...

第Ⅰ章 防犯のまちづくりの考え方

by user

on
Category: Documents
14

views

Report

Comments

Transcript

第Ⅰ章 防犯のまちづくりの考え方
第Ⅰ章
第Ⅰ章
防犯のまちづくりの考え方
防犯のまちづくりの考え方
地域の皆さんによる防犯のまちづくりを進める際に大切なことは、まず、さいたま
市や周辺地域における犯罪の現状や課題を知ることです。
そこで、この第Ⅰ章では、本市の犯罪の発生状況や発生場所などの特性を示し、防
犯上の課題を整理します。次に、本市の総合的な防犯のまちづくりの取り組みを紹介
した上で、本手引を活用する実践的な手法として、犯罪の起こりにくい環境をつくる
ための「CPTED(防犯環境設計)手法」について説明します。
1.さいたま市の犯罪の特性をみてみましょう
(1)犯罪の発生状況
本市の刑法犯認知件数は、平成10年頃から増加傾向が続いていました。しかし、
近年
「自分たちのまちは自分たちで守る」という意識の高まりから、自治会やPTA、
地域関係団体等が自主的に防犯パトロールや子どもの見守り活動を行うようになっ
たこともひとつの要因となり、平成16年をピークに17年以降減少傾向に転じてい
ます。図1のとおり、平成17年の刑法犯認知件数は 29,487 件で、前年より 5,126
件(14.8%)と大きく減少し、また、平成19年においても 22,188 件と、前年より
2,085 件(8.6%)減少しています。
図1
さいたま市刑法犯認知件数の推移
40,000
35,000
31,797 32,384 32,404
29,487
27,497 28,476
30,000
24,273
23,621
22,188
︵
認
知 25,000
件
数 20,000
34,613
︶
件 15,000
10,000
5,000
0
H10
H11
H12
H13
H14
H15
H16
H17
H18
H19
さいたま市刑法犯認知件数(件)
※ 刑法犯認知件数は、「刑法」に規定された犯罪(交通事故によるものを除く)で、警察において被害届、
告訴、告発等を受理した件数をいう。
※ 出典:平成 10 年∼16 年は埼玉県統計年鑑、平成 17∼19 年は埼玉県警察資料より作成。
(合併前のデータは、旧市データの合計による)
1
(2)区別の街頭犯罪の状況
本市の刑法犯認知件数のうち4割以上を占める街頭犯罪(路上強盗・ひったくり・
オートバイ盗・自転車盗・自動販売機ねらい・自動車盗・車上ねらい)の認知件数を
区別にみると、図2のとおり、平成17年以降減少傾向にあります。
また、区別の主な犯罪種別(自転車盗、車上ねらい、侵入窃盗)をみると図3のと
おり、南区、大宮区、見沼区で、多いことがわかります。この傾向は、鉄道駅を利用
する人が多いことや世帯数などが関係していると考えられます。
図2
さいたま市区別の街頭犯罪認知件数の推移
2,500
︵
2,000
発
生
件 1,500
数
1,000
︶
件
500
0
西区
北区
大宮区
見沼区
中央区
桜区
浦和区
緑区
岩槻区
平成19年
平成18年
平成17年
南区
図2の数値
西区
北区
大宮区
見沼区
中央区
桜区
浦和区
南区
緑区
岩槻区
平成 17 年
661
1,554
1,851
1,768
1,310
985
1,394
2,128
958
1,056
平成 18 年
496
911
1,332
1,174
834
830
1,313
1,784
983
1,059
平成 19 年
469
911
1,324
1,142
803
758
1,005
1,357
920
930
図3
1000
900
800
700
600
500
400
300
200
100
0
︵
発
生
件
数
さいたま市区別の主な犯罪種別の認知件数(平成19年)
︶
件
西区
北区
大宮区
自転車盗
見沼区
中央区
桜区
車上ねらい
浦和区
南区
緑区
岩槻区
侵入窃盗
図3の数値
西区
自転車盗
車上ねらい
侵入窃盗
