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中学部の研究について

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中学部の研究について
中学部研究部会
1
中学部の研究について
2
年間計画
3
普通学級の日課表
4
「課題学習」について
5
「課題学習」学習指導案
6
「課題学習」題材例
7
まとめと今後の課題
1 中学部の研究について
(1)研究のねらい
①生徒の多様なニーズに応える「課題学習」の指導の充実
・個別の指導計画を活用し、生徒一人一人のニーズに応える「課題学習」の授
業内容や支援の仕方について研究を深める。
・「課題学習」での認知、国語、数学等の学習を通してコミュニケーション、
人間関係の形成、社会性を育てる支援の仕方について研究を深める。
・グループ編成について検討し、学習内容に合わせて新たなグループ編成に
ついて考える。
・「課題学習」の授業のねらい、教材作成の意図を明確にし、分かりやすく活
用できる資料集を作成する。
②学校生活全体でコミュニケーション、人間関係の形成、社会性を育てる支援をど
のように行うかということを考える。
(2)研究の進め方
①授業研究会について
・全グループが授業研究会を1回行う。そのうち、縦割り編成で学習を行う
グループが講師を招聘した授業研究会を行う。(縦割り編成グループにつ
いては、『4 「課題学習」について』を参照)
・各グループから事例となる生徒を一名あげ、個別の指導計画を資料として
活用する。
・指導案には題材のねらい、評価のポイントを記入し、どのようなねらいを
持って指導するのかが分かるようにする。
②実践報告集について
・1 年間で取り組んだ授業から授業内容、教材をまとめ、いくつかのグルー
プの学習指導案と合わせて実践報告集に記載する。
③課題学習の指導内容について
・生徒全員に「太田の Stage 」の生活チェックリスト(コミュニケーション、
集団参加)を実施し、指導の参考にする。
・学年やグループ等で「課題学習」の指導内容について話し合う時間を設け、
積極的に情報交換や意見交換を行い、指導内容の充実を図る。
2 年間計画
中学部では授業研究会を研究活動の柱とした。
「課題学習」の全グループが授業研
究会を実施し、昨年度に引き続き八千代市教育委員会指導主事 堀 彰人先生を講
師としてご指導を頂いた。
授業研究会の日程
7月 4日(水)
7月 9日(月)
7月10日(火)
9月13日(木)
10月 2日(火)
10月 9日(水)
12月12日(水)
中3Aグループ
中1∼3C縦割りグループ
中2Aグループ
中1Aグループ
中2Bグループ
中3Bグループ
中1∼3C縦割りグループ
-中1-
講師招聘
講師招聘
全校研究会
3
普通学級の日課表
日課表①
月
火
水
木
金
9:00
日常生活の指導(着替え・係活動・朝の会等)
保健体育(朝の運動)、自立活動
10:05
課題学習
(国語、数学、自立活動等を合わせた指導)
生活単元学習
11:00
生活単元学習
保健体育
11:50
給
食
13:00
音楽
生活単元学習
総合的な
特別活動
学習の時間
生活
(すいかタイム)
単元学習
音楽
13:50
日常生活の指導(着替え・係活動・帰りの会等)
14:30
日課表②
作業学習期間
月
9月下旬∼11月中旬、1月∼2月下旬
火
水
木
金
9:00
日常生活の指導(着替え・係活動・朝の会等)
保健体育(朝の運動)、自立活動
10:05
(木工
作業学習
園芸 カレンダー)
紙工
11:50
給
食
13:00
課題学習
(国語、数学、自立活動等を
合わせた指導)
音楽
総合的な
特別活動
学習の時間
生活
(すいかタイム)
単元学習
13:50
日常生活の指導(着替え・係活動・帰りの会等)
14:30
-中2-
4 「課題学習」について
中学部では生徒の実態や課題に合わせ、学年で2∼3の学習グループを編成し、学習に
取り組んでいる。1 単位時間の中で主に国語、数学、自立課題等を個別で取り組む学習と、
コミュニケーション・人間関係の形成・社会性を育てることをねらい集団で取り組む学習
の二つを取り入れているグループが多い。各グループの学習のねらいや学習内容について
は『7 まとめと今後の課題』に記載した。
今年度は中学部の生徒全員に学級担任が「太田の Stage 」生活チェックリスト(コミュニ
ケーション、集団参加)を実施した。結果を見ると、グループの生徒共通の課題も見え、
指導の参考にすることができた。
グループ編成にあたっては、これまで同じグループの中でも生徒の実態や課題にかなり
の差があり、一人一人に対応した指導が難しいとの意見があった。今年度はその意見に対
応するために、学年の枠を超えた新たなグループを編成して学習に取り組んだ。
今年度は年に2回、全学年の C グループの生徒を縦割りでグループ編成し授業を行った。
先ずは7月に「オリンピックを知ろう」という一つの題材で、1年生の一部を除くCグル
ープの生徒16名を3人程度のグループに分け、学習を行なった。次の学習については『5
「課題学習」学習指導案』に記載したが、生徒21名を3つの学習グループに分け、各グ
ループごとに題材を取り上げた。この新しいCグループの学習は、教師が学習内容を決め
生徒のグループ編成を行なったが、学習内容や実施期間等については今後も検討していき
たい。
