...

Title Ursula Renner: "Die Zauberschrift der Bilder

by user

on
Category: Documents
28

views

Report

Comments

Transcript

Title Ursula Renner: "Die Zauberschrift der Bilder
Title
Author(s)
Citation
Issue Date
URL
<書評・文献紹介>Ursula Renner: "Die Zauberschrift der
Bilder" : Bildende Kunst in Hofmannsthals Texten
寺井, 紘子
研究報告 (2008), 22: 159-162
2008-12
http://hdl.handle.net/2433/134490
Right
Type
Textversion
Departmental Bulletin Paper
publisher
Kyoto University
〔
書 評 ・文 献 紹 介 〕
Ursula
Renner:
„Die Zauberschrift
der Bilder".
Bildende Kunst in Hofmannsthals
Texten.
寺 井 紘 子
「
影 響:絵 画 芸 術 は わ た しの 詩 作 に どの よ うに 作 用す るの 羽1―1894年
に ホー フ マ ン ス
タ ール が 記 した この 覚 書 に 、 表 現 媒 体 とい う観 点か ら彼 の 絵 画 芸 術 との 関わ りを考 察 す る こ と
に よつ て 答 え を見 出 し、 問 い と答 え の 両者 を文 化 史 的 に反 照 させ る こ と、そ れ が2000年
に刊
行 され た 本 書 の 目的 で あ る。
筆 者Ursula
Rennerは
、 世 紀 転 換 期 文 学 お よび 絵 画 芸 術 と文 学 の相 関 性 を専 門 と し、1993
年 の初 号 か ら現 在 に 至 るま で 『ホー フマ ン ス ター ル 年鑑 』 の 共 同編 集 者 を務 め る 、 い わ ば 生粋
の ホ ー フマ ンス ター ル 研 究 者 で あ る 。 ホー フマ ンス ター ル 研 究 にお け る他 の 芸 術分 野 との 関 わ
りが 専 ら音 楽 芸術 に集 中 し、 絵 画 芸 術 につ い ての 考 察 は十 分 な成 果を あ げて こ な か っ た 中 で 、
Rennerの
関 心 は か ね て よ り、 ホー フ マ ンス ター ル に とっ て の絵画 芸 術 の意 味 の探 究 に 向 け ら
れ て きた 。
本 書 に 先 立 つ 数 少 な い ホ ー フ マ ン ス ター ル の絵 画 受容 研 究 と して 、 一 つ に は 、作 者 の実 際 の
絵 画 体 験 や絵 画 に ま つ わ る具 体的 言 及 か らそ の絵 画 へ の関 心 の表 れ に 迫 ったBraeggerの
研究
〔1979〕 が挙 げ られ る だ ろ う。 だ が さ らに 、絵 画 芸 術 を知 覚 す る、知 覚 の あ り方 そ の も の に着
目 し、 ホ ー フマ ン ス タ ー ル の 関 心 の 根 源 を 見 つ め なお した と い う点 に お い て 、Re㎜er自
論 考 〔1991〕が 重 要 な位 置 を 占め て い る。 そ こでRennerは
身の
、ホー フ マ ンス ター ル の絵 画 芸 術
へ の 接 近 が 、 芸 術 史 的 な 関 心 か らで は な く美 的 体 験 の 関 心 か らの もの で あ る こ と、 ホー フ マ ン
ス ター ル の絵 画 体 験 が根 底 で は 、 「
形 象 」(Bild)の
の 作家 にお い て
体験 で あ る こ と、 そ して そ う した形 象 が こ
「
生 」 の 内的 体 験 と外 部 体 験 との 融 合 と して捉 え られ 、 自 らの言 語 的表 現 の 指
針 とな り得 た こ とを 示 した。2本 書 で は 、 この考 察 を深 め な が ら、 ホ ー フマ ン ス ター ル の テ ク
ス トに絵 画 的 形 象 が どの よ うに 関 わ っ てい る かが 、 絵 画 芸 術 と文 学 の 相 互 関 係 の視 点か ら詳 細
1Ho伽annsthaL
Hugo vonl 6b㎜e彦
θ隔a」 磁伽 αηd、4晦伽 、
