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スポーツクラブにおける認知機能の 低下予防のための運動サービス提供

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スポーツクラブにおける認知機能の 低下予防のための運動サービス提供
平成 26 年度健康寿命延伸産業創出推進事業
スポーツクラブにおける認知機能の
低下予防のための運動サービス提供事業
調査報告書
認知機能の低下への早期介入推進コンソーシアム
平成 27 年 2 月
1
<目
次>
【報告書概要】
0.委託事業概要 ............................................................ 4
0.1
事業概要 ............................................................ 4
0.2 事業の成果 .......................................................... 7
0.3 構築基盤の検証結果 ................................................. 11
0.4 今後の事業展開 ..................................................... 13
2
【報告書概要】
0.1 事業概要
0.1.1 事業の背景
認知症が発症する前には、その前兆として、「通常の老化による物忘れとは明らかに異な
るような物忘れがある」などといった、正常な老化とは明らかに区別でき、しかも、本人
や周りの人が認識できる程度の認知障害が現れる。このような、日常生活をおくるうえで
支障をきたす程度ではない認知障害を「軽度認知障害(Mild Cognitive Impairment:MCI)」
という。
軽度認知障害になると、5 年後には約半分の方が認知症を発症すると言われている。 一
方で、軽度認知障害の段階で早期に発見し、適切な対処を行うことによって、認知症の発
症を防いだり、遅らせたりすることが可能なことがわかってきた。
軽度認知障害の段階での介入効果として、特に運動の実施効果については各種のエビデン
スが報告されており、有効性と必要性が注目されている。運動サービスの提供により、認
知症の発生抑制と公的保険外の予防サービスを強化し、産業発展を図ることが求められて
いる。
0.1.2 事業の目的
認知機能の低下の状態から悪化させない、さらには、認知機能の低下の状態から健常レベ
ルに改善させるサービスの開発と普及は社会的な課題である。このような背景をうけて、
認知機能の低下の予防・改善を目的とした運動サービスの提供を株式会社コナミスポーツ
&ライフ(以下、
「コナミ」
)では検討している。民間フィットネス事業者において、認知
機能の低下予防教室を提供する際のスキームを確立することで、民間フィットネス事業者
がサービス提供を実施する事業環境を整備することを本事業の目的として取組んだ。
現在、認知機能改善対策サービス実施に向けての事業環境は十分に整備されているとは言
えず、グレーゾーンが存在すると認識されたため、本事業を通じてグレーゾーン解消に向
けた調査ならびに実証を行い、
当社ならびに今後参入する事業者が安心して事業展開でき
る基盤整備を行うことが本事業の目的であった。
0.1.3 実施内容
(1)事業の概要
本事業にて、概ね 70 歳以上で、認知機能の低下の方とその予防を希望する方を対象に、認
知機能の改善を目的とする運動教室(スクール型)をスポーツクラブにて開催し、認知機
能の低下予防チェックにより、認知機能の低下疑いのある方へ通院等を勧奨するための「認
知機能の低下チェック手順書」と「認知機能の低下対策連携ガイドライン」を作成し、今
後の事業創出につなげることを目指して取組んだ。
3
図表 0-1 事業連携フロー
図表 0-2 検証したグレーゾーン想定範囲
(2)作業項目及び実施方法
本調査事業において実施した作業項目とその実施方法を以下に示す。
●作業項目1)スポーツクラブでの認知機能チェック実施とグレーゾーン領域の探索
コナミスポーツクラブでの運動実施者 60 名に対して認知機能の低下チェックを実施し、
