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容器包装リサイクル法対応新包装設計
シャープ技報 第73号・1999年4月 容器包装リサイクル法対応新包装設計 New Packing Design Compliant to the Law for Recycling of Containers and Packaging 柘 植 修 * Osamu Tsuge 小 平 英 量 * Hidekazu Kodaira 要 旨 たり,包装材におけるリサイクル処理コスト低減の 為,発泡スチロールレスが必須となってきた。 このような状況から, プラスチック緩衝材の代替材 料として,段ボールアドやパルプモールドアドの採用 検討を行いその結果,段ボールアドを採用することと なり,各種信頼性を確保し,商品化に至ったのでその 経過を紹介する。 待機時の消費電力を業界初の 0.65W にした S-VHS 型ビデオデッキにおいて段ボール製緩衝材 (以降緩衝 材の名称を“アド”と呼ぶ)を採用し,各種信頼性試 験を実施の後,製品化ができたのでその結果を紹介す る。 1 . 採用検討の実施 A new S-VHS VCR, whose“standby”mode enjoys the highest efficiency (0.65W) in the industry, adopted a new packing material consisting of corrugated cardboard for the model. In this paper, the authors explain the new material and the reliability tests that were conducted on it, all of which it had to pass before being used for actual products. The test results are also discussed. 種々の情報を客観的に表1の様にまとめ, 総合点か ら段ボールアドを採用のため検討する事とした。 2 . 採用段ボールアドの概要 図1に段ボールアドの展開図を示す。 破線の部分を谷折り, 2点鎖線部分を山折りして組 み立てる。糊貼りは全く使用しない。材質は K180/ SCP125/K180(B フルート)を使用した。 写真1に段ボールアド単品の形状を示す。尚,右と 左では,わずかながら形状が異なる。これは,カート ン寸法を小さくする為の処置であったが, 作業性や組 み立て性を考慮し,今後は右,左の共通使用を検討す る。 写真2にビデオとの組み合わせた状態を示す。 まえがき 従来から製品輸送途上(流通上)の信頼性を確保す る為に,緩衝材に発泡スチロールを採用してきた。 しかし環境問題が大きな社会問題となり,環境対応 が経営戦略上の重要な課題と位置付られ, また容器包 装リサイクル法(リサイクル法)の 2000 年施行にあ 表1 プラスチック包装材との比較 Table 1 Advantages over conventional plastic packings. 比較(対比:プラスチック包装材) 段ボール パルプモールド 生産性 性能 流通性 価格 設備費 環境性能 × ○ ◎ × ◎ ◎ −1 1 2 −1 2 2 ○ △ ◎ × × ◎ 1 0 2 −1 −1 2 * AV システム事業本部 ビデオ事業部 第1技術部 ― 50 ― 総合点 備考 ◎: 優(+2) 5 ○:微優(+1) △:同等(±0) 3 ×: 劣(−1) 容器包装リサイクル法対応新包装設計 量に収まり,商品にも問題は生じなかった。 表2 クリープ試験 Table 2 Compression test conditions. 項 設定値 条件 環境条件 45℃ 90%RH 荷重条件 {製品梱包質量× (積み段数−1) +パレット 2枚分の製品1台当りの荷量} ×1.5kg 試験期間 4日間 試験結果の 図1 段ボールアド展開図 製品(商品) の目視による異常有無の確認 評価方法 Fig. 1 A sketch of corrugated cardboard packings. 3・2 振動試験 表3に振動試験条件を現す。 この試験では, 従来からの発泡スチロールアドを段 ボールアドに変えたことによる製品表面の傷つきを主 に観察した。 表3 振動試験 Table 3 Vibration test conditions. 写真1 段ボールアド単体形状 Photo 1 Corrugated cardboard packings. 