北区
大宮区
見沼区
中央区
桜区
浦和区
南区
緑区
岩槻区
237
449
785
690
498
364
629
861
535
479
76
157
235
148
115
117
120
185
140
128
122
277
270
252
194
147
309
415
212
242
出典:埼玉県警察資料より作成(図2・3)
2
第Ⅰ章
防犯のまちづくりの考え方
(3)刑法犯認知件数の推移と犯罪種別の状況
特性1
人口千人当たりの刑法犯認知件数は18.64件(平成19年)
ここからは、さいたま市の犯罪の特性についてみてみましょう。
本市人口千人当たりの刑法犯認知件数は年々減少傾向が続いています。過去10年
間において、刑法犯認知件数が最も高かった平成16年では、表1のとおり埼玉県
25.67 件、本市 29.46 件、平成19年では、埼玉県 17.80 件、本市 18.64 件と徐々に
差が縮小しています。同じように平成16年から19年までの数値を首都圏の八都県
市で比較すると、本市の減少率は 36.73%と高く、これまでに行ってきた様々な防犯
の取り組みの成果がうかがえるといえます。
表1
八都県市人口千人当たりの刑法犯認知件数比較
10 月 1 日現在
人口(人)
東京都
埼玉県
さいたま市
千葉県
千葉市
神奈川県
横浜市
川崎市
刑法犯
認知件数(件)
人口千人当た
りの刑法犯
認知件数
平成16年
12,477,934
283,326
22.71
平成19年
12,790,202
228,805
17.89
平成16年
7,063,942
181,350
25.67
平成19年
7,104,222
126,453
17.80
平成16年
1,174,986
34,613
29.46
平成19年
1,190,282
22,188
18.64
平成16年
6,047,388
147,587
24.41
平成19年
6,108,809
105,185
17.22
平成16年
918,364
27,590
30.04
平成19年
937,041
20,072
21.42
平成16年
8,740,136
183,148
20.95
平成19年
8,899,545
112,529
12.64
平成16年
3,555,473
74,667
21.00
平成19年
3,627,420
43,649
12.03
平成16年
1,306,021
27,437
21.01
平成19年
1,369,443
17,862
13.04
平成 16 年−19 年
の減少率(%)
(人口千人当たり)
21.22
30.66
36.73
29.46
28.70
39.67
42.71
37.93
出典:警察庁ホームページ、各自治体統計資料、埼玉県警察資料より作成
しかし、本市人口千人当たりの刑法犯認知件数の埼玉県内の市町村比較では、平成
19年では件数の少ない方から70市町村中58位となっており、また、政令指定都
市間の比較では17市中10位にあります。このことから、刑法犯認知件数のより一
層の減少に努めることが必要です。
3
特性2
犯罪種別では自転車盗が多数を占める
特性3 生活に身近な犯罪(侵入窃盗、車上ねらい)が比較的多い
本市では、どのような種類の犯罪が多く発生しているのでしょうか。
平成19年の全国の街頭犯罪の種別では、自転車盗が一番多く 395,344 件、また、
侵入窃盗については 175,728 件と次いで多い状況となっています。
(数値は警察庁ホ
ームページから)
本市も同様に、街頭で起きる犯罪が多く、表2のとおり、刑法犯認知件数にみる街
頭犯罪の割合は、街頭犯罪5種(路上強盗・ひったくり・オートバイ盗・自転車盗・
自動販売機ねらい)と、街頭犯罪2種(自動車盗・車上ねらい)で 43.3%、これに
侵入窃盗の割合を加えた件数が、刑法犯認知件数全体の半数以上(54.3%)を占めて
います。中でも、自転車盗、侵入窃盗、車上ねらい、オートバイ盗といった、市民の
身近なところで発生する犯罪の割合が高く、自転車盗は 5,527 件で、刑法犯認知件数
