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Title 恥骨上前立腺摘除術の手術成績 Author(s)
Title Author(s) Citation Issue Date URL 恥骨上前立腺摘除術の手術成績 米田, 文男; 三宅, 範明; 辻村, 玄弘; 中島, 幹夫 泌尿器科紀要 (1987), 33(1): 65-68 1987-01 http://hdl.handle.net/2433/119018 Right Type Textversion Departmental Bulletin Paper publisher Kyoto University 65 泌 尿 紀要33巻1号 1987年1月 恥骨上前立腺摘除術の手術 成績 愛媛県立中央病院泌尿器科(部 長=中 島幹夫) CLINICAL 米 田 文 男 三 宅 範 明 辻 村 玄 弘 中 島 幹 夫 STUDIES ON CASES OF SUPRAPUBIC PROSTATECTOMY Fumio YONEDA, Noriaki and MIYAKE, Mikio Haruhiro TSUJIMURA NAKAJIMA From the Department of Urology, Ehime General Hospital (Chief: Dr. Mikio Nakajima) The results of the operation were analyzed statistically in 68 patients who underwent suprapubic prostatectomy for benign prostatic hypertrophy from 1979 to 1985. The patients were between 59 and 86 years old with a mean age of 72.0 years. The average operation time was 63 minutes and average blood loss during the operation was 292 g. The average weight of enucleated prostate was 32.6 g. Acute epididymitis and urine leakage from the wound were the most frequent postoperative complications. 25.6 days. There were no postoperative deaths. The average postoperative admission period was Histological examination of the specimens revealed occult carcinoma in 2.9% of the pa- tients. Key words: Suprapubic prostatectomy, Clinical study 手 術 方 法 は,下 腹 部 正 中 切 開 に て膀 胱 前 腔 に い た る. 緒 口 電 気 メ ス に て 膀 胱 壁 を2∼3cm縦 切開 す。 前 立腺 最 近,前 立腺 肥大 症 に対 す る手 術療 法 と して は,経 腺 腫 を 摘 出 し,5時 尿道 的前 立 腺 切 除術 が増 加 してい るが,腺 腫 が大 き い ペ ア ン鉗 子 を か け 引 き上 げ る.膀 胱 頸 部 硬 化 症 が あ れ 症例 で は開 放 手術 の方 が手 術 浸襲 が 少 な い との報 告 が ば,膀 胱 頸 部 に 切 開 を 加 え る.太 い絹 糸 を引 き上 げ た 多 い.わ れ わ れ は,1914年Keyesi)の 膀 胱 頸 部 の5時 と7時 部 に 通 し,尿 道 よ りバ ル ー ンカ 報 告 した方 法 と7時 の膀 胱 頸部 に ア リス また は に準 じ絹 糸 に て 前立 腺 床 を 会 陰部 に牽 引 す る恥 骨 上前 テ ー テ ル留 置 後,長 針 に て 前 立 腺床 よ り,会 陰 部 に 刺 立腺摘 出術 を 過 去5年 間 に68例 経 験 した の で手 術 成績 入 し絹 糸 を 引 き出 す.こ の 絹 糸 を ガ ーゼ を丸 め た上 で を報告 す る. 縛 る.