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3-1 自然・国土

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3-1 自然・国土
日鐵物流 株式会社
五洋建設 株式会社
財団法人 沿岸開発技術研究センター
株式会社 谷村建設
第3章
山上
中野
土屋
田代
浩二
寛和
勲
学
マーシャル国事情
3−1自然、国土
(1)国土
マーシャル諸島共和国はオーストラリアとハワイの中間、
赤道の北、日付変更線の西に位置する。北緯 4∼14°、東経
マーシャル諸島共和国
(Repubric of the Marshall Islands)
2
160∼173°に広がるマーシャル諸島には、200 万km の広
大な海域に 5 つの独立した島と 29 の環礁が存在し、全て合
わせると約 1,225 の珊瑚島が点在している。陸地の総面積
は 181km2 で、ほぼ日本の湖である霞ヶ浦と同じ大きさであ
る。環礁群は約 240km 離れた 2 つの列島に分けられ、北西
から南西方向に並行して 1500km 延びている。東側がラタッ
ク列島、西側がラリック列島と呼ばれる。マーシャル語で
ラタックが「日の出」、ラリックが「日の入」を意味する。
約 3000 年前までに、火山島の周りに溜まった珊瑚礁が小
さな新たな島を形成した。その島が輪の形に残り、その中
にはラグーン(礁湖)ができた。それが今日のマーシャル
諸島である。陸となっている部分は狭く、山も川もない島
が繋がってできている。これらの島々の平均海抜は 2∼3m
である。
面積 181 km2(霞ヶ浦とほぼ同じ大きさ)
人口 50,840 人
首都 マジュロ(Majuro)
民族 ミクロネシア系(カナカ族)
主要言語 マーシャル語、英語
宗教 キリスト教
政体 共和制
1 人当り GDP 1,830 ドル
通貨 米ドル
電話の国番号 (692)+(相手先番号)
(2)気候
マジュロの月別気温と降水量
海洋性熱帯気候で湿潤高温である。年間平均気温は 27℃で 1 年を通
700
600
涼しく過ごし易い。雨は日中より夜間に降る方が多い。降水量は少なく、
程度、1 月から 3 月は 200mm 程度である。また 7∼9 月は比較的風が弱
くなり風が凪ぎ(平均風速 2.8∼3.7m/s)
、台風の影響を殆ど受けない。
25
(℃)
500
(mm)
年間平均 3,600mm 程度で、一番よく降る 10 月から 11 月が月平均 400mm
30
800
じてほぼ一定である。日中の日差しは強いが、海からの貿易風で朝夕は
400
300
20
200
100
0
15
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10 11 12
月
降水量
3−2経済、社会
気温
(1)経済
貨幣経済と伝統的自給経済が混在している。国内の生産は
主要産業
農業(コプラ、ココヤシ油)
高くなく生活必需品の多くを輸入に依存しており、貿易収支
GDP
96.1 百万ドル(2001 年、世銀アトラス)
は恒常的に赤字である。政府の歳入の約 6 割は、自由連合盟
1 人当り GDP
1,830 ドル(2001 年、世銀アトラス)
約に基づく米国からの政府援助金であるが、今後援助の削減
物価上昇率
5.6%(1985 年∼1994 年平均、世銀アトラス)
総貿易額
(1)輸出
も予想されるため、民間セクター育成等、経済構造改革に努
めている。
マーシャル諸島の主な産業は、農業、水産業及び観光業で
9.1 百万ドル(00 年)
(2)輸入 54.7 百万ドル(00 年)
貿易品目
主要援助国
(1)輸出
水産物、コプラ製品
(2)輸入
食料品、機械・車輛、製造品
米国
43.4 百万㌦(DAC ベース、00 年)
ある。農業は、コプラの生産量が中心であり、主な輸出品と
日本
3.1 百万㌦
して収入源になっている。その他の農作物はタロイモ、パン
豪州
0.6 百万㌦
二国間 ODA 合計 47.1 百万㌦
の実、バナナ等である。水産業は、国内消費を目的とした沿
日本からの
岸漁業に加え、日本、中国、台湾等の外国漁船からの入漁料
援助
収入がある。1992 年に始まったハワイ向け空輸事業によって
マグロ、カツオの生産は増えている。
マーシャル政府は、外貨獲得のため、観光産業に力を入れ
<01 年度まで累計>
なし
(2)無償資金協力
0.46 億円
なし
94.70 億円
(3)技術協力
1.86 億円
21.42 億円
日本との
日本の対マ−シャル貿易(98 年、通関統計)
経済関係
(1)貿易額
ており、ダイビング、スポーツ、フィッシング等をセールス
ポイントとして、米国や日本からの観光客誘致に努力してい
輸出
452 百万円
輸入
392 百万円
(2)主要品目(%)
