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バックフラッシュを用いる SPME-GC/MS に よる 2
バックフラッシュを用いる SPME-GC/MS に よる 2-MIB 及びジェオスミンの分析 <要旨> かび臭原因物質の分析に、固相マイクロ抽出(SPME)-GC/MS 及び Agilent 独自の技術を用いたキャピラリ・フロー・テクノロジーを適 用しました。バックフラッシュにより、分析時間の短縮(5.25 分)を行 い、高い生産性(約 57 検体/日)を実現しました(本法は、高速仕様に対 応するため、公定法の SPME 抽出時間を 20 分以上から 10 分に短縮して います) 。 Key Words: 固相マイクロ抽出(SPME)、カビ臭、2-MIB、ジェオスミ ン、GC/MS、キャピラリ・フロー・テクノロジー、バックフラッシュ * * * * * * * 1. はじめに 近年、簡便、高感度な前処理手法として、固相マ イクロ抽出(SPME)法が、様々な分野で用いられて います。高感度が要求されるかび臭原因物質の分析 にも適用されています。一方、キャピラリカラム内 のキャリアガスを逆流させるバックフラッシュは、 不要な高沸点成分を注入口のベントラインから追い 出すことができるので、分析時間の短縮、検出器の 汚染低減、カラムの寿命延長などが可能になります。 本アプリケーションノートでは、かび臭原因物質の 分析に、SPME-GC/MS 及びバックフラッシュを用い、 分析時間の短縮を行い、高い生産性を実現しました。 2. 測定条件 装置:Gerstel MPS2 + Agilent 7890A/5975C TAD (SPME) SPME ファイバー:PDMS/DVB(65µm) 試料:10ml(塩化ナトリウム 3g)/20ml バイアル サロゲート: ジェオスミン-d3(0.05ng) SPME 条件:加熱温度 60℃, 抽出時間 10 分(アジ テーション:ON) 、予備加熱時間 5 分 (GC) 注入口温度: 250℃(スプリットレス 1min) カラム: HP-5ms 30m, 0.25mm, 0.25μm オーブン: 40℃(1min)-10℃/min-185℃(0min) カラム流量: 1.2ml/min(定流量モード) インターフェース温度: 270℃ QuickSwap リストリクタ:0.17m, 0.1mm(1.4ml/min) バックフラッシュ(ポストラン): 4.5min@185℃、注入口圧力 2psi、QuickSwap 圧力 50psi (MS) 溶媒待ち時間:10min イオン化モード: EI, 電子エネルギー: 70eV イオン源温度: 230℃ ゲイン係数:3 測定モード: 選択イオン検出法(SIM) モニターイオン:2-MIB(95, 107, 108) 、ジェオス ミン-d3(115, 114, 128) 、ジェオスミン(112, 111, 125) 3. 結果及び考察 3.1 バックフラッシュ Fig.1 にバックフラッシュの概略図を示しました。 キャピラリカラム出口にキャピラリ・フロー・テク ノロジーのバックフラッシュ可能デバイスを接続し、 そのデバイスと検出器はリストリクタで接続します。 バックフラッシュ可能デバイスは、Fig.1 のように GC の EPC にて圧力を制御することが可能で、デバイ スの圧力を例えば 50psi、注入口圧力を 2psi とする とキャリアガスが逆流し、バックフラッシュを行う ことができます。 Split Vent Trap Column Aux EPC 50 psi Detector S/S Inlet 2 psi Fig.1 バックフラッシュ 可能デバイス バックフラッシュの概略図 水試料中かび臭原因物質の分析では、ジェオスミ ン溶出後もマトリックス由来の不要なピークが検出 されるため、約 10 分のキャピラリカラムの焼き出し が必要になります。そこで、ジェオスミン溶出直後 に、バックフラッシュを行うことで、5.25 分の分析 1 時間の短縮が可能でした。Fig.2 に、バックフラッ シュ有無を比較したクロマトグラムを示しました。 