学習内容については、生徒や保護者の希望を学習に反映させていくことについても検討
をしたい。それとともに生徒の実態に合わせた今後の生活で必要とされる力を育てる内容
についても取り入れながら、より多様なニーズに応える「課題学習」となるように指導内
容の充実を図りたい。
-中3-
5
「課題学習」学習指導案
中学部
課題学習縦割りCグループ(心とからだ)学習指導案
日時 平成24年12月12日(水)
10:05∼10:55
場所 中学部2年3組教室
授業者(T1)(T2)(T3)(介助員)
1.題材名
「中学生の心とからだの学習をしよう」
2.学習集団について
(1)課題学習縦割り C グループについて
中学部では、普通学級56名の生徒の特性や課題、人間関係などを考慮して各学年 A∼
C の3つずつのグループに分け、合計9つのグループで課題学習を行っている。
各学年の C グループ(以下、縦割り C グループ)の生徒は学部全体で21名である。全
員が会話ができ、コミュニケーション能力の安定している生徒、自閉性障害のため人との
関係の持ち方が一方通行になりがちな生徒が混じり合っている。認知面、とりわけ教科学
習の実態は幅広く、運動や制作活動で力を発揮する生徒が多いが、話すことに比べて書く
ことへの苦手感が強く、学習活動に自信を持てないでいる生徒が多い。生活経験の乏しさ
も影響していると考えられる。
(2)縦割り C グループの学習内容について
上記のような縦割り C グループの生徒の実態から、今年度は年間2回程度、期間を決
めて通常の課題学習の時間を利用して必要な学習内容を単元化して行う試みを行った。1
年生から3年生という年齢の幅はあるが、活動の内容によってはより近い課題のグループ
編成ができ、個々の生徒の特性とニーズに迫ることができるのではと考えた。
前期は、縦割り C グループのうち、1年生数名を除く全員を3人程度の小グループに分
け、「オリンピックを知ろう」という題材でそれぞれ興味のあることを調べ、グループ全
体の友だちの前で発表したり、友だちの発表を聞いたりした。資料の集め方、掲示物の作
り方、発表の仕方等を学ぶことができたが、更に関心を深めるためにも身近な情報と重な
り合うような形での情報の取り入れ方が課題として残った。
そこで後期は、学校生活にも慣れた1年生、転入生を含む21名全員を①性教育(中学生
の心とからだの学習)グループ、②表現(群読)グループ、③理科グループの3つのグループ
に分けることとした。①は性教育を実施することで、自分を見つめ、自己肯定感をもてる
ことがコミュニケーションの基礎となると思われる生徒、②③は、それぞれのできること
を生かしながら、課題の近い友だちとふれあうことでコミュニケーション能力を引き出す
ことができると考えられる生徒で編成した。
−中5−
3.題材について
本題材「中学生の心とからだの学習をしよう」は、いうまでもなく性に関する指導であ
る。特別支援学校学習指導要領によれば、中学部の各教科、「理科」や「保健体育」にそ
の記述があるが、個々の生徒の実態に応じて学校の教育活動全体を通じて行っていくこと
が必要な内容である。中学部の場合、「総合的学習の時間」に学習内容として取り入れる
ことも可能である。しかし、いずれも学年中心の集団編制であり、保健体育では運動能力
に応じた集団編成をしているため、共通の学習活動を組むことは難しい。課題学習では、比
較的まとまった学習内容を組むことが可能である。
中学部の生徒たちは、概ね3年間で男女ともに第二次性徴が顕著になる。劇的なからだ
と心の変化にとまどい、混乱する生徒も多い。個々の実態にあわせて月経や精通、自慰等
への対応を行っているが、それと共に自分のからだや心の変化を肯定的に受けとめること
が大変重要であり、繰り返しの学習が理解を深めると考えられる。
今回の学習に先立ち、Cグループ全体で実施したアンケート調査(資料1参照)では、
「勉強したいこと」として自らのからだの変化に対してよりも異性への現実的な関心、同
性も含めての人との関わり方に対する回答が見られた。また、命の不思議に対する関心も
高い。この結果は生徒たちの障害や発達段階、特にこれまでの養育環境や教育歴が反映さ
れていると思われる。
本校の課題学習は、個々のニーズに応じたコミュニケーション・人間関係・社会性の支援
が基本である。性に関する指導を通じて、自分を肯定的に捉え、安心して表現し、他者を
受け入れることができるようになることは、将来周りの人たちと共感的な関係を作ってい
く上で大変重要である。通常の学習とは異なり、単元構成をすることでまとまった学習が
可能であるので、この経験が高等部以降の学習につながっていくとよいと考える。
生徒たちの実態から、主な学習内容を①からだの変化
②命の不思議
③すてきな大人
になるために といった3つとした。
授業の流れは生徒が学習活動に見通しをもって参加で
きるように、導入・中心的な学習・まとめの三つで構成する。特に導入では視聴覚機器の利
用や人形等の半具体物の活用、絵本等書籍を活用し、学習内容への興味を引き出す。まとめ
は、1時間ごとの授業内容をホワイトボードや用紙に教師が書き込む形で行う。主な学習
活動は、指導計画にあるような内容で構成し、生徒の発言等により、補足修正をしていく予
定である。伝えたい内容を標語のようにして繰り返し、定着を図ることも効果的であると
考えている。
教師は、大人の先輩としてそれぞれの個性を活かしながら活動に応じて役割を分担してい