手順書の作成と検証を行った(実施期間:2014 年 12 月~2015 年 1 月)
。
●作業項目2)連携フローづくり(医療機関とコナミスポーツクラブ間連携)
認知機能の低下対策に積極的な医療機関と協議し、認知機能の低下ケア体制をとりまと
めた。連携にあたり必要となる連携フォーマットや基準類を作成し、認知機能の低下対
策連携ガイドラインを作成した。 取組期間:2014 年 10 月~2014 年 12 月
4
●作業項目3)関係先調査(行政、医療機関等)
聞取り調査を行い、
調査報告書をまとめるとともに、グレーゾーン解消申請を検討した。
①医療機関・行政等に対するヒアリング
民間事業者との連携への期待や、連携する上での課題、グレーゾーンに係る仮説の妥当性
などをヒアリング調査した。ヒアリング調査項目は全 20 問(60 分)程度とし、外注して
実施した。
聞取り項目
民間との連携への期待
民間と連携する上での課題
グレーゾーンに係る仮説の妥当性検証 など
ヒアリングは、訪問しインタビューする形式にて行った。訪問団体については、認知機能
の低下チェックへの理解の深い、10 団体を選定し実施した。ヒアリング先の構成は、医
療機関9・行政1団体とした。ヒアリングの中では、医師法と明確に区別して民間事業者
が認知機能チェックを実施できるか、等に重きを置いてヒアリングした。
②すでに認知機能の低下チェックサービスを展開している民間事業者へヒアリング
民間事業者でチェックを実施することの安全性や実施形態等をヒアリングにて整理する
とともに、グレーゾーンに関する認識、解消後のサービス拡充への期待等について調査し
た。
●作業項目4)消費者意識調査
認知機能の低下チェックを実施した 60 名に対して、評価の実施方法、医療機関との連携
方法等に対するニーズ調査等の聞き取り(アンケート調査)
を行い、
結果をとりまとめた。
アンケートはチェック実施にあわせて行った。
なお、本事業開始の数ヶ月前にすでに認知機能の低下チェックを完了していた名古屋地区
のコナミスポーツクラブ利用者 44 名にも意識調査に協力してもらうことで、本事業でチ
ェックを受けた人数以上のアンケート結果を集めることができた。名古屋地区での認知機
能の低下チェックは、国立長寿医療研究センターが実施したものである。
取組期間:2014 年 10 月~2015 年 1 月
5
0.2 事業の成果
0.2.1 ヒアリング調査ならびにグレーゾーン領域の探索結果
ヒアリング結果のまとめ((1)~(3))とそこからの考察((4))を以下に示す。
(1) MCI の診断・評価と MCI のスクリーニングについて
民間企業が提供する認知機能低下チェックツールは一部の医療機関や自治体にて MCI
のスクリーニング、早期発見などに利用されているが、多くの医療機関からは結果を「自己評
価、参考値」として捉えるのはいいが、認知機能低下チェックツールの結果では問題がなく
ても医療機関の検査で MCI と判断されるリスクがないとは言い切れないとの課題も聞かれ
た。
(2) 民間企業の事業実施に対する見解
① 認知機能低下のチェック実施に対する見解
民間企業の認知機能低下チェックツールによる評価実施に関しては「診断(医療行為)」と
いう観点から「肯定」「否定」「条件付肯定」に大きく見解が分かれた。
図表 0-3 認知機能低下のチェック実施に対する見解
見解
理由
・ 民間企業による認知機能低下チェックをあくまでも状態の確認程度と
捉え、自身の認知機能状態に対する気づきを促し、医療機関を早期
肯定的見解
受診する基準になる
・ 民間企業の事業実施に対して「早期受診への接点」、「専門事業に
よる社会貢献」、「医療機関の負担軽減」を期待
・ 民間企業による認知機能低下チェックを診断(医療行為)に近いもの
と捉え、チェック結果と医療機関での検査結果に相違があった場合
否定的見解
のリスクを危惧
・ 事業実施時のリスクとして「結果伝達のリスク」、「改善効果のリスク」、
「安全面のリスク」など多岐にわたるリスクを想定
・ 民間企業による認知機能低下チェックは可能だが診断はできない
が、医療行為と医療非該当行為の境界線の明確な線引きは不可能
条件付肯定
・ 民間企業が事業を行う場合、医療機関との提携(連携)は必須。医
療によるサポート体制を確立したうえで評価を実施するのであれば
問題ない
