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貯水池浅場上の底泥がカビ臭現象に 与える影響に関する調査研究
調査研究 1-1 貯水池浅場上の底泥がカビ臭現象に 与える影響に関する調査研究 Research on the effects of mud of shallow waters in the reservoir has on the musty odor problem 研究第一部 研究員 小 研究第一部 研究員 木 澤 和 也 村 文 宣 釜房ダムでは、ダム完成後から発生しているカビ臭問題に対して、水質保全設備の導入・改善を進めるこ とにより、その発生抑制に努めている。その結果、昭和 50 年代のような強いカビ臭現象の発生は少なくなっ たものの、 依然としてカビ臭物質が検出されている。釜房ダム貯水池のカビ臭発生現象の要因の一つとして、 ダム貯水池内に広く分布している浅場底泥からの Phormidium tenue を含む藍藻綱若しくは 2-MIB の直接供 給が考えられた。 このことから、本研究では釜房ダム貯水池水塊および貯水池内の浅場底泥において Phormidium tenue 等藍 藻類のバイオマス及び 2-MIB 濃度を調査し、貯水池浅場底泥が貯水池水塊に及ぼす影響を評価した。その 結果、Phormidium tenue 等藍藻類若しくは 2-MIB は、浅場底泥から供給されている可能性があることが示さ れた。 キーワード:カビ臭障害、底泥、2-メチルイソボルネオール、Phormidium tenue It is working to improve the musty odor problem that is generated from the dam completed by the introduction of water conservation facilities in Kamafusa dam. As a result, the occurrence of strong musty odor like just after completion of the dam was decreased, musty odor is still detected. One of the factors of the problem musty odor of Kamafusa dam reservoir, the mud of shallow waters that are widely distributed within the reservoir of Kamafusa dam is supplying 2-MIB or cyanophyta including Phormidium tenue was considered. In this study, we investigated the 2-MIB concentration and biomass of cyanophyta such as Phormidium tenue in the mud of shallow water reservoirs and water reservoirs of Kamafusa dam, we evaluated the effect of reservoir shoal bottom mud on the reservoir water mass. As a result, we have shown that 2-MIB or cyanophyta may have been supplied from the shoal sediment in the reservoir. Key words:musty odor problem, mud of shallow waters,2-MIB, Phormidium tenue 本報で対象としている釜房ダム貯水池(国土交通省 1.