く。授業では、プライベートな内容に関わることも取り上げるので、指示語や否定的な表
現はできるだけ避け、温かな雰囲気を作り上げることを大切にしていきたい。
4.題材の目標
・自分の心やからだの成長や変化に関心を持つことができる。
・自分の思っていることを人に伝えたり、教師や友だちの発言を聞いて考えたりするこ
とができる。
−中5−
5.指導計画
日にち
テーマ
から だ の 変化
11/26(月)
11/28(水)
11/29(木)
命の 不 思 議
12/3(月)
12/4(火)
12/5(水)
導入
男女人形
12/12(水)
授業展開
12/13(木)
すて き な 大人 に な るた め に
12/11(火)
6.本時の指導
身体の成長の変化
写真
男女の違い(一次性徴)
掲示物
男女の違い(二次性徴)
ビデオ教材
受精
エコー画像
胎児の成長
赤ちゃん人形
12/10(月)
展開(学習内容)
書籍
まとめ
掲示物
出産
男女の触れ合い
男女交際
書籍
写真
掲示物
生活の自立
いろいろな服装
大人になったら着てみたい服装
きれいな服を身に付けよう
(9時間/10時間 )
(1)本時の目標
・服装を通じて大人のイメージを考えることができる。
・友だちの意見を聞いたり、自分の意見を友だちに伝えたりすることができる。
(2)本時の展開
時配
学習活動
指導上の留意点
10:05 ・机と椅子を持って決められた場所に移動 ・配慮すべき生徒の座席をあらかじ
し、座る。
め指定しておく。
○はじめの挨拶をする。
・当番制で号令をかけるようにする
10:15
教材・教具
○前時の内容「男女交際・生活の自立」を振 ・前時の内容がわかる教材を提示し ホワイト
り返った後、本時の内容「すてきな大人
確認する。
ボード
になるために∼服装編」 について説明
2D人形
を聞き、標語を復唱する。
掲示物
○いろいろな服装を知る。
・映像が見やすいように席を移動す 視聴覚機
・いろいろな服をまとった人の写真 をス るように言葉かけをする。
器
ライドショーで見る。
・自由に発言できるよう、合間にT
2T3も声をかけるようにする。
・見た内容がわかりにくい生徒には
理解しやすいように助言をする。
・発言が出にくい時は、T1が質問
をする。
・スライドが終わったらT1が写真
カードやマネキンを示し、再度質
問する。
・時と場所、目的に応じた服装があること ・T1、T2が実際にわざと洋服を
−中5−
を知る。
だらしなく着て見せ、発言しやす
いようにする。
・すてきな着方を学ぶ。
私服
○大人になったら着てみたい服装の発表 ・あらかじめモデルになりたい人を 制服、スー
をする。
募り、本人達の希望も聞いておく ツ、ドレス
・いくつかのグループに分かれてモデルに ようにする。
等
なった人に洋服を着せる。
・着替え時は、男女別に行うようT
・すてきに見える工夫しながらグループ内 1が場所を指示する。
で協力して着せる。
・モデルはみんなの前で歩く。
・モデルが全員から見えるように歩
くスペースを空けるようにする。 CDデッ
・工夫したことなど、グループごとに着せ ・服装にふさわしいBGMを準備し キ・マイク
た人がコメントを言う。
て雰囲気を盛り上げる。
○今日の学習の振り返りを行う。
・T1は生徒の発表をホワイトボー
・感想をそれぞれ発表する。
ドに書き出す。
10:30
10:45
○次時の予定を聞く。
・T1はこれまでの学習のまとめで
あることを伝え、感想を尋ねるこ
○終わりの挨拶
とを予告しておく。
・終わったら机と椅子を元の場所に戻す。 ・姿勢を正して行うように全体に促
す。
(3)場の設定
ホワイトボード
TV
T1
介
T2
介
T2
入
口
入
口
T3
T3
T1
(4)評価
・大人の服装について自分なりに表現したり、意見を言ったりすることができたか。
・友だちの意見を聞いたり、発表を見たりすることができたか。
7.生徒の様子、目標、手立て
生徒
本時までの様子
本時の目標
本時の手立て
A
・心と体の学習が始まり、
「ど
・自分で洋服を選び、友
・スライドショーを見な
達に見せることができ
る。
がら T2が説明を加え
る。
学習に興味をもっている。
・心と体の学習を振り返
・友達の意見を聞き、自
補 聴 器 をつ け てい る こ と
と、全体指示で理解できな
り、自分の言葉で発表
することができる。
分の意見をまとめるよ
うに教師が促すように
(事例)
う や っ て子 ど もは 育 つ の
か」と教師に質問するなど、
いこともあり、個別に対応
する。
する必要がある。
B∼I
※省略
※省略
−中5−
※省略
8.資料
・事前アンケート
1.”体と心の勉強 ”で勉強したいことはなんですか。
項目
①体の成長について
②命の生まれ方 命の不思議
③男女の違い
④異性との接し方
男子
1
2
2
1
女子
0
6
3
3
合計
1
8
5
4
1年
0
3
1
0
2年
0
2
2
1
3年
1
3
2
3
合計
1
8
5
4
その他
・友達とのつきあい方をどうすればよいか。(男 1 年 2 人)
・子供はどうやってできるのか。(女 1 年))
・キスはなんでするのか。(女 1 年)
・男の子はどんなことに興味をもっているのか。(女 1 年)
・心、思(い)はどうやって感じるのか。(女 1 年)
・女の人の着替えをなぜ男の子はみるのか。(女 1 年)
・赤ちゃんの生まれ方(女 2 年)
2.何か悩みはありますか。
