Comments
Description
Transcript
学校内外における表現・コミュニケーションの学び
学校内外における表現・コミュニケーションの学びに関する基礎研究 小柳和喜雄 (奈良教育大学) A Preliminary Study on the Learning around Expression- Communication at School and out of School Wakio OYANAGI (Nara University of Education) 奈良教育大学 教育実践開発研究センター研究紀要 第21号 抜刷 2012年 3 月 学校内外における表現・コミュニケーションの学びに関する基礎研究 小柳和喜雄 (奈良教育大学) A Preliminary Study on the Learning around Expression- Communication at School and out of School Wakio OYANAGI (Nara University of Education) 要約:子どもたちを取り囲むメディア環境が大きく変わり、そこでの学び方(フォーマル、ノンフォーマル、インフ ォーマルな学習の関係など)が問われ、学びの内容・質を問う動きが、学校教育にも大きな影響を与えつつある。そ こで、ソーシャル・メディア利用による子どもたちの言語活動と学校で求められている言語活動の関係を考えていく ために、実態を把握し、問題を視覚化ができる研究方法の探求に関心を向けた。とりわけ、ソーシャル・メディアの 利用は、プライベートマインドの育成を越える点もあるため、ディスコース分析の中でもクリティカル・ディスコー ス・スタディーに関心を向けている。本論では、この関心を考えていくために、文献調査を通じて関連研究マップを 作成し、そこから引き出した知見から検討を加え、関係理解に向けて利用可能性がある方法を明らかにしている。 キーワード: 言語活動、ソーシャル・メディア、ディスコース分析、研究法 Language Activity、Social Media、Discourse Analysis、Research Method 1.はじめに 例えば、実際に、子どもたちのメディア接触行動 に関する研究は、ソーシャル・メディアの利用に関 Yahoo 知恵袋、Twitter、Facebook などソーシャル・ 心を向け、学校外での自己表現、コミュニケーショ メディアと言われているものの若者の活用に関わっ ン、協働活動が、そこでの言葉遣いや文法、方法など て、様々な指摘がなされてきた。例えば、以下述べる を次々と生み出し、子どもたちの間で共有されてきて 様々な指摘を図に示すと図1のようになる。 いることを報告してきている (Davidson & Goldberg まず影の面や情報ネットワークの世界と効果的に付 2010、Flanagin & Metzger 2010。 Ito ら 2009)。さら き合っていくことと関わっては、日本でも早くから情 に Jenkins ら(2009)は、「これから求められる一連 報モラルに関する取り組み、子どもの生活環境・メディ の社会的スキルと問題解決・協働の力」として、次の ア環境の変化と遊び・人間関係の変化の問題に対する 11 の能力を取り上げ、その教育的な可能性と必要性 指摘とその取組、MMORPG などとも関わるゲームに の指摘をしている。 対する取組、などが進められてきた(堀田 2004、中 ① Play: 問題解決の 1 つの形として、周りの環境 にはたらきかけ、試す能力 西 2000、仙田 2009、坂元 2005)。 次 に 必 要 性 や 可 能 性 に 関 わ っ て は、The Partnership for 21st Century Skills (2009)、ATC21S (Assessing and Teaching 21st Century Skills)、など にも見られるように、知識基盤社会を生きていく力、 ICT、ソーシャル・メディアの効果的な利用も視野に 入れた新たな世代の教育に求められる力の育成を推進 しようとする試みが行われてきた1)。日本でも教育の 情報化ビジョンが新たに示され、子どもたちに携帯端 末を持たせて授業を行うフューチャー・スクール・プ ロジェクト、学びのイノベーションなどの取組が行わ 図1 子どもの周りのメディア環境の変化と学校内外の 取組の指摘 れてきている 2)。 19 小柳 和喜雄 していると思われる日本は、案外、次の調査データに ② Performance: 改善や発見を目的として、状況 に合った選択的な自己を示せる能力 境にはたらきかけ、試す能力 ② Performance: 改善や発見を目的として、状 クなモデルを理解でき構成できる能力 況に合った選択的な自己を示せる能力 ④ Appropriation: メディアの内容から、その意味 ③ に応じて使える事例を取り上げたり、活用でき Simulation: 現実世界の過程にあるダイナミ ックなモデルを理解でき構成できる能力 る能力 ④ Appropriation:メディアの内容から、その意 ⑤ Multitasking: 環境を読み取り、より重要な詳 味に応じて使える事例を取り上げたり、活用 細へ同時に目を向けることができる能力 できる能力cognition: 認知的な力を拡張する、 ⑥ Distributed ⑤ 意味ある道具を取り扱える能力 Multitasking: 環境を読み取り、より重要な 詳細へ同時に目を向けることができる能力 ⑦ Collective intelligence: 知識を蓄え、共通のゴー ⑥ ルに向けて他の人とそれを比較検討していける Distributed cognition: 認知的な力を拡張す る、意味ある道具を取り扱える能力 能力 ⑦ Collective異なる情報ソースの信頼性や違いを intelligence: 知識を蓄え、共通の ⑧ Judgment: ゴールに向けて他の人とそれを比較検討して 評価できる能力 いける能力navigation: 多様な様式の情報から ⑨ Transmedia ⑧ くる話や内容に寄り添える能力 Judgment: 異なる情報ソースの信頼性や違 ⑩ Networking: 情報を探し、統合し、普及する能 いを評価できる能力 ⑨力 Transmedia navigation: 多様な様式の情報 ⑪ Negotiation: 多様な見通しを区別、尊重でき、 からくる話や内容に寄り添える能力 それに従いながら、 ⑩ また選択的な基準を理解し、 Networking: 情報を探し、統合し、普及する 様々なコミュニティと関われる能力 能力 このように、知識基盤社会の到来に対して、その光 ⑪ Negotiation: 多様な見通しを区別、尊重でき、 と影に関わって、様々な調査や取組が検討されてきて また選択的な基準を理解し、それに従いなが いる。