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電車線路支持物 の 歴史

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電車線路支持物 の 歴史
第1章
電車線路支持物の歴史
001
1-1 電車線構造の歴史
⿎ ⿎電車線構造の基本形
電車線とは、電気車に直接電気を供給する設備の名称で、最も単純なものとし
てトロリ線 1 本だけの方式があります。しかし、初期の電気鉄道においては正負
のトロリ線を 2 本並べた架空複線式で、2 本のトロリポールで集電していました。
その後、き電回路の構成方法が工夫され、正の回路にトロリ線、負の回路に軌
条(レール)を使用する事により、トロリ線 1 本だけの電車線構造が実現し、パ
ンタグラフによる集電方式が可能となりました。
この方式が実現したため、電車線路設備だけでなく集電装置も非常に単純化さ
れることになり、その後の高速集電に欠くことのできない方式となり現在に至っ
ています。
図表 1-1 及び 1-2 は電車線構造の基本形をイラスト化した概要図です。
変電所
トロリ線
道路面
図表 1-1 架空複線式電車線
トロリ線
変電所
軌条
(レール)
図表 1-2 架空単線式電車線
002
第1章 電車線路支持物の歴史
⿎ ⿎代表的な電車線構造
電車線の構造は、全てに共通するトロリ線とこれを支持する吊架線・補助吊架
線及びそれらを結合するハンガ・ドロッパ等で構成されています。その特徴は、
支持点付近の構造の違いで見分ける事ができます。
図表 1-3 ~ 1-11 は、その代用的な例です。
図表 1-3 架空複線式(トロリバス)の例
図表 1-4 架空単線式(路面電車)の例
図表 1-5 直吊式の例
図表 1-6 シンプルカテナリ式の例
図表 1-7 変形 Y 形式の例
図表 1-8 ツインシンプル式の例
003
図表 1-9 コンパウンド式(在来線)の例
図表 1-10 コンパウンド式(新幹線)の例
図表 1-11 インテグレート式の例
ヒトクチメモ
⿠架空複線式:トロリ線
⿠
2 本で「き電回路」を構成する電車線
⿠架空単線式:レールを帰線としトロリ線
⿠
1 本で「き電回路」を構成する電車
線
⿠直吊式:トロリ線をイヤー等で直接支持する電車線
⿠
⿠シンプルカテナリ式:トロリ線と吊架線で構成する電車線
⿠
⿠変形
⿠
Y 形式:変形 Y 形カテナリ式の略称でシンプルカテナリ式を改良した電
車線
⿠ツインシンプル式:シンプルカテナリ式
⿠
2 組を並列に設備した電車線
⿠コンパウンド式:トロリ線と補助吊架線及び吊架線で構成する電車線
⿠
⿠インテグレート式:トロリ線とき電吊架線で構成する電車線
⿠
注:図表に記載した名称は、スペースの事情で略称を使用しています。
004
第1章 電車線路支持物の歴史
コラム①
今では記念構造物
ここで紹介する設備は、大正時代に設備されたと思われるもので、構造と
デザインに美観の要素が組み込まれていて、設計された人々の思いが込めら
れているようです。貴重な設備ですが、間もなく姿を消すのではないかと思
われますので、写真に残したものです。大事な鉄道記念構造物ではないかと
思います。
⿙ ⿙東京駅の設備
この設備は、東京駅のホーム上屋に設備されているため、注意しないと見
逃しそうです。設備されたのは京浜東北線の電気運転か東海道線電化に伴う
工事と思われますが、今でもコンパウンド架線を両側に支持した現役です。
ビームの主材と斜材の間を円形の補強材で接合していて、強度を補いつつ
美的に仕上げている点には敬服致します。更に、接合部がリベット構造であ
ることから、当時「電気鍛冶」の仕事人がいたのではないかなどと想像して
います。
(図 A 参照)
⿙ ⿙田町品川間の設備
この設備は、京浜東北線と山手線の立体交差箇所に見られ設備です。京浜
東北線と山手線は、田町駅では方面別に同じホーム、品川駅では線別に同じ
ホームとなっているため、この駅間にはインターチェンジが必要になります。
詳しい時期は分りませんが、立体交差化の工事で設備されたものと思われま
す。
東京駅の設備と同じような設計と施工技術が込められています。
(図 B 参照)
図 A 東京駅の設備
図 B 田町品川間の設備
005
1-2 電車線構造とその支持方法
⿎ ⿎電車線の支持方法
電車線の構造は、直吊架線方式から始まり、シンプルカテナリ方式、コンパウ
ンド架線方式へと高速化に向けて進化し、
更に、
車両の編成が単独編成から複数編
成となり負荷電流が大きくなるに従い、
大きな電流容量が必要になってきました。
このため、
直流電化方式ではき電線を併設し大容量化時代へと変わってきました。
また、鉄道に対する輸送力のニーズが高くなるに応じて、単線鉄道が複線鉄道
へ、
更には複々線鉄道へと進んできました。
従って、
単線鉄道の電車線路支持物は、
ごく軽易な構造で間に合っていたため、
木柱と固定ブラケットビームが構造の主
体でしたが、複線化・複々線化の時代になりビームの構造は大きく変わりました。
本書では、電車線を支持するビームをテーマに、その構造や使用する材料の変
化の道をたどりながら、過去・現在から未来の事も考えてみたいと思います。
電車線を支持するビームの構造には、大きく分けて固定式と可動式があります
が、可動式は高速対応の設備で、本格的に使用されるようになったのはわずか数
十年前の事になります。図表 1-12 ~ 1-15 は、固定式と可動式の代表的な設備
例です。
図表 1-12 固定式(一般箇所)の例
図表 1-13 固定式(平行箇所)の例
図表 1-14 可動式(在来線)の例 図表 1-15 可動式(新幹線)の例
006
第1章 電車線路支持物の歴史
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