はじめに 東北地方整備局所管、宮城県柴田郡川崎町)は、ダ 我が国では、一部のダム貯水池において、カビ臭物 ム完成直後からPhormidium tenueに代表される藍藻綱 質(ジェオスミン、2-メチルイソボルネオール「以下、 ユレモ目の産生する 2-MIBが原因と考えられるカビ臭 2-MIB」)の発生による異臭味現象により、飲用水利用 が発生しており、その対策に曝気循環設備を導入した に多大な被害を及ぼす事象が度々発生している。ダム 結果、2-MIBピーク濃度の低減が観察されている 1)。 貯水池における異臭味現象の原因は、多くの場合カビ しかし、曝気循環施設導入後もPhormidium tenueは 臭を産生する藍藻類の増殖によるものと考えられてい ほぼ 1 年を通じて観察されており、その上Phormidium る。そのため、カビ臭を発生させる藍藻類の増殖を抑 tenueの細胞密度と 2-MIB濃度の変動は一致していな 制することを目的とした各種水質保全対策が実行され い。加えて、Phormidium tenueの細胞内に保持されて ている。これら水質保全対策により、藍藻類の増殖抑 いると考えられる懸濁態 2-MIB(以下、P-2-MIB)が検 制及びカビ臭物質の減少といった一定の効果が認めら 出されていないのにも関わらず、細胞外へと放出され れる事例も数多く報告されている一方で、異臭味現象 たと考えられる溶存態 2-MIB(以下、D-2-MIB)のみが の根本的な解決に至っていない現状にある。 増加する異臭味発生イベントも度々確認されている。 (2)釜房ダムにおけるカビ臭発生の経緯 したがってこれらの現象は、釜房ダム貯水池におけ る 2-MIB濃度の変動は、貯水池内のPhormidium tenue 釜房ダム貯水池では、ダム管理開始翌年の昭和 46 の増殖が関係しているものの、この関係以外の原因が 年から藍藻類Phormidium tenueが産生すると想定され 存在していることを示唆していると言える。この問題 るカビ臭物質(2-MIB)による異臭味現象が発生し、活 に対しては、貯水池系外もしくは貯水池内の水塊以外 性炭処理を要する等、上水道に深刻な問題を及ぼして からの 2-MIBの供給の可能性が考えられる。これらの きた。そのため、水質保全対策として昭和 59 年より うち、既往検討 2)においては系外からの 2-MIBの供給 「間欠式空気揚水筒(6 基)」が設置され、その運用によ り異臭味問題は一旦収束した。 の可能性に着目した調査を行った結果、釜房ダム上流 しかし、平成 9 年 1 月から異臭味現象が再発したた 域からのカビ臭原因藻類および 2-MIBの直接供給が、 貯水池内で発生しているカビ臭現象に影響を及ぼす可 め、平成 16 年に循環能力のより高い「散気式曝気循 能性は極めて低い事が明らかとなった。 環施設」が導入(4 基新設、6 基は間欠式空気揚水筒の 改良)された。 本報では、釜房ダム貯水池における 2-MIB濃度の変 動に影響を与える原因について、貯水池内の水塊以外 これにより、釜房ダム貯水池における 2-MIBのピー からの供給源として釜房ダム貯水池内に広く分布して ク濃度は若干低減したものの、現在も季節を問わず異 いる浅場底泥に着目し、浅場底泥における原因藻類と 臭味現象が発生する状況が継続している。 貯水池におけるカビ臭現象について検証を行った。そ (3)釜房ダムのカビ臭現象に関する既往知見 の結果、貯水池浅場からのカビ臭原因藻類もしくは これまでに蓄積された釜房ダム貯水池におけるカビ 2-MIBの直接供給が影響している可能性があることを 臭現象に関する知見を以下にまとめる。 示した。 ・Phormidium tenueと同定されるユレモ目藍藻類は、 貯水池内水塊中で1年を通じて確認される。 2.釜房ダム貯水池の状況 ・カビ臭の原因となる2-MIBは、1年を通じて不定期 に発生(目立った季節性はない)している。 (1)釜房ダム概要 ・Phormidium tenueが確認されるのと同時期に2-MIB 釜房ダムは、名取川水系碁石川に建設(昭和 45 年竣 6 3 工)された総貯水容量 45.3 × 10 m の多目的ダムであ が確認される場合とされない場合があり、両者の関 る。 