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高齢者のふるえ(本態性振戦)をおさえる 肘装着ロボット装具開発
Production & Processing 高齢者のふるえ (本態性振戦)をおさえる 肘装着ロボット装具開発 NO.22R3030 地域イノベーション創出研究開発事業(一般型) 22年度採択 事業期間:2年 開発された製品・技術のスペック 図 1 肘装着装具 図 2 手首装具 研究の背景及び経緯 本態性振戦は、ふるえのせいで食事や字を書くなど、生 活に欠かせないことが満足にできなくなる疾患で、緊張す るとひどくなる。高齢になるにつれて増加し、日本では 400万人以上の患者が存在し、その中の260万人は飲食 動作などの日常生活動作の遂行が難しいと言われている。 ふるえで処方される薬はあるが、副作用や効かないこと もあり、 患者の多くに有効な治療法は無いのが現状である。 ふるえる姿を見られたくないために、日常生活の支障を 我慢して自ら生活範囲を狭めてしまっている患者が多い。 2009年早稲田大学が、ふるえの交った表面筋電位から 随意運動のみを抽出してロボットの制御をする方式を開発 した。この技術を基に、本態性振戦患者の食事を含めた日 常動作を支援する肘装着ロボット装具の研究開発を行っ た。 研究開発の概要と成果 事業化に向けて、現在想定している、今後連携したい分野 ●装具あるいは健康器具を顧客に届ける販売業・サービス業 管理法人名 この研究への お問い合わせ 24 タマティーエルオー株式会社 ◎担当者:山県 通昭 ◎所在地:〒 205-0014 東京都羽村市羽東 1 丁目 14 番 11 号 ◎ TEL:042-570-7240 ◎ FAX:042-570-7241 ◎ E-mail:[email protected] ◎プロジェクト参画研究機関(大学、公設試等):早稲田大学、 社会福祉法人横浜市リハビリテーション事業団 ◎プロジェクト参画研究機関(企業):(株)菊池製作所 ◎主たる研究実施場所:(株)菊池製作所 ものづくりメカトロ研究所 肘装着装具 装具のハードウェアは、実験でふるえの抑制量と肘の 屈曲・伸展のトルクを求め、これを満たす軽量小型のも のを製作した。 アームの屈曲・伸展は、上腕二頭筋付近の皮膚に貼付 した電極から得られる信号(筋電)から推定された肘の 運動に沿った動きをするよう、モータによって制御され る。このモータ動作は、ふるえを除外した、装着者の意 図的な運動のみが反映される。 上記の機能を実現するための信号処理アルゴリズムを 開発した。倫理審査を通過したプロトコルに則り、本態 性振戦患者の筋電を取得し、波形の特徴からふるえの影 響を除去するフィルタを構築した。また、このフィルタ が与える遅延が実用上問題ないことを確認した。 筋電の信号処理アルゴリズムをハードウェアに実装 し、ロボット装具による食事支援の効果を確認した。装 具の拘束でふるえが小さくなり食事の動作がスムーズに なった。筋電信号により、 装具のアームで屈伸ができた。 図 3 書字の結果 25 Production & Processing 2つのタイプの装具 肘装着装具…食事動作を支援 上腕と前腕に添わせたスパイラル形状のフレームに腕 を固定してふるえを抑制する。筋電信号でモータを動か し肘の動きを補助する。モータは、表面筋電位から振戦 信号を除いて随意動作のみ抽出した信号で制御する(図 1)。 手首装具…書字およびマウス操作を支援 手首および親指に添わせたスパイラル形状のフレーム で手首を固定してふるえを抑制する(図2) 。 手首装具 手関節の掌屈・背屈、橈屈・尺屈を拘束するスパイラ ル形状で、5本の指の動きを妨げない構造とした。さら に手関節の位置が固定する台座を付けた。材料は軟質の アルミ材で、手の締付けを調整することができる。 これを装着して効果を確認した。 書字には有効である(図3)。マウス操作は個人差が あるが、マウスを使い慣れている患者には有効である。 製造技術 ふるえを抑える装具で社会参加を支援 分野:製造技術