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「 数学科教育に関する研究 【2】」[PDF文書]

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「 数学科教育に関する研究 【2】」[PDF文書]
平成26年度(2014年度)
数学科教育に関する研究Ⅱ
高等学校数学科の授業づくりに関する研究
-数学Ⅰ・数学Aにおける「課題学習」を生かした授業のあり方-
キーワード
主体的に学ぼうとする意欲
「課題学習」
指導時期の工夫
課題設定の工夫
数学的活動の充実
身近な事象
目
次
研究の要旨
Ⅵ
研究の内容とその成果
··············
(4)
·······················
(1)
·····························
(1)
への調査 ································
(4)
研究の仮説 ·····························
研究についての基本的な考え方······
(1)
(2)
2 「課題学習」を生かした学習プラ
ンの作成································
(5)
1
指導時期の工夫 ·······················
(2)
3
学習プランを用いた実践事例······
(6)
2
課題設定の工夫 ·······················
(2)
4
実践から分かったこと ··············
(9)
3
数学的活動の充実 ····················
(2)
5
新たな題材の設定 ····················
(10)
研究のまとめと今後の課題 ·········
(12)
研究から明らかになったこと······
今後の課題 ··························
(12)
(12)
Ⅰ
主題設定の理由
Ⅱ
研究の目標
Ⅲ
Ⅳ
Ⅴ
1
2
研究の進め方
··························· (3)
研究の方法
研究の経過
··························· (3)
··························· (3)
1
Ⅶ
教科主任指導力向上研修受講者
1
2
文
献
滋賀県総合教育センター
池
澤
昇
概要版
平成26年度(2014年度)
数学科教育に関する研究Ⅱ
高等学校数学科の授業づくりに関する研究
-数学Ⅰ・数学Aにおける「課題学習」を生かした授業のあり方-
研究員 池 澤
研究の背景
昇
数学の学習への関心や意欲が低下している
数学の学習に関心や意欲を見いだせない生徒は少なくない。数学を学ぶ意義を認識さ
せ、数学に対する関心と主体的に学ぼうとする意欲を高めることが求められている。
目
的
「課題学習」を生かして意欲を高める
することで、を通した
数学Ⅰ・数学Aの「課題学習」において、指導時期と課題設定の工夫を通して、生徒が
主体的に学ぼうとする意欲を高められる授業のあり方を探る。
研究の方法と概要
「課題学習」を生かした学習プランの作成と課題の工夫
数学Ⅰでは二次関数、数学Aでは確率の単元で学習プランを作成した。このプランでは
次の三つを重点とした。
1
指導時期の工夫
「課題学習」の指導時期に焦点を当てた二つの単元モデル「動機付けモデル」「意義
実感モデル」を設定した。
・ 動機付けモデル
単元導入時に「課題学習」で動機付けを行い、興味・関心を持たせ単元学習につな
げる。単元末では「活用の時間」を設定し、単元で身に付けたことを活用させる。
・ 意義実感モデル
単元導入時に「課題提示の時間」を設定し、学習の見通しを持たせる。単元末の「課
題学習」では、学習内容を身近な事象の考察に活用させることで、その有用性を感じ
取らせ、学習の意義を実感させる。
2
課題設定の工夫
生徒の関心や意欲を高めるために、身近な事象を題材とした。
課題の内容をより理解しやすくするために、具体物の操作や視覚に訴える工夫をした。
3
成
数学的活動の充実