全体の 24.9%、侵入窃盗は 2,440 件で 11.0%を占めています。
表2
平成19年・さいたま市刑法犯認知件数にみる街頭犯罪及び侵入窃盗の割合
街頭犯罪 5 種
種
街頭犯罪 2 種
別
路上
強盗
ひった
くり
オート
バイ盗
自転
車盗
自動販
売 機
ねらい
自動
車盗
車 上
ねらい
件
数
23
505
1,131
5,527
589
423
1,421
0.1
2.3
5.1
24.9
2.7
1.9
6.4
割
合
%
図4
35.0
侵入窃盗
その他の
刑法犯※
刑法犯
総 数
2,440
10,129
22,188
11.0
45.7
100
8.3
平成19年・街頭犯罪及び侵入窃盗の割合(表2グラフ)
路上強盗 ひったくり オートバイ盗
自転車盗
その他の刑法犯
自動販売機ねらい
自動車盗
※ その他の刑法犯には、〔(凶悪
犯:殺人、強盗、放火、強姦)(粗
暴犯:暴行、傷害、脅迫、恐喝)〕
等があります。
車上ねらい
侵入窃盗
出典:埼玉県警察資料より作成
4
第Ⅰ章
防犯のまちづくりの考え方
(4)犯罪の発生場所
特性4
駐車(輪)場における犯罪発生が非常に多い
特性5
道路上(自転車盗、ひったくり)、住宅(侵入窃盗)における犯罪発生が多い
次に、犯罪の主な発生場所についてみてみましょう。
平成19年の全国の刑法犯を発生場所別にみると、駐車(輪)場や道路、公園など、
いわゆる街頭で起きる犯罪
(街頭犯罪)
が 883,777 件と多く、
認知件数全体
(1,908,836
件)の概ね半数を占めています。
また、
その街頭犯罪 883,777 件のうち、
駐車
(輪)
場で発生した刑法犯は実に 534,915
件にものぼり、街頭犯罪全体の 60.5%を占めています。
(数値は警察庁ホームページ
から)
本市の状況も同様に、駐車(輪)場、道路上での犯罪が多く、図5のとおり、犯罪
種別からみると、駐車(輪)場では、自転車盗や車上ねらいが多く占めています。次
いで道路上では、自転車盗やひったくりが、また、一戸建住宅では侵入窃盗の件数が
多いことがわかります。
このことから、この駐車(輪)場や道路上、住宅での、いわゆる身近で起きる犯罪
を減らすことが、刑法犯認知件数を抑制することになります。
図5
さいたま市犯罪発生場所別の犯罪種別刑法犯認知件数(H16-H18 累計概数)
その他の施設
学校(幼稚園)
路上強盗
空き地
犯
その他の住宅
罪
発
中高層(4 階建以上)住宅
生
場
一戸建住宅
所
駐車(輪)場での犯罪は
自転車盗、車上ねらい、
次いでオートバイ盗が多い。
侵入窃盗
ひったくり
オートバイ盗
自転車盗
自動販売機ねら
い
自動車盗
駐車(輪)場
都市公園
車上ねらい
道路上
侵入窃盗
0
2,000
4,000
6,000
8,000
10,000
12,000
14,000
16,000
18,000
20,000
刑法犯認知件数
ひったくり
自転車盗
自転車盗
車上ねらい
道路上での犯罪は自転車盗、
ひったくりが多い。
出典:埼玉県警察資料より作成
5
特性6
鉄道駅周辺の繁華街では、刑法犯認知件数が多い
平成19年における埼玉県の人口千人当たりの刑法犯認知件数をみると、埼玉県下
17.80 件に対し、大宮区が 32.33 件(埼玉県警察資料から)と県内の上位にあります。
図6の本市の全刑法犯認知件数分布状況をみると、この大宮区では、大宮駅周辺の繁
華街で犯罪が多く発生しているのがわかります。
繁華街は、不特定多数の人・物が集中することで「被害対象の増加」
「匿名性」
「公
共的空間における利用マナー・管理意識の低下」等、特有の環境を持ちます。このこ
とから、大宮駅周辺の繁華街については、防犯対策の強化を図る必要があります。
図6
さいたま市全刑法犯認知件数分布状況
(人口千人当たりの件数
H16-H18 累計概数)
N
凡 例
居住者無し
0 - 120
120- 360
360 - 1500
1500 - 4000
出典:埼玉県警察資料より作成
4000 - 7600
(件/千人)