ところが情報技術に関わる先進的な開発に寄与 ら、様々なコミュニティと関われる能力 ③ Simulation: 現実世界の過程にあるダイナミッ よると他の国に比べ、学校内外とも、コンピュータや このように、知識基盤社会の到来に対して、その インターネットの利用はそれほど多くない現状が見 光と影に関わって、様々な調査や取組が検討されて られる(図 2 参照:PISA 2009 Results: Students On きている。ところが情報技術に関わる先進的な開発 Line: Digital Technologies and Performance (Volume に寄与していると思われる日本は、案外、次の調査 VI) - © OECD 2011)。 データによると他の国に比べ、学校内外とも、コン これらの現実をどのようにとらえていったらいいの ピュータやインターネットの利用はそれほど多く か。 ない現状が見られる (図 2 参照: PISA 2009 Results: また一方で、上記のような ICT やソーシャル・メ Students On Line: Digital Technologies and ディアに限定することはないが、日本の学校でも様々 Performance (Volume VI) - © OECD 2011) 。 なメディアやメッセージと関わる学校内の教育活動に これらの現実をどのようにとらえていったらい おける言語活動に目を向けようとする動きが見られ いのか。 る。例えば「言語活動の充実(①知的活動(論理や思 また一方で、上記のような ICT やソーシャル・メ 考)に関すること、②コミュニケーションや感性・情 ディアに限定することはないが、日本の学校でも 緒に関すること)」と言われている取組がそれであり、 様々なメディアやメッセージと関わる学校内の教 表現、コミュニケーション、協同・協働活動へ関心を 育活動における言語活動に目を向けようとする動 向けようとしている。 しかし、学校外で子どもたちが身につけていること きが見られる。例えば「言語活動の充実(①知的活 と、学校で求めているものの関係が、子どもにも教 動(論理や思考)に関すること、②コミュニケーシ 師にも意識化されにくく、ここ 10」と言われている 年をみても、そこ ョンや感性・情緒に関すること) に乖離が生じている状況がある(図3参照:これは 取組がそれであり、表現、コミュニケーション、協 2011 年8月の免許更新講習時に参加者の教員に依頼 同・協働活動へ関心を向けようとしている。 をして回答を得た結果を各学校園の調査合計人数に占 しかし、学校外で子どもたちが身につけているこ める選択項目の人数割合という形に直して棒グラフで とと、学校で求めているものの関係が、子どもにも 表現し比較を行ったものである)。 10 年をみても、 教師にも意識化されにくく、ここ つまり、我々は、子どもたちがインターネットを活 そこに乖離が生じている状況がある(図3参照:こ Figure VI.5.13 Percentage of students who reported using the Internet at home and at school 100 学校学 に校 おにけ イイン ネッッ 活用 おる ける ンタ ター ーネ トト のの 活用 l o o ch s t a et n re t n I e h t g n is u st en d tu s f o ge at n ec re P Netherlands Denmark Norway Australia Liechtenstein Sweden Finland New Zealand Canada Hong Kong-China Slovak Republic Austria Czech Republic Iceland Bulgaria Switzerland Above-average Internet use at school Below-average Internet use at home 90 80 Thailand Above-average Internet use at school and at home OECD average-29 70 Hungary Spain Lithuania Poland Croatia 60 Russian Federation Trinidad and Tobago 50 Estonia Greece Chile Latvia Qatar Serbia Turkey Jordan Japan Israel Italy 9 2 e-g ar ev a D EC O Uruguay 40 Below-average Internet use at school and at home Panama 30 30 40 50 Macao-China Portugal Korea Ireland Germany Slovenia Singapore Belgium 60 70 80 Below-average Internet use at school Above-average Internet use at home 90 100 Percentage of students using the Internet at home 家庭におけるインターネットの利用 家庭におけるインターネットの利用 図2 学校内外における子どもたちのインターネット利用の国際比較調査結果 図2 学校内外における子どもたちのインターネット利用の国際比較調査結果 20 学校内外における表現・コミュニケーションの学びに関する基礎研究 用していると思っているが国際比較を見ると学校内外 られるクリティカル・ディスコース・スタディーを取 ともそれほど多くはない。また非対面的なソーシャル・ り上げた。 メディアなどを使ったコミュニケーションが学校外で 次に、2) その関連研究マップ(次ページ図4参照: 活発化し、一方で対面的な学校環境では「話が聞けな 図 4 は、Wadak,& Meyer M.(ed.)(2009) が作成してい い」、「人と関われない・話せない」という言語活動の る関連マップに、Rogers, R (ed.). (2011) の研究などを 乖離した現象が生じているとする問題が指摘されてい 参照しながら筆者が加筆修正を行い作成したもの)の る。このように思い込みや我々の見立てとずれている 作成を行った。そして、3) 今回は、このマップを用い、 現象、そして乖離現象が実際に現れてきている。その 学校での言葉の教育と直結する国語科教育と関わらせ ため、我々はこのような現状把握や取組課題と向かい ながら考えられ、学校外のメディア利用も取り上げら 合う必要があると考える。 れる方法を取り上げ、その可能性の検討を行った。 これらに着目する理由は、先の調査結果から見えて 本研究では、このような状況に鑑み、あらためて、 ソーシャル・メディア利用による子どもたちの言語活 きたこととして、その教育を社会的実践と関連づけて 動と学校で求められている言語活動の関係を考えてい とらえていくことがより必要になってきていることが くことに関心を向けている。 あげられたからである。 つまり社会的実践と言葉、学校での学びの関係を考 ₂.