「問題の解決」、「数学化と活用」、「意見の交流」を重視した。
果
主体的に学ぼうとする意欲の高まり
・数学的活動の充実や課題設定の工夫は、生徒に興味・関心を持たせることや主体的に学
ぼうとする意欲を高めることに効果があった。
・二つの単元モデルを展開したことは、学習に対する動機付けや、学習の意義を実感させ
ることにつながった。
数学科教育に関する研究Ⅱ
平成26年度(2014年度)
数学科教育に関する研究Ⅱ
研究構造図
主体的に学ぼうとする意欲の高まり
興味・関心を高める題材
課
題
設
定
の
工
夫
課題の提示
問題
の
解決
身近な
事象
活用
提示の
工夫
動機付けモデル
指
導
時
期
の
工
夫
数学化
学習の
動機付け
意義実感モデル
第1時 第2時 第3時
課題
学習
授業
第1時 第2時 第3時
課題提示
見通し
を持つ
授業
授業
授業
授業
意見の交流
…
…
数
学
的
活
動
の
充
実
単元末
授業
単元で身に
付けたこと
活用
…
単元末
…
課題
学習
学習意義
の実感
「課題学習」を生かした学習プラン
「課題学習」の新たな位置付け
数学Ⅰ(必履修科目)
数学A(多くの生徒が選択)
「高等学校学習指導要領」(平成 21 年 4 月)
子どもたちが数学を学ぶ意欲を高めたり、学ぶことの意義や有用性を実感し
たりできるようにすることが重要である。
「中央教育審議会答申」(平成 20 年1月)
課 題
数学の学習に対する関心や意欲が見いだせない生徒がいる
「高等学校学習指導要領解説数学編」(平成21年12月)
数学科教育に関する研究Ⅱ
グラフはどんな
形になるだろう
意見を交流し表やグラフをかく
数や式、グラフを用いて考察
どちらが当たり
やすいだろう
実験を通して予想を確かめる
数や式、図を用いて考察
数学科教育に関する研究Ⅱ
数学科教育に関する研究Ⅱ
高等学校数学科の授業づくりに関する研究
-数学Ⅰ・数学Aにおける「課題学習」を生かした授業のあり方-
Ⅰ 主
題
設
定
の
理
由
平成20年1月の中央教育審議会答申における、数学科の改善の基本方針では、「子どもたちが数学を
学ぶ意欲を高めたり、学ぶことの意義や有用性を実感したりできるようにすることが重要である」と示
されている。そのためには、生徒が実感を伴って理解し、学んだことを活用できるようにすることが大
切である。また、基本方針では、数学的活動を生かした活動を一層重視するため、特に高等学校では、
必履修科目などに「課題学習」を位置付けることが述べられている。
高等学校学習指導要領では、必履修科目となった数学Ⅰと多くの生徒が選択すると見込まれる数学A
の内容に、新たに「課題学習」が位置付けられた。そこでは、「課題学習」は学習効果を高めるよう適
切な時期や場面に実施することが示されている。さらに、数学的活動を一層重視するとされている。数
学的活動とは、「数学学習にかかわる目的意識をもった主体的な活動」1)のことであり、数学を学ぶこ
との楽しさや意義を実感するために、重要な役割を果たすものである。これらのことから、数学の学習
に対する主体性や意欲を高める一つの方策として、「課題学習」があると考えた。
しかし、高等学校には、数学の学習に関心や意欲を見いだせない生徒も少なくない。生徒の関心や意
欲を高めるためには、数学の学習が解法の記憶に偏らず、数学を学ぶ意義を認識させることが大切であ
ると考える。さらに、学習する内容を実生活と関連付けたり、発展させたりすることで、生徒の主体的
な学びを生みだすことができると考える。
そこで本研究では、高等学校数学科、数学Ⅰ・数学Aの授業において、「課題学習」を生かした授業
のあり方を探りたいと考え、本主題を設定した。
Ⅱ 研
究
の
目
標
高等学校数学科の数学Ⅰ・数学Aの「課題学習」において、指導時期と課題の設定を工夫することで、
生徒が主体的に学ぼうとする意欲を高められる授業づくりを目指す。
Ⅲ 研
究
の
仮
説
「課題学習」を生かした単元モデルを作成し、「課題学習」の時間に、より充実した数学的活動を設
定することで、学習効果の高まりにつながり、生徒が主体的に学ぼうとする意欲を高めることができる
であろう。
- 1 -