6
第Ⅰ章
特性7
防犯のまちづくりの考え方
郊外の住宅地で、住宅等を対象とした侵入窃盗が多い
住宅等を対象とした侵入窃盗は、発生件数でみると、住宅が密集する地域等で多く
発生しています(2ページの図2・3を参照)
。
また、図7のとおり人口千人あたりの件数で示す、住宅等を対象とした侵入窃盗
刑法犯認知件数の分布状況をみると、郊外の住宅地等においても、犯罪発生件数の割
合が高く、充分な注意が必要であることがわかります。
図7
さいたま市住宅等を対象とした侵入窃盗刑法犯認知件数分布状況
(人口千人当たりの件数
H16-H18 累計概数)
N
凡 例
居住者無し
0 - 120
120- 360
360 - 1500
1500 - 4000
4000 - 7600
出典:埼玉県警察資料より作成
(件/千人)
7
(5)子どもや高齢者の犯罪情勢
特性8
子どもが被害者(加害者)となる犯罪割合が増えている
特性9
高齢者が被害者となる犯罪割合が増えている
全国的な犯罪情勢からみると、刑法犯認知件数は減少傾向にある中で、平成19年
における全国の刑法犯被害件数(1,540,070 件)に占める子ども※の割合は 19.8%
(304,685 件)と、平成18年より 1.3%増加しています。
一方、少年の非行情勢では、20歳以下の飲酒、喫煙、けんかなどによる補導件数
は過去10年間増加し続けています。県内においても、街頭犯罪の検挙・補導人員の
約 70%を少年が占めています。
また、65歳以上の高齢者が被害者となる割合は 10.1%(156,271 件)と、平成
18年から 0.2%と微増傾向にあります。
子どもが被害者となる割合が高い犯罪種別は、略取・誘拐、強制わいせつ、また、
高齢者では、窃盗や詐欺が多く、ひったくりの被害者は女性が多い傾向にあります。
このような状況を踏まえ、本市においても子どもや高齢者などへの対策の推進が必
要となっています。
(数値は警察庁ホームページ、埼玉県警察資料から)
※ 警察庁ホームページ上の数値では、子どもは20歳未満の者をいいます。
(6)都市公園における犯罪情勢
特性10
都市公園における犯罪割合が増加し、不安感も高い
全国にみる街頭犯罪に占める都市公園の発生割合は、他の場所の街頭犯罪が低下若
しくは横ばいで推移する中、平成12年以降一貫して増加し続けています。都市公園
についても、安全性の向上を図る必要があります。
(数値等は警察庁ホームページか
ら)
8
第Ⅰ章
防犯のまちづくりの考え方
2.犯罪の特性から防犯上の課題を整理します
(1)刑法犯認知件数の減少
安心・安全な生活環境を実現するためには、防犯上の課題として第一に、刑法犯認
知件数を減らしていく必要があります。刑法犯認知件数の減少は、
「犯罪が起こりに
くい」印象を高めるとともに、犯罪不安感の緩和にも繋がります。
刑法犯認知件数を減らしていくためには、全体の中で多く占める犯罪(自転車盗)
や、身近な脅威となる犯罪(ひったくりや侵入窃盗)
、犯罪が多発する地域(繁華街)
に対し対策を強化していくことが効果的です。
課題1
全体の刑法犯認知件数の抑制
特性1
人口千人当たりの刑法犯認知件数は 18.64 件(平成 19 年)
本市における人口千人当たりの刑法犯認知件数は、人口千人あたり 18.64 件であり、
埼玉県の件数を若干上回る状況が続いています。刑法犯全体を抑制することは、犯罪
不安感が緩和されることはもちろんのこと、市全体の防犯力の底上効果にもつながる、
基本的で大切なことだといえます。
課題2
駐車(輪)場における「自転車盗」等の防止対策の強化
特性2
犯罪種別では自転車盗が多数を占める
特性4
駐車(輪)場における犯罪発生が非常に多い
本市における自転車盗の認知件数は、刑法犯全体の約25%を占めています。
また、5ページの図5で示したとおり、本市の犯罪発生場所の中で一番多いのが、
駐車(輪)場であり、多くの自転車盗もこの場所で発生しています。
よって、この駐車(輪)場における自転車盗の認知件数をとりわけ抑制することが