バックフラッシュを用いることで、1 日に約 57 件検 体の分析が可能となります。 ア バ ン ダ ン 40℃(1min)-10℃/min-185℃ -20℃/min-280℃(5min) 測定時間:25.25分 ス T 1 3 0 0 1 2 0 0 1 1 0 0 1 0 0 0 9 0 0 8 0 0 7 0 0 6 0 0 5 0 0 4 0 0 3 0 2 0 1 0 間 バ ン - ダ > ン : k a b i 2 7 . D \ d a t a . m r2=0.9972 1 s 0 0 0 0 時 ア I C 2- MIB 2-MIB レスポンス比 1 1 . 0 0 1 2 . 0 0 1 3 . 0 0 1 4 . 0 0 1 5 . 0 0 1 6 . 0 0 1 7 . 0 0 1 8 . 0 0 1 9 . 0 0 2 0 . 0 0 2 1 . 0 0 2 2 . 0 0 2 3 . 0 0 2 4 . 0 0 0 ス T 1 3 0 0 1 2 0 0 1 1 0 0 1 0 0 0 9 0 0 8 0 0 7 0 0 6 0 0 5 0 0 4 0 0 3 0 0 2 0 0 1 0 0 I C : Geosmin 14.628min k a b i 3 2 . D \ d a t a . m 0 s 40℃(1min)-10℃/min-185℃ 測定時間:15.5分 ポイント: バックフラッシュ:4.5分 5.25分の時間短縮 0.5 1 濃度比 1.5 2 1.5 2 ジェオスミン Geosmin レスポンス比 0 1 時 間 - - 1 . 0 0 1 2 . 0 0 1 3 . 0 0 1 4 . 0 0 1 5 . 0 0 1 6 . 0 0 1 7 . 0 0 1 8 . 0 0 1 9 . 0 0 2 0 . 0 0 2 1 . 0 0 2 2 . 0 0 2 3 . 0 0 2 4 . 0 0 > r2=0.9978 Fig.2 バックフラッシュなし及びバックフラッシ ュありのクロマトグラム 1 3.2 感度、再現性及び直線性 Fig.3 に、標準水試料 1ng/L(ppt)の SIM クロマ トグラムを示しました。分離、感度とも良好な結果 が得られました。 Geosmin-d3, 5ppt ア バ ン ダ ン ス 5 5 0 5 0 0 4 5 0 4 0 0 3 5 0 3 0 0 2 5 0 2 0 0 1 5 0 1 0 0 5 2-MIB 1ppt 0 0 Fig.4 法) 0.5 1 濃度比 2-MIB 及びジェオスミンの検量線(内部標準 m/z 95 Geosmin m/z 115 m/z 112 0 0 1 時 ア 間 バ ン ダ > ン 間 - - . 5 0 1 2 . 0 0 1 2 . 5 0 1 3 . 0 0 . 0 0 1 3 . 5 0 1 4 . 0 0 1 4 . 5 0 ス 5 5 0 5 0 0 4 5 0 4 0 0 3 5 0 3 0 0 2 5 0 2 0 0 1 5 0 1 0 0 5 0 0 時 1 Blank m/z 95 m/z 112 1 1 . 5 0 1 2 . 0 0 1 2 . 5 0 1 3 1 3 . 5 0 1 4 . 0 0 1 4 . 5 0 > Fig.3 標準水試料 1ng/L の SIM クロマトグラム 2-MIB 及びジェオスミン 1ng/L の面積値の繰り返 し再現性(n=6)は、RSD でそれぞれ 5.8、2.0%でし た。検量線 1、2、5、10ng/L の決定係数(r2)は、 2-MIB は 0.9972、ジェオスミンは 0.9978 でした。 Fig.4 に、その検量線を示しました。 4. まとめ SPME-GC/MS 及びバックフラッシュにより、かび臭 原因物質の分析時間を従来に比較して、5.25 分の短 縮を行いました。1 日に約 57 検体の処理が可能で、 高い生産性を実現しました。 【GCMS-201007NK-002】 本資料に記載の情報、説明、製品仕様等は予告なしに 変更することがあります。 アジレント・テクノロジー株式会社 〒192-8510 東京都八王子市高倉町 9-1 www.agilent.com/chem/jp 2