin α という関係で結びついている.ブーリガンドは分子の向き が深さ z に対して直線的に変化すると考えた.図 D.1 では z = 0 の平面内で x 軸 −→ −→ を向いていた分子は,P 点では PQ 方向を向いているとしている.PQ の向きを x 軸から測った角度を β とすると,β = az と考える.ここで,a は定数である. −→ x と y を xy 平面内のベクトル PQ の x,y 成分とすると,それぞれ x = cos az , y = sin az と表される.Q 点を xs 平面に投影した点を Q0 とすると,xs 平面で の Q0 点の座標は (x + xP , (y + yP ) cos α) となる.したがって,x 軸から測った −→ −−→ 勾配は,xy 平面では PQ に対して tan β = tan az となるが,xs 平面では PQ0 D. 1 図 D.1 放物線状パターンの成因 39 放物線状パターンの座標系 に対して x 軸から測った角度を γ とすると,tan γ = y cos α/x = tan az cos α となる. −−→ 得られたベクトルの向き PQ0 は xs 平面内で局所的に決めたベクトルの勾配 と考えることができるので,xs 平面内でのベクトルの勾配の場所による変化を 次の微分方程式を解いて求めてみよう. ds/dx = tan az · cos α = tan(as sin α) · cos α (D.1) 式を簡単にするため,上式の逆数をとると, dx/ds = 1 cot(as sin α) cos α (D.2) となる.この式は簡単に解けて, x= 1 ln | sin(as sin α)| + x0 a sin α cos α (D.3) となる∗1) .ここで,x0 は定数である. 式(D.3)を用いてシミュレーションを行った結果を図 D.2 に示す.式(D.3) において,x0 は縞の位置を表すので,ここではとびとびの値を与えている.全 体のパターン形状は実際に見られている放物線状パターンと非常によく一致し ∗1) as sin R α を t とおくと,a sin α cos αdx/dt = 1/ tan t と変形することができる.初等積分公 式 (1/ tan t)dt = ln | sin t| を用いることで解が得られる. D. コレステリック液晶の光学特性 40 図 D.2 放物線状パターンのシミュレーション ており,ブーリガンドの考察の正しいことを裏付けている.放物線状のパター ンとパターンの間の直線状のパターンの位置は sin(as sin α) = 0 の関係から求 められ,s = mπ/(a sin α) で与えられる.ここで,m は整数である.この式か ら,もし,α が既知であれば,分子の向きの回転の程度を表すパラメータ a は すぐに求めることができる. D. 2 コレステリック液晶の分散関係と光学応答 分子が層状に並び,層から層へと少しずつ配向方向を変化させ,全体として ラセン構造をとっている液晶をコレステリック液晶と呼んでいる.コレステリッ ク液晶のラセンの周期をピッチといい,P で表すことにする.もし,ネマチッ ク液晶のように,1 つの層の中で同じ配向方向をとっている分子の前後の向き がランダムに分布している場合には,図 3.33a のように半周期で元の状態に戻 るので,周期は見かけ上,半分の P/2 になる.コレステリック液晶の光学特性 については,これまでにさまざまな総説や本が出ている.ここでは,ド・ジャ ン170) と折原171) の本を参考にしてその特性を概説したい. まず,図 D.3 のように,分子は xy 平面内で配向していると考え,ラセンの軸 を z 軸方向にとる.分子配向の平均的な方向を単位ベクトル n で表すことにす 「生物ナノフォトニクス」付録 D. 2 コレステリック液晶の分散関係と光学応答 図 D.3 41 ラセン構造を示す座標系 る.n は,z = 0 の平面では x 軸方向を向き,z 軸の正の方向に向かうにつれ, n(z) = (cos q0 z, sin q0 z, 0) に従って,その向きを変化させていくと考える.q0 は q0 = ±2π/P という関係で P と結びついている.ここでは q0 > 0 とし右回 りのラセンを考えることにする. xy 平面内で,分子の配向に対して平行方向と垂直方向での相対誘電率を ²k と ²⊥ で書くことにすれば,z = z の平面での相対誘電率テンソルは à ²= Rz−1 ²k 0 0 ²⊥ ! Rz (D.4) と書くことができる.