図表 0-4 認知機能低下チェックツールを使用することに対する見解
見解
理由
・ HDS-R、MMSE など報酬が算定できる検査を医療機関以外
が無料で実施することに対して医療側から反発を招く
報酬算定可能な
検査=医療行為
↕ 医療機関以外での使用を制限することは非常に困難
・ HDS-R、MMSE は保健師、ケアマネ、介護職員など医療機
関以外でも広く使用
・ スマートフォンやタブレット用のアプリとして提供
6
報酬算定不可能な
認知機能低下
チェックツール
オリジナルの
チェックテスト
・ 以前に自身が使用したことのあるツールの使用に関しては
肯定的
・ 民間企業より新しく提供される認知機能低下チェックツール
自体への期待はそれほど大きくない
・ 簡単なテスト、医療機関の検査よりも短時間で行うことができ
るもの、楽しくゲーム感覚で行うことができるもの、かつ医療
側からみても内容を認められるレベルのものであればオリジ
ナルで作成してもよい
(3) 民間企業と医療機関、自治体の連携について
① 民間企業、自治体から医療機関への受診勧奨
民間企業が事業を行うにあたり、医療機関との提携をはかり、認知機能低下チェックを行っ
た際に認知機能に問題がある人に対して医療機関への受診勧奨を行う必要があるとの意見
が多かった。しかし、一概に受診勧奨といっても、連携先の医療機関を勧めるケースや近隣
の認知症を専門としている医療機関を複数提示のうえ、受診先は各自の選択に任せるケー
スもあるなど方法は様々であった。
② 医療機関、自治体から民間企業への患者(利用者)紹介
医療機関からの患者紹介に関しては医療機関では運動療法などを提供することが困難で
あるため、民間企業や自治体が受け皿となることに肯定的な意見が多かった。紹介患者とし
ては MCI の人や認知機能低下が疑われるが要介護、要支援に該当しない人など現在の医
療・介護制度のすきまにいる人に対するサービス提供が特に期待されていた。
③ 医療機関、自治体と民間企業の情報連携
医療機関が患者の診療情報を提供する場合、必ず患者の同意が必要で患者が自身の情
報提供を拒否した場合、医療機関は民間企業に対して情報提供を行うことができないという
のが医療機関側の見解である。また、民間企業に対して情報提供の際に発行する文書の発
行料は基本的に患者の全額自己負担となる。
(4) グレーゾーンと考えられる項目と解消の方向性
図表 0-5 グレーゾーンと考えられる項目と解消の方向性
項目
民間企業で実施可能
な認知機能低下チェッ
クツールの範囲
(診療報酬算定検査と
の棲み分けについて)
理由
・ 医療機関には MMSE や HDS-R など
を使用した評価は医療行為で医師法
第十七条の医業、診断にあたるという
認識がある
・ 民 間 企 業 や 自 治 体 が MMSE や
HDS-R を使用した認知機能低下チェ
ックを行うことが医療行為に該当する
かは不明確である
7
解消に向けた素案
・ 「医療行為に該当する検査・チェッ
ク」について、医療機関以外でも使
用され問題が起こっていない検査・
チェックの使用は問題ないことを明
確にしてはどうか
・ 民間企業のツールのうち一定のエビ
デンスを有する検査を評価する枠組
みを整備して提示してはどうか
民間企業で行う認知
機能低下チェックが
「診断(医療行為)」と
誤解されないために配
慮すべき
事項の明確化
民間企業で実施した
認知機能低下チェック
ツール結果を用いた
受診勧奨の考え方に
ついて
医療機関から民間企
業を紹介する際の公
平性の原理について
・ 医療機関が実施する診断と民間企業
の実施する認知機能低下チェックの
区分けは明確になっていないため、
民間企業の認知機能低下チェックに
ついて結果の表現方法などにより
MCI の診断という医療行為であると誤
解して受け取る可能性がある
・ 医療行為でないとの観点から 「診
断ではない」ことを明確にするため
に、認知症の診断をできない旨の明
記や口頭による説明などにより「認
知症の検査ではない」旨を理解した
との同意を取る仕組みを設けるべき
ではないか
・ 民間企業の認知機能低下チェック結
果に基づく医療機関への受診勧奨に
おいては、そもそも認知機能低下チェ
ック自体が診断や医療行為ではなく、
認知機能評価の参考程度の扱いであ
ることから、医療機関への受診基準と
して適していない可能性が指摘されて
いる