係性は明らかではない。 ・水質保全施設を導入した平成16年以降、2-MIB濃度 貯水池には、太郎川、北川及び前川の 3 河川が流入 は低減したものの、根絶はされていない。 しており、それぞれの流末には堆砂対策として貯砂ダ ムが設置されている。また、水質保全施設としてダム ・水質保全施設導入による2-MIB濃度の低減効果は、夏 サイト付近には散気式曝気施設が 10 基、底層嫌気化 季の成層期間中を中心に発現しているようである3)。 対策として深層曝気施設(高濃度酸素水注入型)が 1 基 ・過去の流域調査2)により、釜房ダム上流域(水田) 設置、運用されている。(図-1 参照) のカビ臭原因藻類若しくは2-MIBは、貯水池に流下 する過程で段階的に希釈されることが確認されてお り、上流域からの直接供給が、貯水池で発生するカ ᄥ㇢Ꮉ⾂⍾࠳ࡓ ࠳ࡓႇ ビ臭現象に関して影響を及ぼす可能性は低い。 ⾂᳓ᳰ 以上に示した通り、釜房ダムにおけるカビ臭現象は、 長年に渡り多くの調査・検証がなされてきたが、その ർᎹ⾂⍾࠳ࡓ 発生源やメカニズムは未だに不明な点が多い。この原 因の一つとして、貯水池水塊およびダム上流域以外か らの原因藻類若しくは 2-MIBが供給されている可能性 が考えられる。本研究では、これらの知見を踏まえて、 ダム貯水池内に広く分布している浅場に存在する底泥 ೨Ꮉ⾂⍾࠳ࡓ からの原因藻類若しくは 2-MIBの釜房ダム貯水池への ٨㧦ᢔ᳇ᑼᦑ᳇ᣉ⸳ ٤㧦ᷓጀᦑ᳇ᣉ⸳ 供給過程を検証し、貯水池水塊中の 2-MIB濃度の挙動 に与える影響について検証した。 図-1 釜房ダム貯水池形状及び水質保全施設位置等 分析に加えて藍藻類の同定を実施した。 3.調査・検討方法 表-1 分析項目と分析方法 (1)貯水池浅場調査 ಽᨆ㗄⋡ 1)調査目的 釜房ダム貯水池ダムサイトにおけるPhormidium属と されてきた藻類種と 2-MIB濃度の時系列変動について T-2-MIB は、定期的な調査が実施されているが、両者には明 瞭な関係が認められず、ダム貯水池水塊中における Phormidium属の増殖が 2-MIB濃度の変動に及ぼす影響 を検証することができない。 D-2-MIB この原因として、近年、従来の藍藻類の分類体系で はPhormidium属の中にカビ臭産生能の異なる複数種が 混在していることが報告されている。 そこで、ダムサイト表層のカビ臭原因藻類と 2-MIB ᬀ‛ 㩖㩩㩡㩧㩂㩎㩧 の動態を把握することを目的に、ダムサイト表層から 採取した試水中の藍藻類についてKomárekらの分類体 系に従い詳細な分類調査を実施した ಽᨆᣇᴺ ណ᳓ߒߚ⹜ᢱߪ಄ᥧ⁁ᘒߢಽᨆቶߦ៝ߒ ߚޕಽᨆߪ⹜ᢱ100mLߦNaCl 10gࠍട߃30ಽ 㑆㕒⟎ߒߚᓟޔPT-GC-MSߢಽᨆߒߚޕ 㧔 ޟᴡᎹ᳓⾰⹜㛎ᣇᴺ㧔᩺㧕 ᬀ‛㩖㩩㩡㩧㩂㩎㩧ߦ ߹ࠇࠆ2-MIB᷹ቯߦ㑐ߔࠆ೨ಣℂᣇᴺᬌ ⸛ࠍޠෳ⠨ߣߒߚޕ 㧕 ណ᳓ߒߚ⹜ᢱߪ಄ᥧ⁁ᘒߢಽᨆቶߦ៝ߒ ߚޕಽᨆߪ⹜ᢱ100mLߦߟߡᴡᎹ᳓⾰⹜㛎 ᣇᴺࠞࡆ⥇‛⾰ᮡḰᴺߦᓥࡄࠫࠕࡦ࠼ ࠻࠶ࡊ-ࠟࠬࠢࡠࡑ࠻ࠣࡈࠖ⾰㊂ಽᨆ⸘ 㧔એਅޔPT-GC-MS㧕ߦࠃࠅቯ㊂ߒߚޕ ណ᳓ߒߚ⹜ᢱߪࠣ࡞࠲࡞ࠕ࡞࠺ࡅ࠼ߢ࿕ቯ ߒ㧔ᦨ⚳Ớᐲ2%㧕 ޔ಄ᥧ᧦ઙߢಽᨆቶߦ៝ ߒߚޕᬀ‛ࡊࡦࠢ࠻ࡦߩಽ㘃ߣ⸘ᢙߪࠞޔ ࡆ⥇ේ࿃⮺㘃ࠍ⮣⮺㘃ߦߟߡߩߺታ ᣉߒޔ⒳ߩหቯߪKomárek and Anagnostidis ߇ឭ໒ߔࠆಽ㘃♽ߦᓥߞߚޕ 2)調査時期および調査方法 ダムサイトにおいて、平成 24 年 3 月~平成 25 年 3 月間に月 1 回の頻度で表層水を採取し、2-MIB濃度 (T-2-MIB、D-2-MIB、P-2-MIB〔P-2-MIB=T-2-MIB- D-2-MIB〕)の分析に加えて藍藻類の同定を実施した。 なお、各調査で採取したサンプル中の 2-MIBおよび 藍藻類は、表-1 の方法に従い定量分析を行った。 (2)貯水池浅場調査 1)調査目的 釜房ダム浅場底泥上におけるカビ臭原因藻類の繁殖 とそこからの 2-MIBの供給の可能性が考えられる。