砿F㎜ ㎞rt aM .1980, S380.
2こ こで扱 われ る具体的 な作品は、 『
道で の幸圃(1893)、 『
夏 の旅1(1903)、 『
帰国者の手紙 』(1907)の
第4と 第5の 手紙、そ して1916年 か ら17年 にかけて の遺稿 か らの 覚書のい くつ かである。
―159 一
に 論 証 され て い る。
本 書は 八 章 か ら構 成 され る 。 第 一 章 で は 本 書 の 基 本 的 視 座 が 示 され 、 第 二 章 以 下 で は 、 お お
む ね 初 期 か ら後 期 へ の ホ ー フ マ ンス タール 文 学 の 展 開 に 沿 い な が ら、 ホ ー フマ ン ス ター ル の テ
クス トに お け る絵 画 的 形 象 の機 能 が 具 体 的 に 考 察 され て い る。
導 入 部 にあ た る第 一 章 で は 、 ホ ー フマ ンス タ ー ル の絵 画 へ の 接 近 の 経 緯 と、 「
問 メディア性」
(lnte皿edialit舩)と
Rennerに
い う本 書 の 基 本 的 視 座 が 述 べ られ て い る。
よれ ば 、 ホー フマ ン ス ター ル の絵 画 芸 術 へ の 関心 は 、19世 紀 に起 こ つ て い た 歴 史
主ii鋤 な 傾 向 へ の批 判 に基 づ い て い る。歴 史 主 義 的 相 対 化 と知 覚 の 直 接 性
生の 喪 失 、 そ の 結 果 と
して の
「
生 」 との かか わ りの 希 薄 化 一
こ うした 時 代状 況 に 対 す る 危 惧 は、 概 念 的 言語 の 問 題
性 と して 、ホ ー フマ ンス タ ー ル に 自身 の 表 現 媒 体 で あ る言 語 の 問 い 直 しを突 きつ け た の で あ る。
そ して 、 概 念 的 言 語 に 対 置 され うる もの は 何 か とい う問 題 意 識 の 中 で 、 彼 の 関心 は他 の 芸 術 媒
体 に向 け られ 、 と りわ け 「
絵 画 芸 術 とい う非 言語 的 記 号 体 系 に 一 つ の 答 え を見 出 す 」(S.12)
こ ととな った 。
Rennerは
、 ホ ー フ マ ン ス タ ール に とっ て 、絵 画 芸 術 の特 性 は何 よ りもそ の 形 象 性 に あ つ た
と述 べ る。 絵 画 の形 象 は、 そ れ を 「
見 る こ と」 にお い て
「
生 」 の 内 的 体 験 を生 き 生 き と可 視 的
に形 態 化 す る と と もに 、 あ る外 部 の事 実 の 形 象 と して 外 的 世 界 との 一 体 化 を可 能 にす る。 そ し
て 、 こ う して もた らされ た 内 部 と外 部 の 一体 化 は 、時 代 の 中 で 失 わ れ て い た 個 人 相 互 の 意 思疎
通 と社 会 的 統 合 の 問題 にひ とつ の 可 能 性 を開 く も の に他 な ら な い。 ホ ー フマ ンス ター ル は 、 こ
う して 自 らの テ ク ス トにお い て も、 言 語 を形 象 と して捉 え る形 象 的 表 現 を切 り開 く こ とに な っ
た。
Rennerは
この よ うに 述べ 、 改 め て 、形 象 に お け る 内 的 体 験 の形 態 化 につ い て 取 り上 げ る。
そ もそ も内 的 体 験 その もの が す で に、 独 自の 体 験 で は な く歴 史 的文 化 的 伝 統 に媒 介 され た もの
で あ る と して 、Rennerは
、 ホ ー フ マ ン ス タ ー ル の直 面 して い た 問題 が 、 と りわ け 当 時 の歴 史
主 義 的 傾 向の 中 で の、 内的 体 験 の 独 自性 と伝 統 の 重 圧 との軋 礫 に あ つた こ とを指 摘 す る。 そ れ
に対 す る ホー フマ ンス ター ル の 答 え が 「
再 生 産 す る想 像 力」 で あ り、 そ れ に よ っ て 文 化 的 伝 統
とみ ず か らの 創 造 性 と を融 合 させ る こ とで あつ た 。 そ うして ホ ー フ マ ン ス ター ル に とっ て 、 他
の 伝 承 的 テ ク ス トの積 極 的 な 取 り込 み-す
本 的 な手 法 に な っ たの だ 、 とRennerは
なわ ち、 「
間 テ ク ス ト'性
」(lntertextualit舩)が
基
