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ソーシャルネットワークにおける ユーザー行動の社会生態学的考察

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ソーシャルネットワークにおける ユーザー行動の社会生態学的考察
2011/10/7
ソーシャルネットワークにおける
ユーザー行動の社会生態学的考察
発表者:トムソン ロバート
北海道大学大学院国際広報メディア・観光学院修士課程
第27回Weblab Meeting
2011年10月8日(土) 東京経済大学国分寺キャンパス
1
2011/10/7
フェイスブックを利用する
日本人のパラドックス
Aさん
ミクシィでは顔写真なし
フェイスブックでは顔写真あり
この行動の矛盾はどこから生まれるのか
研究の
目的
2
2011/10/7
日本人とSNS:先行研究の例
研究内容
比較対象
比較方法
行動の要因
Barker and Ota (2011)
日本人のミクシィ利用者
とアメリカ人のフェイス
ブック利用者
対象者間
間比較
文化によるコミュニケー
ション仕方の違い
Fogg and Iizawa (2008)
日本人のミクシィ利用者
とアメリカ人のフェイス
ブック利用者
対象者間
間比較
サイト上の物理的な環境
(デザイン)
Takahashi (2010)
ミクシィとMySpaceを両方
とも利用する日本人若者
の、各SNSでの行動や意
識
対象者内
内比較
日本的なアイデンティティ
をミクシィにおいて持ちな
がら、MySpaceでは現実
世界の知人とリンクせず
に西洋的なアイデンティ
ティを空想的に経験して
みようとている
本研究
ミクシィとフェイス
ブックを両方とも利
用する日本人の、各
SNSでの行動や意識
対象者内比較
社会生態学の中の関
係流動性の違い
社会生態と行動
文化、社会生態、心理(Oishi and Graham, 2010)
矢印は影響の方向を示す
社会生態
物理的
環境
社会的
環境
対人関係的
環境
ある環境の中で自
ある環境の中で自
己利益をもたらす
ために個人はその
環境に合った行動
を戦略的に選択す
)
る (山岸 1998)
本研究の鍵概念
関係流動性
(Schug et. al., 2010)
文化
人間の意識と行動
表象、意味、儀式など
3
2011/10/7
関係流動性とは、「ある社会、または社会
状況に存在する、必要に応じて新しい対人
関係を形成できる機会の多さ」である
(Yuki et. al., 2007)。
日本=低流動性社会 米国=高流動性社会
(Yuki et. al., 2007)
関係流動性
ひいては
ミクシィ=低流動性環境 フェイスブック=高流動性環境
関係流動性と自己開示 (Schug et. al., 2010)
個人の周りの環境の関係流動性の高さと、
その個人の自己開示度を、日米比較で調べ
た。
日本 = 低流動性社会 = 自己開示度が低い
米国 = 高流動性社会 = 自己開示度が高い
HYPOTHESIS 1
ミクシィとフェイスブックを両方とも利用する日本人は、
日本人が主に利用するミクシィでの自己開示度が低いこと
に対して、西洋人が主な利用者であるフェイスブックの方
が自己開示度が高い。
4
2011/10/7
関係流動性とコミットメント (山岸, 1998)
日本 = 「内集団ひいき」(集団主義)
※ 低流動性社会であるため、社会において新し
い関係を形成する機会が少なく、内集団と取引
するほうが利益をもたらす。
米国 = 「内集団ひいき」ではない(普遍主義)
※ 高流動性社会であるため、新しい関係を形成
することが比較的に容易で、内集団を超えて取
引することが比較的に利益をもたらす可能性が
存在する
関連概念
集団主義社会では個人は
比較的に限った数の内集
団に属する
(Gudykunst, 2003)
HYPOTHESIS 2
ミクシィはフェイスブックと比べれば比較的にコミットメント度が濃
く、内集団とのかかわりがより要求されている。また、ミクシィでの
リンク数が比較的に少なく、リンクの人間関係のカテゴリーも少ない
(ユーザーが属している内集団の数が少ない)。
自己開示度が低い
Aさん
コミットメント性を
高く感じ、リンク数
やリンクの人間関係
の種類が少ない
自己開示度が高い
コミットメント性
が低く、リンク数
やリンクの人間関
係の種類が多い
5
2011/10/7
方法
オンライン質問調査
対象者
ミクシィと同時に、フェイスブックある
いはツイッターを利用している日本人
調査期間
2011年1月26日~2月13日(18日間)
募集方法
アンケートの質問項目数
Self-selection|招待文とアンケートへの
リンクを発表者のフェイスブックやツイッ
ターのフィード、ミクシィ上のフェイス
ブックやツイッター関係のコミュニティー
に投稿など
本研究以外にも利用する項目数を含んだ
総数の質問項目は44問で、20分ほどの
回答時間を要する。
アクセス数
770人がアンケートへのリンクにクリッ
クした
アンケート開始者数
192人がアンケートを開始した
アンケート終了者数
参加者の属性の概要
性別:男(44%)、女(56%)|年齢:
20代~30代(77%)|職業:学生
(35%)|在住地:関東・東海地方
(56%)
131人がアンケートを最後までやってくれ
た。そのうちの78人はミクシィ・フェイ
スブックの同時並行利用者、53人はミク