・ 医療機関受診後に医療が必要でない
患者へのフォローとして認知機能改
善のエビデンスを有する運動等サー
ビスを提供する民間企業を紹介する
際に、特定の企業のサービスのみを
紹介することは「『公平性の原理』」の
観点から問題となる可能性がある
・ 医療機関における診断材料となりう
る認知機能の基準を数種類設定す
る必要があるのではないか
・ 医療機関や有識者が共同で認知機
能のレベル評価に関する基準や評
価の枠組みを設定することで診断材
料となりうる認知機能低下チェックを
定義できるのではないか
・ 同一エリア内に同様のサービス品質
の評価基準をクリアした民間サービ
スがある場合にはその全てを案内す
ることで「公平性の原理」には抵触し
ない旨をグレーゾーン解消申請して
はどうか
0.2.2 認知機能チェック結果
今回のチェック実施者の平均年齢は 62.1 歳、男性 33 名・女性 27 名、平均のテスト時
間は 9 分 40 秒であった。今回の結果概要は下記となった。
判定レベル
MPI スコア
MCI の疑いあり 5 名
平均値
63.5
ボーダーライン 3 名
最小値
43.34
問題は見つかりません 52 名
最大値
91.39
0.2.3 認知機能低下チェックに対する消費者意識調査結果
コナミスポーツクラブにおいて、認知機能低下チェックを受けた方に、同チェックを
スポーツクラブで実施することに対しての意識調査を行ったところ、認知機能低下チェ
ックを医療機関で受けたいという回答は全体の中で1割程度であり、必ずしも多くなか
った。「医療機関、スポーツクラブのどちらで受けても良い」という回答を含めるとスポ
ーツクラブを認知機能低下チェックの場とすることに肯定的な方が圧倒的多数であり、
認知機能低下チェック実施場所を民間事業者に広げる方向性が支持される結果になった。
問1:「注意力や記憶力などのチェック」をスポーツクラブでも実施する場合、どこでチェックを
受けたいですか?
スポーツクラブで受けたい
36
医療機関で受けたい
13
どちらでもよい
55
「スポーツクラブで受けたい」を選択された方は、
「気軽に受けたいから」が最も多く、
8
敷居の低いチェック場所へのニーズがあることが確認できた。一方で、
「医療機関で受け
たい」を選択された方は、
「しっかりとした検査を受けたいから」が最も多く、スポーツ
クラブでチェックを受けたいと考える人とはニーズが違うことがわかった。
「受けたい先」として選んだ理由
図表 0-6「スポーツクラブで受けたい」選択者
気軽に受けたいから
気軽に受けたいから
30
しっかりとした検査を受けたいから
定期的に受けたいから
チェック結果が点数として分かればよいので
10
その他
「受けたい先」として選ばなかった理由
図表 0-8「スポーツクラブで受けたい」選択者
(医療機関を選択しなかった理由)
しっかりとした検査を受けられないから
定期的に受けられないから
チェック結果が点数でしかわからないから
4
定期的に受けられないから
3
症状が感じられないから
4
症状が感じられないから
4
チェック結果が点数でしかわからないから
2
1
0
結果説明をしっかり受けられないから
1
お金がかかるから
その他
0
しっかりとした検査を受けられないから
0
お金がかかるから
4
結果の取扱いが信頼できないから
5
0
図表 0-9「医療機関で受けたい」選択者
(スポーツクラブを選択しなかった理由)
気軽に受けられないから
25
結果説明をしっかり受けられないから
1
結果の取扱いが信頼できるから
0
気軽に受けられないから
6
費用が安いから
1
その他
2
0
結果説明をしっかり受けたいから
8
7
結果の取扱いが信頼できるから
6
症状が感じられた時に受けたいから
0
チェック結果が点数として分かればよいので
費用が安いから
7
定期的に受けたいから
14
結果説明をしっかり受けたいから
4
しっかりとした検査を受けたいから
4
症状が感じられた時に受けたいから
図表 0-7「医療機関で受けたい」選択者
2
0
結果の取扱いが信頼できないから
2
その他
0
1
0
問2:「注意力や記憶力などのチェック」をスポーツクラブで実施する場合、その結果をスポーツ
クラブでどのように活用してほしいですか(あてはまるものすべて)
結果をスポーツクラブ指導員に知っておいてほしい
25
医療機関と連携してほしい