ない 2 人
ある 8 人
・体はどのように変化するのか。(3 年男)
・好きな人にうまく気持ちを伝えたい。(2 年女)
・好きな人のことを考えるとドキドキする。(1 年女)
9.成果と課題
本題材は、社会性や対人関係、コミュニケーションを育てる課題学習の取り組みである
と同時に性教育の試みでもあった。「からだの変化」、「命の不思議」、「すてきな大人に
なるために」という3つのテーマで授業を行ったが、リラックスした雰囲気の中で教師と
生徒また生徒同士のやりとりがみられ、本題材の目的は概ね達成することができた。生徒
たちは映像で見た受精や胎児の様子、またいろいろな服装の発表といった具体的な活動が
印象に残ったようである。事例対象生徒のAさんは、まとめの授業で「せいふくをきたら
おねえさんらしくなりました。せいふくをきるときは、えりをきれいにととのえてきまし
た。おとなになったら、きれいなどれすをきてみたいです」という感想を綴ってくれた。
Aさんと同じように周囲の状況や相手の感情にも気付くことができるが、語彙がそれほ
ど豊富でないため、表現にぎこちなさが見られる生徒は多い。授業を通じて、このような
生徒の実態に即して教材の工夫等が更に必要であることが分かった。性に関する指導につ
いては、中学部での教育課程への位置づけ、小学部・高等部とのつながり、保護者との協
力が課題である。当面、今回使用した教材等を保管し、いつでも必要な時に使えるように
しておきたい。
−中5−
6 「課題学習」の授業内容・題材例
グループ名
Aグループ 中学部1年
◎は支援のポイント
学習の形態
集団学習
題材名
ボール投げゲームをしよう
題材のねらい
・ゲームを通して、自分に合ったコミュニケーションの方法で、相手に働きかけた
り、相手の働きを受け入れたりすることができる。
準備する物
場の設定
・カラーボール
・順番ボード
・ゴムマット
・空箱
・カゴ
・ピンポンブザー
・イラスト掲示物
順番ボードが見えやすいように、横1列の隊形にする。
投げる場所が分かるように、マットを敷く。
<授業展開>
順番ボード
ボールの入ったカゴ
カ
マット
教師
②
ゴ
④
③
⑤
①
生徒
箱
・生徒を「ボールを選ぶ人」と「ボールを投げる人」に分け、それぞれの順番を発表する。
・ゲームを始める前に、掲示物を用いて、ルールを再確認する。
①投げる人は、マットのところへ移動する。
②選ぶ人は、教師から箱を受け取り、箱からボールを1つ取り出す。
取り出したボールを投げる人に見せ、色を伝える。
・選ぶ人がボールを取り出す際、全員で「せーの」と言うように声をかける。
◎「○○くん、赤だよ」や「赤」など、生徒の実態に合った伝え方をするように促す。
③投げる人は、選ぶ人の方を向き、同じ色のボールをボールの入ったカゴから探し、カゴに向かってボ
ールを投げる。
◎生徒が他の方を向いている時は、言葉かけや指さしで選ぶ人の方を見るように促す。
◎選んだ色が合っているかどうかわかるように、ピンポンブザーで知らせる。
④選ぶ人は、ボールを箱に戻し、次の人に渡す。
◎次の人へ「どうぞ」と言って渡すように促す。
⑤投げる人は自席に戻る。
⑥カゴに入ったボールの数をみんなで数える。
<成果と課題>
・自分から相手の方を向き、「○○くん、赤だよ!」や「赤!」など、自分に合った方法で相手にボー
ルの色を伝えることができるようになった。
・最初は、相手の選んだボールを見ても、自分で好きな色のボールを選んで投げてしまうことが多かっ
た。しかし回数を重ねるうちに、相手と同じ色のボールを選んで投げることができるようになった。
・友達が間違った色を選んでしまった時、教えてあげる生徒の姿が見られるようになった。
・このゲームでは、相手とボールを介してのやり取りが多かったので、今後は、相手との直接的なやり
取りを増やしていく機会を作ることが求められる。
−中9−
グループ
Aグループ
中学部2年
学習の形態
集団学習
題材(教材)名
スポンジゲームをしよう
題材のねらい
・カード、言葉、動作などで、友だちに働きかけることができる。
・友だちの働きかけに気づき、スポンジを受け取ることができる。
準備する物
・スポンジ
・ホワイトボード
・シール
場の設定
お互いの様子が見やすいように、半円に座る。
半円の中心にスポンジを重ねる机を設置する。
<授業展開>
①スポンジを受け取ることができる。
・スポンジに気づいていない時には、「○○さん、スポンジだよ」と言葉かけをする。
◎スポンジを手の上に置く、目の前に提示する等、個々に合わせた受け取り方ができるようにす
る。
②スポンジを持って机まで移動し、スポンジを重ねていく。
◎スポンジを置く場所がわかりやすいように、四角を描いた紙を置く。
・動きがない時には、T2が側に行き言葉かけをしながら、背中を軽く押したり、手を繋いだり
して、活動を促す。
③スポンジをかごから取り、友だちの所へ移動し、スポンジを手渡す。
・教師はできるだけ生徒の動きを待つようにする。
◎自分からなかなか渡せない時には、T1が「○○さんに渡してね」と言葉かけをして、渡すよ
うに促す。
④スポンジを渡すことができたら、自分の座っていた椅子に戻り、着席する。
・席に座れない時には、T1が指さしや言葉かけをしたり、T2が手を繋いだりして、席に座る
よう促す。
⑤かごの中のスポンジがなくなったらゲームを終了し、ホワイトボードに「がんばったねシール」
を貼る。
・シールを提示しながら「シールを貼りたい人?」と聞き、立候補者がシールを貼る。