述 べ る。 そ して視 覚 的 人 間 で あ つた ホ ー フマ ン ス ター
ル に とって は 、伝 承 の なか で も と りわ け絵 画 的 形 象 の伝 承 が 内 的 体 験 と不 可 分 な もの で あ り、
それ ゆえに 「
問 テ クス ト性 」 の 一 つ と して の 「
問 メデ ィア 性 」 は 、 ホー フマ ン ス タ ー ル の テ ク
ス トの重 要な 手 法 として 注 目され ね ばな らな い 。
Rennerは
、 こ のよ うな 「
間 メ デ ィア性1(テ
クス トの 中 に絵 画 的 形 象 が 取 り込 ま れ る こ と)
-160一
の具体的 な戦略 として、 「
絵 画的形象 の引用 」[連想」「シ ミュ レーシ ョン」な どをあげ、そ の具
体的 な絵画 とのかかわ りを第 二章以 下で考察 している。
第二章でRennerは
、絵画 的形 象の体験 の叙述 を中心に捉 えなが ら、ホー フマンスタール 自
身が言葉 によって二枚の絵 を描 き出 した、1894年 の小 品 『
絵画』(Bilder)を 、まず は詳細 に
分析す る。具体 的には、そ こに描 き出 され る生 と死のア レゴ リーを、モデル として想 定 され る
絵画の幾つ かや類似 す る詩の提 示 によつて浮 き彫 りに し、ア レゴリー を生動 化する絵画的形象
の あ り方 を明確 に してい る。 次 に、 こ うしたア レゴリー の生動化が窺 える作 品 として 『
道 での
幸福』(Das Gl
kam
Weg)を 取 り上げ、 さらにはこの作 品に窺 える同時代の画家ベ ック リン
の神 話 世界 につ いて の考 察 が加 え られて い る。 そ して 「
視 覚 的相 関的 テ クス ト」(Visue皿e
Intertext)の 明確 な例 証 と して、このベ ック リンの神言
甜研ii壕が深 く関わってい る 『ティツィ
アー ノの列(刀 α7醒(ね βz励)を
分析 している。
続 く第三章 では、ホー フマ ンス タール が絵画芸 術の中でも と りわ け強 く惹 きつけ られたイ ギ
リス絵画 の一派 、ラフ ァエル前派 が取 り上げ られ、 「
画家 一詩 人」とも 「
詩人 ―画家 」とも呼 ばれ
るこの一派 におけ る、絵画 と文学の融 合が論 じられ る。Rennerは
、 とりわ けバー ン ・ジ ョー
ンズの絵画 とゲオル ゲの詩の親 近性を取 り上 げる ことによって ラファエル前派 の象 徴性の特 性
を浮 き彫 りにす る と共 に、絵 画表現 と文学表現が ともに、象 徴化(記 号 化)と い う手法 によつ
て、混沌か ら生 き生き と した 「
生」 を創 り出す機能 を有す るこ とを解 明す る。 そ してまさにこ
の象徴 性 とい う点 において、 ラファエル前派 の絵画 は、芸 術がいか にそ の構造 の中で体験 を共
通体験 と して伝達 可能な らしめ るか、 とい うホー フマンス タールの問 いに一つ の答 えを与 えた
のだ と述べ る。
絵画表現 及び言 語表現の相 関的 メデ ィア として の機能 は、 この後第 四章 と第五章 で、さ らに
具体 性をもって示 され る。第 四章で は、『
窓 の女』(.DieFrauim
Fenster)が ダヌンツィオの戯
曲を下敷 きにす る とともに、 ミレー の絵画 を 「
身振 り言語」 として取 り入れて いることが論 じ
られ る。 また この作 品に描かれ る窓 と女 性のモチー フの象 徴的意味が考察 され 、絵画芸術の特
徴であ る空間的拡 が りが、本知 寺間的 に展開す る文学 に取 り込 まれ、 これ によつて文学に対 し
て空間 的な広 が りの可能 性が与 え られ てい るこ とが論 証 され る。 また第五章 では、 『
夏 の旅 』
(Sommerreise)に お け るジ ョル ジ ョーネの故郷の風景に即 して、ホー フマ ンスタール 自身の
絵 画体験が どのよ うに彼 自身 の体験 と重ね られ、新 たな重 層的形象 と して創 造 されていつたか
とい う、知覚 と創造 のプ ロセ スが論 及 されてい る。
さらに、第六章 ではバル ザ ックに傾 倒 していた彫刻家 ロダンが取 り上 げられ、 同 じくバルザ
ックを高 く評価 していたホー フマ ンス タール の、 ロダンへの接近にスポ ッ トが 当て られ る。 そ
して絵 画 にとどま らない、彫刻 の分野 にお ける視覚芸術の創造 性