こ の 絹 糸 は 術 後 半 日∼1日 で ゆ る め 出血 が 強 く な けれ ば 抜 去 す る.膀 胱 壌 は設 置 して い な い. 研 究 対 象 ・手 術 方 法 愛 媛 県 立 中央 病 院 泌 尿 器科 に お い て1979年9月 1985年9月 に い た る6年 間 に 行 な わ れ た恥 骨 上 前 立 腺 摘 出術 を 受 け た68症 例 を 対 象 と した. 成 績 より 1)年 齢 最 年 少 は59歳,最 年長 者 は86歳 で あ り,平 均 年 齢 は 66 泌 尿 紀 要 33巻 1号 1987年 Table 1.年 齢分 布 年齢 5)術 中 出血 量 最 小 出血 量 は40 9,最 大 出 血 量 は7509で 患者数(%) 平 均 出血 量 は292.19で 50∼59 3人(4,4%) 60∼69 27人(39.7%) 70∼79 31人(45,5%) 80∼ 400 g以 あ った.49症 あ り, 例(74. 2%)は 下 で あ った.術 中輪 血 した症 例 は5症 例(7.3 %)の み で あ りそ の 平 均 出血 量 は5209で あ った(Ta- ble 4). 7人(10.2%) 6)術 後 肉 眼 的血 尿消 失 時 間 最 短 期 間 は1日 か ら最 長 期 間 は9日 ま で平 均 期 間は Table 2.手 3.4日 で あ った. 術時間 30∼60分 30例(48.3%) 61∼90分 31例(50%) 90分 ∼ 7)パ 最 短 は7日,最 日間 で あ った.バ 1例(0.1%) %)に Table 3.摘 ルー 一ンカ テ ー テ ル留 置 期 間 長20日 間 で あ り平 均 留 置期 間 は9.3 ル ー ン カ テ ー テル 抜去 後6例(8.・8 創 部 よ り尿 漏 れ が あ り再 度 のバ ル ー ンカ テ ーテ ル留 置 に て 全 例 治 癒 して い る. 出 重量 8)術 後 入 院期 間 1∼99 7(12.0%) 10∼19 9(15.5%) 最 短13日 か ら最 長148日 16 (27. 5%) 20∼29 30∼39 9(15.5%) 40∼49 8 (13. 7%) 50∼59 5(8.6%) 60∼69 2(3.4%) 9)術 前 泌尿 器 科 系 疾 患 合 併 症 膀 胱 結 石3例,鼠 径 ヘ ル ニ ア2例,腎 孟 腎炎2例, 腎結 石,陰 嚢 水 腫,尿 管 腫 瘍,腎 不 全,睾 丸腫 瘍 の疑 い,各1例 で あ った.こ れ らに対 し膀 胱 切石 術,鼠 径 ヘ ル ニ ア根 治 術,陰 嚢 水腫 根 治術 ,尿 管 切除+膀 胱 部 1(1.7%) 70∼ で あ り,平 均25.6日 で あ っ た. 分 切 除 術,睾 丸 摘 出術 を施 行 した. Table 4.術 10)術 後 合併 症 中 出血 量 副 睾 丸 炎6例(8.8%),創 0∼2009 29 (43. 9%) 201∼400 20 (30. 3%) 401∼600 13 (19. 6%) (8. 8%),尿 部 し開2例,恥 骨 炎2例 で あ っ た.な お,手 術 死 亡 例 は み られ なか っ た. 4(6.0%) 601∼800 部 か ら の 尿 漏 れ6例 道 狭窄4例(5.8%),創 11)前 立 腺 癌 の合 併 病 理 組 織 学 的 検 索 に て68例 中2例(2.9%)が 72.0歳 で あ った.60歳 代 が39. 7%,70歳 代 が45.5%と 60∼70歳 代 が 大 半 を 占め て い る.80歳 以 上 の 症例 は7 例(1α2%)で あ った(Table 全身 麻 酔2例 考 1). 2)麻 酔方 法 前立 腺 癌 と判 明 した, 察 恥 骨 上 前 立 腺 摘 出 術 の長 所 と して,① 膀 胱 内腔 が 直 ⑫g%),全 が10例(14.7%),硬 身 麻 酔 と硬膜 外 麻 酔 併 用 膜 外 麻 酔56例(82,3%)と ほと 視 下 に 見 え る た め膀 胱 内 合併 症 の観 察,処 置ができ る.② 前 立腺 へ 早 く容 易 に到 達 で き る.③ 手 術 時 間 が ん どが 硬 膜 外 麻 酔 で あ っ た. 比 較 的 短 い.④Retzius腔 3)手 術 時 間 起 さな い,な 尿 管 腫 瘍,鼠 径 ヘ ル ニア,陰 嚢水 腫 等 の合 併 症 に 対 ① 術 後 カ テー テ ル留 置 が長 い.