研究の目的 えていく上で、言葉の織りなす世界を考えようとする ディスコース分析・実践(橋内 2007)は、その目的 の達成に向けてより距離が近い方法と判断した。 したがって、本研究では、あらためて、学校外のメ ディア利用、とりわけソーシャル・メディア利用によ またとくに言葉の教育と直結する国語科教育と関 る子どもたちの言語活動と学校で求められている言語 わって、学校内外の学びの関係、橋渡しを考えていく 活動の関係を考え、教育内容・方法の検討を進めてい 場合にも、これらのアプローチが重要であり、また重 くために、その実態を把握し、問題を視覚化でき、情 層的に関わっていると判断したからである。 報モラルの指導と教科指導を関係づけて指導できる利 ₄.取り上げた CDS の系譜の概略 用可能な研究方法を探り、その可能性を検討すること を目的とした。 CDS (Critical Discourse Studies) は、CL(Critical ₃.研究の方法 Linguistic ) や CDA(Critical Discourse Analysis) と互 換的に使われることが多い。言語論的転換以降、言語 研究の手続きとしては、まず対象として、以下説明 実践に関心を持つ幅広い専門領域の人々が語る理論・ するが、1) 先行研究からその利用可能性があると考え 方法であり、言語分析をベースにするが、社会的実践 図3 最近10年間で子どもたちが変わったと思えること 21 小柳 和喜雄 ₅.国語科教育と Deductive, general Perspective Inductive, detailed Case Studies Fowler、 Trew、 の関わりにおける Overall research strategy Main theoretical attractor Kress などによ 取組 Discourse-Historical って行われた言 Approach (Ruth Wodak and M.Foucault Martin Reisigl) 語学が出発点と ところで、周知の なっている。 Corpus-Linguistics ように、国語科教育 Critical Theory Approach (Gerlinde Mautner) ではすでにメディ また関連する Multimodal Discourse Study ア・リテラシーを意 CDA の関係者は、 (Gunter Kress) K.Marx 識した、取組や研究 共通する特徴と Social Actors Approach (Theo van はなされてきた(国 してテキスト分 Leeuwen) Cognitive Science 語科教育との関係を 析に関わって、 問う最近の研究とし Halliday(1978) Dispositive Analysis (Siegfried て、 中 村 2010、 中 S.Moscovici Jäger and Florentine Maier) の Functional 村 2010、 な ど が あ Socio-cognitive Approach 1 Systemic Symbolic げられる)。そして、 (James Paul Gee) Interationism Grammar(選択 このたびの学習指導 Sociocognitive Approach 2 体系機能文法) に 要領の改訂とも関 (Teun van Dijk) Socio-cultural 依拠している傾 わって、メディア表 Dialectical-Relational Approach 向が見られる (小 現や読解に関わる指 M.K.Halliday (Norman Fairclough) 柳 導の充実と関連する 2005 、 小 柳 2008 、 Rogers 前ページの図5のよ Ruth Wodak and Michael Meyer 2009 p.20に一部加筆 うな教材の配置も具 2011) 。 図4 CDSの関連研究マップ 図4 CDS の関連研究マップ 体化してきている。 しかし CDA の 考えていく上で、言葉の織りなす世界を考えようと の一つに言語を取り扱うなど、幅広く様々な記号・行 研究が、別の言い方をすれば、図6を使って説明すると、国 イデオロギー批判や政策批判などを行う際 するディスコース分析・実践(橋内 2007)は、そ 語科教育とメディア・リテラシーの関係は問われ、実 為も取り扱う。このため大きな枠組みでは CL に含ま に、ある考えに傾斜した分析手法と限定してとらえ の目的の達成に向けてより距離が近い方法と判断 践され、研究が積み重ねられてきたといえる。 れるが、その研究の広がりは、従来の CL よりも幅広 られることがある。 そのため、それを避けるために、 した。い。 また、国語科教育は、「言語活動の充実」の指導の 最近では、CDS という言葉を使う動きが出てきて またとくに言葉の教育と直結する国語科教育と 要として期待が高いため、図6のメディア・リテラシー CL は、1970 年 代 か ら 1980 年 代 に か け て、East いる(Wadak& Meyer 2009)。 関わって、学校内外の学びの関係、橋渡しを考えて と言語活動の充実と国語科教育の交差点を目的・内容 Anglia 大学の Fowler、Trew、Kress などによって行 そのため、本研究でも、CDS という形で括られ いく場合にも、これらのアプローチが重要であり、 とする取り組みもなされてきている。 われた言語学が出発点となっている。 る研究を対象にしている。 つまり、これらの先行研究の中で、すでに、他国の ま た 関 連 す る CDA の 関 係 者 は、 共 通 す る 特 徴 また重層的に関わっていると判断したからである。 としてテキスト分析に関わっ て、Halliday(1978) の Functional 4.取り上げた CDS の系譜の概略 Systemic Grammar(選択体系機能 CDS (Critical Discourse Studies) 文法)に依拠している傾向が見られ は 、 CL(Critical Linguistic ) や る(小柳 2005、小柳 2008、Rogers CDA(Critical Discourse Analysis) 2011)。 と互換的に使われることが多い。言 しかし CDA の研究が、イデオロ 語論的転換以降、言語実践に関心を ギー批判や政策批判などを行う際 持つ幅広い専門領域の人々が語る理 に、ある考えに傾斜した分析手法 論・方法であり、言語分析をベース と限定してとらえられることがあ にするが、社会的実践の一つに言語 る。そのため、それを避けるため を取り扱うなど、幅広く様々な記 に、最近では、CDS という言葉を 号・行為も取り扱う。このため大き 使う動きが出てきている (Wadak& な枠組みでは CL に含まれるが、そ Meyer 2009)。 そのため、本研究でも、CDS の研究の広がりは、従来の CL よりと いう形で括られる研究を対象にし も幅広い。 CL ている。 