る。訪問者数は、2001 年統計で合計 5,399 人、そのうち、米
国人が 1,922 人、日本人が 933 人となっている。なお、日本
からの観光客数は、1995 年には 139 人であったが、2001 年
<01 年度実績>
(1)有償資金協力
輸出
機械類(43)、自動車(10)、鉄鋼製品(9)
輸入
魚介類(94)
(3)日本からの直接投資
在留邦人数
1社
59 名(2001 年 10 月現在)
には 659 人と約 5 倍に増えた。
貿易関係では、日本は米国に次いで重要な貿易相手国である。マーシャル諸島からの対日輸出の殆どがマグロ、
カツオで、日本からの輸入は機械、車輌、食料品等である。
マグロの陸揚げ(マジュロ デラップ埠頭にて)
マグロの缶詰め工場(マジュロにて)
(2)社会
公用語はマーシャル語と英語。島民同士の会話はほとんどがマーシャル
語、政府機関などの公式書類は英語である。また、歴史上の経緯により、
年輩の人で日本語を話せる人もいる。
教育は米国の教育制度を取り入れており、エレメンタリースクール 7∼8
年、ハイスクール 4 年である。大学は、マーシャル諸島短期大学がある。
宗教は大部分がプロテスタントで、会衆派協会、神の議会、プロテスト、
安息日再臨派などに分かれている。カトリック教徒はミクロネシアの他の
国に比べると少ない。
マジュロの人々(マジュロにて)
小学校(マジュロにて)
小学校の子供達(マジュロにて)
公立高校(マジュロにて)
3−3マジュロ事情
(1)全般
マジュロ環礁は北緯 7°05′東経 171°23′に位置する 57 の小島が 100km にわたってつながる細長い楕円形で、
その約半周に及ぶ 50km が舗装道路で結ばれ、1 つの長い島をかたどっている。島の幅は一番広いところでも 2km ほ
どであり、海抜の最高値は 6m しかない。
マジュロには約 2 万 4,000 人の居住者がいる。環礁の東部に、首都マジュロの中心街である 3 つの島、ダリット
(Darrit)とウリガ(Uriga)、デラップ(Delap)があり、頭文字をとって D.U.D 地区と呼ばれている。空港から DUD
方向(東)へ 8 キロほどのところに、ブリッジがある。これは、マーシャル諸島共和国内にある唯一の橋である。
マーシャルの島々にとって、昨今の世界的現象である地球温暖化
による海面上昇と異常気象は、最も深刻な問題であり、環礁で形成
されているこれら島々では、海没や環境破壊の影響を受けるものと
考えられている。平均海抜が 2m しかないマジュロ島では、海面が 1m
上がれば 80%の土地が海に沈むといわれている。
マーシャル諸島共和国の二酸化炭素排出量は世界全体の 0.004%に
も満たなく、温室効果ガスを最も多く排出している我々先進国にと
って、環礁群の国土保全は一刻も早く取組むべき課題の一つである。
IPCC(国際機関)の最新報告書では、2100 年までに 90cmの海面上
昇が発生するといわれている。
礁湖内よりデラップ付近を望む
(2)デラップ地区
デラップ地区はマジュロ橋を超えてはじまり、この地区には、政府機関や議事堂、病院などの首都機能が集中し
ている。また西側の礁湖に面した場所に長さ 300m のデラップ埠頭があり、離島への定期船やコプラ回収船の母港と
なっており、大きな貨物船や旅客船も入港できる規模と設備が備え付けられている。マジュロは通関港となってお
り、外国数社の定期便(日本:協和海運、米国:PM&O LINE 等)が就航している。
環礁の外側には、大きな埋立て場所が広がっており、島内から出る生活廃棄物がダンピングされている。ゴミは
島内の道路付近の空き地にダンプパレットが設置されており、定期的に回収されている。それ以外のスクラップ等
の回収が困難な不燃物(特に自動車)は、至るところに放置されており非常に島の景観を乱している。環境につい
ての教育が遅れており、島民の環境に対する意識は低く、不燃物を含む全てのゴミはいずれ土に返ると思っている
人さえいる。政府はゴミ処理と土地造成を課題として取り上げているが、財政的に余裕が無く、これら問題の解消
を一部の民間企業に委ねているのが現状であり、海外からの援助に大きな期待を寄せている。
マジュロ政府庁舎
メイン道路
気象台の広場で遊ぶ子供達
議会は一院制で議員数は 33 名、任期は 4
交通量は多く、朝と夕方には渋滞もある。
国土の少ないマジュロでは、あらゆる場所
年。大統領は議会において選出され、閣僚
は大統領が指名する。
タクシーが多く、路線バスも走っているた
め島内の移動には不自由しない。
が子供達の遊び場となっている。人口増加
率も高く土地造成は急務な問題である。
デラップ埠頭(東側より望む)
デラップ埠頭(西側より望む)
デラップ埠頭(海側より望む)
マグロ漁船が着岸し揚荷をしている。写真
離島への定期船が着岸している。マジュロ
PM&O LINE 社の定期コンテナ船が荷揚げし
左側がコンテナヤードとなっている。海外
