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論文の内容の要旨及び論文審査の結果の要旨の公表

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論文の内容の要旨及び論文審査の結果の要旨の公表
論文の内容の要旨及び論文審査の結果の要旨の公表
学位規則第 8 条に基づき、論文の内容の要旨及び論文審査の結果の要旨を公表する。
康平(こまご やすひら)
○氏名
小孫
○学位の種類
博士(学術)
○授与番号
甲
○授与年月日
2012 年 3 月 31 日
第 795 号
○学位授与の要件 本学学位規程第 18 条第 1 項
学位規則第 4 条第 1 項
○学位論文の題名
ビデオゲームに関する心理学的研究
-ゲームプレイヤーの心理状態とボタン操作行動を中心に-
○審査委員
(主査)上村 雅之(立命館大学大学院先端総合学術研究科教授)
吉田 寛(立命館大学大学院先端総合学術研究科准教授)
松原 洋子(立命館大学大学院先端総合学術研究科教授)
田多 英興(元 白鴎大学教育学部教授)
<論文の内容の要旨>
本論文は、これまで明らかにされていなかったビデオゲーム(テレビゲームも含む)を
遊ぶ人(プレイヤーと呼ぶ)のゲームに対する印象や考え方、そしてゲームを遊んでいる
(プレイと呼ぶ)時の心理状況(緊張状態の有無)及びコントローラ操作行動の特徴(操作
回数及び二種類のボタンを同時に操作する二重押し操作行動)の関係を心理学的手法によ
って明らかにしたものである。具体的には、プレイ時の脈波記録のカオス解析結果及びビ
デオゲーム機のコントローラボタンの操作行動記録解析結果という二種類の客観的内容の
調査データと、ビデオゲームを含むメディア全般に関するプレイヤーを対象としたアンケ
ート調査及び調査対象のテレビゲームのプレイ前後のプレイヤーの印象や自己評価に関す
るインタビュー調査という二種類の主観的内容の調査データを元に研究を行った。
本論文は三部から構成されている。第Ⅰ部では「研究の背景と問題の所在」と題し、第
2部の実証的研究の理論的背景を探る研究を中心に論じられている。
第1章では「本研究の意義」を述べ、第2章「ビデオゲームのメディア性」の第1節で
は「ビデオゲーム研究の分類と位置づけ」、第2節「心理学研究におけるビデオゲームの特
徴」、第3節「フロー理論と最適覚醒理論」について検討が行われている。
第3章「ビデオゲームの心理学」の第1節では「ビデオゲーム研究の分類と位置づけ」、
第2節「心理学研究におけるビデオゲームの特徴」そして第3節「フロー理論と最適覚醒
理論」で俯瞰的にビデオゲームの心理学研究について論じられている。
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第4章「ビデオゲームプレイヤーの心理状態と生体信号」では第1節「心理状態と生体
信号」、第2節「生体信号とビデオゲーム」、第3節「脈波のカオス解析」、第4節「リアプ
ノフ指数」そして第5節「脈波のリアプノフ指数を用いた研究」の五節をさいて本論文の
中心的なテーマである脈派カオス解析の理論的な背景について論じられている。
第5章「ビデオゲームプレイヤーのモデル化と評価」では、第1節「ビデオゲームプレ
イヤーのモデル化」、第2節「ユーザビリティおよびユーザエクスペリエンス」について検
討が加えられている。
第Ⅰ部の最後、第6章「本研究の概要」では、第1節「本研究の目的」、第2節「本論文
の構成」で本論文の研究の目的及び論文の構成について説明が加えられている。
第Ⅱ部では「実証的研究」と題し、第7章「各種娯楽における満足感及びテレビゲームに
対するイメージ・感情の要因分析」、第8章「ビデオゲームプレイヤーの操作行動が脈派の
カオス解析による心理状態と主観的感情に及ぼす影響」、第9章「ビデオゲームプレイヤー
の心理状況とコントローラのボタン操作行動の分析」そして第10章「ビデオゲームプレ
イヤーの慣れに伴うコントローラのボタン操作行動及び心理状況」で構成され、第Ⅰ部の
問題設定を受けて行われた実証的研究結果について論じられている。
最後の第Ⅲ部は「総合的考察および結論」と題し、第11章「総合的考察」
、第12章「結
論と今後の課題」で構成され、第Ⅱ部の実証的研究結果に対する総合的な考察及び今後の
課題について論じられている。
<論文審査の結果の要旨>
ビデオゲームと言うコンピューターが生成する映像を用いた遊び(ゲーム)は、実空間
で展開される遊びに比べ、その手軽さや視覚的な刺激の強さから現在では様々な情報機器
に組み込まれ、世界的な共通の遊び文化の一つとして認知される様になった。しかし、ビデ
オゲームが登場する以前に遊ばれていた遊びと同様にビデオゲーム機を通して遊ばれる映
像主体の遊びに関しても殆ど研究がなされていないのが現状である。
本研究の独創性は、心理学研究の分野で確立されたアンケートやインタビューという研