数学科教育に関する研究Ⅱ
Ⅳ 研究についての基本的な考え方
「課題学習」とは、数学Ⅰ・数学Aの学習内容またはそれらを相互に関連付けた内容について、実生
活と関連付けたり、学習した内容を発展させたりして、生徒の関心や意欲を高める課題を設け、数学的
活動を特に重視して行う学習のことである。
本研究では、「課題学習」を生かした学習プランを作成する。この学習プランでは、数学的活動を充
実させ、学習に対する興味・関心を高めるとともに、日常とのつながりを感じさせたり、その有用性を
感じさせたりしていく。
そこで、
「課題学習」を生かした授業の在り方を探るために次のような工夫をする。
1
指導時期の工夫
「課題学習」を単元のどの部分で実施するかは、内容との関連や生徒の実態を踏まえ、適切な時期
を工夫しなければならないと考える。本研究では、「課題学習」の指導時期に焦点を当てた二つの単
元モデル(図1)を作成する。
(1)
動機付けモデル
単元導入の時間に「課題学習」を設定する
ことで、学習の動機付けを行う。生徒には導
入で示す課題と単元での学習内容のつながり
に気付かせるようにし、生徒の関心や意欲を
高め、単元の学習を進める。さらに、単元末
では「課題学習」と同じ問題に取り組ませ、
単元を通して学んだことを活用させる。
動機付けモデル
第1時 第2時 第3時
課題
学習
授業
授業
…
…
活用
意義実感モデル
第1時 第2時 第3時
…
単元末
…
課題
学習
課題提示
(2)
単元末
授業
意義実感モデル
授業
単元末の時間に「課題学習」を設定するこ
とで、単元で学んだ内容をまとめて捉え、具
図1 単元モデル
体的な事象の考察に活用させる。このことで、数学の学習意義を実感できるようにする。あらかじ
め、導入時には「課題学習」で扱う題材を提示し、生徒に見通しを持たせ、単元末には課題が解決
できることを伝え、単元学習を進める。
2
課題設定の工夫
本研究では、「課題学習」における「課題」を生徒が解決すべき問題とし、「題材」を課題作成のた
めのテーマや扱う内容とする。
生徒が主体的に取り組もうとする意欲を高めるためには、生徒が興味・関心を持つ題材でなくては
ならないと考える。そのため、作成する課題は、生徒が興味・関心を持ちやすい実生活に即した題材
を扱うことにした。また、課題提示の方法を工夫したり、実験や観察を含む体験的な活動を設定した
りすることで、数学への学習意欲を高めることへつなげる。
3
数学的活動の充実
学習指導要領では小学校及び中学校と合わせて、算数科・数学科の目標の冒頭に「数学的活動を通
して」として位置付けられ、その充実が一層重視されている。そこで、本研究での学習プランでは、
次の3つの活動「問題の解決」
、
「数学化と活用」、「意見の交流」を重視する。また、その構造を3ペ
ージの図2に示した。
- 2 -
数学科教育に関する研究Ⅱ
(1)
問題の解決
課題を解決するために、課題を理解し、結果
(1)
を予想し、解決の方向を構想する。構想に基づ
(2) 数学化
課題
いて試行錯誤したり、操作したり、実験したり
考察
・
処理
する活動を行いながら、結果を導く。また、そ
事象
の過程を振り返って得られた結果の意義を考え
られるようにする。本研究では、身に付けた基
結果
礎的・基本的な知識・技能を用いて、考察・処
(2) 活用
理することを重視する。
(2)
過程の
振り返り
(3) 意見の交流
数学化と活用
図2 数学的活動の構造
日常生活における問題や具体的な事象の問
題の解決に、既習の内容を活用する。本研究では、事象を数学的に表現したり、数学的に得られた
結果を元の事象に戻したりすることで、数学の有用性を実感させたり、数学学習への意欲を高めた
りすることを重視する。
(3)
意見の交流
(1)や(2)の場面において、意見の交流をする。自分の考えを数学的に表現し、説明したり議論
したりする活動を重視することで、内容の理解を深め活用力を育むことへつなげる。
Ⅴ 研
1
究
の
進
め
方
研究の方法
(1)
教科主任指導力向上研修受講者に「数学Ⅰ・数学Aにおける『課題学習』についての調査」を行
い、実施状況や課題を把握する。