32
行政と連携してほしい
11
本人への通知以外には活用してほしくない
43
その他
2
問4:「注意力や記憶力などのチェック」の結果意外に知りたいことはありますか。(あてはまる
ものすべて)
点数の基準値
32
評価の仕組み(点数の加算方法等)
45
評価結果の検証データ(エビデンス)
15
特にない
23
その他
1
問5:運動は、認知機能低下予防・改善効果が認められていますが、「注意力や記憶力などのチェ
ック」で得られた結果は、今後の運動実施の励みになりますか。
励みになる
80
どちらでもない
22
励みにならない
0
9
0.3 構築基盤の検証結果:
(ⅰ)健康寿命延伸分野の事業環境整備
0.3.1 グレーゾーン領域の探索結果
グレーゾーンと考えられる項目と解消の方向性を以下の通りとりまとめた。
図表 0-10 グレーゾーンと考えられる項目と解消の方向性
項目
民間企業で実施可能
な認知機能低下チェッ
クツールの範囲
(診療報酬算定検査と
の棲み分けについて)
民間企業で行う認知
機能低下チェックが
「診断(医療行為)」と
誤解されないために配
慮すべき事項の明確
化
民間企業で実施した
認知機能低下チェック
ツール結果を用いた
受診勧奨の考え方に
ついて
医療機関から民間企
業を紹介する際の公
平性の原理について
理由
・ 医療機関には MMSE や HDS-R など
を使用した評価は医療行為で医師法
第十七条の医業、診断にあたるという
認識がある
・ 民 間 企 業 や 自 治 体 が MMSE や
HDS-R を使用した認知機能低下チェ
ックを行うことが医療行為に該当する
かは不明確である
解消に向けた素案
・ 「医療行為に該当する検査・チェッ
ク」について、医療機関以外でも使
用され問題が起こっていない検査・
チェックの使用は問題ないことを明
確にしてはどうか
・ 民間企業のツールのうち一定のエビ
デンスを有する検査を評価する枠組
みを整備して提示してはどうか
・ 医療機関が実施する診断と民間企業
の実施する認知機能低下チェックの
区分けは明確になっていないため、
民間企業の認知機能低下チェックに
ついて結果の表現方法などにより
MCI の診断という医療行為であると誤
解して受け取る可能性がある
・ 医療行為でないとの観点から 「診
断ではない」ことを明確にするため
に、認知症の診断をできない旨の明
記や口頭による説明などにより「認
知症の検査ではない」旨を理解した
との同意を取る仕組みを設けるべき
ではないか
・ 民間企業の認知機能低下チェック結
果に基づく医療機関への受診勧奨に
おいては、そもそも認知機能低下チェ
ック自体が診断や医療行為ではなく、
認知機能評価の参考程度の扱いであ
ることから、医療機関への受診基準と
して適していない可能性が指摘されて
いる
・ 医療機関受診後に医療が必要でない
患者へのフォローとして認知機能改
善のエビデンスを有する運動等サー
ビスを提供する民間企業を紹介する
際に、特定の企業のサービスのみを
紹介することは「『公平性の原理』」の
観点から問題となる可能性がある
・ 医療機関における診断材料となりう
る認知機能の基準を数種類設定す
る必要があるのではないか
・ 医療機関や有識者が共同で認知機
能のレベル評価に関する基準や評
価の枠組みを設定することで診断材
料となりうる認知機能低下チェックを
定義できるのではないか
・ 同一エリア内に同様のサービス品質
の評価基準をクリアした民間サービ
スがある場合にはその全てを案内す
ることで「公平性の原理」には抵触し
ない旨をグレーゾーン解消申請して
はどうか
0.3.2 認知機能低下チェックに対する消費者意識調査結果
コナミスポーツクラブにおいて、認知機能低下チェックを受けた方に、同チェックを
スポーツクラブで実施することに対しての意識調査を行ったところ、認知機能低下チェ
ックを医療機関で受けたいという回答は全体の中で1割程度であり、必ずしも多くなか
った。「医療機関、スポーツクラブのどちらで受けても良い」という回答を含めるとスポ
ーツクラブを認知機能低下チェックの場とすることに肯定的な方が圧倒的多数であり、
認知機能低下チェック実施場所を民間事業者に広げる方向性が支持される結果になった。
10
問1:「注意力や記憶力などのチェック」をスポーツクラブでも実施する場合、どこでチェックを
受けたいですか?