究手法とビデオゲームを遊んでいる時の脈波の時間的揺らぎに注目したカオス解析という
新しい研究手法及びビデオゲームが提示する映像に対するプレイヤーの様々な判断結果が
反映されるコントローラ操作行動の解析を用いて、今までのビデオゲーム研究では明らか
にされなかったビデオゲームを遊ぶ時のプレイヤーの心理状況(緊張状態の度合い)及び
コントローラ操作行動の様々な特徴(例えば複数個のコントローラボタンを同時に操作す
ることやビデオゲームの映像が提示するボタン操作と無関係なボタンを操作すると言った
操作行動)を明らかにしたことにある。更に緊張していないプレイヤーは、無意味なボタ
ン操作行動が少ないことや慣れるに従って無意味な操作行動が減少する傾向にあると言っ
たプレイヤーの心理状況とコントローラのボタン操作行動との関係も明らかにされた。ま
たビデオゲームを遊ぶ時に緊張が見られないプレイヤーの存在が確認されたところから、
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「ビデオゲームの面白さは覚睡水準で」と言ういわゆるフロー理論を検証できる可能性も
外部審査委員であり心理学者である田多英興元白鴎大学教授から指摘される結果が得られ
た。これらの研究成果は、ビデオゲームの内容の改善への応用にとどまらず、様々なコン
ピュータ機器を人間が操作する上での心理学的な特徴やコンピュータ機器の誤操作を含む
操作行動の特徴を明らかにする一つの研究手法として活用が期待出来ると共に、その成果
は様々な教育機器や障害者の支援機器の改良、改善に応用できる可能性が示唆された。
更にビデオゲームのプレイヤーの心理状態とコントローラの操作行動の関係が明らかに
されることで、ビデオゲームの「遊び方」の特徴を明らかにすることが出来る可能性が示
唆され、ビデオゲームと言う「遊びの文化」の世界的な伝播を明らかにする研究に活用で
きる可能性が示された点も高く評価出来る。
口頭試問(2011 年 11 月 29 日(火)13:30、創思館 411 で実施)ではビデオゲームのイ
ンタラクティビティーについての定義の曖昧さが指摘された。指摘に対しては公聴会(2011
年 12 月 13 日(火)13:30、創思館カンファレンスで実施)のレジュメで修正が行われ「相
互干渉性」という語句でその定義が明らかにされた。更に実験結果から緊張せずにビデオ
ゲームをプレイしている状況に対し、「面白い」という感情の存在を指摘されていたが、そ
こまで断定出来ないのではないかとの指摘がなされた。また今回の実験結果のみではビデ
オゲームの持つインタラクティビティの特性が十分に明らかにされてはいないのではない
かとの指摘がなされ、今後の課題とされた。更に本研究の成果がコンピュータを使用した
教育、いわゆるeラーンングの評価に活用できる可能性を探るために更なる研究の必要性
や研究対象が大学生のみでありテレビゲームの中心的ユーザーである子どもを対象とした
研究の必要性が指摘された。また研究に用いられたビデオゲームが2種類に限定されてい
るため、ビデオゲームの面白さを含む重要な要素を評価する手法としては不十分であるこ
とも指摘され、今後の研究課題とされた。更にビデオゲームは実際に遊ばなくてもビデオ
ゲームの映像を観ることで様々な影響を与えていることが予想されることから、ビデオゲ
ームの観客への影響の研究にも本研究手法が応用できるのではないかとの提案もなされた。
公聴会ではリアプノフ指数を用いた研究事例に対する質問に対し、自動車の運転中の運転
者の心理状況の評価に使用された事例が紹介された。
こうした課題は本論文の欠点というよりも、今後ゲーム研究が心理学を含め学際的な研
究分野として発展していく中で共同プロジェクトとして克服されていくべきものであり、
そうした将来への道筋を示した点でも本論文は先駆的なものとして高く評価できる。
以上の論文審査と口頭試問、公聴会での結果を踏まえ、本論文が博士の学位に値すると
判断した。
<試験または学力確認の結果の要旨>
申請者は、本学学位規程第 18 条第 1 項該当者である。先端総合学術研究科は、査読付き
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学術雑誌掲載論文相当の公刊された論文を 3 本以上もつことを学位請求論文の受理条件と
している。受理審査委員会の審査により、本論文はその条件を満たすことが確認された。
本論文に示された方法や知見のオリジナリティ、論文記述の明晰さについて、本論文は博
士論文の水準に十分に達している。口頭試問と公聴会での報告および質疑に対する応答か
らも、博士学位にふさわしい学力を備えていることが確認された。
以上より、本審査委員会は、本学位申請者に対し、本学学位規程第 18 条第 1 項により、
「博士(学術
立命館大学)」の学位を授与することが適当と判断する。
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