ここで,Rz は角 q0 z の回転操作を表し, à Rz = cos q0 z sin q0 z − sin q0 z cos q0 z ! (D.5) で表すことができる.上の行列の積を実際に計算すると, à ²= ²k cos2 q0 z + ²⊥ sin2 q0 z (²k − ²⊥ ) sin q0 z cos q0 z (²k − ²⊥ ) sin q0 z cos q0 z ²k sin2 q0 z + ²⊥ cos2 q0 z ! D. コレステリック液晶の光学特性 42 à = ²̄ 1 0 ! 0 1 ²a + 2 à cos 2q0 z sin 2q0 z sin 2q0 z − cos 2q0 z ! (D.6) となる.最後の式は,その前の式に ²k = ²̄ + ²a /2 と ²⊥ = ²̄ − ²a /2 を代入す ることで求められる.ここで,²̄ = (²k + ²⊥ )/2 は平均誘電率で,²a = ²k − ²⊥ は誘電率の異方性を表している. 今,この液晶の中を z 方向に伝播する波が次の波動方程式を満足するとし よう. d2 E(z)/dz 2 = −(ω/c)2 ²(z)E(z) (D.7) 波の振幅は E(z, t) = E(z) exp[i(kz − ωt)] 型の式を満足すると考える.ラセン 構造をもつ媒質中を伝播する光を扱うときには,基底として円偏光をとると都 合がよい.そこで,次に示すような,右回り円偏光(+ 記号で表す)と左回り 円偏光(− 記号で表す)を考えることにする. E ± (z) = Ex (z) ± iEy (z) (D.8) そこで, à ! E + (z) à = E − (z) 1 i !à 1 −i Ex (z) ! Ey (z) という関係を使って,波動方程式(D.7)の両辺の左側から行列を掛けると d2 dz 2 à E + (z) ! =− E − (z) ³ ω ´2 à c 1 i 1 −i ! à ²(z) Ex (z) ! Ey (z) となる.ここで, à 1 i 1 −i ! à ²(z) = ²̄ à = となるから, 「生物ナノフォトニクス」付録 1 i ! 1 −i ²̄ ²a −2iq0 z 2 e ²a + 2 à e2iq0 z −ie2iq0 z e−2iq0 z ie−2iq0 z !à ! ²a 2iq0 z 1 i 2 e ²̄ 1 −i ! コレステリック液晶の分散関係と光学応答 D. 2 ( / c) / q0 4 3 −1 = 43 +-branch 2 1 −-branch 0 0 1 -3 1 -2 -1 1 = 0 −1 2 3 l / q0 Fig. A4.1 Dispersion of light in cholesteric liquid crystal for the 図 D.4relation コレステリック液晶の分散関係 case of a/2 = 0.2. Fig. App4-5d2 − dz 2 à E + (z) E − (z) ! à = k02 k12 e2iq0 z k12 e−2iq0 z k02 !à E + (z) ! (D.9) E − (z) と変形することができる.ここで,k02 = (ω/c)2 ²̄,k12 = (ω/c)2 ²a /2 である. 今,図 D.4 で示すように,l を波数として l = 0 で交差する ω/c = と ω/c = √ √ ²̄|l − q0 | ²̄|l + q0 | という 2 つの分枝を考え,その分枝の交差する部分におけ る振る舞いについて調べてみよう.そのために, E + (z) = aei(l+q0 )z E − (z) = bei(l−q0 )z (D.10) とおいて,式(D.9)に代入すると, (l + q0 )2 a = k02 a + k12 b (l − q0 )2 b = k12 a + k02 b という a, b に関する同次の連立方程式が得られる.行列で表示すれば, D. コレステリック液晶の光学特性 44 à (l + q0 )2 − k02 −k12 −k12 (l − q0 )2 − k02 !à a ! b =0 (D.11) となる.この方程式が 0 でない解をもつためには係数行列式が 0 であることが 必要で,そこから, © (l + q0 )2 − k02 ª© ª (l − q0 )2 − k02 − k14 = 0 (D.12) という関係式が得られる.