<成果と課題>
・繰り返し行うことで、ゲームの流れを理解し、友だちに自分からスポンジを渡しに行くことがで
きる場面が増えてきた。
・スポンジを友だちから差し出されると、手を出して受け取れるようになってきた。
・スポンジを重ねる時や友だちが側に来る時には目で様子を追うことができる時間が増えた。
・ゲームの流れを残しながら、重ねる数や素材を変えたり、違う動きを加えたり、興味関心が持て
るように工夫する必要がある。
−中10−
−中10−
中学部 3 年
グループ
Aグループ
学習の形態
個別学習
題材(教材)名
自分の名前を覚えよう
題材のねらい
・文字カードを使って、自分の名前を覚えることができる。
・文字の上下を意識することができる。
準備する物
・文字カード
・確認カード
・滑り止めシート
場の設定
集中しやすいように、壁を向いて座る。
<授業展開>
集団学習の後に、各生徒が準備し個別学習に取りかかる。
①確認カードの上に文字カードを重ねて置く。
・名前の文字だけで行う。
・確認カードは、名前の順に置く。
◎文字カードを取りやすくするために、滑り止めシートの上に置く。
◎重ねて文字が正しいか、上下があっているかわかりやすくするために、文字カードは背景を透
明にする。
・間違えた場合は、教師と一緒に確認をして直していく。
・正しく文字を選んだ時には、賞賛する。
①ができたら
②逆さまに置いた文字カードを取って、確認カードの上に重ねる。
・間違えた場合は、教師と一緒に確認をして直していく。
・正しく文字を選んだ時には、賞賛する
背景は透明
お お
確認カード
切り抜いた文字をラミネートシールに
挟んである。
文字カード
カードの文字の色を変え、間違えて重ね
重ねる
たときに違いがわかるようにする。
<成果と課題>
・文字カードを確認カードに重ねることで確認がしやすくなり、間違いが減った。また、間違いを
指摘すると、一人で直すことができるようになった。
・正解することが多くなり、自信につながったようである。
・この文字カード、確認カードで名前を正しく並べることはできたが、他の場面では、自分の名前
が確実にわかるまでにはいたっていないようである。
・様々な刺激に敏感なところが見られるので、今後は、教材を作る際や名前を表示する時には、本
人の刺激になることを排除し、環境を整えて行うようにしていきたい。
−中11−
グループ
Bグループ
中学部2年
学習の形態
集団学習
題材(教材)名
決められたカードをつり上げよう
題材のねらい
・指令カードを見て、同じものを選択することができる。
・相手を意識して、言葉をかけることができる。
準備する物
・釣り竿(マグネット付) ・かご
・人工芝
場の設定
・指令カード
・ブルーシート(2∼3畳)
・イラストのついた絵皿
・ごほうびシール
注目しやすいようにブルーシートを敷き、つりをする場所に人工芝を置く。
<授業展開>
※個別学習の後、生徒たち自身が集団学習の準備をする。
①教師から指令カードを受け取る。
◎生徒の実態に応じて、カードの内容を
イラストや文字に変えて渡す。
②T1から「釣り竿をください」と言って
釣り竿とかごを受け取る。
・話すことが苦手な生徒にはヒントカードを見せる。
③釣り竿を使って、指令に書かれた物を釣り上げる。
◎指令は、生徒たちが書いたイラストを使用している。
取る物がわからないときは、T2がカードの内容を一緒に確認する。
④釣り上げた物をかごに入れる。
⑤自分の指令が終わったら、同じグループの人に「どうぞ」と言って、釣り竿を渡す。
受け取った生徒は、
「ありがとう」と言う。
◎相手の方向を向いて、話すことができたか確認をする。
◎わかりにくかったら、T2が見本を見せ、生徒と一緒に
話す。
⑥受け取った生徒は③と④を行う。
⑦T1に釣り竿とかごを持って行き、「できました」と言う。
・話すことが苦手な生徒にはヒントカードを見せる。
⑧指令通りのものを集められたらシールをもらい、席に戻る。
<成果と課題>
・絵と絵のマッチングは生徒全員が理解しており、決められたものをとることには問題はなかった。
・ごほうびシールがあることが意欲づけとなり、生徒自身から準備や片付けを行えるようになって
きている。
・他の生徒が取り組んでいる場面で待っている時に、「がんばれ」と自発的に言葉をかける場面も
見られるようになってきた。
・課題学習の時間だけではなく、他の授業の時にも「できました」と報告する場面が増えている。
・パターンとして覚えている生徒もいるため、言葉のやりとりや場面設定が変わると、何と言って
いいかわからなくなってしまうことがある。様々な場面や組む生徒を変化させながら、経験を積
めるようにしていく必要がある。
−中12−
グループ
Bグループ 中学部3年
学習の形態
集団学習
題材(教材)名
身近なものをいろいろな言葉で表現しよう
題材のねらい
・手で触れて感じたことを自分なりの言葉で表現することができる。
・話を聞くときの姿勢や発言をする際のマナーなどを知ることができる。
準備する物
・なぞなぞBOX
・なぞなぞBOXの中に入れる物
・順番を示すボード
・黒板 ・プリント(個々に応じた補助具)
場の設定
なぞなぞBOXに注目がいくよう真ん中に設置する。
机を馬蹄形に配置する。
<授業展開>
○順番表を提示して、一人ずつ順番に活動する。
・発表のルール(順番の待ち方、発言の仕方等)をあらかじめ決めて伝えておく。
◎なぞなぞBOXの中の物が見えないよう手を入れるところを布で隠す。