② 止 血 が 比 較 的 困難 で す る手 術 を 同時 に実 施 した 症 例 は除 外 した.最 短 時 間 あ る、③ 尿路 感 染が 長 び く,な どが 挙 げ られ て い る. は33分,最 恥 骨 上前 立 腺 摘 出術 に お い て 一 番 問 題 に な る の は止 長 時 間 は1時 間30分 で あ り,平 均 手 術 時 間 はi時 間3分 で あ った.1時 症 例 は30例(48.3%)で 4)摘 間 以 内 に手 術 が 終 了 した あ った(Table 2), 出前 立 腺 重 量 最 小5.09か ら 最 大1109で あ り,平 均 重 量 は 32・69で あ った 。209代 が 最 も多か った(Table 3) . を開 け な い た め 恥 骨炎 を どが 挙 げ られ て お り,一 方,短 所 と して 血 法 で あ る.前 立 腺 動 脈 の 出 血 に 対 して,Z縫 合, U 縫 合,連 続 縫 合 な どが 行 な わ れ て い る.ま た前 立 腺 床 の 出血 に対 して は,前 立 腺床 を 縫縮 す る方 法 な どが あ る.1914年 cat gutを にKeyesi)は,止 血 法 と して 会 陰 部 よ り 付 け た 誘 導鉗 子 を 前 立腺 床 に 刺 入 しcat 米 田 ・ほ か:恥 骨 上 前 立 腺 摘 出術 ・手術 成 績 67 gutを 膀 胱頸 部 に通 し,さ らに反 対側 の会 陰 部 よ り誘 前 立腺 摘 出術 にお け る術 死 は,α8%∼2. 5%と の報 告 導鉗 子 を刺 入 し,こ のcat gutを 会 陰部 に 引 き 出 し が あ る2・3・6)が,われ われ の症 例 で は 死 亡 例 は なか っ 会 陰部 に て 固 く しめ る方 法 を 報告 して い る.わ れ わ れ た.ま た,術 後 尿 失 禁 の報 告 もみ られ るが,わ れ わ れ は,こ の方法 に準 じ前 述 した 方 法 に て手 術 を行 な って の 症例 で はみ られ な か った. いる. 病 理 組 織 学 的 検 索 に て2例(2.9%)の 手術 時 の平 均 年 齢 は,70歳 前 後 で あ り,他 の報 告 と 同様 で あ る. 狩 野 ら6)は4.8%と われ わ れ の症 例 に お け る麻 酔 は ほ とん ど硬 膜 外 麻 酔 (82.3%)で 明 した,横 田3)2.9%,宮 あ り,全 身 麻 酔 との 併 用 は14.7%,全 麻 酔 は2.9%の 潜在 癌 が 判 崎 ら9)3.6%,村 中 ら2)4・1%, 報 告 して お り,step sectionな に よ り綿密 な検 討 が 必 要 で あ る と思 わ れ る. 身 結 み で あ り,腰 椎 麻 酔 は 行 な われ て い な 語 い.硬 膜 外麻 酔 は術 中 の み な ら ず術 後 も疹 痛,vesi- 愛 媛 県立 中央 病 院 泌 尿 器科 に て1979年9月 cal tenesmusに 年9月 に い た る6年 間 にKeyesの 対 して 有 効 で あ り,前 立 腺 摘 出術 で は硬膜 外 麻 酔 が最 も有 効 で あ る と思 われ る.さ 血 量 に関 して も村 中 ら2)は,全 らに 出 身 麻 酔 に 比 し硬 膜 外 麻 ど よ り1985 変 法 に よ る恥 骨 上 前 立 腺摘 出術 を 行 な った68例 に つ い て,年 齢,麻 酔 法,手 術時 間,摘 出 前 立腺 重 量,術 中 出血 量,術 後 経 酔が 出血 量 が有 意 に 少 ない と報告 して い る.手 術 時 間 過,術 後合 併 症,前 立 腺癌 の頻 度 な どを 検討 した. の短 い こ とが恥 骨 上 前 立 腺 摘 出術 の長 所 で あ る.平 均 わ れ われ の方 法 は 比 較 的簡 単 で あ り,手 術 時 間,出 手術 時 間 は,横 田3)は54分,星 野 ら4)は63分,林 血 量 な どに関 して 優 れ た方 法 で あ る こ とを報 告 した. 61.3分,狩 野 ら6)ea 85. 5分,黒 矢 崎 ら8)107.3分,宮 ら5)は 田 ら7)は91分,さ 崎 ら9)は12L5分 らに 文 と種 々の報 告 が あ るが,わ れ わ れ の症 例 に お い て は,44%は1時 間以 1)Keyes EL 内で あ り平均 手 術 時 間 は63分 と比 較 的短 時 間に 手 術 を hemorrhage 終 了 して い る. JAMA 摘 出前 立腺 重 量 は 平 均32.69で あ り諸 家 の報 告 と 同様 であ った. : A method Qf diminishing after suprapubic prostatectomy。 