は、1970 年代から 1980 年代 に か け て 、 East Anglia 大 学 の メディア表現・コミュニケーションなどと関わる国語科教材に着目すると (光村図書の場合) 3・4 5・6 話す・聞く 図表や絵,写真などか ら読み取ったことを基 に 書く 学級新聞な 収集した資 料を効果的 どに表した に使い りする 【しりょうから分かったことを発表し よう】3年下 【読書生活について考えよう】4年上 【新聞を作ろう】4年上 【「仕事リーフレット」を作ろう】4年下 資料を提示しながら 引用したり, 図表やグラ フなどを用 いたりして 編集したりす る 【通信文のいろいろ】 【グラフや表を引用して書こう】5年 【「平和」について考える】6年 【この絵,わたしはこう見る】6年 図表などを 用いた 中1 読む 記録や報告の文章,図 鑑や事典などを読んで 利用する 【アップとルーズで伝える】中谷日 出 4年下 編集の仕方や記事の書き 方に注意して新聞を読む 【新聞を読もう】5年 【天気を予想する】武田康男 5年 【ゆるやかにつながるインターネット】 【ニュース番組作りの現場から】 【『鳥獣戯画』を読む】 文章と図表などとの関 連を考えながら 中2 多様な方法で集め整 理する 新聞やインターネット, 学校図書館等の施設な どを活用して 中3 資料などを活用して 報道などに盛り込まれ た情報を比較 図5 図5 国後の教科書に見られるメディア表現の読解の指導事項 国語の教科書に見られるメディア表現や読解の指導事項 22 学校内外における表現・コミュニケーションの学びに関する基礎研究 メディア・リテラシーの研究なども参考に、実践のた 5.国語科教育との関わりにおける取組 個人 ソーシャ 5.国語科教育との関わりにおける取組 めの解釈コードに関する研究の紹介もなされ、それを ところで、周知のように、国語科教育ではすでに 個人 ソーシャ ル・メディ ところで、周知のように、国語科教育ではすでに 日本の国語科の取組に応用することもなされてきてい 橋渡し・ メディア・リテラシーを意識した、取組や研究はな ル・メディ グループ ア内での 橋渡し・ メディア・リテラシーを意識した、取組や研究はな 視覚化 る。 されてきた(国語科教育との関係を問う最近の研究 グループ ア内での 意見交換 視覚化 言語活動 されてきた (国語科教育との関係を問う最近の研究 それでは、上記のような研究と、本研究は、どのよ 意見交換 全体 として、 中村 2010、 中村 2010、 などがあげられる) 。 言語活動 の充実と 学校外のメ うに異なるのか。それは、同じく図6に示しているよ 全体 として、 中村 2010、 中村 2010、 などがあげられる) 。 そして、このたびの学習指導要領の改訂とも関わっ 教室・対面学習 の充実と も関わっ 学校外のメ ディアから うに、まず、1) 国語科教育とメディア・リテラシーと そして、 このたびの学習指導要領の改訂とも関わっ 教室・対面学習 て、 メディア表現や読解に関わる指導の充実と関連 も関わっ て ディアから の情報 言語活動の充実との交差点を、 「プライベートマイン て、 メディア表現や読解に関わる指導の充実と関連 する前ページの図5のような教材の配置も具体化 て の情報 ドに焦点化した個人の学習」から「ソーシャル・マイ 図7 教室と教室外での学びの橋渡し する前ページの図5のような教材の配置も具体化 してきている。 図7 教室と教室外での学びの橋渡し ンドに着眼した社会文化的な地平での協働学習」へ橋 してきている。 別の言い方をすれば、図6を使って説明すると、 に着目している点 図7 教室と教室外での学びの橋渡し (図6 の矢印部分) に特徴がある。 渡しすること、2) さらには学校内の学習と学校外で身 的文脈・状況にも目を向け解釈をしようと試みるもの 国語科教育とメディア・リテラシーの関係は問われ、 別の言い方をすれば、図6を使って説明すると、 これは学びを検討していくために、 本研究で着目し に着目している点 (図6 の矢印部分) に特徴がある。 につけているもの、経験しているものを言語活動に着 である。また一方で産出過程を解釈する側そのものの 実践され、研究が積み重ねられてきたといえる。 これは学びを検討していくために、 国語科教育とメディア・リテラシーの関係は問われ、 ているソーシャル・メディアの分析に関わっても研 本研究で着目し 目して橋渡しをしていくこと(図7参照) 、そして、3) 解釈を考えるといった、テキスト解釈過程に関わる相 また、国語科教育は、 「言語活動の充実」の指導 実践され、研究が積み重ねられてきたといえる。 究の蓄積のある研究成果・方法を新たに検討してい ているソーシャル・メディアの分析に関わっても研 そこでの解釈コードや取組やプロセスを視覚化し、実 互作用、また解釈者も所属するその文脈・制度までも の要として期待が高いため、図6のメディア・リテ く必要があると考えたからである。 また、国語科教育は、 「言語活動の充実」の指導 究の蓄積のある研究成果・方法を新たに検討してい 践をとらえていく教師の目を鍛え、子どもに学校での 2 重にとらえようとするアプローチである(図8参照: ラシーと言語活動の充実と国語科教育の交差点を そのため、本研究では、CDS の研究法に着目し、 の要として期待が高いため、図6のメディア・リテ く必要があると考えたからである。 学びと学校外の学びの橋渡しを実感させる解釈コード Fairclough (2010) の図を筆者が翻訳)。 目的・内容とする取り組みもなされてきている。 その中でも、 図4の太枠の 3 つの方法に着目して国 ラシーと言語活動の充実と国語科教育の交差点を そのため、 本研究では、 CDS の研究法に着目し、 を提供していくこと、に着目している点(図 6 の矢印 このアプローチを、例えば図5の国語の教科書にあ つまり、これらの先行研究の中で、すでに、他国 語科教育での、その可能性を検討していく。 目的・内容とする取り組みもなされてきている。 その中でも、図4の太枠の 3 つの方法に着目して国 部分)に特徴がある。これは学びを検討していくため のメディア・リテラシーの研究なども参考に、実践 る「新聞を読もう」を取り扱う際に、次のような問い つまり、これらの先行研究の中で、すでに、他国 語科教育での、その可能性を検討していく。 に、本研究で着目しているソーシャル・メディアの分 のための解釈コードに関する研究の紹介もなされ、 に変えて検討をすることで、例にある説明文の読解と 6.CDS の方法の適応可能性 のメディア・リテラシーの研究なども参考に、実践 析に関わっても研究の蓄積のある研究成果・方法を新 それを日本の国語科の取組に応用することもなさ ソーシャル・メディアの中でコミュニケーションされ まず 1 つ目は、演繹的で普遍的な法則の抽出へ焦 のための解釈コードに関する研究の紹介もなされ、 たに検討していく必要があると考えたからである。 ている言葉の両方の分析に応用が可能となるのではな 6.CDS の方法の適応可能性 れてきている。 