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それぞれの道を進んでいく - [LOGI-BIZ]:月刊ロジスティクス・ビジネス
第 9回 それぞれの道を進んでいく 世界各国からの留学生たちは、アメリカで学んだことをどの ように生かしていくのでしょうか。さわちゃんのクラスメート たちが卒業後の計画について語ってくれました。 (本誌編集部) S 総勢7600人を送り出した、OSU春学期 の卒業式 Sawako ゆきちゃん、暑い日が続くけど、元気にしてる? OSU(オハイオ州立大学)では6月に卒業式があって、フィ ッシャーカレッジ内のMBAを含む大学院では約200人、OSU 全体としては約7600人の門出となったよ。新設プログラムの MBLE(ビジネスロジスティクス工学修士課程)でも2人の卒業 生を送り出したんだ。 Y Yuki 写真を見たけれど、スタジアムでの卒業式のスケールは圧巻 だね。アメリカで勉強するインターナショナルの学生が卒業後 にどんな進路をたどっているのか、とても興味があるよ。 S Sawako まず簡単に説明しておくと、MBLEの第1期生は、春学期(3 月末∼6月)で修了する学生と、夏の間をバケーションやイン ターンで過ごし、秋学期(9月∼12月)で修了する学生に分か れるの。 Y Yuki なるほど。さわちゃんは、秋学期の卒業だよね? 夏の間は 何をしているの? 現地企業でインターンシップ S Sawako DSC Logisticsという3PL企業が運営するコロンバスの倉庫 で、エンジニアリングインターンをしている。あるシステムを導 入するプロジェクトの一員として、毎日8時から夕方5時までフ ルタイムで働いているよ。 倉庫にこもって、現場の人と話をしながらデータを集めて分 析したり、作業動態を観察したりしてベストプラクティスを追 求するプロジェクトなんだ。私のインターンは、プロジェクトが 完結する9月中旬までの予定。 春学期に履修したシックスシグマのクラスでDMAIC (Define, Measure, Analysis, Improve, Control)を勉強したから、測定の心構え AUGUST 2006 76 や注意点など、授業で身につけた知識がインターンの土台になって いるのは確か。授業のありがたみを実感しているの。 Y Yuki インターンシップが見つかってよかったね。私たちの目的の ひとつである、実務からみた米国企業と日本企業のロジスティ クス比較にもヒントになりそうだし、さわちゃんが学んだことを 実務に応用してみるチャンスでもあるね。 ところで、MBLEの他の学生も、やはりロジスティクスプロ バイダー関係のインターンが多いの? S Sawako 人によってさまざま。製造業の需要アナリストをやっている 人もいるし、ロジスティクスプロバイダーでも、本社のオフィス で新顧客を発掘するためのリサーチをしている人もいるよ。 Y Yuki 学生達は、インターンシップ先をどうやって探すの? S Sawako 基本的に、フィッシャーのキャリアサービスが窓口となり、仕 事を探している学生と、仕事内容に適した人材を探している企 業の橋渡しをするの。キャリアサービスセンターには企業の担 当者が面接で使用できる小さな部屋がいくつも用意されていて、 一次面接はそこで行われることもあるんだ。 Y Yuki インターンシップは日本でもメジャーになりつつあって、大 学の授業の一環として選択できるところもあるみたい。他の日 本人学生は、どんな所でインターンをしているの? S Sawako 現在、フィッシャーのMBAには日本人学生が6人いるのだけ ど、そのうち2人の方は、日本にある外資系企業でインターン をしているようだよ。 Y Yuki アメリカで学ぶことの面白さは、やはりいろいろな夢や希望 を持った多国籍の学生達と勉強することだよね。みんな、母国 であるいは異国で、未来に向けてどんな夢を持っているの? 留学生たちの将来設計 S Sawako MBLEだけでなく、同じ授業を履修するMBAやIE(Industrial Engineering:産業工学)の学生と接することで、彼らの夢や 抱負に感化されることも多かった。今回は、ナイジェリア、イ ンドネシア、中国からの友人に、将来の抱負について語っても らったよ。 77 AUGUST 2006 CHIDI CHIDI 私はアフリカのナイジェリア出身。大学からヨーロッパに留 学しました。フィンランドの大学を卒業後、ヨーロッパの医薬 品流通業界で実務経験を積むうちに、大学院進学を意識するよ うになりました。大学時代に使用したロジスティクスの教科書 がOSU教授のDr. Lambertのものだったことが強く影響し、OSU のMBLEプログラムに入学したわけです。現在はコロンバスで 需要アナリストとしてインターンシップをしています。 夢は、アフリカ大陸でモノを横断・縦断させるインフラ作り に関わることです。