重要です。このことは、課題1で示したように全体の刑法犯認知件数の抑制にも寄与
し、さらに市全体の防犯力の底上げにもつながります。身近で起きる自転車盗の防止
対策の効果は大きいと考えられます。
9
課題3 生活に身近な犯罪である「侵入窃盗」「ひったくり」対策強化
特性3 生活に身近な犯罪(侵入窃盗、車上ねらい)が比較的多い
特性5
道路上(自転車盗、ひったくり)、住宅(侵入窃盗)における犯罪発
特性7
郊外の住宅地で、住宅等を対象とした侵入窃盗が多い
特性9
高齢者が被害者となる犯罪割合が増えている
侵入窃盗やひったくりは、市民の生活を脅かし、犯罪不安感を助長する身近な犯罪
です。道路上におけるひったくりや、特に郊外の住宅地や住宅が密集する地域等にお
ける侵入窃盗対策の強化が必要です。また、高齢者が被害者となる犯罪のうち、道路
上のひったくりや住宅における犯罪が多くなっていることから、犯罪被害に遭いやす
い高齢者への対策として、道路や住宅における防犯機能の強化が必要になります。
課題4 繁華街における防犯対策強化
特性6 鉄道駅周辺の繁華街では、刑法犯認知件数が多い
6ページの図6の本市の全刑法犯認知件数分布状況のとおり、大宮駅周辺の繁華街
では、多くの犯罪が発生しているのがわかります。繁華街は、住宅街とは異なり、不
特定多数の人・物が集中することで、
「被害対象の増加」
「匿名性」
「公共的空間にお
ける利用マナー・管理意識の低下」等、特有の環境を持ち、犯罪企図者が行動しやす
い状況にあります。このことから、繁華街における防犯対策の一層の強化を図る必要
があります。
(2)犯罪弱者への対応強化
課題5
子どもを犯罪から見守るための対策の推進
特性8 子どもが被害者(加害者)となる犯罪割合が増えている
子どもを犯罪から守るために、これまでも子どもの生活・行動範囲である学校施
設・保育所・通学路等において、事件を未然に防ぐための対策を進めてきましたが、
刑法犯被害件数からみると、子どもを対象とした犯罪の割合が相対的に増えています。
10
第Ⅰ章
防犯のまちづくりの考え方
このことからも、防犯の啓発活動、パトロール活動等の地域における防犯力を強化す
るなど、今後より一層の対策の推進が必要となります。
また、全国的に刑法犯の少年の検挙人員は年々減少しているものの、補導された
20歳以下の少年は過去10年間増加し続けています。県内においても、街頭犯罪の
検挙・補導人員の約70%が少年であることから、繁華街や少年のたまり場を中心と
したパトロールの強化、非行防止キャンペーンの展開など、少年の非行防止対策、犯
罪の加害者とならないような対策を強化しなくてはなりません。
課題6 高齢者を犯罪から守るための対策の推進
特性9 高齢者が被害者となる犯罪割合が増えている
高齢者が被害者となる身近な場所で起こる犯罪として、道路上でのひったくりや住
宅等を対象とした侵入窃盗等があります。特に窃盗や暴行などは、住宅で発生してい
る場合が多いことから、個人住宅の防犯対策はもちろんのこと、近年被害が多く発生
し手口が複雑化している振り込め詐欺についても、より一層の対策の強化が必要とな
っています。
※ 平成19年における全国の振り込め詐欺の発生状況は、認知件数 17,930 件、被害総額 250 億円
を超えています。
課題7
都市公園等における安全性の向上
特性10
都市公園における犯罪割合が増加し、不安感も高い
街頭犯罪全体に占める都市公園での犯罪発生割合は、全国的に一貫して増加し続け
ています。
都市公園は、日常生活の中で不特定多数の人々が集う場所であり、とりわけ子ども
や高齢者にとっての憩い・集いの場であることから、犯罪という脅威を遠ざけるため
重点的な対策が必要です。公園施設や植栽等の配置によって暗がりや死角が発生する
可能性があるため、死角ができない公園施設・植栽の配置や、夜間等も含めた対策の
強化が必要となります。
11
3.本市の総合的な防犯のまちづくりの取り組み
本市では、安全で安心な住みよい地域環境づくりを一層推進するため、平成18年