これをさらに簡単化すると (l2 + qo2 − k02 )2 − 4q02 l2 − k14 = 0 (D.13) となる.k02 と k12 は共に (ω/c)2 に比例するから, (k04 − k14 ) − 2(l2 + q02 )k02 + (l2 + q02 )2 − 4q02 l2 = 0 と変形し,k02 = (ω/c)2 ²̄ と k12 = (ω/c)2 ²a /2 を代入する.その結果, ½ ³ ω ´2 ³ ² ´ 2 ¾ ³ ω ´4 a 2 − 2(l2 + q02 )²̄ + (l2 − q02 )2 = 0 ²̄ − 2 c c となるので,この式を (ω/c)2 を未知数として解くと, ³ ω ´2 c 1 (l2 + q02 ) ± = · ²̄ p 4q02 l2 + K 2 (l2 − q02 )2 1 − K2 (D.14) という解が得られ,ω と l の間の分散関係を与える.ここで,K ≡ ²a /(2²̄) = (²k − ²⊥ )/(²k + ²⊥ ) = (n2k − n2⊥ )/(n2k + n2⊥ ) とおいた.また,²k = n2k と ²⊥ = n2⊥ という関係を用いた.式(D.14)の右辺は,K 2 = {²a /(2²̄)}2 = {(²k − ²⊥ )/(²k + ²⊥ )}2 < 1 の関係から,常に正となるので,任意の l の値に 対し ω は 2 つの正値をとることが分かる. この分散関係をプロットしたものが図 D.4 である.この図から l = 0 におい てバンドギャップが存在していることが分かる.バンドギャップの存在により, 分散関係は上下 2 つの分枝に分かれる.上にある分枝を ω+ (l) 分枝,下にある 分枝を ω− (l) 分枝と呼ぶことにする.± の符号はそれぞれ右回り,左回り円偏 光に対応している.バンドギャップのエッジは,式(D.14)に l = 0 を代入す 「生物ナノフォトニクス」付録 D. 2 コレステリック液晶の分散関係と光学応答 45 れば求めることができ, ³ ω ´2 c ¡ ¢ q02 1 ± ²2²̄a q02 1 ¡ ¢ = ¡ ² ¢2 = ²̄ 1 − a ²̄ 1 ∓ ²2²̄a 2²̄ = q02 q2 2 = 0, (²k + ²⊥ ) ∓ (²k − ²⊥ ) ²⊥ q02 ²k から,ω+ (0) = cq0 /n⊥ と ω− (0) = cq0 /nk という値を得ることができる.ま た,バンドギャップ内であっても,ω− (l) 分枝では ±z 方向に伝播する波が存在 することが分かる.これは右回りラセン構造に対しては,右回り円偏光に対し てはバンドギャップが存在するが,左回り円偏光にとっては何もないかのよう に一定の速度で波が進むことを意味している. 一方,式(D.13)は l についても解くことができて, l4 − 2l2 (q02 + k02 )l2 + (q02 − k02 ) − k14 = 0 から r l = ± q02 + k02 ± q 4q02 k02 + k14 (D.15) が得られる.この式は q02 + k02 − q 4q02 k02 + k14 < 0 (D.16) になる場合を除いて 4 つの実数解を与える. 虚数解を与えるのは,式(D.16)から (q02 +k02 )2 < 4q02 k02 +k14 となるときだが, さらに変形して,|q02 − k02 | < k12 の場合であることが分かる.ここで,q02 > k02 とすれば,q02 < (ω/c)2 (²̄ + ²a /2) = (ω/c)2 ²k となり,ω > cq0 /nk = ω− (0) となる.一方,q02 < k02 のときは,ω < cq0 /n⊥ = ω+ (0) となる.すなわち, ω− (0) < ω < ω+ (0) (D.17) のときである.式(D.16)が成り立つときは,波数ベクトル l は純虚数になり, rq l = ±i 4q02 k02 + k12 − (q02 + k02 ) D. コレステリック液晶の光学特性 46 図 D.5 式(D.18)を用いて計算したコレステリック液晶への侵入距離.k1 /q0 = 0.1 としている. = ±i √ k12 4k0 q0 µ ¶ 2q02 (k0 − q0 )2 + ··· 1− k14 (D.18) と表される.このときは,光は伝播することができず,外部から光が液晶に 入ってくるときは,表面で減衰するエバネセント波となることを意味する.こ の値から,侵入距離を L = 2/|l| で定義し,k0 = ²̄ω/c に対してプロットす ると図 D.5 のようになる.