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4−5 政治学研究科

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4−5 政治学研究科
4−5
政治学研究科
【到達目標】
政治学研究科は,法学部政治学科に基礎を置く研究科で,修士課程と博士後期課程を有する政
治学専攻を設置し,国内的な問題から国際的な開発などの多様で具体的な事象を対象に,それら
を単に論評するだけでなく,その発生原因を探し,拡大のメカニズムと構造を明らかにし,さら
にはそれらを解決するための政策を教育および研究指導するものである。このような目標を実現
するため,修士課程においては,研究者養成を行う昼間型のカリキュラムに加え,高度職業人の
養成を目指す夜間型のカリキュラムを開設しており,それぞれのコースに相応しい充実が目標と
なる。後者は政策研究プログラムと称し,政治学・行政学・国際政治学を軸として,理論と実践
の両面にあたって活躍している専任教授陣に加えて,関係各分野の専門家を招いて幅広い領域の
政策とその管理に関する教育・研究の実現をめざしている。
(1)
教育課程等
(大学院研究科の教育課程)
a.現状の説明
本研究科は 1950 年代より研究者養成を担ってきたが,これは学校教育法第 65 条,大学院設置
基準第 3 条第 1 項,第 4 条 1 項にうたう,「学術の理論及び応用を教授研究し,その深奥をきわ
め,または高度の専門性が求められる職業を担うための深い学識及び卓越した能力を培い文化の
進展に寄与すること」に合致したものである。しかも「高度な専門性を要する職業等に必要な高
度の能力を養う」ことも視野に入れ,たんに狭義のアカデミズムにとどまることなく,実際的な
面でも行政学研究者を中心に,社会学,政策科学との相互関係を意識,1990 年代からは「都市
政策研究セミナー」を立ち上げた。これを基礎に,1998 年には先駆的な夜間コース「政策研究
プログラム」を立ち上げ,2000 年にはここから博士後期課程に進学する者も現れた。このこと
は,自立した研究者養成としての博士後期課程の課題だけでなく,高度に専門的な業務を遂行す
る専門能力を養うという,博士後期課程の課題をも視座に入れたものであった。こうしてこの課
程からの修了生も 2005 年段階で 154 名を数え,このうち博士後期課程進学者も 32 名となった。
b.点検・評価
もっとも近年,法政大学をモデルにした夜間コースや職業人コースが,法政大学大学院の他研
究科だけでなく,旧国立を含めた大学院でも類似の課程が作られた。このため夜間院生の確保に
苦労するようになっていることも指摘できる。にもかかわらず,卒業生が広く官庁,自治体,大
学等での活躍していることは本研究科の教育研究活動の目的合理性を示している。
c.将来の改善・改革に向けての方策
法政大学全体としての公共政策系大学院,政策研究プログラムの立ち上げへの模索が続いてい
る。法政独自の少人数教育や論文指導での,全教員からなる集団的指導方式など,一層の定着が
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求められている。
(学部と大学院の関係)
a. 現状の説明
本大学院は,元来学部に基礎をおく大学院という位置づけで出発している。このため大学院
人事や,研究組織は学部との有機的な連携を持って作られている。一定の単位互換もはかり,
また学部生の大学院への進学を容易にしている。留学生などには,学部授業を受講することも
勧めている。また比較的少人数であることもあり,教授陣との緊密な指導関係が想定されてい
る。総じて政治学科,国際政治学科のカリキュラムは学部と大学院との有機的な連携の上に成
り立っている。
b. 点検・評価
c. 将来の改善・改革に向けての方策
2005 年度から学部レベルで国際政治学科が作られ,卒業生が進学を検討する 2008 年度以降は
学部からの 5 年生大学院をつくる構想なども,現在検討中である。現在進められている学部レベ
ルでのテクストづくりも,大学院修士レベル,留学生をも対象にしていることは強調したい。
(修士課程と博士後期課程の関係等)
a.現状の説明
政治学専攻では,高度な専門的指導を教授陣が提供している。収容定員に対する在籍比率は
概ね 7 割程度となっている。少人数教育を目指してきたこともあり,大学院では個人や少数で
の授業・演習などマンツーマンの教育が確保されている。修士修了生の比較的多数が博士後期