そ こで、釜房ダム貯水池におけるカビ臭現象に及ぼす浅 場域の影響を評価するため、貯水池全体の浅場域を網 羅するように設置した調査地点において採水・採泥調 図-2 調査地点一覧 査を行った。 2)調査時期および調査方法 平成 24 年 7 ~ 11 月に計 7 回、貯水池内で浅場が発 達している 4 側線(図-2 参照)に対して表層水の採取 を行うとともに、貯水池内の面積変化率(m2/10cm) が高いEL141 ~ 143m付近の5地点の底泥を採取した。 底泥はダイバーによる潜水作業により透明アクリル パイプを用いて柱状底泥試料(図-3 参照)を採取し、そ の表層 1cmを分析試料とした。 採取した表層水のサンプルについては、全時地点の 採水サンプルの 2MIB濃度(T-2-MIB、D-2-MIB)の分析 を 行 い、 底 泥 の み 2-MIB濃 度(T-2-MIB、D-2-MIB)の 図-3 浅場底泥のコア抜き状況 ・また、9月上旬をピークとしてD-2-MIBが7月下旬 4.調査結果 ~11月まで微量ながらも継続して検出された。 ・しかし、この間のカビ臭原因藻類の消長をみる (1)貯水池水塊調査 と、2-MIBの原因生物と考えられるPseudanabaena 1)調査結果 過去の報告では、釜房ダムでは 2-MIB濃度とその原 catenataとPseudanabaena limneticaは3~7月下旬の間 因藻類とされるPhormidium属の細胞密度の関係が一致 でのみ観察され、D-2-MIBのみが検出された7月下 しないことが多く、その中には 2-MIBを産生するタイ 旬以降には観察されていない。 プとしないタイプが混在するものと考えられてきた。 これらについて、4 ~ 7 月下旬までの 2-MIB濃度の しかし、必ずしも発臭するとされるタイプの細胞密度 時系列変動は、貯水池水塊中におけるカビ臭原因藻類 と 2-MIB濃度に明確な関係は認められていない。 そ の た め、 本 調 査 で は 新 し い 藍 藻 類 の 分 類 体 系 (Pseudanabaena catenata と Pseudanabaena limnetica) の (Komárek and Anagnostidis)に基づき、発臭タイプ(赤色) 増殖によって説明できるが、7 月下旬から 9 月上旬に と非発臭タイプ(橙黄色)に含まれる藻類の同定を行っ かけてのD-2-MIBの上昇は、水塊中にP-2-MIBが存在 た。その結果、発臭タイプはPseudanabaena catenataと していないことから、カビ臭原因藻類の増殖ではなく、 Pseudanabaena limnetica、非発臭タイプはGeitlerinema 貯水池水塊以外からの供給が示唆される。ただし、既 nematodesとLeptolyngbya属に該当した。 往報告のとおり、貯水池上流域からのカビ臭原因藻類 及び 2-MIBの流入が貯水池水塊中の 2-MIB濃度に影響 を及ぼす可能性は低い。 2)水塊中におけるカビ臭原因藻類の増殖の検証 したがって、7 月下旬から 9 月上旬にかけてのD-2- ダムサイト表層の 2-MIBおよびカビ臭原因藻類の時 系列変化(図-4 参照)から以下の特徴が示された。 MIBの上昇は、残された発生源である浅場底泥からの ・貯水池水塊調査におけるダムサイト表層のT-2-MIB濃 D-2-MIBの供給に起因する可能性が高い。そこで、次 度とP-2-MIB濃度は、4~6月にかけて増加傾向を示し 節で浅場底泥からの 2-MIBの供給の可能性について、 た後、6~7月下旬にかけて次第に減少した。 貯水池浅場発生源調査において検証を行った。 