点化することだけでなく、 個々の相互作用や社会的 それを日本の国語科の取組に応用することもなさ そのため、本研究では、CDS の研究法に着目し、 いかと考えている。 「①表現の特徴は?②書かれてい まず 1 つ目は、演繹的で普遍的な法則の抽出へ焦 それでは、上記のような研究と、本研究は、どの 実践へ関心を向ける傾向が見られる「弁証法的・関 れてきている。 その中でも、図4の太枠の 3 つの方法に着目して国語 ること・話されていることで何が語られているか?③ ように異なるのか。それは、同じく図6に示してい 点化することだけでなく、 個々の相互作用や社会的 係 論 的 ア プ ロ ー チ 」 を 取 り 上 げ る それでは、上記のような研究と、本研究は、どの 科教育での、その可能性を検討していく。 誰の言葉が誰の言葉と関わっているか?④つながる言 るように、まず、1)国語科教育とメディア・リテラ 実践へ関心を向ける傾向が見られる「弁証法的・関 (Dialectical-Relational Approach) ように異なるのか。それは、同じく図6に示してい シーと言語活動の充実との交差点を、「プライベー 係葉の書き方と特徴は何か?⑤制度や社会との関わりが 論このアプローチは、 的 ア プ ロ ー テキストに書かれていること チ 」 を 取 り 上 げ る 6.CDS の方法の適応可能性 読み取れるところはあるか?」 るように、まず、1)国語科教育とメディア・リテラ トマインドに焦点化した個人の学習」から「ソーシ (Dialectical-Relational Approach) の読解を通じて、そのテキストに書かれているキー このアプローチは、相互作用も視野に入れているた シーと言語活動の充実との交差点を、 「プライベー ャル・マインドに着眼した社会文化的な地平での協 このアプローチは、 テキストに書かれていること となる言葉や、言い回し、構造などからテキストの まず働学習」へ橋渡しすること、2)さらには学校内の学 1 つ目は、演繹的で普遍的な法則の抽出へ焦点 め、①テキストの分析時に学級で話し合うこと、②そ トマインドに焦点化した個人の学習」から「ソーシ の読解を通じて、 そのテキストに書かれているキー 産出過程を解釈し、またそのテキストの背景にある 化することだけでなく、個々の相互作用や社会的実践 の話してきた内容(記録)の分析を、また行い、自分 ャル・マインドに着眼した社会文化的な地平での協 習と学校外で身につけているもの、経験しているも となる言葉や、言い回し、構造などからテキストの 文脈、広くは制度などにも目を向けてテキスト産出 へ関心を向ける傾向が見られる「弁証法的・関係論 のを言語活動に着目して橋渡しをしていくこと(図 たち自身の新聞のとらえ方を分析の対象にしながら、 働学習」へ橋渡しすること、2)さらには学校内の学 過程の社会的文脈・状況にも目を向け解釈をしよう 産出過程を解釈し、 またそのテキストの背景にある 的アプローチ」を取り上げる(Dialectical-Relational 自分たちと新聞というメディアの関係を考えることが 7参照)、そして、3)そこでの解釈コードや取組や 習と学校外で身につけているもの、 経験しているも と試みるものである。 また一方で産出過程を解釈す 文脈、 広くは制度などにも目を向けてテキスト産出 Approach) できると考えられるからである。ここでの取り組み、 プロセスを視覚化し、実践をとらえていく教師の目 のを言語活動に着目して橋渡しをしていくこと (図 る側そのものの解釈を考えるといった、テキスト解 過程の社会的文脈・状況にも目を向け解釈をしよう このアプローチは、テキストに書かれていることの を鍛え、 子どもに学校での学びと学校外の学びの橋 その学習経験は、さらにその後ソーシャル・メディア 7参照) 、そして、3)そこでの解釈コードや取組や 釈過程に関わる相互作用、 また解釈者も所属するそ と試みるものである。 また一方で産出過程を解釈す 読解を通じて、そのテキストに書かれているキーとな を用いた論議を分析する機会に遭遇した時にも、子ど 渡しを実感させる解釈コードを提供していくこと、 プロセスを視覚化し、 実践をとらえていく教師の目 の文脈・制度までも 2 重にとらえようとするアプロ る側そのものの解釈を考えるといった、 テキスト解 る言葉や、言い回し、構造などからテキストの産出過 もたちが考える何らかのきっかけになると考えられ を鍛え、子どもに学校での学びと学校外の学びの橋 釈過程に関わる相互作用、 また解釈者も所属するそ 学校外 程を解釈し、またそのテキストの背景にある文脈、広 る。また、この学習過程を記録に残し教師が、その解 ディスコースを考えていくために 渡しを実感させる解釈コードを提供していくこと、 の文脈・制度までも 2 重にとらえようとするアプロ くは制度などにも目を向けてテキスト産出過程の社会 釈産出過程を分析していく子どもとメディアの関係理 • 普遍的な法則の抽出へ焦点化することだけでなく,個々の相 プライ 学校内 ソーシャルマインド 協働 国語科教育 学校内 学校外 国語科教育 ベート マインド プライ メディアリテラシー ベート マインド メディアリテラシー 互作用や社会的実践へ関心を向ける ディスコースの秩序の場合 社会の 秩序 Social conditions of production ディスコースを考えていくために ディス コースの 秩序 CDSの方法を • 普遍的な法則の抽出へ焦点化することだけでなく,個々の相 使って考えよ ソーシャルマインド うとしている 協働 Process of production 互作用や社会的実践へ関心を向ける ところ Social conditions of production CDSの方法を 言語活動の充実 使って考えよ うとしている ところ Text Process of Interpretation InteractionProcess of production Context Social conditions Text of interpretation コミュニケーションと関わる出来事の分析の場合 実践の ディス ディスコースの秩序の場合 コースの ディス 型 コースの 型 社会の 秩序 今ある 秩序 ディス 実践 コースの ディス 実践 実践の 型 コースの 型 内的葛藤と外的葛藤を見る 今ある ディス Process of Interpretation Fairclough,N. (2010) Critical Discourse Analysis: The Critical Study of Languageコースの 2 ed. 実践 Interaction Pearson PTR Interactive. 言語活動の充実 図6 国語科教育とメディア・リテラシー教育 実践 Context Social conditions of interpretation 内的葛藤と外的葛藤を見る 図8 弁証法的・関係論的アプローチ コミュニケーションと関わる出来事の分析の場合 Fairclough,N. (2010) Critical Discourse Analysis: The Critical Study of Language 2 ed. Pearson PTR Interactive. 