スポーツクラブで受けたい
36
医療機関で受けたい
13
どちらでもよい
55
「スポーツクラブで受けたい」を選択された方は、
「気軽に受けたいから」が最も多く、
敷居の低いチェック場所へのニーズがあることが確認できた。一方で、
「医療機関で受け
たい」を選択された方は、
「しっかりとした検査を受けたいから」が最も多く、スポーツ
クラブでチェックを受けたいと考える人とはニーズが違うことがわかった。
民間事業者で実施するチェックにおいては「スポーツクラブで受けたい」というニー
ズを満たすことを重視することが求められる。
「受けたい先」として選んだ理由
図表 0-11「スポーツクラブで受けたい」選択者
気軽に受けたいから
気軽に受けたいから
30
しっかりとした検査を受けたいから
定期的に受けたいから
チェック結果が点数として分かればよいので
10
6
費用が安いから
1
結果の取扱いが信頼できるから
1
その他
2
0
結果説明をしっかり受けたいから
8
7
結果の取扱いが信頼できるから
6
症状が感じられた時に受けたいから
0
チェック結果が点数として分かればよいので
費用が安いから
7
定期的に受けたいから
14
結果説明をしっかり受けたいから
4
しっかりとした検査を受けたいから
4
症状が感じられた時に受けたいから
図表 0-12「医療機関で受けたい」選択者
その他
0
5
0
「受けたい先」として選ばなかった理由
図表 0-13「スポーツクラブで受けたい」選択者
(医療機関を選択しなかった理由)
気軽に受けられないから
しっかりとした検査を受けられないから
チェック結果が点数でしかわからないから
4
定期的に受けられないから
3
症状が感じられないから
4
症状が感じられないから
4
チェック結果が点数でしかわからないから
2
1
0
結果説明をしっかり受けられないから
1
お金がかかるから
お金がかかるから
4
結果の取扱いが信頼できないから
0
しっかりとした検査を受けられないから
定期的に受けられないから
その他
気軽に受けられないから
25
0
結果説明をしっかり受けられないから
図表 0-14「医療機関で受けたい」選択者
(スポーツクラブを選択しなかった理由)
2
0
結果の取扱いが信頼できないから
2
その他
0
11
1
0
0.4 今後の事業展開
0.4.1 サービス利用者の設定
下記の通り想定している。
 概ね 60 歳以上の方
 認知機能の低下がみられた方と認知機能の低下予防を希望する方
0.4.2 サービス内容
認知機能の改善を目的とする運動教室をスポーツクラブにて開催する。
具体的には、コナミにて、
「60歳からの運動スクール」として展開している「OyZ(オ
イズ)
」のラインアップに「脳活性化コース」を新設し、まずは 2015 年 1 月から 3 施設(武
蔵境、船橋、相模大野)にてトライアルをスタートした。
脳活性化コースは、
いつまでも元気で若々しいカラダと脳を保つことを目指したスクール
であり、有酸素運動と同時に頭を使う事で脳が活性化することを参加者に伝え、足踏み運
動などと同時に、リズムに合わせて腕を使う動きを行うことで、脳の広い範囲を活性化さ
せるものである。
教室は、週1回・60 分のスクール型教室である。
本コース実施施設は、順次、全国のコナミスポーツクラブに広げていく予定である。
0.4.3 サービス提供方法(業務手順書)
下記の形でサービスを提供する計画である。
○研修を修了したコナミの指導員が本教室指導を担当する。
○週一回曜日と時間を定めてコナミスポーツクラブにて教室を開催する。
○定期的に脳機能チェックを行い、運動実施効果を検証する。
○当日の血圧により、運動中止基準を設ける。
○コナミの会員登録を行って施設を利用してもらう。(料金は月会費制)
0.4.4 価格設定・課金方法
週1回の教室の月会費を税込 6,156 円で設定している(費用は参加者負担)。
0.4.5 ビジネスモデル
本サービスは、既存のスポーツクラブの指導員ならびに施設を活用するものであり、初期
研修は発生するが、それ以外には大きな設備投資は不要である。初期投資負担の少ないビ
ジネスモデルであり、短期間での事業拡大、定着を目指していく。
12
①-1外来
㈱コナミスポーツ&ライフ
医療機関