150 流入量 200 放流量 貯水位 140 100 135 50 130 0 125 2-MIB濃度(ng/L) 2月 3月 4月 5月 6月 7月 15 8月 9月 10月 ダムサイト(表) 取水塔付近(表) 10 11月 12月 T-2-MIB T-2-MIB 1月 2月 D-2-MIB D-2-MIB 3月 P-2-MIB P-2-MIB 5 0 フォルミディウム (糸状体100μm/mL) 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 1月 2月 3月 1.E+04 1.E+03 フォルミ総数(表層) 1.E+02 1.E+01 1.E+00 2月 細胞密度(cells/mL) 145 150 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 1.E+04 12月 1月 2月 3月 Pseudanabaena catenata Pseudanabaena limnetica Geitlerinema nematodes Leptolyngbya (sub. Leptolyngbya) 1.E+03 1.E+02 1.E+01 1.E+00 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 図-4 貯水池水塊調査結果 11月 12月 1月 2月 3月 標高(EL.m) 3 流量(m /s) 250 一方、貯水位が再び安定した 10 月中旬以降に実施 (2)貯水池浅場調査 した浅場調査では、採泥標高EL.143m以浅に位置す 1)底泥中 2-MIB濃度の経時変化 貯水位が安定していた 7 月上旬~中旬に実施した浅 る底泥から高いP-2-MIB濃度が度々検出されたが、水 場調査では底泥中のP-2-MIB濃度の増加傾向が確認さ 塊中の 2-MIB濃度は減少傾向を示した。なお、測線 れた一方で、貯水位が大きく低下した 8 月下旬にはそ 直上水及び湖水の 2-MIB濃度が上昇傾向を示してい の濃度は大きく低下していた。 ないことから、10 月中旬以降に蓄積された底泥中の この結果は、7 月上旬~中旬に蓄積された底泥中 2-MIBは現状ではまだ水中へと供給されていないもの 2-MIBは貯水位の低下に伴い水中へと供給され、ダム と想定され、その大部分は未だに底泥上に保持されて サイトにおけるD-2-MIB濃度の増加の一因となってい いる可能性がある。 た可能性が考えられる。 0.500 0.500 0.400 2 - M IB Ớ ᐲ 䇭 (n g / c m 2 ) 2 - M IB Ớ ᐲ 䇭 (n g / c m 2 ) 2012ᐕ96-7ᣣ (El. 141.85-141.84m) P-2-MIB 2012ᐕ74-5ᣣ (El. 144.49-143.96m) D-2-MIB 0.300 0.200 0.100 1 2 3 4 5 1 2 1 3 4 5 1 2 2 3 4 5 1 2 3 3 4 0.300 0.200 0.100 1 5 2 3 4 5 1 2 1 4 ✢ 3 4 1 2 3 4 5 1 2 3 3 D-2-MIB 0.300 0.200 0.100 4 5 4 ✢ 2012ᐕ109-10ᣣ (El. 144.1-144.06m) P-2-MIB 0.400 5 2 0.500 2012ᐕ717-18ᣣ(El. 144.47-144.46m) 2 - M IB Ớ ᐲ 䇭 (n g / c m 2 ) 0.500 2 - M IB Ớ ᐲ 䇭 (n g / c m 2 ) D-2-MIB 0.000 0.000 P-2-MIB 0.400 D-2-MIB 0.300 0.200 0.100 0.000 0.000 1 2 3 4 5 1 2 1 3 4 5 1 2 2 3 4 5 1 2 3 3 4 1 5 2 3 4 5 1 2 1 4 ✢ 0.500 3 4 1 2 3 4 5 1 2 3 3 2 - M IB Ớ ᐲ 䇭 (n g / c m 2 ) D-2-MIB 0.300 0.200 0.100 4 5 4 ✢ 2012ᐕ1029-30ᣣ (El. 143.66-143.18m) P-2-MIB 0.400 5 2 0.500 2012ᐕ824ᣣ (El. 142.19m) P-2-MIB 0.400 D-2-MIB 0.300 0.200 0.100 0.000 0.000 1 2 3 1 4 5 1 2 3 4 5 1 2 2 3 3 4 5 1 2 3 4 1 5 