は通関港であり輸入された生活物資等が離
島へ輸送される。
ている。日本からも定期船が運航している。
(協和海運 CORAL ISLANDER Ⅱ DWT17500t)
からの定期船の入港も多い。
ゴミ埋立て現場(環礁外)
ゴミ埋立て現場(環礁外)
ゴミ回収パレット
海底より引揚げた岩礁で護岸を築き、内部
ダンプされたゴミはブルドーザーで整地さ
ゴミは街中の道路付近に置かれたダンプパ
にゴミをダンピングしている。環境には悪
れる。ゴミは既に飽和状態にあり、ダリッ
レットに捨てられ、定期的に回収される。
影響ではあるが、島民にとって土地造成と
トやウリガ地区に別の場所を政府や民間有
その殆どが満杯となっており、家庭からの
ゴミ問題は最優先事項となっている。
力企業によって検討されている。
ゴミがいかに多いかを示している。
(3)ウリガ地区
ウリガ地区は、ダウンタウンとも呼ばれるマジュロの中心地で、一番賑やかな地区である。ホテルやレストラン、
ツアー会社やスーパーマーケットが集まっている。これらスーパーにて生活必需品はウリガ地区にはデラップ・ド
ックより一回り小さい港(ウリガ・ドック)があり、ここには日本からのマグロ漁船が入港する。環礁外側には浅
瀬が広がり、将来のゴミ捨て場の候補地とされている。この地区には学校や民家も多く島民の生活の中心地となっ
ており、ゴミが人々に与える影響が懸念される。
ウリガ埠頭(先端より望む)
ウリガ埠頭(先端を望む)
埠頭付近のスクラップ群
ウリガ埠頭は L 字型の突堤となっており、
突堤先端には新造の大型観光船が停泊して
ウリガ埠頭の付近にスクラップが山積みと
海側岸壁に貨物船や漁船が着岸し、陸側岸
壁にレジャーボートが停泊している。
いるが、進水して間もなく故障し、未だ修
理はされていない。
なっており、景観を乱している。このよう
な鉄スクラップは島内の所々で見られる。
スーパーマーケット
環礁外側の浅瀬
浜辺で遊ぶ子供達
輸入された食品、衣類、雑貨など生活用品
環礁外側には広範囲に浅瀬が広がりゴミ捨
浜辺は子供達の遊び場として生活の場所の
が売られている。物価は米国なみで島民に
とっては高いが生活には困らない。
て候補地となっとおり、既にスクラップや
廃タイヤなどのゴミが捨てられている。
一部となっている。今後、ゴミ捨て場所に
なった時、彼女たちの健康が心配される。
(4)ダリット地区
ダリット地区のことをローカルな人はリタといい、舗装道路の北端にある集落である。ここは主に住宅街となっ
ており、観光客が出掛けることは少ない。ちなみに空港からリタの端(道路の終点)までは約 17km ある。
礁湖内沖合には船舶の泊地として最適なダリット錨地がある。環礁外側には浅瀬が広がり、干潮時には沖合い 300
∼500m にわたり海面から岩礁が現れる。この浅瀬はウリガ地区同様に将来のゴミ捨て場の候補地とされている。
住宅街の情景
道路の終点
ダリット地区の先端
一般的な民家は 1 階立てで小さい家屋が多
生活場所の拡大のため、橋の建設や道路延
送電線の海底ケーブルが隣の島に繋がって
く、平均して 1 家族 10 人以上もの人が同居
している。借家は日本並に高家賃である。
長が期待されているが、厳しい政府財政で
は海外支援に期待する以外に方法はない。
いる。離島にも居住地はあるが、3 大地区
に比べるとごく小数である。
ダリット錨地
ダリット先端を望む
干潟
底質が軟岩であり、水深は 27.4m∼47.5m で
礁湖内へは、環礁北側の中央にあるカロリ
潮高は大潮升で 1.8m、小潮升で 1.2m であ
北及び東の風を防ぐことができる。マグロ
の母船団が錨白している。
ン水路(幅 2800m)を航行して入港する。
険礁点在のため水先人乗船を強制される。
り、干潮時には広範囲にわたり海底が現れ
る。
(5)ロングアイランド地区
空港からブリッジまでの区間はロングアイランド地区で、ここには日本大使館、アメリカ、及び台湾などの大使
館がある。空港の東側に島内で唯一の貯水場があり、淡水レンズと呼ばれる地下水層から汲み上げた地下水や雨水
を貯めており、生活及び工業用水を確保している。また、島内のあらゆる建物には雨戸井とタンクが備えられ、生
活用水を自給で補っている。しかし、島の降水量は年々減少しており、慢性化している水不足をさらに悪化させて
いる。降水量の減少は地球温暖化による異常気象によるものと考えられている。
貯水池
一般的な民家と雨水タンク
マジュロ空港滑走路(西側から)
(6)その他
輸送車輌
デラップ埠頭で荷揚げされたコンテナはコ
ンテナシャーシによって、島内の各地区の
商店などに輸送されている。
石油備蓄基地
ウリガ地区に石油備蓄基地がある。
岩礁採石現場
海底の岩礁は土地造成の資源として掘り起
こされている。海岸の所々に採掘後に深く
なった場所が見られる。
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