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錬鉄製のゲート

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錬鉄製のゲート
タウンセキュリティによる住宅地開発の現状と動向
上智大学 中野佑一
1 目的
タウンセキュリティとは、防犯を主な目的として、集合住宅地の安全性を領域的に維持しよう
とする手法である。こういった手法には、ゲーテッド・コミュニティの例がある。それは、周囲
を壁やフェンスによって囲ったり、住宅地の出入口には警備員が配された警備所や錬鉄製のゲー
トを設置したりすることによって、公共スメースを私有化し、出入りを制限する住宅街区である
(Blakely and Snyder 1997=2004)。タウンセキュリティは、ゲートが設置できない場合の代案
としてデベロッパーによって考え出され、住宅の販売戦略において安全が最重要項目になる中で
増加している(竹井 2005)。ここでは、タウンセキュリティの手法を明確にし、複数の尺度に
よって類型化を試みつつ、タウンセキュリティによる住宅地開発の現状を把握する。
2 方法
2009年6月現在、インターネット上に存在する分譲住宅地や不動産デベロッパーの物件情報を元
に、154件の物件に関してタウンセキュリティの方法や内容をリストアップした。タウンセキュリ
ティの基準とは以下の通りである。①セキュリティの採用が言明されており、②セキュリティの
範囲が建造物だけでなく領域的であり、③共同住宅であっても同様であり、④都市計画や建築計
画が防犯環境設計(CPTED)の考え方に基づいている。防犯環境設計とは、対象物の強化、接近の
制御、自然監視性の確保、領域性の確保をもとに都市計画や建築をデザインすることである(都
市防犯研究センター 2005)。このリストを元に物件の内容を比較検討した。
3 タウンセキュリティの手法と類型
タウンセキュリティの手法を防犯環境設計に沿って分類すると次のようになる。対象物の強化
は、住宅そのものの強化、ホームセキュリティや防犯センサーの導入などである。接近の制御
は、フェンスの設置、タウンへの出入口の制限などである。自然監視性の確保は、住宅の塀など
を低く設置するなど死角をなくすことが挙げられる。最後に、領域性の確保は、防犯カメラの導
入や警備員による巡回警備などの例が数多くみられる。
タウンセキュリティによる住宅地開発は、開発形態や居住者階層、警備の度合い、地理的分布
などによって分類することができる。開発形態にはニュータウン型、マンション型、戸建住宅型
の3類型がある。ニュータウン型は公共施設や商業施設が含まれているものであり。マンション型
はマンションだけではなく、周囲の公園や住宅地をセキュリティの範囲に加えるものである。居
住者階層は、リゾート型、高級住宅街型、郊外住宅地型の3類型がある。リゾート型は退職者向け
の住宅地や別荘地であり、リゾート地に位置しているものである。高級住宅街型と郊外住宅街型
は販売価格や土地面積の大きさなどによって分類することができる。続いて、警備の度合いに
は、重警備型、中警備型、軽警備型の3類型がある。重警備型は、ゲーテッド・コミュニティのよ
うに周囲に壁やフェンスをめぐらし、ゲートを設け、出入りを制限・監視するものである。中警
備型はタウンの出入口などに防犯カメラを設けたり、警備員による巡回警備などを実施するな
ど、来街する人や車を監視し、領域性については気を配っているものである。軽警備型は常夜灯
の設置や死角のないまちづくりが実施されるものを指す。警備の度合いは階層が高ければ高いほ
ど強まる傾向にあるが、幼い子どもをもつ若い世帯向けの住宅地でも強まる傾向にある。地理的
分布としては、都心型、大都市近距離郊外型(都心30km圏内)、大都市遠距離郊外型(都心30km
圏外)、地方都市郊外型などがある。三大都市圏にあるものが106件あり、残りの48件については
地方圏に位置しており、タウンセキュリティによる住宅地開発は大都市部やその郊外だけでな
く、地方都市やリゾート地にまで広がりつつあるのである。
参考文献
Blakely, Edward J. and Mary Gail Snyder, 1997, Fortress America: Gated Communities in the United States,
Washington, D.C.: Brookings Institution Press. (=2004,竹井隆人訳『ゲーテッド・コミュニティ』集文
社.)
竹井隆人,2005,『集合住宅デモクラシー̶̶新たなコミュニティ・ガバナンスのかたち』世界思想社.
都市防犯研究センター,2005,『防犯環境設計ハンドブック[住宅編]』都市防犯研究センター.
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