祖国ナイジェリアのために、勉強したロジ スティクスのアイデアや大切さを、大学や政府系機関にも唱え ナイジェリア出身のCHIDI(左)とインドネ シア出身のARIE(右) ていきたいです。 Y Yuki とても素敵な夢。ロジスティクス未開の地のプラットフォー ムを構築していく沢山の人のうちの1人として、母国のためにも 活躍してほしいね。 それにしても、どこの国においても、OSUのDr. Lambertの 本がロジスティクスの教科書として広まっていることはすごい ことだね。さすがロジスティクス研究の先進国、アメリカ。 この教科書のように、典型的な学問としてのロジスティクス と同時に、各国の産業の業態によって異なる商習慣や仕組みを 織り込んだ教科書も必要だね。CHIDIがナイジェリアのロジス 中国出身のWILL(左)とYONGYI(右) ティクスリーダーを目指す中で、アフリカのロジスティクスの 教科書をつくる日が来るかもしれないね。 ARIE ARIE 私はインドネシア出身。OSUのエンジニアリングを卒業後、 コンピューターのプログラミングの資格(Aプラス)を取得し、 Pitney Bowesというメールサービスの会社に勤務していました。 インドネシアの海運会社、Meratusline(従業員約1500人)と いう会社を経営する父親のすすめもあり、MBLEに入学しまし た。現在はインターンとして、ロジスティクスプロバイダーでリ サーチャーの仕事をしています。 将来の夢は、祖父の代から続いている、父の会社に貢献する ことです。また、もっと勉強して、内国物流が多いインドネシ アのロジスティクスの発展にも寄与することが私の目標です。 Y Yuki 有人島だけでも4000弱あると言われるインドネシアで、国内 最大の内航船専業の船会社だね。アメリカで学んだ体系的なロ ジスティクスを、資源豊かな母国の海運業の発展やロジスティ クスの仕組みづくりに、現地の商習慣やローカルルールに合わ せた形で役立てられるといいね。 S Sawako MBAのクラスメートも話に参加してくれたよ。 AUGUST 2006 78 & ONGYI & WILL WILL YONGYI 私達は中国出身。春にMBAを卒業しました。私(YONGYI) はもともと、中国でITを軸としたコンサルティングの会社を起 こすことを念頭においてOSUのMBAに入学しました。MBAの 授業のディスカッションの中で、WILLが実際に行っていたコン サルティングの話を聞き、それに感銘を受けて共同出資の話を 持ちかけたわけです。フィッシャーはビジネスのパートナーとめ ぐり会うきっかけまで与えてくれたことになりますね。 政府にネットワークを持つ共同出資者がいるので、企業の設 立はスムーズにいきました。StreamLineという新会社で、現在、 走り出しながら、いくつもの案件を抱え、忙しい日々を送って います。私は中国に戻って経営に関わり、WILLはアメリカから プロジェクトベースにて仕事をすることになります。 中国では、政府とのネットワークを持っているのがビジネス 成功の鍵です。コンサルティングは、中国ではまだ浸透しきれ ていない領域なので、苦労することもあります。しかし、ロジ スティクスは中国で大変ホットな分野であるので、今後ビジネ スは成長していくと確信しています。 Y Yuki 中国政府とのネットワークをベースに持ち、アメリカのロジ スティクス体系を理解した上で、自分の国に合ったロジスティ クス政策を提案する、という彼らのニーズはとても大きいだろ うね。中国に進出している外国企業にとっても、中国国内のロ ジスティクスや、加工貿易特有の免税の為の「貿易手冊」の管 理、物流園区の利用、 「香港遊」による増値税の早期還付など の貿易上の施策は、常に悩みの種だからね。 MBLEは、プログラム内にとどまらず、いろいろな夢を持っ た学生と関わることで、自分自身の目標を見直すことができる んだね。同じ志を持った仲間との、全世界に広がるネットワー クは、将来的にも大きな財産だね。 S Sawako うん。インターンにしても、学校の外でインターンシップを 体験することで、学問と現実のビジネスの領域の境界を意識し、 それを学問にフィードバックするのは大事なこと。私達は、あ る意味でビジネスと学問(アカデミア)のコミュニケーション の架け橋である、そんな使命があることを実感するよ。 (以下、次号に続く) 岩田佐和子(いわた・さわこ) オハイオ州立大学マーケティング・ロジスティクス 、フレームワ 専攻を卒業後、OTEC, Inc. (米国) ークス(日本)で働いた経験を持つ。フレームワー クスでは、新工場・倉庫建設プロジェクトにかかわ った。昨年9月、オハイオ州立大学大学院ビジネス ロジスティクス工学修士課程に入学。 79 AUGUST 2006 小林由季(こばやし・ゆき) 日本の大学に在学中、米国ワシントン州ゴンザガ 大学、中国北京大学に短期留学。大学卒業後、日 本通運に入社。通関士を取得。米国・サンフラン シスコ支店で1年間研修。帰国後、メーカー物流 に携わる傍ら、昨年4月、多摩大学大学院経営情 報学研究科修士課程ロジスティクスコースに入学。