生が、 と りわ けイ ンス ピレーシ
ー161一
ヨン の機 能 に注 目 しな が ら考 察 され て い る。
続 く第 七 章 で は い よ い よ、 言 語使用 の 不 可 能 状 態 に 陥 つた チ ャ ン ドス卿 と状 況 を 同 じ くす る
主 人公 が 、 ゴ ッホ の絵 画 を 「
見 る体 験 」 に よ って 生 き 生 き と した 世 界 との新 た な 関 わ りを取 り
戻 す さま が描 か れ た、 『
帰 国者 の 手 紙 』(13ie Briefe des Zurzickgekehrten)が
扱 わ れ る。 そ し
て最 終章 で は 、前 章 で もテ ー マ と され た 、 「
見 る 体 験 」に お け る 形 象 を介 して の 内 部 と外 部 の 一
致 の 体験 が 引 き続 いて 考察 され 、ホ ー フマ ン ス ター ル が 後 年 強 い 関 心 を 寄 せ た ニ コ ラ ・プ ッサ
ン とそ の神 言
甜 絵 画世 界 に即 して、 ホー フマ ン ス タ ー ル にお け る、 伝 統 的文 化 的 形 象 の も とで
の 内 部 と外 部 、個 人 と社 会 との統 合へ の志 向 が論 じ られ て い る 。
Rennerは
本 書 にお いて 、 ホ ー フマ ンス ター ル の絵 画 との 親 近 性 を 、根 本 的 に 「
生」の形態
化 と して の 形 象 性 の体 験 に よ る も の と捉 え る と と もに 、 「
問 メ デ ィア 性 」の視 点か らホ ー フマ ン
ス タール の テ クス トに お け る絵 画 的 形 象 との相 互 関 係 性 を綿 密 に分 析 した 、「
間 メ デ ィア 性 」あ
るい は 「
間 テ クス ト性 」 は現 代 文学 理 論 に お い て 一つ の 定 説 とな つ て い るが 、Rennerは
に お い て 、 ホ ー フ マ ン ス ター ル のテ ク ス トがす で に19世
本書
紀 末 の 頃 か ら こ うした 相 互 関 係 性 を
意 識 的 に 実 践 して い た こ とを論 証 した。 そ の 意 味 で 本 書 は 、 ホ ー フマ ン ス タ ー ル の テ ク ス ト読
解 に新 た な 光 を当 て た もの と して 高 く評 価 で き る。 表 現 媒体 の 相 互 連 関 に つ い て の 考 察 は 、他
の メデ ィア 連 関 の 中で も今後 さ らに発 展 的 に 論 じ られ る で あ ろ う。
本 書 は ま た 、 この 「
間 メデ ィ ア性 」 を浮 き 彫 りに す る た め に 、そ こ に創 り出 され た イ メー ジ
に 関連 す る と思 わ れ る 絵 画 を 図 版 と して 多 用 して い る。 彼 女 に よ つ て選 ば れ 、 使 用 され た 図版
はお よそ120点
あ ま りに もの ぼ り、 この補 助 資料 に よ つ て本 書 で追 究 され るテ クス トと絵 画 の
相 互 関 連 性の 理 解 が促 され て い る。 た だ し、 これ らの 絵 画 の集 ま りに はRenner自
身の紡 ぎ出
したイ メー ジが 選 択 的 な もの で あ り、 ま た 新 た に 付 け加 わ っ て い る こ と を忘 れ て は な らな い。
そ こで 今 度 は さ らに、Rennerの
イ メー ジ を踏 ま え た 上 で ホ ー フマ ン ス タ ー ル の テ クス トに 立
ち戻 り、 そ の 絵 画 的 形 象 性を 読 み 取 り直 す とい う作 業 が 我 々 に は要 求 され るで あ ろ う。
(Freiburg im Breisgau
Rombach
2000)
参考文献
Braegger,
Carlpeter:Das恥
bildende Kunst.
Renner,
und
Bern
Ursula:Das
Begegnungen
Schmidt.
W
zburg
召融und
das Plastische―Hugo
von Hofmmulsthal
und
die
1979 u.a.
Erlebnis des Sehens. In:Hugo
mit deutschen
Zeitgenossen.
1991.
-162一
uon Hofmannstha!‐Freundschaften
Hrsg. von Ursula
Renner/G.
B舐bel
Fly UP