課程へ進学するということもあり,両者の単位や指導関係はスムースである。留学については,
博士後期課程で留学する例が,特に国際関係などを中心にみられ,必須単位数を減らすなどの
工夫がなされている。また,単位互換制度は積極的に他研究科に開放,主要大学との互換性も
取り入れている。
b.点検・評価
院生(博士後期課程で 12 名)は,教員数(20 名)と比して,かなり贅沢な比率が確保されて
いる。個人教授的な指導教授生と集団的なスクールでの組み合わせがはかられていることももう
一つの特徴である。博士課程から本大学院に入ってくる学生については,一年目に全般的な特殊
演習などでのスクーリングが施され,実際,2005 年度の博士論文提出者 6 名中 2 名は,他大学
大学院から 3 年で博士号学位を取得できた。うち一名は外国人留学生であることも付記しておき
たい。
(社会人学生,外国人留学生等への教育上の配慮)
a.現状の説明
社会人入学の多くについては,論文指導などに特段の問題はない。英語試験がないため,英
文を使っての教育は,個別に対応している。また近年アジア諸国を中心に留学生がみられ,そ
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の比率は修士 47 人中 7 名で,約 15 パーセント,博士後期課程在学 35 名中 12 名で,31 パーセ
ントに当たる。このため,アジア関係専門の教員を優先的に採用し,現在中国関係は 2005 年で
2 名であるが,2006 年は 3 名,韓国関係教員も 1 名から,2006 年には 2 名となる予定である。
また研究科長を中心にオリエンテーションを 1 年次前半に組織,日本語の習得や論文指導を,
OB などを招いて行っている。日本語教育や論文指導は,年間 2 回の修士論文・博士論文中間発
表会を義務づけ,定期的に進捗・学習状況を点検している。また漢字圏の留学生に英語教育を
独自におこなうべく,個別指導のカリキュラムがくまれている。
b. 点検・評価 c.将来の改善・改革に向けての方策
しかし論文指導などで日本語の未熟さが目立つ院生も少なくなく,教員の個別対応には限界が
ある。将来的には,研修生などをふくめての留学生向け日本語講習や英語コースが全学的に必要
とされよう。
(生涯学習への対応)
a.現状の説明
教員の個別のプログラム内で対応している。社会人の場合,個別のケースをいかに体系化する
かを,それぞれ指導している。夜間コース「政策研究プログラム」は,1998 年から組織された
が,入試などで語学の負担を求めないなどの社会人向け工夫がなされた。
b.点検・評価 c. 改善・改革への方策
それぞれ異なった入学経路・社会的経験を持った社会人に対しては,研究科長のもとに研究科
全体の教育プログラムを土曜日に設定,経験の共有化を進めている。また修士・博士の中間発表
会などを昼夜間ともに行って報告を義務づけているが,とくに社会人と研究者コースとの垣根を
さらに低くする必要がある。
(研究指導等)
a.現状の説明
それぞれの教員は自覚的に研究指導を行い,高い水準の研究を,教育につなげている。研究科
長が中心になる特殊演習で,大学院教育全般の入門指導,論文作成など大学院での研究教育全般
の入門コースを展開,全員履修を図っている。各教員はそれぞれに指導責任を明確にしているが,
なお,修士論文や博士論文の中間発表会など,全員が参加し,指導外学生に対しても教育を行う
ことを義務づけている。
b.点検・評価
政治学研究科のスタッフの活動は,学問上も,社会的にも,そして学内での学生の評価も高い
ものがある。個別指導と,定期的に全員があたる論文発表会などでの集団指導の組み合わせをは
かっている。
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c.将来の改善・改革に向けての方策
大学院は制度的に就職を斡旋することは行っていない。けれども博士号学位取得者には,学部
授業を 3 年程度もたせることを自覚的に行い,このことで教育機関などへの就職に有利な環境を
作っている。
(2)教育方法等
(教育効果の測定・成績評価法等)
a. 現状の説明
履修指導は,入学時に事務職員や研究科長が入門的な指導を行うほか,各指導教授が行ってい
る。また政治学専攻の院生組織が昼間部と夜間部に組織され,これを通じた指導もなされている。
研究指導についても,教授陣の豊富さからマンツーマンの指導が確保されている。また修士論文,
博士論文中間発表会などを定期的に組織し,論文作成など学生の進捗状況を定期的に統制してい