項 設定値 条件 環境条件 室温条件下 加振条件 加速度:1.5G 一定 振動数:5∼50Hz(掃引時間3分) 加振時間 上下方向:70分 左右方向:20分 前後方向:20分 試験結果の 製品(商品) の目視による異常有無の確認 評価方法 写真2 ビデオと組み合わせた状態 3・3 落下試験 表4に試験条件を示す。 段ボールアド, パルプモールドアドは一般的に角を 支える部材が無く,角は空洞になっており発泡スチ ロールアドに比較して“底づき”が発生しやすい。 今回は問題が発生しなかったが, 今後小型化する場 合は注意が必要である。 Photo 2 In use for a VCR. 3 . 採用段ボールアドの各種試験 3・1 クリープ試験 当事業部における過去の事例から表2の高温高湿で の荷重試験を行なっている。但しこの基準は,製品 (商品)を評価するものであって包装資材の多少の変 形は度外している。 今回は全て紙製梱包材である事か ら,この条件でのカートン潰れを重視した。安全率を 1.5 倍とし当該品では 105kg の荷重を附加した。 結果は, 従来の発泡スチロール仕様とほぼ同じ変形 ― 51 ― 3・4 衝撃値の比較 表5に衝撃値を示す。 (1) このデータは下記の条件で測定した値である。 測定装置 :吉田精機製衝撃試験機による等価落下 試験法注)による。角, 稜の試験は未実施。 注:SS 品 303 参照 シャープ技報 第73号・1999年4月 表4 落下試験 表5 衝撃値データ Table 4 Drop test conditions. Table 5 Data of shock value. 項 衝撃値データ 右側面 設定値 条件 環境条件 室温条件下 附加条件 規定落下高さの15%アップ 試験条件 落下手順:1角・3稜・6面 G 値 発泡スチロールアド 70.0 段ボールアド 67.5 差・G値 2.5 1角:50cm 3稜:60cm 製品(商品) の目視による異常有無の確認 評価方法 メカシャーシの平面度・X位置のずれ精度 作用 速度 時間 変化 G 値 作用 速度 時間 変化 15.1 17.2 64.0 58.0 6.0 13.8 16.0 5.58 4.70 G 値 落下高さ : 330 ミリ(これは 60 センチの落下に相 当する) 測定個所 : センサはドラム取付金具(通称:Vベー ス)に設置した。 測 定 値 : この装置は衝撃値(G) ,衝撃作用時間 (ミリ秒), 速度変化値(メータ秒)の3 現象がグラフと数値で表示できる。 今回はピーク値のみを記載した。 (2)結果 上記の通り3現象のデータが得られたが現状では 衝撃値(G)を重視しているのでこれについて比較す る。いずれの落下方向とも段ボールアドの方が低い値 を得た。特に天/底面の差が顕著である。過去ビデオ デッキにおける落下問題は, そのほとんどが天/底面 の落下で発生しているのでこの効果は大きく,メカ シャーシの平面度変化も少なく良好であった。 (3)考察 発泡スチロールアドは素材の圧縮によるたわみによ り緩衝するものであってたわみが限界に達したあとは 反発力に変わる。今回採用した段ボールアドは素材を 破断しながら緩衝するものである為, 反発力が生じな い。実際の試験では,前者は大きくバウンドするが後 者はほとんどバウンドなしに着地する。 3・5 各種信頼性試験結果の比較 表6に試験結果をまとめる。 いずれも問題なく発泡 スチロールからの置き換えが可能である。 発泡スチロールアド 73.0 段ボールアド 52.0 差・G値 21.0 作用 速度 時間 変化 G 値 作用 速度 時間 変化 11.7 15.8 78.0 65.5 12.5 12.0 13.6 5.22 4.40 発泡スチロールアド 163.0 段ボールアド 88.0 差・G値 75.0 作用 速度 時間 変化 7.2 2.3 5.17 4.10 天面 底面 G 値 5.34 3.60 後面 前面 6面:65cm 試験結果の 左側面 G 値 6.72 262.0 0.98 178.0 84.0 作用 速度 時間 変化 4.2 7.3 5.64 5.88 表6 各種信頼性試験の結果 Table 6 Reliability test results. 試験結果 振動試験結果 良好(発泡スチロール品との差はない) 落下試験結果 良好(発泡スチロール品との差はない) クリープ試験結果 良好(発泡スチロール品との差はない) むすび 今後は, 更に組み立て易さの追求や段ボールの材料 削減による簡素化を追求し, 環境に配慮したグリーン プロダクト商品の普及を目指し,検討を続けて行きた いと考える。 謝辞 今回の段ボールアド採用に当たり, 開発試作から量 産まで協力を頂きましたレンゴー株式会社小山工場の 関係各位に深く感謝致します。 ― 52 ― (1 99 9年2月2 5日受理)