①名前を呼ばれたら返事をし、順番を示すボードにある名前カードを黒板に貼って箱の中の物を触る。
・「つるつる」「ざらざら」「かたい」「やわらかい」
などの言葉を引き出すような言葉かけをする。
②触った時の感想をプリントに書き出す。
◎生徒の実態に合わせたプリントを用意する。
◎言葉が出てこない生徒に対しては似たような物を
提示し、感触の近い物を選ぶようにする。
◎字を書くことが難しい生徒には、言葉の選択肢を
設けたり、同じ感触のシールを貼るようにする。
・書き終えたら鉛筆は机に置き、膝に手を置いて順番を待つようにする。
③なぞなぞBOX中の物を確認する。
・始めに予想できる物を聞き、予想していた物と同じかどうかを
確認するようにする。
④触った時の感想を発表し、言葉と物を照らし合わせて確認する。
◎あらかじめプリントに目を通し、発表する内容を指定することで
意見が重複しないように配慮する。
・発表された意見(言葉)は黒板に板書するようにする。
・発表された意見(言葉)となぞなぞBOX中の物を照らし合わせて説明をする。
◎必要に応じて発表された意見(言葉)を修正し、適切な言葉を伝えるようにする。
<成果と課題>
・初めに発表のルールを決めたことで、全員が適切な態度で授業に参加することができるようになった。
・プリントを個々の実態に合わせて用意したことで、個別のニーズに違いがある集団でも全員で学習に取り
組むことができ、学習の内容を共有することができた。
・他の人の意見が気になり、一生懸命他の人の意見を聞こうとする様子が見られるようになった。
・何度か学習を行うことで以前学習した言葉を次の授業で使用する様子が見られるようになった。
・なぞなぞBOXの中の物を見えなくすることで、中の物が何かを当てる楽しみができた。
・「重い」「軽い」など人によって感じ方が違う言葉に対しては、他のものと比較して伝える必要がある。
・ことばを増やし日常で活用することができるようにしていくための指導・支援について、今後は考えてい
きたい。
−中13−
グループ
C グループ
学習の形態
集団学習
中学部1年
題材(教材)名 みんなのカルタ
題材のねらい
・五十音の平仮名一字に続く言葉を考えて書く。
・作ったカルタを使って遊ぶことができる。
準備する物
・板目表紙
・サインペン
場の設定
黒板方向に向けた個々の机に着席して行う。
カルタ遊びは、作業台を使用して行う。
<授業展開>
色ペンを使い、A4の板目表紙を4分の1大に切ったものの右上に五十音の平仮名を1
文
字ずつ丸で囲んで書いておく。
○カルタづくりをする
①好きな文字カードを選ぶ。
◎選びたい文字が重なる場合は、同じ文字のカードを増やす。
②カードの平仮名を見て、自分の好きな言葉を言ったり、書いたりする。
◎言葉が思い浮かばない生徒には、教師が席を回り会話をしながら引き出すようにする。
・普段の会話を活かす。
・好きなものやキャラクターの話をする。
・歌の歌詞や知っている言い回しなどを使う。
・絵を描きたい生徒には、文字カードに描くように促す。
③カードを提出し、教師が読み上げるのを聞く。
◎書いた生徒の名前を添え、コメントを加えるようにする。
○カルタ遊びをする
①読み上げられた文を聞いて同じものを取る。
◎教師はカードの数を確認し、別に読み札を作っておく。
◎読み札を読みたい生徒を募り進める。
◎カードがとれず、迷っている時は、最初の文字を伝えるようにする。
②取ったカードを重ね、各自が一枚ずつ取りながら、全員で数を数えて勝敗を決める。
◎最初にカードを重ねたものを比べて、枚数の多少に興味がもてるようにする。
<成果と課題>
・1学期6月中旬に実施した題材である。中学部での生活にようやく慣れ、教師も生徒同士も
ほぼお互いの様子がわかってきた頃であり、会話の内容がそのままカルタの内容になるとい
う取り組みやすさがあった。
・話し言葉に比べて書き言葉への苦手意識を持つ生徒も多いグループのため、カルタの文章と
いう短い表現様式にはリラックスして取り組めたようである。実際の作品は、好きなアニメ
の決まり文句や歌の歌詞などが入っていたり、友だちの様子や口ぐせを取り入れるたりする
などバラエティにとんだ内容であった。
・カルタ取りは、勝負が関わってくることもあり、トラブルもあったが自分たちで作ったもの
の活用であり、興味を持って取り組め、文字に親しむこともできたといえる。
- 中 14 -
- 中 15 -
グループ
Cグループ
中学部2年
学習の形態
集団学習
題材(教材)名
「どうしたらいいでしょう?」
題材のねらい
・日常生活の中で起こりがちな場面を想定し、もし自分がその場に立った時
にどうするか考え、社会で生きていくのに必要な技術を習得する。
準備する物
・ソーシャルスキルトレーニング絵カード掲示用(全員が見やすいように拡
大)・ソーシャルスキルトレーニング絵カード生徒用(掲示用と同じものを
縮小)・質問の記入用紙
場の設定
生徒全員が黒板の絵カードや教師のロールプレイングに注目できるようにす
る。
<授業展開>
①本時の主題となる絵カードを黒板にはり、絵カードはどのような場面であるか考える。
◎絵カードを掲示した後、教師がロールプレイングを行い、どのような場面であるかを考え
る。
②生徒用の絵カードを配布し、それぞれのカードの吹き出しに自分の意見を書く。
・教師のロールプレイングを見て自分がどのように思ったのかを考えて、絵カードの吹き
出
しに自分の意見を書く。
