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よくわかる 3大疾病
特集 特集 よくわかる 脳血管疾患 心疾患 ことがあります。前述の症状とこれらの検査所見 かることも少なくありません。 を総合して、膵臓がんの診断、ステージ分類、治 クローズアップ クローズアップ 療方針が決められます(図2)。 3 大疾 病 がん 検査・診断 血液検査、画像検査、内視鏡検査、組織検査な 治療 どに分けられます。血液検査では、膵酵素(アミ 遠隔転移がある場合や、局所進行により切除不 ラーゼ、エラスターゼ1など)や胆道酵素(ALP、 能である場合(StageⅠ∼Ⅳa)を除いて手術が第一 γG T P )や 腫 瘍 マーカー( C E A 、C A19 - 9 、 選択となります。がんの部位によって、膵頭十二指 DUPAN-2など)の上昇、耐糖能異常(血糖、 腸切除術、膵体尾部切除術+脾臓摘出術、膵全摘 術を行います。中でも膵頭部がんに対して行われる りますが、特徴的なものではないため、早期発見 膵頭十二指腸切除術は、消化器の手術の中でも複 がんに分けられます(図1)。 には限界があります。 雑な手術の一つで、豊富な知識、経験、外科的技 画像検査には、腹部エコー、CT、MRIなどがあり 術が必要です。手術時間は6∼10時間かかります。 図1 長尾 厚樹 発生・疫学・分類 ます。腹部エコーは簡便で非侵襲であるため、膵病 侵襲が大きく、術後の合併症や後遺症のリスクも高 変のスクリーニング検査として有用です。CT/MRI いため、患者さんの年齢や状態(背景)、病気の進 は腫瘍の大きさ、部位、病変の広がり具合、転移の 行度などを考慮して手術適応を決めなければなり 有無などを調べることができますが、ある程度の大 ません。切除不能膵臓がんに対しては、化学療法 (TS1、ジェムザール、エルプラット、カンプト、タ には限界があります。最近ではPET検査が膵がんの ルセバ、アブラキサンなど)、放射線治療、姑息的 んで亡くなっています(がんによる死亡原因の第5 発見のために行われることもあります。 手術(バイパス手術)、ステント療法などがありま やや侵襲的な検査として、内視鏡的逆行性胆管 す。膵臓がんのステージ別5年生存率は、決して良 膵管造影法(ERCP)、経皮経肝胆管造影 (PTC) いものではありません(図3)。 膵臓がん(通常型膵がん)は、膵臓の中を通る膵 管という管から発生し、腫瘤を形成して浸潤、転移 を起こしやすいがんです。発生率は、高齢化と共に 症状 腹痛、黄疸、褐色尿、腰背部痛、食思不振、全身 などを行い、チューブを挿入して胆管や膵管の狭 図3 病期 症例数(件) 5年相対生存率(%) がんかどうか細胞診断を行います。黄疸がある場 I 206 41.3 II 626 17.8 III 654 6.4 患率はほぼ10人に達しています。難治がんである 糖尿病発症や急な悪化が診断のきっかけとなるこ ジします。さらに、超音波内視鏡を使って腫瘍に IV 1,626 1.4 原因は、膵臓がんには特異的な初発症状がなく、膵 とも多くあります。膵臓がんの60%を占める膵頭部 直接針を刺して、組織の一部を採る針生検を行う 全症例 3,250 9.0 臓がんと診断された時には大半が進行しており、既 がんは、近くにある胆管(胆汁の流れ道)を巻き込 図2 に周囲に拡がっていたり、肝臓、肺、リンパ節など むため胆汁の流出が悪くなり、黄疸や褐色尿が生じ の他臓器に転移していたりと、7∼8割の方は外科 やすいのが特徴です。この他、上腹部痛、背部痛、 手術の適応にならないこと、切除しても早期に再発 食思不振、全身倦怠感、体重減少など一般的な消 予防は前述の危険因子を避けることが推奨され を生じることが多いこと、が挙げられます。 化器症状と同様な症状が表れます。進行すると、食 ていますが、科学的根拠はありません。検診も一 危険因子として、糖尿病、肥満、喫煙、アルコー 物の通過障害、消化管出血(血便)、腹水が見られ 般的なものとなっていませんが、CTやMRI、PETが ル(慢性膵炎)、肉食、などが挙げられますが、統 ることもあります。 膵体尾部がんでは、膵頭部がん 検診にも応用できれば、早期発見に繋がるかもし 予防・検診 計学的に明らかに証明されている因子はありませ と比べ黄疸も出現しにくいため、その発見はさらに れません。大切なことは、膵臓がんを疑うことか ん。本邦では、男性にやや多く、50歳以上になる 遅くなることが多く、診断された時点で手術不能と らスタートし、できる限り専門家のいる施設で検 とその発生頻度は増加します。膵臓がんは病巣占 言う場合があります。同様に不定な症状が多いた 査、治療をすることだと思います。 2016.May./Jun. お知らせ お知らせ 合は、チューブを留置して胆汁を体外へドレナー ナースコール ナースコール 倦怠感、体重減少などで、特徴的な症状が乏しく、 NEW FACE 紹介 NEW FACE 紹介 窄(閉塞)の程度を調べ、膵液や胆汁を採取して 増加してきており、最近では人口10万人あたりの罹 2016.May./Jun. 検査まるわかり 検査まるわかり 位)。しかし、その診断と治療はいまだに難しいこ とが知られています。 ハロー!健康 ハロー!健康 きさがないと描出されないため、こちらも早期発見 わが国では、毎年30,000人以上の方が膵臓が 気になるメディカル 気になるメディカル 外科 医師 耳より情報 耳より情報 HbA1cなどの上昇など)が膵がんを疑う参考にな 拠部位より、膵頭部がん、膵体尾部がん、膵全体 3大疾病 膵臓がん 3大疾病 膵臓がん 日本人の 3 大死因の「がん」 「脳血管疾患」「心疾患」の予防法や 最新治療などを専門医が交替で分かりやすく解説します。 膵臓がん 6 め、たまたまCTや超音波検査をされた場合に見つ 7