る。このことで指導効果についてのフィードバックを点検している。組織的には,教授法に関す
る種々の研修会の通知を行い,これへの参加を呼びかけている。シラバスなども FD 等の折りに
意見を求めるようにしている。
b. 点検・評価
成績評価は,あらかじめシラバス等で評価基準を提示,これに沿って測定することが普通に
なっている。FD も実施されている。もっとも少数中心の懇切な大学院教育という特徴からして,
学部レベルでの機械的な FD は採用しにくい。したがって 10 名以下のゼミでは FD は任意とし
ている。シラバスも適切に年度始めに提供される。もっとも少人数中心の大学院教育という特
質からして,個人的レベルでの接触が重視されている。それでも,コースワーク型の中規模教
育も増えており,これへの対応が課題となっている。
c. 将来の改善・改革に向けての方策
また政治学では,学部重視のため,大学院の授業は隔年開講の例が多い。このため,学生によ
ってはミスマッチをおこして特定科目を履修できないといった弊害も見られ改善が必要である。
留学生では,特に他大学の修士課程から法政の博士後期課程に入る院生には,あまり個別指導
を受けないまま論文提出を行う例もあり,この指導は工夫が必要である。
(3)国内外における教育・研究交流
(国際化への対応等)
a. 現状の説明
政治学研究科の 2 本柱の一つである,アジア重視の観点から,研究や教員組織でもアジア・シ
フトのスタンスを重視している。留学目的の奨学金もあって,年数人の日本人学生が海外留学を
行っている。
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b. 点検・評価
政治学研究科の学術水準は,日本 3 大政治学の拠点という評価を受け,国際的にも高い評価を
えている。海外からの留学生の比率は,学内でも屈指であり,また修了生も中国をはじめ,韓国,
インドネシア,米国,サウジアラビアなどに広がっている。修了生との交流も法政大学での研究
会やセミナーなどへの参加を呼びかけたりと,日常的に行われている。
c. 将来の改善・改革に向けての方策
外国人研究者が,法政の国際交流基金や,文部科学省留学生,あるいは国際交流基金を通じて
政治学専攻に留学する例が近年増えているが,まだ法人レベルでは,研究室やパソコン貸与など
の組織的試みが十分でない。留学生対策は国際交流センターに任せる例もあって,院生やスタッ
フとの有機的交流を強めたいと考えている。
(4)
学位授与・課程修了の認定
(学位授与等)
a. 現状の説明
修士,博士ともに,新しい大学院教育の方向を考え,水準に達している学生には積極的に修士,
博士号をとることを奨励している。この結果 2005 年度では空前の 6 名の博士号学位請求論文が
提出されたほか,数名が審査中である。もっとも留学生や個別のケースで,修士課程に 3 年かか
る例や,また博士号学位に対して厳密に考える教員もあったりして,博士の論文をあまり積極的
に書かせない例もある。また留学生向けの博士論文の基準をどこにおくかは常に議論の生じてい
る点である。容易に博士号を出す欧米大学院との関係で,学位号を求める留学生の願望にも配慮
せざるをえない。また透明性を高めるため,学位審査について,本学以外の教員を招く例が増え
ている。法政大学内の他学部,また客員教授をお願いした他大学の教員などによる審査例がある。
また,標準修業年限未満の学生が論文提出し,学位を得ることも検討中であったが,2005 年に
は一年で単位を取得し,論文執筆した社会人 2 名が修士号学位を授与される見通しとなっている。
これらは他の学生にも刺激となっている。
b. 点検・評価
c. 将来の改善・改革に向けての方策
既に触れたことであるが,留学生の日本語の水準はまちまちであって,往々にして博士論文提
出期にこの点が問題化し,再提出などで学位認定が遅れることがある。この数年の政治学関連博
士号取得者は,2001 年で 2 名(1),2002 年 2 名(1),2003 年 2 名(0),2004 年 4 名(3)で
あり,このうち()内は留学生数である。つまり半数は外国からの留学生である。この博士号学
位を,最近は英語で書かれたものに授与した例も数件あり,こうして国際化の課題への対応を考
慮している。留学生の語学の品質管理も兼ねて中間発表会なども開催されているが,特に博士後
期課程では学生のレベルは多様であり,法人サイドからの留学生対策として,全学的な留学生へ
の日本語教育が望まれる。
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