この図から,侵入距離は k0 = q0 のときに最小に √ なり,最小値 Lmin = 2 4k0 q0 /k12 = 4q0 /{(ω/c)2 (²a /2)} = 4²̄/(q0 ²a /2) = (2P/π)(n2k + n2⊥ )/(n2k − n2⊥ ) をとる.この式から,屈折率の異方性が大きくな ればなるほど,侵入距離が小さくなることが分かる. 次に,コレステリック液晶中での光の偏光状態について考えてみよう.z 方 向に進む波は,実数表示で ¢ 1¡ Ex (z)e−iωt + Ex∗ (z)eiωt 2 ¢ 1¡ Ey (z, t) = Ey (z)e−iωt + Ey∗ (z)eiωt 2 Ex (z, t) = と書かれる.ここで,複素平面上の点 Ĕ(z, t) ≡ Ex (z, t) + iEy (z, t) を考えると, 「生物ナノフォトニクス」付録 (D.19) D. 2 コレステリック液晶の分散関係と光学応答 47 1 {Ex (z) + iEy (z, t)} e−iωt + c.c. 2 ¢ 1¡ + = E (z)e−iωt + E −∗ (z)eiωt 2 Ĕ(z, t) = と表される.ここで,式(D.8)を用いた. 今,一般的な偏光状態を表すように,電場を実表示で Ex (z, t) = r1 cos θ , Ey (z, t) = r2 sin θ と書いておこう.ここで,θ = −ωt,r1 = Ex (z),r2 = Ey (z) である.この場合,場所を固定して電場ベクトルの方向を見ると,その 先端の時間的な軌跡は θ を消去して Ey2 Ex2 + =1 r12 r22 となり楕円を描く.そこで,偏光度として ρ= r2 r1 (D.20) を定義すると,次の 4 つの場合が考えられる. (i) r1 > 0, (ii) r > 0, 1 (iii) r1 < 0, (iv) r < 0, 1 r2 > 0 ······ ρ>0 r2 < 0 ······ ρ<0 r2 < 0 ······ ρ>0 r2 > 0 ······ ρ<0 (D.21) ここで,図 D.6a に示すように,ρ > 0 は右回りを表し,ρ < 0 は左回りを表す. したがって,ρ = 1 は右回り円偏光,ρ = −1 は左回り円偏光,また,ρ = 0 と ρ = ±∞ は直線偏光を表す. そこで,式(D.10)で表されるような光の場合, ´ 1 ³ i{(l+q0 )z−ωt} Ĕ(z, t) = ae + be−i{(l−q0 )z+ωt} ½µ 2 ¶ µ ¶ ¾ 1 iq0 z a + b a − b i(lz−ωt) a + b a − b −i(lz−ωt) e + e = e + − 2 2 2 2 2 ≡ eiα (r1 cos θ + ir2 sin θ), (D.22) と表すことができる.ここで,α = q0 z ,θ = lz − ωt,r1 = (a + b)/2, D. コレステリック液晶の光学特性 48 図 D.6 a) 楕円偏光を表す偏光状態.(i)∼(iv) は式(D.21)に対応.b) 楕円が α だけ 傾いた場合の偏光状態. r2 = (a − b)/2 とおいた.このとき,楕円は図 D.6b に示すように,α だけ 傾いていることになる.このとき,上記のような偏光度の定義をとっていると 傾きには関係なく ρ= r2 a−b = r1 a+b (D.23) と表される. 式(D.11)から,a/b は a/b = k12 /{(l + q0 )2 − k02 } (D.24) b/a = k12 /{(l − q0 )2 − k02 } (D.25) または, で表すことができる. 例えば,ω− 分枝では,式(D.24)を用いて, ρ= (ω/c)2 ²k − (l + q0 )2 k12 + k02 − (l + q0 )2 = k12 − k02 + (l + q0 )2 (ω/c)2 ²⊥ + (l + q0 )2 (D.26) となる.この式から,l = 0 では ω → ω− (0) = cq0 /nk となるので,ρ = 0 と なる.一方,l ≈ q0 では ω → 0 となるので ρ = −1 となる.また,l → ±∞ では,ω → cl/nk となるので ρ → 0 になる.このようにいろいろな l の値にお ける偏光状態を示したものが図 D.4 である. 「生物ナノフォトニクス」付録 E. 1 吸収のある媒質中での光強度(2.1.5 項への補足) 媒質に吸収がある場合のポインティングベクトルを求めてみよう.