図6 国後科教育とメディア・リテラシー教育 図6 国語科教育とメディア・リテラシー教育 図8 弁証法的・関係論的アプローチ 図8 弁証法的・関係論的アプローチ 23 る。これによって、多様な様式の情報を取り扱う際 の自分たちの行為行動、その相互作用の分析を可能 Rules Community Division of にすると考えられる。また、この学習過程を記録に Labor 残し、教師がその解釈産出過程を分析していく子ど 小柳 和喜雄 もとメディアの関係理解を分析していく方法とし Operation ても可能性を持つと考えられる。 Oliver, M. and Pelletier, C.(2006) Activity Theory and Learning From Digital Games: 解を分析していく方法としても可能性を持つと考えら 表1 多様な様式の情報の取り扱い行為分析表 Developing an Analytical Methodology. In D.Buckingham and R.Willett.(ed.). Digital Generations. Children, Young People, and New Media. NJ: LEA. れる。 ₂ つ目は、帰納的で、事例分析を通じて個々の相 Available Semantic Resources (Modes, Materials, Mediation) 互作用・相互行為へ関心を向ける傾向が見られる「多 様な情報様式と関わる行為分析アプローチ」を取り上 ーチである(図8参照:Fairclough (2010)の図を筆 した時にも、子どもたちが考える何らかのきっかけ Interest &Study) げる(Multimodal Discourse 。 者が翻訳) 。 になると考えられる。また、この学習過程を記録に Appropriation 図 9 は、Multimodal Discourse Study と エ ン ゲ ス Mediated Action このアプローチを、例えば図5の国語の教科書に 残し教師が、その解釈産出過程を分析していく子ど トロームのアプローチをクロスする形で用いられてい Social Actor Object Sign (Artifact, Transformation ある「新聞を読もう」を取り扱う際に、次のような もとメディアの関係理解を分析していく方法とし Performance) Social Practice るアプローチであり、多様なモード(様式)の情報と 問いに変えて検討をすることで、例にある説明文の ても可能性を持つと考えられる。 関わる活動を行為、操作とより詳細に分析し、それぞ Histories of Shared Histories of 読解とソーシャル・メディアの中でコミュニケーシ 2 つ目は、帰納的で、事例分析を通じて個々の相 Social Cultural Material Use 析していく子どもとメディアの関係理解を分析してい Participation Meanings れでの道具、規則、分業の在り方などを見ていくアプ And Access 最後に 3 つ目は、帰納と演繹の両方から、個々の ョンされている言葉の両方の分析に応用が可能と 互作用・相互行為へ関心を向ける傾向が見られる Rules 相互作用・相互行為へ関心を向ける傾向が見られる く方法としても可能性を持つと考えられる。 を ローチである。 Roles なるのではないかと考えている。 「多様な情報様式と関わる行為分析アプローチ」 Community of Practice 「①表現の特徴 Habitus Apprenticeship Relations Discourses 「 社 会 認 知3的 ア プ ロ Discourse ー チ 」 をStudy) 取り上 最後に つ目は、帰納と演繹の両方から、個々の相 このアプローチを例えば図5の国語の教科書にある は?②書かれていること・話されていることで何が 取り上げる(Multimodal 。げ る Wohlwend (2011) .Mapping Modes in Children’s Play and Design: An Action-oriented Approach to Critical Multimodal Analysis. In R.Rogers (ed.). An Introduction to Critical (Socio-cognitive Approach) 互作用・相互行為へ関心を向ける傾向が見られる「社 「グラフや表を引用して書こう」を取り扱う際に次の 語られているか?③誰の言葉が誰の言葉と関わっ 図9は、Multimodal Discourse Study とエンゲ Discourse Analysis in Education. Second Edition. NewYork and London: Routledege. Subject Action Object ように組み込むと、説明文の読解と多様な様式の情報 ているか?④つながる言葉の書き方と特徴は何 図9多様な情報様式と関わる行為分析アプローチ の取り扱い行為、さらにはソーシャル・メディアの中 か?⑤制度や社会との関わりが読み取れるとこと でコミュニケーションする際の行為の分析に応用が可 はあるか?」 このアプローチは、相互作用も視野に入れている 能となるのではないかと考えている。つまり①読み取 ため、①テキストの分析時に学級で話し合うこと、 れたことに加えて、②実際に自分たちが行った場合に ②その話してきた内容 (記録) また行い、 生じたことを、表1(Oliver &の分析を、 Pelletier.(2006) が作成 自分たち自身の新聞のとらえ方を分析の対象にし した表を筆者が翻訳)など利用・分析し、それを振り ながら、 自分たちと新聞というメディアの関係を考 返って考える際に活用する。これによって、多様な様 えることができると考えられるからである。 ここで 式の情報を取り扱う際の自分たちの行為行動、その相 の取り組み、その学習経験は、さらにその後ソーシ 互作用の分析を可能にすると考えられる。また、この ャル・メディアを用いた論議を分析する機会に遭遇 学習過程を記録に残し、教師がその解釈産出過程を分 Tool Subject Activity Object Tool Subject Rules Action Object Community Division of Labor Operation Oliver, M. and Pelletier, C.(2006) Activity Theory and Learning From Digital Games: Developing an Analytical Methodology. In D.Buckingham and R.Willett.