③全員の意見を発表する。
・順番に発表し、黒板に書き出していく。
④絵カードの設定を実際に演じる。
◎絵カードの場面を設定し、生徒同士でペアを組み、自分が吹き出しに書いたセリフを実際
に発表していく。
生徒用絵カード
<成果と課題>
・絵カードを見るだけで状況を判断するのでなく、教師のロールプレイングを見ることで、よ
り身近なこととして捉え、自分の考えを出しやすくなった。また、生徒達に「どうしたらい
いでしょう」と投げかけた後で意見を書く用紙を渡し、自分の考えを文字に表すことで発表
の際は自信を持って行うことができるようになった。
・生徒同士で絵カードと同じように実際に行う際、相手の様子から判断して吹き出しの台詞を
言うのでなく、自分の意見だけ棒読みになりがちなため、より通常の日常生活の中で起こり
うる事柄の絵カードを作成する必要があると思われる。
−中15−
グループ
Cグループ 中学部3年
学習の形態
集団学習
題材(教材)名
言葉で伝えよう
題材のねらい
・見た物を友達に正確に伝える。
準備する物
場の設定
・レゴブロック※ ・色カード(数種類の形や色)※ ・メモ用紙 ・パテーション
(※は各グループと教師用、同じものを用意する)
各グループがお互い作っているものが見えないようにパテーションで仕切る。
別室(あるいは廊下)に問題の模様やブロックの立体を用意する。
<授業展開>
①
2∼3人のグループを作る。
①見に行く人を決め、メモ用紙を持って出題された図形や立体を見に行く。
・メモする際、図を描いてはいけない。あくまで文字でメモする。
◎教師はメモしている時に適宜質問して分かりやすくメモをしている
か確認する。
②見て来た人は言葉でどんな図形や立体があったかグループのメンバー
に伝える。
・メモをもとに言葉のみで伝えていくようにする。
③見て来た人の指示で出題されたものと同じ図形や立体を作る。
③
・見て来た人はカードやブロックに触ってはならない。
・作る人は利き手(片手)しか使ってはいけない。(特にブロックの
場合、修正する時に2人で協力しないとブロックを外せない。)
◎作る人は見てきた人に質問しながら指示通りに図形や立体を作って
いく。
◎伝え方や聞き方がわからず、困っている時は、ヒントになる言葉を教師が伝える。
④図形や立体ができたら教師に報告する。間違っていた場合は再度、同じ人が見に行って作る。
(正解するまで、あるいは終わりの時間まで行う。)
<成果と課題>
・メモの取り方や、友達への伝え方が、上手になってきた。同時に聞く側も上手に質問し聞き出すことが
できるようになってきた。図形や立体を見て来た人と友達の話を聞いて作る人のコミュニケーションが
取れるようになってきた。
・見に行く人の観察力やコミュニケーション力に応じて出題しないと全く授業が進まなくなってしまうの
で、出題毎に教師が見に行く人を指名するとスムーズになり、見てくる生徒も自信が出てくると思われ
る。
・あらかじめメモの取り方を具体的に指導しておくことが必要であった。
・出題された内容が難しいと、一部の生徒の活動になってしまい、参加できない生徒も出てきたため課題
の難度に配慮が必要。
・早く終わったグループは、待っている間の活動がなくなってしまうため、別の課題を用意しておくと良
い。
−中16−
7.まとめと今後の課題
〔Aグループ〕
本グループは、学校生活の中で教師との関わりが主である生徒が多い。「太田の Stage 」生活チェッ
クリスト(以下、チェックリスト)の結果から身振りやサイン等で簡単なやりとりができる生徒もい
れば、短い言葉で要求を伝えることができる生徒もいる。言葉を話す生徒であっても、適切なコミュ
ニケーション手段として言語が使われているわけではない場合もあり、視覚的な支援が有効である。
物を介して人との関わりを持つことができるようになることが、本グループのねらいである。
個別学習では色や形の弁別、文字のマッチング、パズル、数の概念形成など一人一人のニーズに合
わせた学習を行った。学習に最後まで取り組めるよう生徒が好きなキャラクターを使った教材教具を
準備し、終わったら好きなことができる時間を設けるようにした。また、頑張ったらシールを渡すな
ど工夫をした。その結果、意欲的に課題に取り組むことができるようになり、途中で離席していた生
徒も最後まで座って学習に取り組めるようになった。また、普段教師を頼ってしまいがちな生徒でも、
自分一人で学習に取り組む時間を確保することができたなどの成果があった。普段なかなか動かさな
い身体の部分を動かすことができたことも良かった。
集団学習では役割を交代しながらゲームをしたり身体を伸ばしながらゲームを行ったりして、友達
や教師と協力して一つの物を運ぶなど楽しみながら活動に取り組んだ。試行錯誤しながらゲームの内
容を部分的に変えてもみた。成果としては友達同士の関わりが見られるようになった、ゲームのやり
方を変化させていく中で生徒が本当に理解できていなかった部分が分かった。3年生は長いスパンで
一つの題材に取り組んできたことで、できることが増え、主体的に学習に取り組むことができるよう
になった。
一方、課題としては集団学習の内容を一人一人に合わせることが難しく、学習に飽きてしまった生
徒がいたこと、学習内容が日常生活になかなか般化されないことなどが挙げられる。
今後も引き続き人との関わりが持てるような活動を行っていくことが必要である。一方で、このグ
ループは日常生活に必要な基本動作を身につけることを課題とする生徒が多いことから、身体を動か