2 3 4 5 1 2 1 4 ✢ 3 4 5 1 2 2 3 4 5 1 2 3 3 4 5 4 ✢ 0.500 ᨒౝ䈱ὐ䈲ᄢ᳇ਛ䈮㔺䈚䈩䈇䈢⺞ᩏὐ䉕␜䈜䇯 2012ᐕ1113-14ᣣ (El. 143.97-144.11m) 2 - M IB Ớ ᐲ 䇭 (n g / c m 2 ) 2 - M IB Ớ ᐲ 䇭 (n g / c m 2 ) P-2-MIB 0.400 P-2-MIB 0.400 D-2-MIB 0.300 0.200 0.100 0.000 1 2 3 4 1 5 1 2 3 4 5 1 2 3 3 ✢ 図-5 貯水池浅場発生源詳細調査結果 2 4 5 1 2 3 4 4 5 2)底泥中のカビ臭原因藻類の生育状況 1.E+05 地点① P se u d a n a b a e n a c a te n a ta 細 胞 密 度 ( c e lls / c m 2 ) 本調査で採取したサンプルから 75 検体を抽出し、 浅場底泥中のカビ臭原因藻類の検鏡・計数を行った。 地点③ 1.E+04 サンプル抽出にあたっては、7 月~ 11 月の調査結果 で浅場底泥中 2-MIB濃度のピーク値及び変動の大き かった測線 1 及び測線 2 を中心に選定した。以下、そ 側線 地点 1 1 2 3 4 5 地点② 地点④ 地点⑤ 採泥標高 (El. m) 143.5 143.0 142.0 136.0 135.0 1.E+03 の結果を測線毎に纏めた結果を示す。 1.E+02 [測線 1] 7月4-5日 7月17-18日 8月24日 9月6-7日 調査日時 測線1から採取した浅場底泥試料中からカビ臭 10月9-10日 10月29-30日 11月13-14日 10月29-30日 11月13-14日 1.E+05 地点① 2 P h o rm id iu m te rg e stin u m 細 胞 密 度 ( c e lls / c m ) 原因藻類として、2-MIBの産生能が報告されている Pseudanabaena catenataとPhormidium tergestinumの 2 種 が観察された。 地点② 地点③ 1.E+04 Pseudanabaena catenataは 7 月から 10 月までの調査 で確認され、7 月 17 ~ 18 日の調査では地点①~⑤、 El.143.5mから 135.0mまでの全ての浅場底泥から確 1.E+03 認された。 Phormidium tergestinumは 10 月 29 ~ 30 日 と 11 月 地点④ 地点⑤ この期間にPhormidium tergestinumは 観察されず 1.E+02 13 ~ 14 日の調査で確認され、El.143.5mと 143.0m 7月4-5日 7月17-18日 8月24日 9月6-7日 10月9-10日 調査日時 でのみ観察され、それ以深の浅場底泥からは観察す 図-6 貯水池浅場発生源詳細調査におけるカビ臭原因藻類 の時系列変化(測線 1) ることができなかった。また、Phormidium tergestinum が観察された浅場底泥には、陸化した際に生育した 草本植物遺骸があった。このことから、Phormidium 1.E+05 2 P seu da n a b a en a ca ten a ta 細 胞 密 度 ( c e lls/ c m ) tergestinumは草本植物遺骸の根幹に絡まることで、波 や風による撹乱を受ける浅瀬でも剥離・流出せず繁茂 できた可能性がある。 [測線 2] 測線2から採取した浅場底泥試料中からカビ臭 原因藻類として、2-MIBの産生能が報告されている Pseudanabaena catenataとPhormidium tergestinumの 2 種 側線 地点 2 ① ② ③ ④ ⑤ 1.E+04 採泥標高 (El. m) 143.5 142.5 142.5 139.0 139.0 地点① 地点② 地点③ 地点④ 地点⑤ 1.E+03 1.E+02 7月4-5日 7月17-18日 8月24日 9月6-7日 10月9-10日 10月29-30日 11月13-14日 10月9-10日 10月29-30日 11月13-14日 調査日時 が観察された。 