(ed.). Digital Generations. Children, Young People, and New Media. NJ: LEA. Available Semantic Resources (Modes, Materials, Mediation) Interest & Appropriation Mediated Action Social Actor Transformation Object Social Practice Histories of Social Participation Rules Habitus Shared Cultural Meanings Community of Practice Discourses Sign (Artifact, Performance) Histories of Material Use And Access Roles Apprenticeship Relations Wohlwend (2011) .Mapping Modes in Children’s Play and Design: An Action-oriented Approach to Critical Multimodal Analysis. In R.Rogers (ed.). An Introduction to Critical Discourse Analysis in Education. Second Edition. NewYork and London: Routledege. 図9多様な情報様式と関わる行為分析アプローチ 会認知的アプローチ」を取り上げる(Socio-cognitive ストロームのアプローチをクロスする形で用いら Approach) れているアプローチであり、多様なモード(様式) 表 2(Gee (2010) の分析の視点を参照し筆者が作成) の情報と関わる活動を行為、 操作とより詳細に分析 の左項目は、このアプローチが分析の視点として用い し、それぞれでの道具、規則、分業の在り方などを 見ていくアプローチである。 ている項目であり、1) 利用されている言葉のタイプに このアプローチを例えば図5の国語の教科書に よる意味の違い、2) 話されている言葉の意味や状況的 ある「グラフや表を引用して書こう」を取り扱う際 な意味の違い、3) 社会的実践の中での意味の違い、を めには、教員養 表 2( Gee (2010)の分析の視点を参照し筆者が に次のように組み込むと、 説明文の読解と多様な様 考察していく際に活用できる可能性をもつものであ 作成)の左項目は、このアプローチが分析の視点と ディアの関係、 式の情報の取り扱い行為、さらにはソーシャル・メ る。 して用いている項目であり、1)利用されている言葉 取り扱っていく ディアの中でコミュニケーションする際の行為の の意味、実践イ 表2 Gee の社会認知的アプローチと関わる分析表 分析に応用が可能となるのではないかと考えてい 解などの時間 ~するために言葉を用いる 国語の教材 他の教材(ソシャル・メ る。つまり①読み取れたことに加えて、②実際に自 り実践課題と ディアの利用なども) 分たちが行った場合に生じたことを、表1(Oliver 「意味づけ」のために用いている言葉 「活動(実践)」を生じさせている言葉 & Pelletier.(2006)が作成した表を筆者が翻訳)など <注> 「アイデンティティ」を構築している言葉 利用・分析し、それを振り返って考える際に活用す 1)この取組 互いの「関係」を見えるようにしている言葉 る。これによって、多様な様式の情報を取り扱う際 White Papers そのコミュニティで産出されているもの、 の自分たちの行為行動、 価値があるものとして取り上げられているこ その相互作用の分析を可能 Bellanca,J. とを示す言葉(「ポリティクス」) にすると考えられる。また、この学習過程を記録に Century Ski 互いの関わりにある暗黙のつながりを表現 している言葉 残し、 教師がその解釈産出過程を分析していく子ど Learn.Bloom サインの体系と知識(世界を知る方法)とし もとメディアの関係理解を分析していく方法とし て)用いられている言葉 詳細な解説な ても可能性を持つと考えられる。 のタイプによる意味の違い、2)話されている言葉の このアプローチを例えば図5の国語の教科書にある ている. 表1 多様な様式の情報の取り扱い行為分析表 意味や状況的な意味の違い、3)社会的実践の中での 「ゆるやかにつながるインターネット」を取り扱う際 2)教育の情報化 意味の違い、 を考察していく際に活用できる可能性 に組み込むと、説明文の内容の読解に加えて、自分た を参照すると をもつものである。 ちが実際に接しているインターネットをより対象化し このアプローチを例えば図5の国語の教科書に て考える際に有効となるのではないか、さらにはソー ある「ゆるやかにつながるインターネット」を取り シャル・メディアの中でコミュニケーションする際の 扱う際に組み込むと、 説明文の内容の読解に加えて、 自分たちの行為の分析に応用が可能となるのではない 自分たちが実際に接しているインターネットをよ かと考えている。また、この学習過程を記録に残し教 り対象化して考える際に有効となるのではないか、 師が、その解釈産出過程を分析していく子どもとメ さらにはソーシャル・メディアの中でコミュニケー ディアの関係理解を分析していく方法としても可能性 ションする際の自分たちの行為の分析に応用が可 を持つと考えられる。 最後に 3 つ目は、帰納と演繹の両方から、個々の 能となるのではないかと考えている。また、この学 相互作用・相互行為へ関心を向ける傾向が見られる 習過程を記録に残し教師が、 その解釈産出過程を分 おわりに 「析していく子どもとメディアの関係理解を分析し 社会認知的アプローチ」を取り上げる (Socio-cognitive Approach) ていく方法としても可能性を持つと考えられる。 本研究は「学校外のメディア利用、 とりわけソーシャ る .http://www 297089.htm <参考文献> (1) Buck Digital People, an (2) David The Fu Institutio Massachu (3) Fairc ル・メディア利用による子どもたちの言語活動」と「学 Analysis: ed. Pearso おわりに (4) Flana 本研究は「学校外のメディア利用、とりわけソー 24 Kids an シャル・メディア利用による子どもたちの言語活 Examinat 動」と「学校で求められている言語活動」の関係を and Info 考え、その教育内容・方法の検討を進めていくため 学校内外における表現・コミュニケーションの学びに関する基礎研究 (第 6 版), くろしお出版 . 校で求められている言語活動」の関係を考え、その教 育内容・方法の検討を進めていくために、その実態を 7)堀田龍也 (2004) メディアとのつきあい方学習— 把握し、問題を視覚化ができる利用可能な研究方法を 「情報」と共に生きる子どもたちのために . ジャ ストシステム 探り、その可能性を検討することへ目を向けた。 