3月に「さいたま市防犯のまちづくり推進条例」を制定し、市、市民、事業者等が、
それぞれの役割を果たしつつ協働し、防犯のまちづくりに取り組むこととしています。
平成21年3月には、本条例に基づき、本市の取り組むべき施策としてまとめた「さ
いたま市防犯のまちづくり推進計画」を策定し、本市の犯罪特性を踏まえた15施策
ごとに83の具体的な取り組みを実施していくこととしています。
なお、本手引書の策定・周知・活用も、本推進計画の取り組みのひとつであり、防
犯の連帯意識のもと行う地域の自主的活動となるものです。
■ 防犯のまちづくりの体系と「防犯診断ワークショップの手引」の位置付け
さいたま市防犯のまちづくり推進条例
さいたま市防犯のまちづくり推進計画
●重点事項
条例に定める3つの柱
防犯意識の高揚を
図るための活動
(ソフト的側面)
防犯の視点を取り
入れた環境の整備
(ハード的側面)
自主的な防犯
活動の推進
(ソフト的側面)
次 ペ ー ジで
説明します
CPTED手法
●行動計画
連携・協力のもとに進める施策と取り組み
・多様な情報伝達手法、
媒体の活用・・・⑤取組
・子どもや高齢者等に対する
啓発活動の推進・・・⑤取組
・キャンペーンやイベントの
積極的な活用・・・③取組
・人材育成、知識習得機会の
強化・・・②取組
・地域における防犯力の強化
・・・⑧取組
・子どもを見守る取組の強化
・・・⑥取組
・パトロール、見回りの強化
・・・⑦取組
・繁華街等における
自主防犯活動の推進・・・②取組
防犯に配慮した
・道路
・・・⑥取組
・公園
・・・⑥取組
・駐車(輪)場
・・・⑧取組
・住宅等
・・・⑫取組
・学校・保育施設・通学路・・・⑧取組
・繁華街
・・・④取組
・防犯の視点を取り入れた
環境の整備に関する指針の運用
・・・①取組
※
○番号は、取り組みの項目数
【主な取組】
・「防犯診断ワークショップの手引」の策定・普及
・「防犯の視点を取り入れた環境の整備に関する指針」の周知
・「防犯ガイドブック」の配付
・市内一斉防犯パトロールの実施
・LED照明灯の設置促進
…など83の取組
12
第Ⅰ章
防犯のまちづくりの考え方
4.CPTED手法を活用したハード的側面の取り組み
防犯上の課題で紹介しましたように、皆さんの身近で起こる「ひったくり」や「自
転車盗」
、
「住宅等を対象とした侵入窃盗」の犯罪は、その約半数が道路、公園、駐車
場、駐輪場などの街頭で発生しています。
また、街頭で発生する犯罪は、周囲の様子を捉えて機会があれば衝動的に実行する
犯罪が多いことから、機会犯罪とも呼ばれています。
この機会犯罪は、犯罪を企てる者(これを犯罪企図者と呼びます。
)と、その対象
者・対象物があり、さらに犯罪を行いやすい環境があるときに起こるといわれ、犯罪
を行いやすい環境を可能な限り改善し、犯行の機会を少しでも取り除くことが大変重
要となります。
(1)CPTED手法とは
本市の「防犯の視点を取り入れた環境の整備(ハード的側面)
」では、米国におい
て1970年代に導入されたCPTED(セプテッド・防犯環境設計)の考え方を活
用することとしています。
このCPTEDは、日本の警察行政において早くから着目され、1980年代から
調査研究やモデル的な試行が重ねられています。その基本的な手法は大きく4つあり、
①被害対象物の「強化・回避」
、②犯罪を企てる者の接近を防ぐ「接近の制御」や、
③部外者が侵入しにくい環境をつくる「領域性の強化」
、④多くの人の目が届くよう
見通しを確保する「監視性の確保」があります。
■ CPTED(防犯環境設計)手法の考え方と主な手法の例
※出典
① 被害対象の強化・回避
② 接近の制御
﹁安全・安心まちづくりハンドブック﹂︵ぎょうせい︶より作成
犯罪の誘発要因を除去、対象物を強化し、被害
対象とならないようにする。
犯罪企図者が被害対象者(物)に近づきにくくする。
具体的な手法の例
歩車道を分離する
通過車両を抑制する
侵入の足場となる物を除去する
建物をオートロックにする
具体的な手法の例
高性能の錠や窓ガラス等を使う
防犯システムを導入する
