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ミクロ経済学
開講セメスタ・履修形態 1年次・秋学期・昼・選択 科目分類 経済・経営系 授 ミクロ経済学 担当教員 中野 宏 業 科 目 名 発展科目 モノを買う・作る、モノに価格がつく、景気が良くなる・悪くなる、インフレ・デ フレが起こる等々、日々身の回りで生じる経済現象にはすべて理屈や法則がある。こ 授 業 テーマ・目 的 れらを明らかにし、社会全体を最も望ましい状態に導くにはどうすればよいかを考え るのが経済学である。本講義では、完全競争市場という究極の市場形態を中心的に考 察することで、近年の世界的な潮流である規制緩和や民営化、自由貿易といった競争 促進政策の意義と問題点を探る。 達 授 評 成 業 目 標 の 形 態 方 法 価 履修者への要望 (履修条件等) 現実の経済の動きを、理論的に解釈し、怪しげなエコミストに頼らずとも自らの意 見で評価できるようになること。 講義形式を原則とするが、もちろん発言は自由なので、積極的な意見交換を期待す る。なお、下の授業内容は計画である。学生諸君の理解度に応じて修正する。 原則として期末試験の成績で評価するが、出席状況の悪い学生は試験の受験を許可 しないことがある。 先行配当科目「日本経済・経済学概論」の履修は本科目の受講条件ではない。 微分や連立方程式、三角形や台形の面積計算など、ごく簡単な数学を用いる。 授 業 経済学とは何か 第 1 回 内 容 人々のモノに対する欲望は限りがないのに、それを生産するため の資源(労働力、土地、資本や環境資源)には限りがある。したがって,何をどれだ け作り(資源配分)、それをどのように人々に分配する(所得分配)のが最も望まし いのかを考えなければならない。経済学という学問の存在意義を知る。 市場経済のメリット 第 2 回 上の難問を解くための経済運営の方法として、世界は資本主 義と社会主義という二大経済体制を生み出した。しかし、ソ連邦をはじめとして社会 主義国家による計画経済はほとんどが頓挫し、市場経済への移行を余儀なくされてい る。それはなぜか。市場経済のメリットはどこにあるのかを考える。 消費者の行動 第 3 回 消費者(家計)は財の価格が高いとあまり買わないであろうし、安 いとたくさん買ってもよいと思うであろう。財の価格と消費量の関係を図示した曲線 を需要曲線と呼ぶ。消費者がどのような条件のもとで消費量を決定するのかを数学的 に導出し、需要曲線が右下がりになる理由の理論的な説明を試みる。 生産者の行動 第 4 回 生産者(企業)は財の価格が安いとあまり作らないであろうし、高 いとたくさん作ってもよいと思うであろう。財の価格と生産量の関係を図示した曲線 を供給曲線と呼ぶ。生産者がどのような条件のもとで生産量を決定するのかを数学的 に導出し、供給曲線が右上がりになる理由の理論的な説明を試みる。 価格の決定 第 5 回 売り手も買い手も多数存在し、それゆえその中の誰一人として自由に 価格を決定する力を持たない市場を完全競争市場とよぶ。毎朝行われている野菜や 魚,あるいは終日行われている株やドルなど金融商品の取引が代表例である。完全競 争市場における財(商品)価格の決定と変動のメカニズムを学習する。 余剰の概念 第 6 回 余剰は経済厚生(経済状態の望ましさ)を測る基準の一つであり、余 剰が大きいほど資源配分は望ましいと考える。消費者の利益を消費者余剰、生産者の 利益を生産者余剰、それらの合計としての市場全体の余剰を総余剰とよぶが、どのよ うな条件のもとで総余剰が最大(最適資源配分)となるか導出する。 授 業 厚生経済学の基本定理 第 7 回 内 容 完全競争市場の経済厚生上のメリットは、それが自律的に 最適資源配分を実現するという点にある。これを厚生経済学の基本定理とよぶ。そこ では消費者も生産者も自らの利益を追求して行動しているだけであるのに、その結果 実現する競争均衡は、総余剰を最大にするものとなることを知る。 所得の再分配 第 8 回 厚生経済学の基本定理にしたがえば、政府は独占や寡占を排して市 場を競争的にし、経済をなるべく民間の自由な活動に委ねるべきである。しかし、競 争は必然的に所得格差を生む。このとき,政府は所得の再分配政策を行うべきか、行 うとすれば格差が何を原因に発生しているときであるかを考える。 課税と補助金 第 9 回 所得税の累進課税制度や生活保護費給付は、所得再分配の代表的な 政策手段である。その他にも、外部性が発生しているときに望ましい生産量や消費量 に誘導したり、公共財のように政府が費用負担する経済活動の財源のために課税や補 助金は必要となる。それらが市場に与える効果について学習する。 貿易の利益 第10回 貿易が経済発展に多大に寄与することは、現在の世界経済を見れば明 らかである。貿易が行われるのはそこにメリットが存在するからに他ならない。その 国が輸出国になるか輸入国になるかを決定する条件は何か、また、総余剰の観点から 貿易が輸出国、輸入国双方に利益を与えるものであることを学ぶ。 自由貿易と保護貿易 第11回 我が国は、世界の貿易の自由化を目指すWTO(世界貿易機 関)の一員であるが、一方で、国内農業を保護するために、コメなどに高い関税をか けて輸入を制限したり、事実上禁止したりしている。関税が市場に与える効果につい て学習し、自由貿易と保護貿易のどちらが望ましいのか考察する。 市場の失敗:外部性 第12回 完全競争市場であっても、いくつかの特殊な状況のもとでは 総余剰は最大化されない。これを市場の失敗とよぶ。経済活動にともなう公害の発生 が社会に損害をもたらす外部不経済は、市場の失敗の代表例である。外部性が発生し ているとき、最適資源配分の実現のため政府は何をすべきか考える。 市場の失敗:公共財 第13回 誰もが同じものを同時に使用でき、また価格や料金を支払わ なくても使用できるという特殊な性質をもつ財を公共財とよぶ。堤防や公共放送(N HK)は代表的な例である。公共財は営利を目的とする民間企業が生産することはで きず、政府が税金等を財源として供給するしかないことを学習する。 独占企業の行動 第14回 我々の身の回りの多くの財は4~5社しか企業がいない寡占市 場で生産されている。このような不完全競争市場では企業が自由に価格を決定する力 を持つ。極端な例としてただ1社のみが生産する独占市場をとりあげ、価格・生産量 を決定する条件を数学的に導出した上で、完全競争との比較を試みる。 ゲームの理論 第15回 たとえば家電量販店が常に他社の販売価格を見ながら自社価格を 決定しているように、複占市場や寡占市場においては、各企業の利害は対立しそれゆ えその行動は相互依存性をもっている。このような状況下における企業行動を分析す る有効な最新の道具がゲーム理論である。ゲーム理論の基礎を学ぶ。 テキスト レジュメを配布する。 参考図書 必要であれば講義内で指示する。