したり、感覚を養えるようなゲームのバリエーションを広げていきたい。
〔Bグループ〕
本グループは、教師との関わりが主である生徒から、自分から人と関わろうとする生徒までいる。
チェックリストの結果から、①物の名前はわかるが、物の用途を説明することができない、②意思表
示はできるが物事を順序立てて話すことができない、③全体として友だちとのやりとりが一方的にな
りやすいことなどの課題が挙げられた。そこで、物の意味や言葉の使い方などを通して言語活動の幅
を広げる、物や教師とのやりとりを通して人との関わり方を身につけることが本グループのねらいで
ある。
個別学習では、はしの使い方、文字や数の概念習得、文字の読み方、漢字、足し算や引き算、作文
など生徒の実態に合わせた学習を行った。学習する環境を配慮し気が散らないようにしたことで、離
席が目立っていた生徒も集中して取り組めるようになってきた。国語や算数などの学習を行う生徒で
は、問題の解き方などを教師と確認し学習を進めていくことで、より難易度の高い課題にも取り組め
るようになってきた。
- 中 17 -
集団学習では、友達との関わり方、協力して課題に取り組む姿勢を身につける題材や言葉を学ぶ学
習などを実施した。繰り返し学習を行ったことで、生徒同士がコミュニケーションをとることが増え、
課題学習以外の作業学習などの学習場面において「終わりました」など教師に伝えることができるよ
うになってきた。言葉が増えたことで少しずつではあるが、より具体的に説明することができるよう
になってきた。
一方、言葉の使い方や手順の仕方を学ぶだけになってしまい、それらを学習場面以外に活用してい
く段階までには至らなかった。今後は、例えば買い物学習のような日常生活の場面に近い場面を設定
し、その場に応じた言葉の使い方や手順の仕方を具体的に学んでいくことが重要になってくる。その
ために、生徒の実態をより的確に把握し、一人一人の目標を細かく設定していくことで、課題学習を
より充実させていきたい。
〔Cグループ〕
本グループの生徒は、ほぼ全員が言葉でのコミュニケーションがとれる。3分の1は自閉性障害
の生徒であり、チェックリスト「日常のコミュニケーション」では、伝言や応対応対に課題が見受け
られる生徒が数人いる。
認知面、特に教科学習の実態は幅広いが、学習意欲があり、机上の学習には慣れている。しかし、
話すことに比べて書くことへの苦手感が強く、教科的な学習活動に自信を持てないでいる生徒が多い。
言葉の意味がわからず、未知のものへの理解が難しい点は、生活経験の乏しさや少なさが影響してい
ると考えられる。興味・関心を活かしながら、自分なりに表現したり、もてる力を十分に発揮して主
体的に生活を営む力を身につけていくことが共通する目標である。どの学年も集団学習では、社会性
を育てるゲーム、言葉や数、実験といった教科的な学習、ソーシャルスキルの学習、読み聞かせや手
紙、作文といった生活に題材を得た学習等を行っている。個別学習では、主に個々に合わせた国語や
数学の課題を行っている。
縦割りグループの学習では、主に集団の前で発表することを学びながら、生徒の興味にそって社会
の出来事への関心を広げることができた。後期は、3つの小グループで学習をしたが、心とからだ(性
教育)グループでは、映像や手作り教材を通して生徒が自分の言葉で感想を話すことができ、「大人
になること」への意識づけができた。表現グループでは、「泣いた赤鬼」という題材で、場面を理解
したり、登場人物の気持ちを考えたりすることができた。理科グループでは、「ダルマ落とし」、「浮
沈子」、「アニメーション」の不思議を実験や工作を通じて体験した。通常の学年のグループより大
きい集団、より落ち着いた集団での学習に参加することができた生徒にとっては、一つのテーマの学
習をする中でいろいろな考えがあることを知ることができるなど大変よい経験になった。また意欲を
伸ばすための集団編成の可能性を探ることもできた。全体として他学年の生徒たちが交わるようにな
り、休み時間に授業内容について話すなど、学校生活全般を通じて他学年の友だちや教師に対しても
コミュニケーションを行いやすい雰囲気が広がった。 しかし、指導にあたっては、学習内容が先行
し、生徒同士の関係や個々の興味、関心を優先したため、より近い課題に合わせてのグループ編成に
は必ずしもならなかった。また通常の学年のグループで行っている個別学習が、縦割りグループ期間
にとぎれてしまうという問題もあり、今後はその継続性と教科学習の指導形態や系統的な内容につい
ても併せて考えていく必要がある。
- 中 18 -
〔全体を通して〕
「課題学習」は、経営方針の中で「学年を2∼5の小集団に分け、それぞれの集団のニーズに応じ
た課題を行う」とある。しかし C グループのみ今年度新たに学年を超えて取り組んだことが、一番の
改革であった。その結果、所属学年にとらわれずに生徒間の人間関係の広がりが見られるといった利
点があった。今後は、指導内容の検討や指導方法についても考えていかなければならない。また、ど
のグループでも指導内容の充実が今後の課題であるが、①保護者や本人の希望、②本人の実態、そし
て③生活していくうえで必要とされる力、の三つを教師がうまく取り入れていくことが大切である。
- 中 19 -
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