媒質に吸 収がある場合には,2.1.5 項のように複素屈折率を導入すればよいが,これは もともと付録 B の式(B.3)のように電場を与えて発生した電流の効果を誘電 率の中に組み込んだだけのものである.したがって,たとえ媒質が光を吸収し ても,媒質が均一でありさえすれば,² と µ(= µ0 ) を定数として,式(2.24), (2.25)で示されるような波動方程式も,式(2.27)∼(2.30)で表されるマクス ウェルの方程式も共に成り立つと考えることができる. そこで,波動方程式(2.24), (2.25)の解として,吸収のない場合と同様に平 面波を与える次式が成り立つとしてよい. E = E0 ei(k·r−ωt) ≡ E(r)e−iωt (E.1) H = H0 ei(k·r−ωt) ≡ H(r)e−iωt (E.2) この式を波動方程式に代入することにより,k·k = ²µ0 ω 2 = (²0 +i²00 )/²0 ·(ω/c)2 が成り立つ.ここで,² は複素数とし,また,k = (nω/c)ek ≡ (η +iκ)·(ω/c)ek とすると, p (²0 + i²00 )/²0 = n = η + iκ とおくことができる.ek は k 方向の 単位ベクトルである. また,マクスウェル方程式(2.27)∼(2.30)から, r H= ² ek × E µ0 E. 本 文 へ の 補 足 50 r µ0 E=− ek × H ² ek · E = 0 ek · H = 0 が成り立つ.これらの式から,媒質に吸収があっても E,H,k は互いに直交 していること,および,E と H の間には φ/2 の位相差を生じていることが分 かる.ここで,φ は tan φ = ²00 /²0 の関係式から求められる. 光強度はポインティングベクトルのサイクル平均として I = |E × H| 1 = Re{|E(r) × H∗ (r)|} 2 µr ∗ ½¯ ¶¯¾ ¯ ¯ ² 1 ∗ ¯ ek × E (r) ¯¯ = Re ¯E(r) × 2 µ0 ¯¾ ½¯r ∗ ¯ ² ¯ 1 ∗ ∗ ¯ = Re ¯ {ek (E(r) · E (r)) − E (r)(ek · E(r))}¯¯ 2 µ0 ½r ∗ ¾ 1 ² ∗ = Re (E(r) · E (r)) 2 µ0 と表される.ここで,| · · · | はベクトルの大きさを示す記号として使っている. また,ベクトル公式 A × (B × C) = B(A · C) − C(A · B) と ek · E = 0 とい う関係式を用いた. p ²/²0 = n = η + iκ という式を用いると,さらに変形で きて ½ r ¾ ²0 1 ∗ ∗ (E(r) · E (r)) I = Re n 2 µ0 1 = Re {n∗ ²0 c(E(r) · E∗ (r))} 2 1 = η²0 c(E(r) · E∗ (r)) 2 と書くことができる.さらに,平面波の式(E.1)を入れて書き直すと I= 1 η²0 cE02 e−2κω(ek ·r)/c 2 (E.3) とすることができる.すなわち,吸収のある媒質中では屈折率の実部が係数と 「生物ナノフォトニクス」付録 E. 2 グリーン関数による微分方程式の解法(6.1.2 項への補足) ∗1) して入り,虚部が減衰項として加わるのである E. 2 51 . グリーン関数による微分方程式の解法(6.1.2 項への補足) グリーン関数を用いて,次の微分方程式を解いてみよう. ∇2 φ(r) + ω2 φ(r) = −ρ(r)/²0 c2 (E.4) この方程式は φ(r) についてのヘルムホルツ方程式 (∇2 + ω 2 /c2 )φ = 0 に,r の関数 ρ(r) の項が加わった形の微分方程式である.そこでまず,式(E.4)の 右辺を δ 関数に変えた,次の方程式を満足する関数 G(r) を求めることにする. µ ω2 ∇ + 2 c ¶ 2 G(r) = −δ(r) (E.5) G(r) は後で述べるように,もとの微分方程式の解 φ(r) を導出するのに用いら れ,グリーン関数と呼ばれている. この方程式を解くにはフーリエ変換を用いると便利である.G(r) のフーリエ 変換と δ(r) の定義式は, Z Ĝ(k)eik·r dk Z 1 δ(r) = eik·r dk (2π)3 (E.6) G(r) = (E.7) である.これらを式(E.5)に代入すると µ ω2 −k + 2 c 2 ¶ Ĝ(k) = − 1 (2π)3 (E.8) を得ることができる.