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ExxonMobilが重質油 開発に関する合意書締結
クウェート:ExxonMobilが重質油 開発に関する合意書締結 2007年11月21日 調査部 猪原 渉 1 報告内容 z z ExxonMobilとKOCが重質油開発で合意書締結(概要 とインプリケーション) 下記の注目点について概説 – 湾岸産油国で未開発重質原油の本格開発の動き z サウジアラムコ:Chevronと共同パイロットプラント – 「資源国有化」クウェートにおいて、今後の外資参 入形態の主流となりそうな契約方式:ETSA – 重質油開発は日本企業にもビジネスチャンス? (参考資料) 「日本石油産業界の新戦略候補:重質原油開発ビジネスモデ ル」(角和、岩井、石井)石油・天然ガスレビュー2007年9月 2 ExxonMobilと重質油開発で合意 z ExxonMobilとKOC(KPC子会社、国内上流開発・生産担当) が重質油共同開発に関する初期合意締結(10/22開催セミ ナーで両社幹部が公表) z 合意内容(報道) – ロワーファース(Lower Fars)層の重質原油を共同開発 – 生産目標:2011年5万b/d、2015年25万b/d、2020年70~90万b/d – Enhanced Technical Service Agreement(ETSA)により実施 – 2008年7月までの正式契約締結を目指す z 外資参入の道が閉ざされてきたクウェートでの新たな動き 3 ExxonMobilと重質油開発で合意 z ロワーファース層の特徴 – 油層はMiocene砂岩、深度は600~1,000ft前後、 原始埋蔵量は90億bbl以上(石油関係者) – 試掘井約60坑を掘削。API 13~17度:60%、11~ 13度:40%、であることが判明(KPC子会社ODCの Sumaiti社長)。 – 油層深度が浅いため、炭酸ガス攻法は使えない。 – 「プロジェクト・クウェート」(北部の既存中軽質油田 増産への本格外資導入計画)の対象とは異なる。 4 ExxonMobilと重質油開発で合意 z ExxonMobilとKOCは2006年後半より水面下で 交渉の模様(石油関係者、コンサルタント情報) ① 上流開発:ETSAで実施(今年8月初期合意締結か) ② 中流(パイプライン等) ③ 下流(改質設備、製品販売及びオプションで石化設 – 備) ①~③を含む統合事業計画を想定。ただしEMが提 案した共同操業会社設立をクウェート側は合意して おらず、(中下流の)交渉は進んでいない。 5 6 クウェートの重質油巡る状況 z 1980年代にラトカ油田浅層でロワーファース砂岩 層(API18度の重質原油含有)を発見するも、今日 まで未開発。 z クウェートには膨大な重質油が賦存との見方 – API 10~20度重質油埋蔵量:200億bbl(政府関係者) – API 10~21度の重質油資源量推定(*):660億bbl、:世 界の10%(ベネズエラ 50%、旧ソ連 17%) を占める(関 口嘉一 2006) (*)重質原油資源量:確認埋蔵量、推定・予想埋蔵量に地質学的、工学的 検討に基づく未発見の期待可採量含む) 7 クウェートの重質油巡る状況 石油増産15年計画(2004年SPC承認) z 2020年生産目標400万b/d(2004年240万b/dから増 強)のうち、約20%(70~90万b/d程度)を重質油とす ることを公式に表明。 – ブルガン巨大油田の自然減退入りを見込む 350 300 250 200 中軽質油 重質油 150 100 50 0 2004 2020 8 クウェートの重質油巡る状況 z プロジェクト・クウェート(北部油田増産計画)の停滞 – 1998年に計画発表。40万b/d→90万b/dへ増産計画。【長期 – – – – – 増産計画の柱】 2000年に関連法案提出。操業サービス契約(OSA)の導入。 憲法との整合性の問題と政府への権限集中を批判(「議会 軽視」)する議会が一貫して法案に反対。 一方、政府・KPCは準備を進める(外国企業3コンソーシアム に入札資格付与等) 反首長派の多い議会と政府の間の政争の具にも。 プロジェクト推進役不在 z 石油大臣(アハマド氏、アリ氏)が不正疑惑等で相次ぎ辞任し、プロ ジェクト・クウェートは事実上頓挫。フマイディ石油相(前財政相)(10 月就任)も1週間で辞任(オレイム電力水利相が再度石油相代行に)。 ⇒今後、クウェートは重質油の本格開発に乗り出す 9 プロジェクト・クウェート対象油田と生産計画 (1998年発表) 油田名 北 部 発見年 ベース生産量 目標生産量 (百万bbl) (b/d,1998年) (b/d,2005年) Raudhatain 1955 5,100 225,000 515,000 Sabriyah 1958 4,300 95,000 250,000 3,000 30,000 45,000 120,000 Bahrah(*) - Ratqa 1977 Abdali 1990 小 計 西 部 可採埋蔵量 459 33,000 9,859 401,000 915,000 Minagish 1959 3,300 90,000 210,000 Umm Gudair 1962 3,200 100,000 250,000 小 計 6,500 190,000 460,000 合 計 16,359 591,000 1,375,000 (*)Bahrah油田は99年9月に除外され,現在の開発対象は北部4油田。