(2)
教科書で扱われている「課題学習」の内容を調査する。
(3)
学習プランを作成し、授業実践を行う。
(4)
アンケート調査や活動の観察、ワークシート等から、生徒の意識を把握し、変容を考察すること
で学習プランの効果を検証する。
(5)
研究の成果と課題をまとめる。
(6)
新たな題材を設定し、まとめる。
2
研究の経過
4月
5月
6月
7月
8月
研究推進計画の立案、検討
研究推進計画の検討、研究推進のための
資料収集と調査、指導案の検討
第1回専門・研究委員会
研究推進のための資料収集と調査
指導案の検討
第2回専門・研究委員会、指導案の検討
9月 事前調査、実証授業
10月 実証授業、事後調査
第3回専門・研究委員会
11月 研究の成果と課題の分析、研究紀要執筆
12月 研究紀要執筆、研究成果物の作成
1月 研究発表準備、研究動画作成
2月 研究発表大会、研究報告会
3月 研究のまとめ、次年度研究構想
- 3 -
数学科教育に関する研究Ⅱ
Ⅵ 研 究 の 内 容 と そ の 成 果
1
教科主任指導力向上研修受講者への調査
県内の数学Ⅰ、数学Aにおける「課題学習」の実施状況を把握するために、平成26年5月19日に実
施された教科主任指導力向上研修(高等学校数学科)において、受講者に「数学Ⅰ・数学Aにおける『課
題学習』について」の調査を行った。
(1)
生徒が活動する場の設定状況
図3に示すように「生徒の主体的な活動を促せ
生徒の主体的な活動を促せるように授業を設定
しているか
るように授業を設定しているか」
の項目において、
4
50
約半数の受講者は、あてはまる、ややあてはまる
生徒同士が考えを説明し合う場を設定しているか
17
と回答した。また、
「生徒同士が考えを説明し合う
場を設定しているか」では34%、
「体験的な活動を
取り入れているか」では37%の受講者は、あては
17
35
11
42
24
体験的な活動を取り入れているか
8
29
35
まる、ややあてはまると回答した。この結果だけ
あてはまる
ややあてはまる
で判断することは難しいが、生徒の主体的な活動
あまりあてはまらない
あてはまらない
28
(数値は%・回答総数 48)
は、
「課題学習」ではまだ十分な状況ではないこと
図3 生徒が活動する場の設定状況
がうかがえる。
「課題学習」の実施に当たっては、生徒の主体的な活動を促すことが求められている。そこで、
作成する学習プランでは、
「課題学習」の時間に、生徒が活動する場を設定することや、数学的活動
を充実させ、生徒の主体的な活動を促したいと考えた。
(2)
実施にあたり課題と感じること
「課題学習」を実施するにあたり、課題と感じることを質問したところ、次の3点についての記
述が多くみられた。
ア 題材について
課題と感じることの回答では、題材の選定についての内容が一番多かった。そのなかでは、ど
のような題材を用いれば「生徒に興味・関心を持たせることができるのか」や「生活のなかで数
学が活用されていることを感じ取らせることができるのか」が課題として挙がっていた。そのた
め、興味・関心を持たせられる題材を設定していくことや、授業で学ぶ内容と日常の生活とのつ
ながりを感じさせることが重要であると考えた。
イ 実施時間数について
図4に示すように「
『課題学習』の授業を年間ど 「課題学習」の授業を年間どの程度実施しているか
の程度実施しているか」という問いに対して6割
を超える受講者は、1時間または2~3時間と答
数学Ⅰ
29
数学A
26
37
2~3時間
宿題やレポート提出のみ実施
えた。
「
『課題学習』のための準備に時間がかかる」
ことや「授業進度との兼ね合いで実施することが
1時間
31
37
(数値は%・回答総数 48)
難しい」ということが課題として挙がっていた。
年間どの程度実施しなければならないかは特に
40
図4 年間の実施時間数の状況
示されていないが、当センターで実施した教科主任指導力向上研修の中で「一つの内容に『課題
学習』を1時間か2時間実施することが望ましい」と、文部科学省の視学官の話があった。この
ことを踏まえると、年間の実施時間数は十分でない状況がうかがえる。