本研究は、学校内外における表現・コミュニケーショ 8)Ito,M., Horst,H., Bittanti,M. et al.(2009. Living ンの学びに関する基礎研究に位置づく。そのため、問 and Learning with New Media. Summary 題の所在とそれに対する 1 つの接近方法として視覚化 of Findings from the Digital Youth Project. する研究方法、小学校の国語科教育に目を向けて、教 Cambridge, Massachusetts: The MIT Press. 育方法としてのその応用の可能性の入口の検討に留 9) Jenkins,H. with Others (2009) Confronting the Challenges of Participatory Culture. まった。 Cambrudge,MA; MacArthur. The MIT Press. しかしながらこのような取り組みをしていくために は、教員養成、現職教育において、子どもとメディア 10)中西新太郎 (2000). メディア環境の変化が青少年 の関係、国語科教育などでそれをどのように取り扱っ 文化にもたらすもの ( 特集 子どもの事件から考 える ) . 人間と教育 (28), 36-42. ていくかについて、よりその意識化や実践の意味、実 11)中村敦雄 (2010) 国語科教育学における 「メディア」 践イメージ、具体的な実践の方法の理解などの時間の 確保が必要であるという点がより実践課題となると考 概念 ( 課題研究 -3,『メディア』から国語教育の研 えられる。 究と実践を展望する (1), 課題研究発表 ). 全国大学 国語教育学会発表要旨集 119, 156-157, <注> 12)中村純子 (2010) 母語教育カリキュラムにおけるメ ディア・リテラシー導入の方略 : イングランド , オンタリオ州 , 西オーストラリア州のカリキュラ 1) こ の 取 組 に 関 わ っ て は ATC21S(2010) Draft ム比較 . 国語科教育 67, 43-50. White Papers. The University of Melbourne. Bellanca,J. & Brandt,R.(eds.) (2010) 21st Century 13)Oliver, M. and Pelletier, C.(2006) Activity Theory Skills. Rethinking How Students Learn. and Learning From Digital Games: Developing Bloomington,IN: Solution Tree Press. に詳細な解 an Analytical Methodology. In D.Buckingham 説な解説 , 関連した研究成果が記載されている . and R.Willett.(ed.). Digital Generations. Children, Young People, and New Media. NJ: LEA. 2) 教 育 の 情 報 化 ビ ジ ョ ン に つ い て は 以 下 の W WWを参照すると関連する情報の見通しが 14)小柳和喜雄 (2005) メディア・ディスコースの分析 得 ら れ る .http://www.mext.go.jp/b_menu/ 方法に関する予備的研究 − Norman Fairclough houdou/22/08/1297089.htm のクリティカル・ディスコース分析を中心に− . 奈 良教育大学 教育実践総合センター研究紀要 14, <参考文献> 83-91. 15)小柳 和喜雄 (2008) 学校外の子どものメディア利 用を授業へ 組織化する方法に関する研究 . 教育メ 1) Buckingham,D and Willett.R. (ed.). Digital ディア研究 15(1), 29-40. Generations. Children, Young People, and New 16)Rogers, R (ed.). (2011) An Introduction to Critical Media. NJ: LEA. Discourse Analysis in Education. Second 2)Davidson,C.N. and Goldberg,D,T. (2010). The Future of Thinking. Learning Institutions in a Edition. NewYork and London: Routledege. Digital Age. Cambridge, Massachusetts: The 17) 坂 元 章 (2005) 子 ど も を 取 り 巻 く テ レ ビ ゲ ー ムとインターネット : 光と影 . 思春期学 = MIT Press. ADOLESCENTOLOGY 23(2), 229-233. 3)Fairclough,N. (2010) Critical Discourse Analysis: The Critical Study of Language 2 ed. Pearson 18)仙田満 (2009). 子どもの遊び環境 , 鹿島出版会 . PTR Interactive. 19)Wadak,R. and Meyer M.(ed.)(2009) Methods of Critical Discourse Analysis. Second Edition. 4)Flanagin,A.J. and Metzger,M.J.(2010). Kids and London:Sage. Credibility. An Empirical Examination of Youth, 20)Wohlwend (2011) .Mapping Modes in Childrenʼs Digital Media Use, and Information Credibility. Cambridge, Massachusetts: The MIT Press. Play and Design: An Action-oriented Approach 5)Gee.J.P. (2010) An Introduction to Discourse to Critical Multimodal Analysis. In R.Rogers (ed.). Analysis: Theory and Method.London:Routledge An Introduction to Critical Discourse Analysis 6)橋内武 (2007) ディスコース 談話の織りなす世界 in Education. Second Edition. NewYork and 25 小柳 和喜雄 London: Routledege. 26