1.E+05 2 P h o rm id iu m terg estin u m 細 胞 密 度 ( c e lls/ c m ) Pseudanabaena catenataは 7 月 17 ~ 18 日と 10 月 29 ~ 30 日の 2 回の調査で確認され、7 月 17 ~ 18 日の 調査ではEl.143.5mから 142.0mまでの底泥から確認 され、それ以深のEl.139.0mに位置する地点④と⑤か らは観察されなかった。 Phormidium tergestinumは 9 月 6 ~ 7 日 か ら 11 月 13 ~ 14 日までの調査で確認され、El.143.5mと 142.5m 地点① 地点② 地点③ 1.E+04 地点④ 地点⑤ 1.E+03 この期間にPhormidium tergestinum は観察されず 1.E+02 でのみ観察され、それ以深の浅場底泥からは観察す 7月4-5日 7月17-18日 8月24日 9月6-7日 調査日時 ることができなかった。また、Phormidium tergestinum 図-7 貯水池浅場発生源詳細調査におけるカビ臭原因藻類 の時系列変化(測線 2) が観察された浅場底泥には、陸化した際に生育した 草本植物遺骸があった。このことから、Phormidium tergestinumは草本植物遺骸の根幹に絡まることで、波 や風による撹乱を受ける浅瀬でも剥離・流出せず繁茂 できた可能性がある。 カビ臭物質および原因藻類の流入がダム貯水池のカビ臭現 象に及ぼす影響,ダム工学,Vol.23 No.1,39-49,2013 3)木村文宣,田中靖,本間隆満,松川正彦,前田充典:曝気 循環施設によるダム貯水池カビ臭対策の効果評価,第 39 回 土木学会関東支部技術研究発表会,Ⅶ-46,2012 5.考察 今回の報告では、ダム貯水池水塊におけるカビ臭原 因藻類の増殖、 及び浅場からのカビ臭原因藻類の供給、 若しくは 2-MIBの溶出の可能性について評価した。 [貯水池水塊調査] 貯水池水塊調査では、貯水池水塊中にカビ臭原因藍 藻類であるPseudanabaena limnetica及びPseudanabaena catenataの存在が確認された。したがって、釜房ダム におけるカビ臭現象は、これらのカビ臭原因藻類の水 中での増殖に伴う 2-MIB濃度の上昇(水中生産型)が 寄与しているものと推察される。 しかし、水中にカビ臭原因藻類が観察されない期間 であってもD-2-MIBが増加しており、水中生産型以外 の 2-MIBの供給源の存在が示唆された。また、湖水中 のカビ臭原因藻類の細胞密度は低く維持されていたこ とから、現在の水質保全施設の運用によって水中での カビ臭原因藻類の増殖は十分に抑制されているものと 考えられた。 [貯水池浅場調査] 貯水池浅場では底泥上からカビ臭原因藻類である Pseudanabaena catenataとPhormidium tergestinumが確認 された。Pseudanabaena catenataは比較的広い標高範 囲から確認されたのに対して、Phormidium tergestinum は沿岸付近の浅瀬からのみ観察された。 これらの浅瀬に繁茂したカビ臭原因藻類の細胞密度 の変動は貯水位と密接な関係が認められたことから、 貯水位の変化が浅場におけるカビ臭原因藻類の増殖と 剥離、流出状況に影響を及ぼしている可能性が考えら れる。 6.まとめ 以上の研究成果より、釜房ダムにおけるカビ臭現 象には、貯水池浅場からのカビ臭原因藻類もしくは 2-MIBの直接供給が影響している可能性があることが 示された。しかしながら、これらは限られた調査結果 より得られた可能性の一つであり、今後とも継続して 調査を実施し、実証を得る必要がある。 参考文献 1)国土交通省東北地方整備局:平成 20 年度ダム等管理フォ ローアップ委員会 釜房ダム定期報告書,2008 2)木村文宣,本間隆満,前田充典,松川正彦:上流域からの