この式の左辺は k 2 − ω 2 /c2 = 0 で 0 になるが,右辺は 0 でない定数なので,Ĝ(k) は k 2 − ω 2 /c2 = 0 で特異点をもっていることが分 かる.そこで,k0 ≡ ω/c とおき,δ 関数の性質から (k 2 − k02 )δ(k 2 − k02 ) = 0 が恒等的に成り立つことを使って, ∗1) この式は κ = 0 とすると,I = (1/2)η²0 cE02 となるが,η²0 c = となるので,式(2.32)に一致する. p p ²/²0 ²0 c = ²c/ ²/²0 = ²v E. 本 文 へ の 補 足 52 図 E.1 a) 式(E.10),b) 式(E.14),および,c) 式(E.20)を計算するときの積分経路 ¡ ¢ k 2 − k02 Ĝ(k) = ª 1 © 1 + C(k 2 − k02 )δ(k 2 − k02 ) 3 (2π) とおくと,Ĝ(k) は超関数∗1) の意味で, 1 Ĝ(k) = (2π)3 ½ ¾ P 2 2 + Cδ(k − k0 ) k 2 − k02 (E.9) と表される.ここで,C は任意の定数である.P はコーシーの主値と呼ばれ, この関数を積分する際には分母が 0 の点を除いて行うことを意味している.す なわち,k 2 − k02 が 0 になるときは,Ĝ(k) はデルタ関数として振る舞うので ある. Ĝ(k) は実関数であるが,式(E.9)の意味は複素平面で考えると理解しやす い.そこでまず,任意の正則な複素関数を f (z) として,実軸上の z = 0 に特異 点をもつ関数 f (z)/z について,図 E.1a に示すような曲線に沿って積分するこ とを考える.このとき,C1 ,C2 ,C10 ,C3 で囲まれる領域には z = 0 における 特異点が含まれることになる.その特異点の回りの積分 C20 を引き去ってしま うと特異点はなくなり,コーシーの積分定理∗2) により積分の総和は 0 となる. ∗1) 超関数はデルタ関数やヘビサイドのステップ関数などのように不連続な関数を表現するのに導入 ∗2) された関数で,積分記号の中で使われる. 複素平面上の閉曲線 C で囲まれた領域内で正則な関数 f (z) をその閉曲線に沿って積分を行う H とその値は 0 になる.すなわち, 「生物ナノフォトニクス」付録 C f (z)dz = 0 である. E. 2 グリーン関数による微分方程式の解法(6.1.2 項への補足) すなわち, R C1 R + (Z + C2 Z + C10 Z + C1 R C3 + C10 C2 Z −² = C3 ∞¾ + −∞ I ² − ) Z + ½Z R R C20 = 0 である.したがって, f (z) dz z f (x) dx + x Z C2 f (z) dz + z Z C3 f (z) dz z f (z) dz z = C20 53 (E.10) となる.ここで,右辺第 1 項については ² → 0 とすることにより, ½Z ∞¾ Z −² + lim ²→0 −∞ ² f (x) dz = P x Z ∞ −∞ f (x) dx x (E.11) と表すことができ,上で述べたコーシーの主値になる.第 2 項は z = ² exp[iθ] とおき,dz = i² exp[iθ]dθ と変数変換することにより, Z lim ²→0 C2 Z 2π f (z) f (²eiθ ) iθ dz = lim i²e dθ ²→0 π z ²eiθ = πif (0) (E.12) とすることができる.また,C20 の周回積分は半径を ²0 として,やはり z = ²0 exp[iθ] と変数変換を行い,²0 → 0 とすることにより, I Z 2π f (z) f (²0 eiθ ) 0 iθ dz = lim i² e dθ ²0 →0 0 z ²0 eiθ C20 = 2πif (0) (E.13) となる. 一方,特異点が実軸上になく,z = i² にある場合は,図 E.1b に示す経路に 沿って積分してみる. ½Z Z + C4 C5 ¾ f (z) dz = z − i² I C6 f (z) dz z ²→0 = 2πif (i²) −→ 2πif (0) (E.14) となるので,² → 0 の極限で式(E.10),すなわち, (E.13)と等しい値をとるこ E. 本 文 へ の 補 足 54 とが分かる.