シィ・ツイッターの同時並行的利用者(合
計131人)
6
2011/10/7
比
較
+
53人
78人
+
たまにBさんも
分析に登場す
る。Bさんはミ
ク シ ィ ・ ツ
イッターの同
時並行的利用
者で、行動の
違いの参考と
して役に立つ。
SNSごとの自己開示度
発表者作の尺度による
M=1.87
SD=1.14
M=3.49
SD=0.68
N=78
p < .001
1
2
3
4
cat_lover234
cat_lover234
鈴木 博
鈴木 博
Q: あなたはどの程度自分について一般公開していま
すか。
7
2011/10/7
SNSごとの自己開示度
発表者作の尺度による
M=2.02
1
2
cat_lover234 cat_lover234
M=3.49
SD=0.68
3
鈴木 博
4
鈴木 博
Q: あなたはどの程度自分について一般公開していますか。
プロフィールでの開示度
M=1.87 SD=1.22
SD=1.14
R2 = 0.164, F (1, 51) = 11.21, p = .002
b = 0.425, t (51) = 2.44, p = .002
N=53
私は国際人である
8
2011/10/7
ツイッターとフェイスブック
日本人ユーザーの国際度比較
そう思う
4
すべての差はp<.05レベルで有意
3.5
ややそう思う
3
ツイッター利用者
ツイッター利用者
2.5
あまり
そう思わない
N=53
2
フェイスブック利用者
フェイスブック利用者
1.5
そう思わない
N=78
1
SNSごとのリンクの属性と
コミットメント度
SNSごとにリンクしている人
の人間関係のカテゴリー数
SNSごとにリンクの数
ミクシィ
フェイスブック
ミクシィ
140
p < .05
120
人
数
80
60
40
p < .05
N=78
カテゴリー数
100
フェイスブック
N=78
5
4
3
2
20
0
1
9
2011/10/7
あなたはミクシィ又はフェイスブックを利用し
てに以下のことを経験することはありますか
ミクシィ利用時
フェイスブック利用時
70
60
「はい」と答えた人(%)
50
すべての差はp<.05レベルで有意
40
N=78
30
20
10
0
人間関係に
人間関係に
拘束感を感
じる
人間関係が
人間関係が
厄介になる
発信した内容
発信内容にコ
メントされた
ら、コメント
返しをしなけ
ればと思う
Aさん達
コミットメント性を
高く感じ、リンク数
やリンクの人間関係
の種類が少ない
コミットメント性
が低く、リンク数
やリンクの人間関
係の種類が多い
西洋的な社会生態
対応した行動や意
識を示している
自己開示度が高い
日本的な社会生態
に適応した行動や
意識を示している
自己開示度が低い
10
2011/10/7
社会生態と行動に戻る
文化、社会生態、心理(Oishi and Graham, 2010)
社会生態
物理的
環境
社会的
環境
対人関係的
環境
高・低関係流動
性環境が違った
行動を誘導する
文化
人間の意識と行動
表象、意味、儀式など
「西洋人」の、本パラ
ドックスの捉えかた
日本におけるフェイスブック
利用のTipping Point
11
2011/10/7
「西洋人」の、本パラ
ドックスの捉えかた
典型的な西洋的考え方
人は一つのアイデンティティしか持っていないのだ。職場の
仲間に対して呈示するイメージと、他の人に対して呈示する
イメージが違うという時代は去っていっている。二重のアイ
デンティティを持つってことは、不誠実な行為である。
Mark Zuckerburg (Kirkpatrick, 2010)
(Kashima, 2010)
フェイスブック・ミクシィ間の行動の差があることにもかかわらず、
自己は統一しているとのこと
1%
日本におけるフェイスブック
利用のTipping Point
6%
94%
99%
N=78
N=78
フェイスブックの世界と現実世界では自分のキャラクターが違う
ミクシィの世界と現実世界では自分のキャラクターが違う
フェイスブックの世界と現実世界では自分のキャラクターが同じ
ミクシィの世界と現実世界では自分のキャラクターが同じ
[ある国においてフェイスブック上の]「ローカルと外国
人」の友人関係の数を「ローカルとローカル」の友人関係の
数が抜くときに、その時点がTipping Pointであり、その国で
のフェイスブック普及が急進するのだ。
Mark Zuckerburg (Sweeny, 2010)
FBでの日本人ネットワークが低流動性環境になっていくはず
日本におけるフェイスブック
利用のTipping Point
FBも日本人同士のネットワークの拡大
日本人フェイスブック利用者の国際度とフェイスブック登録年数との相関
質問項目
N=78
r
B
SE B
β
あなたのフェイスブック・フレン
ドに具体的にどのような間柄の人
が入っていますか
(はい・いいえ、多数選択)
親近で親しい外国人の友人・家族
.181
-.119
.028
-.438***
遠方に住む外国人の友人・家族
.186
-.106
.025
-.443***
あなたは以下についてどう思いま
すか
(1=そう思わない~4=そう思う)
私は海外の友達が多い方である
.338
-.327
.052
-.589***
外国人との交流が楽しい
.123
-.121
.035
-.373**
国際イベントによく参加する
.036
-.121
.061
-.221†
私の英語はうまい方である
.224
1.255