被害対象者
被害対象物
犯罪企図者
③ 領域性の強化
領域を明確にし、部外者が侵入しにく
い環境をつくる。
具 体 的 な 手 法 の例
街並を美しく保つ
街路の沿道を花で飾る
空き地を市民で活用する
駐車場をフェンスで囲う
管理者がわかるようにする
地域住民
(目撃者)
13
④ 監視性の確保
多くの人の目が届くよう、見通しを確保する。
具体的な手法の例
街路灯・防犯灯をつける
防犯カメラを設置する
外部が見通せる店舗にする
視界を遮らない植栽・柵を用いる
交差点の見通しを確保する
(2)CPTED手法を活用したハード的側面の取り組み
CPTEDの4つの基本的手法を活用した防犯のまちづくりに取り組むための詳
細については、第Ⅱ章「防犯診断ワークショップ」及び第Ⅲ章「CPTED手法によ
る各施設の点検の視点」で説明しますが、ここでは、各施設におけるチェックポイン
トの概要を、CPTEDの4つの手法に沿って紹介します。
ハード的側面からの防犯のまちづくりの取り組みでは、まちの各施設(道路・公園・
駐車場・駐輪場・一戸建て住宅・共同住宅・空き地等)において、犯罪の起こりにく
い環境となっているか否かの視点を確認することが必要であり、それを踏まえた防犯
診断を実施し、改善策の検討を行いながら防犯のまちづくりの実現につなげていくこ
とが重要となります。
CPTEDの4つの手法
被害対象の強化・回避
接近の制御
領域性の強化
一戸建て住宅
道路
防
犯
診
断
監視性の確保
共同住宅
まちの各施設
公園
空き地
駐車(輪)場
等
それでは、まず最初に、防犯に配慮した道路・公園・駐車場・駐輪場・一戸建て住
宅・共同住宅・空き地等とはどういうものか、確認してみましょう。
※15ページ∼17ページのイラストは、埼玉県県土づくり企画室ホームページ「防犯に配慮したまちづくりガイ
ド」イラスト、及び「住まいの簡易防犯診断」イラストを用いて作成しています。
14
第Ⅰ章
①
防犯に配慮した道路とは
【領域性の強化】
【監視性の確保】
植栽などをせん定して、見通し
を確保します。
【接近の制御】
歩道と車道を分離します。
【被害対象の強化・回避】
【領域性の強化】
【監視性の確保】
地下道には、緊急通報装
置を設置します。
【監視性の確保】
暗い場所がないように
街路灯を配置します。
②
防犯のまちづくりの考え方
【領域性の強化】
【監視性の確保】
道路をきれいに清掃します。
【領域性の強化】
掲示板に、「防犯パトロール
実施中」などと掲示します。
【接近の制御】
通過車両を抑制
します。
防犯に配慮した公園とは
【領域性の強化】
【監視性の確保】
【監視性の確保】
【領域性の確保】
遊具を遊具を適切に配置して、
適切に配置して、見通し
を確保見通しを確保します。
します。
【監視性の確保】
【監視性の確保】
暗い場所がないように照
暗い場所がないように
明を配置します。
照明を配置します。
【被害対象の強化】
【被害対象の強化・回避】
公園や公園のトイレに緊急通
公園や公園のトイレに
報装置を設置します。
緊急通報装置を設置します。
【被害対象の強化・回避】
出入口や内部の照明を
適切な明るさにします。
【被害対象の強化】
【領域性の強化】
【領域性の強化】
「防犯パトロ
掲掲示板に、
示板に、「防犯パトロー
ルール実施中」などと掲
実施中」などと掲示しま
す示します。
。
【接近の制御】
【接近の制御】
出入り口に車止めを
出入り口に車止めを設
設置します。
置します。
出入口や内部の照明
を適切な明るさにしま
す。
【接近の制御】
【接近の制御】
【領域性の強化】
【領域性の確保】
【監視性の確保】
【監視性の確保】
公園をきれいに清掃します。
公園をきれいに清掃しま
す。
【領域性の強化】
【監視性の確保】
【監視性の確保】
【領域性の確保】
植植栽などをせん定して、
栽などをせん定して、見
見通しを確保します。
通しを確保します。
15
③
防犯に配慮した駐車場・駐輪場とは
【領域性の強化】
【監視性の確保】
【監視性の確保】
【領域性の確保】