③-2認知機能低下予防
疑いのある方の紹介
高齢者
認知機能の低下予防教室開催
概ね70歳以上
の方
①-2認知機能低下予防
サービス参加奨励
(参加条件)
現在認知症で通院中でない方
②認知機能低下予防チェッ
クツールによるチェック実施
(チェック実費負担)
①-1
①-3認知機能低下予防・改善等教室参加
③-1認知機能の低下予防
教室におけるプログラム提
供(月会費)
0.4.6 サービス対象者へのアプローチ手法・顧客獲得方法
本サービスは介護認定前の高齢者の QOL 維持・向上のために、自費で予防型サービスを受
けてもらうモデルである(BtoC)
広く告知し、継続的に参加してもらう形で定着していくサービス展開を目指していく。
対象となる層向けにチラシ等で告知するとともに、体験会等も開催する。あわせて、参加
者から口コミで新規参加者の獲得につなげていく。
0.4.7 課題とその対応策
エビデンス蓄積、認知率の向上、参加者数拡大を順次進めていく。
0.4.8 調査事業の振り返り、及び今後の事業展開
グレーゾーンとその解決案を立案することができた。本成果を踏まえて今後グレーゾーン
を具体的に解消し、脳活性化コースの普及環境整備につなげていきたい。その際には今回
とりまとめた
「認知機能の低下チェック手順書」
「認知機能の低下対策連携ガイドライン」
を活用することができる。
また、民間事業者にて脳機能チェックを実施することに対する消費者ニーズがあることを、
アンケートを通じて確認することができた。グレーゾーン解消後、チェック実施を消費者
に提案し、脳機能のチェックを早期に実施し、健康長寿社会の構築につなげていきたい。
13
0.4.9 収支計画(試算)
図表 0-14
収支計画
A.売上高(万円)
会費収入(万円)
会費単価(円/月・人)
会員数(人)
収入
支出
【2015年】
1,026
1,026
5,700 週1回のスクール型教室
150 10施設にて実施。1施設あたり15名の集客で試算
※期初から同じ在籍と想定
サービス利用料収入(万円)
サービス平均単価(円)
利用人数(人)
年間平均利用回数(回/人)
B.支出合計(万円)
支店支出(万円)
人件費(指導料)(万円)
0
434
384
96 指導員人件費
288 施設運営コスト(見なし)
50
50 募集・研修費用等
592
592
施設費(会場費等)(万円)
本社支出(万円)
販促費(研修含む)(万円)
C.営業利益(A-B:万円)
収益
D.営業利益累計(万円)
A.売上高(万円)
会費収入(万円)
会費単価(円/月・人)
会員数(人)
収入
支出
【2016年】
10,260
10,260
5,700 週1回のスクール型教室
1,500 50施設にて実施。1施設あたり30名の集客で試算
※期初から同じ在籍と想定
サービス利用料収入(万円)
サービス平均単価(円)
利用人数(人)
年間平均利用回数(回/人)
B.支出合計(万円)
支店支出(万円)
人件費(指導料)(万円)
0
4,090
3,840
960 指導員人件費
2,880 施設運営コスト(見なし)
250
250 募集・研修費用等
6,170
6,762
施設費(会場費等)(万円)
本社支出(万円)
販促費(研修含む)(万円)
C.営業利益(A-B:万円)
収益
D.営業利益累計(万円)
14
A.売上高(万円)
会費収入(万円)
会費単価(円/月・人)
会員数(人)
収入
支出
【2017年】
20,520
20,520
5,700 週1回のスクール型教室
3,000 100施設にて実施。1施設あたり30名の集客で試算
※期初から同じ在籍と想定
サービス利用料収入(万円)
サービス平均単価(円)
利用人数(人)
年間平均利用回数(回/人)
B.支出合計(万円)
支店支出(万円)
人件費(指導料)(万円)
0
8,180
7,680
1,920 指導員人件費
5,760 施設運営コスト(見なし)
500
500 募集・研修費用等
12,340
19,102
施設費(会場費等)(万円)
本社支出(万円)
販促費(研修含む)(万円)
C.営業利益(A-B:万円)
収益
D.営業利益累計(万円)
15
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