そこで,この両者を極限の意味で等しいとおき,式(E.11)( ,E.12) を使うことで, Z f (x) f (z) dx + πif (0) + dz z C3 −∞ x Z Z ∞ f (x) f (z) dx + lim dz = lim ²→0 −∞ x − i² ²→0 C z − i² 5 Z P ∞ (E.15) となるが,C3 と C5 の経路の積分は経路の半径が等しいときは等価になるので, 結局, Z ∞ lim ²→0 −∞ f (x) dx = P x − i² Z ∞ −∞ ∞ Z =P −∞ f (x) dx + πif (0) x Z ∞ f (x) dx + πi f (x)δ(x)dx x −∞ (E.16) となる.このことから,超関数の意味で, lim ²→0 1 P = + πiδ(x) x − i² x と書くことができる.z = −i² に特異点をもつ場合も同様の関係が得られ,ま とめると, lim ²→0 1 P = ∓ πiδ(x) x ± i² x (E.17) となる. 式(E.17)と式(E.9)の右辺をそれぞれ比較すると,係数 C を除いて式の 形が一致していることが分かる.そこで,係数が合うように C = ∓iπ とおく と,式(E.9)は式(E.17)の結果を用いて, Ĝ± (k) = lim ²→0 1 1 (2π)3 k 2 − k02 ± i² (E.18) とすることができる.すなわち,Ĝ(k) を求めるには特異点を虚数軸上へ i² だ けずらした関数で積分を行い,その後,² → 0 にする極限操作を行えばよいこ とが分かる.± に対応するこの 2 つの式はグリーン関数の特解を与えることに なる.この結果を式(E.6)に代入すると 1 G± (r) = lim ²→0 (2π)3 Z 「生物ナノフォトニクス」付録 1 eik·r dk k 2 − k02 ± i² E. 2 グリーン関数による微分方程式の解法(6.1.2 項への補足) 1 ²→0 (2π)3 Z ∞ = lim Z k 2 dk Z π 2π sin θdθ 0 0 dφ 0 k2 55 1 eikr cos θ − k02 ± i² となる.ここで,r 方向を z 軸にする座標軸を考え,z 軸からベクトル k の方 向まで測った角度を θ とした.さらに,cos θ = t のように変数変換をすると, − sin θdθ = dt となるから, 2π ²→0 (2π)3 Z ∞ G± (r) = lim Z k 2 dk 0 Z 1 dt −1 k2 1 eikrt − k02 ± i² ∞ 1 eikr − e−ikr 1 k 2 dk 2 2 2 ²→0 (2π) k − k0 ± i² ikr 0 Z ∞ ¡ ¢ k 1 eikr − e−ikr dk = lim 2 2 2 ²→0 (2π) ir 0 k − k0 ± i² Z ∞ k 1 ikr = lim dk 2 ± i² e 2 2 ²→0 (2π) ir −∞ k − k0 = lim となる.最後の結果は,(· · ·) 内の第 2 項について k → −k と置き換えること で得られる. 特異点の位置を調べるため,k 2 − k02 ± i² = 0 とおいて k を求めると,² を 無限小の数として, ¶ µ q i² k = ± k02 ∓ i² ≈ ±k0 1 ∓ 2 = ±(k0 ∓ iµ) 2k0 とすることができる.ただし,µ ≡ ²/(2k02 ) であり,複合は任意の組み合わせ がとれる.したがって, 1 G± (r) = lim µ→0 2(2π)2 ir Z ∞ −∞ ½ 1 1 + k − k0 ± iµ k + k0 ∓ iµ ¾ eikr dk (E.19) と変形することができる.ただし,ここでは複合同順である.この積分もこれま でと同様の複素積分を用いて求められる.複合の一方(例えば,上側)をとると, 複素平面上で {· · ·} 内の第 1 項は下半分で,第 2 項は上半分で特異点をもつ.そ こで,積分を上半分で行い,図 E.1c の C1 と C3 で囲まれた領域から C2 で囲 R まれた領域を引き去ると特異点がなくなり,したがって, C1 − R C2 + R C3 =0 となるが,C3 に沿った積分は半径を充分に大きくとると 0 となるから,結局, E. 本 文 へ の 補 足 56 R C1 = R C2 となる.したがって, G+ (r) = 1 1 e−ik0 r −ik0 r · 2πi · e = 2(2π)2 ir 4π r が得られる.