西部2油田は将来構想と されている。 出所:各種資料 10 湾岸産油国で重質油開発が本格化 z サウジアラビアはChevronと組んで重質油開 発に着手済み – 原油生産能力増強計画のフェーズ2(2010年以 降)は重質油開発がメイン <フェーズ1> 1,100万b/d(2005年)→1,250万b/dに増強(2009年ま で):Khurais油田(+120万b/d)等中軽質油開発で対応 <フェーズ2>「2010年以降、需要があれば更なる増強」 :重質油田 開発がメイン、Manifa沖合油田(+90万b/d)、Safania沖合油田(+20 万b/d)等 – 分割地帯(DZ)陸域で利権保有者Chevronと重 質油回収試験設備(Steam Flooding法)を設置。 Manifa沖合油田他への適用も視野。 11 湾岸産油国で重質油開発が本格化 z サウジアラムコのアブドラ・アル・サイフ副社長(E&P統括) は、DZの未開発重質油埋蔵量を30億bbl以上と推定。 IOC との共同技術開発の必要性を強調 。 ⇒「重質油開発」をキーワードに、サウジ石油上流への新たな外資導 入が実現する可能性も。 z クウェートとExxonMobilによる重質油開発 – アラムコ/Chevron( Steam Flooding法)とは異なる方式。 – ベネズエラ等でポピュラーな’cold heavy oil production with sand technique’(CHOPS)を採用か。ExxonMobilはCerro Negroで同法の実績あり。 12 Steam Flooding法 13 14 Cold Production 3 Cold Heavy Oil Production with Sand (CHOPS) 3 Horizontal Drilling 3 Artificial Lift – Rod pumps – PCPs 15 Progressive Cavity Pump Belt drive with torque control Polished rod Electric motor (or hydraulic) Production flow line Well casing (usually 175 mm) Sucker or co-rods in production tubing Production tubing (usually 72 or 88 mm) Well-head assembly Chromed rotor in fixed stator Source: Dusseault SPE Source: DTI, Heavy Oil Seminar, 2004 16 Drilling Techniques Source: Petrozuata 17 クウェートの新たな事業参加形態:ETSA z Enhanced Technical Service Agreement(ETSA) – 通常のTSA(技術サービス契約)に比べ、外資の役割向 – – – – – 上を織り込み、(外資から見た)魅力高める。 外資には単なる人件費(派遣技術者)支払いに加え、増 産成果へのスライド等を検討。 Operation Service Agreement(プロジェクトクウェートで導 入計画も頓挫)と違い議会承認不要。 重質油開発(ExxonMobil)に加え、他の案件への適用拡 大も視野。 クウェートはBP、Chevron、Total、AOC等とTSA締結実績 あり、ETSAへのスムーズな移行可能。 今後、ETSAが外資導入プロジェクトの基本契約方式と なる可能性。 18 今後の外資との契約方式(クウェート) Technical Service Agreement (TSA) △ ・BP、Chevron、Total、 AOC等との実績 ・人件費ベース(魅力薄) Operation Service Agreement (OSA) × ・プロジェクト・クウェートで 採用予定も、議会が反対 Enhanced Technical Service Agreement (ETSA) ◎ ・ExxonMobilとの重質油 共同開発で採用 ・外資の役割向上 ・議会承認不要 19 重質油開発:日本企業にもビジネスチャンス? <角和、岩井、石井(レビュー07/9)の提言> z API 10~20度の重質原油開発ビジネスは、これから本格 化する段階。現時点では未だ大きなニッチビジネスであり、 日本企業参画のチャンス大。 z 日本としては、アップグレーディング技術、生産油のマー ケッティング、副生物の処理・利用、環境対策などを組み 合わせた、NOCにとって魅力的なパッケージでの提案(ソ リューションビジネス)が必要であり、上流産業と下流産業 及び関連産業の協働体制が作れるかが鍵 ロワーファース層は広大であり、ExxonMobilの契 約はその一部である可能性大。 他企業の参入余地は十分あるとみられる。 20