63:2217∼2218,1914 中幸 二 ・武 田 明久 ・岡 野 学 ・松 田聖 士 ・酒 井 俊 助 ・兼 松 稔 ・河 田幸 道 ・西 浦常 雄:最 近 の 恥 恥 骨 上 前立 腺 摘 出術 の 出血 量 は,横 ら5)443 g,矢 崎 ら8)457.7g,狩 ら7)519g,村 2)村 献 田3)314 9,林 野 ら6)536。4g,黒 中 ら2)590 g,宮 崎 ら9)655 gな 骨 上 式 前 立 腺 被膜 下 切 除 術 に 関す る臨 床 統 計 学 的 田 どが あ 観 察.泌 尿 紀要31=969∼977,1985 3)横 田武彦=前 立 腺 肥 大 症 の手術 成 績 西 日泌 尿. り,施 設 に よって は 半 数 以 上輸 血 の報 告 が あ るが,わ 41:77∼85, 1979 われ の症例 で は 平 均 出血 量2929で 4)星 野 嘉 伸 ・国沢 義 隆 ・友 石純 三 ・青 木 俊 輔=前 立 あ り49例(74・2 %)et 400 g以 下 であ り,輸 血 した 症 例 は5例(7.3 腺 肥 大 症 に対 す る各 種 手 術 術 式 の比 較 検 討.臨 泌 %)の 36:139∼143, み であ り,わ れ わ れ の方 法 で は 充分 に 止血 の 目 1982 的が 達せ られ て い る と思わ れ た. 5)林 恥 骨上 前 立 腺 摘 出術 で は,膀 胱 を 開 け るた め 他 の方 最 近6年 間 の恥 骨 上 前 立 腺 被 膜下 摘 除 術 の臨 床 統 法に 比べ てバ ル ー ンカ テ ー テ ル留 置 期 間 が長 くな っ て 計 学 的 観 察.西 お り,宮 崎 ら9)11。9日,横 田3)15. 4日,狩 6)狩 野 健 一 ・関 口 浩 ・佐 藤 昭 太 郎:前 立 腺 肥 大 症 野 ら6)は17.8 睦 雄 ・佐 々木 健 一 郎 ・梶 尾 克彦 ・藤 本 洋 治= 日泌尿36=561∼565,1974 日と報 告 して い る.こ れ ら の報 告 に 比 べ わ れ われ の症 入 院 患 者 の 臨床 統 計.西 例 で は平 均9.3日 と早 くバ ル ー ン カ テー テ ル を抜 去 し てい る.術 後 合 併 症 で は,副 ら7)8.9%,横 田3)8.4%,村 7)黒 田 睾丸 炎 が6例(8・8%) にみ られ,他 の報 告 に おい て も,林 ら5)10.2%,黒 田 中 ら2)は6. 5%の 発 生 を み て お りわ れ われ とほ ぼ 同程 度 であ った.さ ンカ テ ー テル抜 去 後 尿 漏 れ が6例(8.8%)に らにバ ル ー み られ, 日泌 尿43=293∼298, 1981 俊 ・浜 尾 巧 ・黒 子 幸 一 ・吉 尾 正 治 ・中 野 勝 ・星 野孝 夫 ・末 永 直 ・長 田 尚 夫 ・井 上 武 夫 ・ 田 中 一成:前 立 腺 肥 大 症10年 間 の手 術 成 績.日 泌 尿 会誌76 :560∼568,1985 8)矢 崎 恒忠 ・北 川 龍 一 ・加 納 勝 利 ・小川 由英 ・高 橋 バ ル ー ン カテ ー テ ル再 留 置 に て 全 例 治 癒 して い る.堀 茂 喜 ・林 正 健 二 ・根 本 良 介 ・根 本真 一 ・梅 山 知 一 内1・)は,前述 した ご と く恥 骨 上 前 立 腺 摘 出術 では,恥 ・武 島 骨 炎 の な い こ とが長 所 で あ る と述 べ て い るが,わ れ わ 立 腺 肥 大症 の手 術 法 に 関 す る臨床 的 検 討.日 泌 尿 れ の症 例 に お い て は2例 の恥 骨 炎 を 経 験 した.恥 骨 上 会 誌73 :1277∼1287,1982 仁 ・飯 泉 達 夫 ・菅 谷 公 男 ・石 川 悟:前 68 泌尿紀要 33巻 9)宮 崎良春 ・有吉朝美:福 岡大学泌尿器科 におけ る 1号 1987年 10)堀 内誠 三:恥 骨 上 前 立 腺 摘 除術.臨 泌31 :一 871∼ 前立腺摘 出術 の 手術 成績.西 日泌尿44=977∼ 874, 1977 980, 1982 (1986年1月4目 受 付)