同様にして複合の下側についても C1 と C3 で囲まれた領域から 図 E.1c の破線の部分を引き去ることで求めることができ,まとめると, G± (r) = 1 e∓ik0 r 4π r (E.20) が得られる. グリーン関数の一般解はこれら 2 つの特解の和として与えられ,任意の定数 を a,b として, G(r) = aG+ (r) + bG− (r) と表されるが,式(E.8)の関係から a + b = 1 となるため,結局, G(r) = aG+ (r) + (1 − a)G− (r) a e−ik0 r 1 − a eik0 r = + 4π r 4π r (E.21) となる. 方程式(E.4)の解は,得られたグリーン関数 G(r) を用いて, Z φ(r) = G(r − r0 ) ρ(r0 ) 0 dr ²0 (E.22) と求められる.係数 a は境界条件から与えられる.例えば,散乱問題の場合, 散乱波は球面波として散乱体から周辺に広がっていくから,exp[ik0 r]/r 型の関 数が必要である.そこで,a = 0 という条件を与え, Z φ(r) = 0 1 eik0 |r−r | ρ(r0 ) 0 dr 4π |r − r0 | ²0 (E.23) が得られる. 式(E.22)が確かに解になっていることは,式(E.22)の両辺に (∇2 +ω 2 /c2 ) を作用させてみると分かる.左辺は 「生物ナノフォトニクス」付録 E. 2 グリーン関数による微分方程式の解法(6.1.2 項への補足) µ ∇2 + 2 ω c2 ¶ φ(r) = − ρ(r) ²0 となり,右辺は式(E.5)を用いると Z µ ¶ ω2 ρ(r0 ) 0 ∇2 + 2 G(r − r0 ) dr c ²0 Z ρ̂(r0 ) 0 ρ(r) = − δ(r − r0 ) dr = − ²0 ²0 となることから,一致することが確かめられる. 57 文 献 1) 構造色に関する成書2∼ 7) や総説8∼ 16) はこれまでに数多く出版されている.また,雑誌 の特集号もいくつか出されている.その主なものは,OplusE, Vol. 23, No. 3 (2001), Forma, Vol. 17, No. 2 (2002),光学, Vol. 33, No. 4 (2004),光アライアンス, Vol. 18, No. 1 (2007),OplusE, Vol. 30, No. 2 (2008),J. Roy. Soc. Interface, Vol. 6, Suppl. 2 (2009) などである.本書は構造色の基となる光学過程を中心に記述 することを目的としたため,種々の生物種における構造色の分布などについては詳し く記述することができなかった.生物における分布や構造色の応用についてのより詳 細な説明はこれらの文献を参照されたい. 2) Simon, H.: The Splendor of Iridescence — Structural Colors in the Animal World, Dodd, Mead & Company, New York (1971). 3) Fox, D. L.: Animal Biochromes and Structural Colours, Univ. California Press, Berkeley (1976). 4) 木下修一: モルフォチョウの碧い輝き, 化学同人 (2005). 5) Kinoshita, S. and Yoshioka, S.(eds.): Structural Colors in Biological Systems — Principles and Applications, Osaka University Press, Osaka (2005). 6) Berthier, S.: Iridescences — The Physical Colors of Insects, Springer Science+Business Media, New York (2007). 7) Kinoshita, S.: Structural Colors in the Realm of Nature, World Scientific, Singapore (2008). 8) Ghiradella, H.: Light and color on the wing: Structural colors in butterflies and moths, Appl. Opt., 30 (1991) 3492-3500. 9) Ghiradella, H.: Hairs, bristles, and scales, in F. N. Harrison and M. 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