柵やフェンスは、見通しのよい
柵やフェンスは、見通しのよい素材
素材で設置します。
で設置します。
【接近の制御】
【接近の制御】
【領域性の強化】
【領域性の確保】
柵柵やフェンスで周囲との敷地の区分を
やフェンスで周囲との敷地の区分をは
はっきりさせます。
っきりさせます。
【対象物の強化】
【被害対象の強化・回避】
駐輪場では、チェーン用
駐輪場では、チェーン用バ
ーラックを設置します。
バーラックを設置します。
【対象物の強化】
【被害対象の強化・回避】
駐車場では、
フラップを設
駐車場では、
フラップを
置します。
設置します。
【被害対象の強化】
【被害対象の強化・回避】
利用案内板により、
注意
利用案内板により、
事項を周知します。
注意事項を周知します。
【監視性の確保】
防防犯カメラや防犯設備
犯カメラや防犯設備を
設置します。
を設置します。
【監視性の確保】
【接近の制御】
【接近の制御】
【領域性の強化】
【領域性の確保】
【監視性の確保】
自動ゲート管理システ
自動ゲート管理システム
ムを設置します。
を設置します。
④
【監視性の確保】
【監視性の確保】
暗暗い場所がないように
い場所がないように
照照明を配置します。
明を配置します。
【監視性の確保】
【領域性の強化】
【領域性の確保】
【監視性の確保】
場場内に死角がないように
内に死角がないようにミ
ラミラーを設置します。
ーを設置します。
【監視性の確保】
【接近の制御】
【接近の制御】
【領域性の強化】
【領域性の確保】
【監視性の確保】
管管理人の常駐、巡回、清掃を
理人の常駐、巡回、清掃を行い
ま行います。
す。
防犯に配慮した一戸建て住宅とは
【監視性の確保】
建物や庭の見通しを確保します。
【接近の制御】
【被害対象の強化・回避】
塀、駐車場の屋根などが、侵入の足場
にならないように配置します。
【被害対象の強化・回避】
【接近の制御】
見通しが悪い場所の窓には、
面格子等を取りつけます。
【監視性の確保】
周辺道路の利用者が限
定されていると自然な
監視が行き届きます。
【接近の制御】
【領域性の強化】
塀、生垣、フェンスなどで、
隣地と区分します。
【接近の制御】
【被害対象の強化・回避】
扉や扉の錠は、強固な部材を使用します。
【監視性の確保】
【領域性の強化】
夜間、玄関の照明を点灯します。
【領域性の強化】
玄関や庭の清掃、花壇や植栽
などをきれいに管理します。
16
第Ⅰ章
⑤
防犯に配慮した共同住宅とは
【被害対象の強化・回避】
【接近の制御】
見通しが悪い場所の窓に
は、面格子等を取りつけま
す。
【監視性の確保】
建物や庭の見通しを
確保します。
【領域性の強化】
【監視性の確保】
管理人が常駐し適切な管理
を行います。
【領域性の強化】
【監視性の確保】
玄関や庭の清掃、花
壇や植栽などをきれ
いに管理します。
【領域性の強化】
【監視性の確保】
夜間、玄関灯を点灯します。
【接近の制御】
【被害対象の強化・回避】
出入口にオートロックを
設置します。
防犯カメラを設置します。
【監視性の確保】
店舗等があり、不特定多数
の人が利用する場合、監視
性に注意します。
⑥
防犯のまちづくりの考え方
【接近の制御】
【領域性の強化】
塀、生垣、フェンス
などで隣地と区分し
ます。
【接近の制御】
【被害対象の強化・回避】
非常用階段には、
扉を設置します。
【接近の制御】
【被害対象の強化・回避】
塀、駐車場の屋根などが、侵入の
足場にならないように配置します。
防犯に配慮した空き地とは
【監視性の確保】
柵・フェンスに見通し良い素材を
使います。
【接近の制御】
【領域性の強化】
柵・フェンスなどで隣地と区分します。
【接近の制御】
【被害対象の強化・回避】
出入口の柵・扉を施錠
します。
【監視性の確保】
子ども達が近づかない
ようにします。
(人口千人当たりの件数 H16-H18 累計 概数)
17
【領域性の強化】
【監視性の確保】
管理者は、定期的に巡回
します。
「敷地内の立ち入り禁止」
の看板を設置します。
Fly UP