.053
-.484***
私の異文化理解度は低い
.187
.203
.047
.445***
†p<.10, **p<.01, ***p<.001
12
2011/10/7
低流動性環境にあった機能デザインが必要
操作しやすい共有制限設定
各SNSにおける関係流動性の度合いを測る
関係流動性尺度を採用すること(Yuki et al., 2007)
13
2011/10/7
ご清聴ありがとうございます
スライドのダウンロード:
www.zaihoujin.com
ご協力のお礼
東京経済大学コミュニケーション学部 川浦康至
名古屋大学国際言語文化研究科 金相美
Barker, V., & Ota, H. (2011). Mixi Diary versus Facebook Photos: Social Networking Site use
among Japanese and Caucasian American Females. Journal of Intercultural
Communication Research, 40(1), 39.
Fogg, B. J., & Iizawa, D. (2008). Online Persuasion in Facebook and Mixo: A Cross-Cultural
Comparison, 5033. 読み込み から
http://www.springerlink.com/content/7ln3778rmq22441j/
Gudykunst, W. (2003). Cross-cultural and intercultural communication. Thousand Oaks Calif.:
Sage Publications.
Kashima, Y. (2004). Culture and Context-sensitive Self: The Amount and Meaning of Contextsensitivity of Phenomenal Self Differ Across Cultures. Self and Identity, 3(2), 125-141.
Kirkpatrick, D. (2010). The Facebook effect : the inside story of the company that is
connecting the world (1st ed.). New York: Simon & Schuster.
Oishi, S. (2010). Social ecology: Lost and found in psychological science. Perspectives on
Psychological Science, 5(4), 356-377.
Rew, L. (2003). Measuring Cultural Awareness in Nursing Students. Journal of Nursing
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Schug, J. (2010). Relational mobility explains between- and within-culture differences in selfdisclosure to close friends. Psychological science : a journal of the American
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Sweney, M. (2010, June 23). Mark Zuckerberg: Facebook "almost guaranteed" to reach 1 billion
users. The Guardian. Accessed from
http://www.guardian.co.uk/media/2010/jun/23/mark-zuckerberg-facebook-canneslions
Takahashi, T. (2010). MySpace or Mixi? Japanese engagement with SNS (social networking
sites) in the global age. New Media & Society, 12(3), 453-475.
Yuki, M., Schug, J., Horikawa, H., Takemura, K., Sato, K., Yokota, K., & Kamaya, K. (2007).
Development of a scale to measure perceptions of relational mobility in society. CERSS
Working Paper 75, Center for Experimental Research in Social Sciences, Hokkaido
University.
俊男山岸. (1998). 信頼の構造―こころと社会の進化ゲーム. 東京大学出版会.
潤沼田. (2010). 日本人大学生の異文化理解に関する質問紙調査 : 異文化理解の意識に関わる諸要因の
基礎研究. 評論・社会科学, 91, 169-186.
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