- 4 -
数学科教育に関する研究Ⅱ
ウ 学習形態について
図5に示すように「
『課題学習』をどのような
「課題学習」をどのような形態で実施しているか
形態で実施しているか」という問いに対して、
一斉学習
11名の受講者はグループ学習を設定していると
個別学習
答えた。また、一斉学習だけを実施していると
グループ学習
答えた受講者のなかには、
「生徒が活動する時間
ペア学習
を確保したい」という課題が挙げていた。
26
18
11
0
(数値は人・回答総数 55・複数回答可)
生徒の活動を充実させるためには、ペア学習
図5 学習形態の状況
やグループ学習において、意見を交流する場を
短時間でも設定していくことが大切ではないかと考えた。
2
「課題学習」を生かした学習プランの作成
(1)
数学ができるようになりたい
数学の学習に関する生徒の意識
研究協力校において、生徒の数学の学習に関す
75
21
22
る意識調査を行った(図6)。多くの生徒は数学が
できるようになりたいと思っているにもかかわら
ず、授業で学ぶ内容に興味が持てず、数学の勉強
を好きになれない生徒が多いことがうかがえた。
このことに関して、指導者からは「思っていた
よりも生徒が数学に興味を持っていないことに驚
いた」との感想があった。
生徒に興味・関心を持たせることは、先に示し
数学の勉強は好きだ
11
23
29
授業で学ぶ内容に興味がある
10
28
43
あてはまる
あまりあてはまらない
19
ややあてはまる
あてはまらない
(数値は%・回答総数 119)
た「数学Ⅰ・数学Aにおける『課題学習』
」につい
て」の調査からも課題となった内容であった。そ
37
図6 数学の学習に関する生徒の意識
こで、教科書で扱われている「課題学習」の題材を調べ、生徒に興味・関心を持たせられるような
題材を選び、課題を設定した。
(2)
ア
課題の作成
身近な事象を扱う
生徒の関心や意欲を高めるために、生徒にとって身近な事象を題材とした。数学Ⅰでは、学校
生活で経験する文化祭での「模擬店の売上」から課題を作成した(p.6の図7)。また、数学Aで
は、生徒にとって生活体験のなかで起こりそうな事象から「インスピレーションと確率」と題し
た課題を作成した(p.6の図8)。
二次関数の単元では、生徒が二次関数を用いて数量の関係や変化を表現することの有用性を認
識し、事象の考察に活用できるようにすることを目標とした。また、確率の単元では、生徒が確
率についての理解を深め、不確定な事象の起こる程度を数を用いて表現することの有用性を認識
し、事象の考察に活用できるようにすることを目標とした。
イ
視覚に訴える工夫
課題の内容を視覚化することで、生徒は内容を理解しやすくなると考える。さらに、カラーの
イラストを用いることで、生徒に興味・関心を持たせることにつなげた。
また、「インスピレーションと確率」の課題提示では、箱を「紙コップ」に、賞品を「カラー
マグネット」に置き換えて演示をすることで生徒の興味・関心を高められるようにした。
- 5 -
数学科教育に関する研究Ⅱ
テーマ インスピレーションと確率
テーマ 模擬店の売上を寄付する
あなたの目の前に3つの箱が
あります。1つの箱には賞品が
入っていて、残りの2つの箱に
は何も入っていません。あなた
は商品の入っている箱を当てる
とその賞品をもらえます。あな
たは1つの箱を選んだ後、司会者が残りの箱のうちか
ら空の箱を開けて見せます。ここで、あなたは、司会
者に最初に選んだ箱を、まだ開けられていない箱に変
更してもよいと言われます。
文化祭でたこ焼きの模擬店を開くこと
になりました。模擬店での売上を寄付す
ることに決まったので、少しでも多く売
り上げたいと考えています。去年と一昨
年の売上は、表のようになりました。
一昨年
去年
一皿の値段(円) 200
220
売上皿数 (皿) 520
480
売上金額 (円) 104000 105600
一皿200円
一皿の値段を200円から10円上げるごとに、売上が
20皿ずつ減っていくとすると、1日の売上金額を少しで
も多くするには、一皿の値段をいくらにすればよいでし
ょうか?
選んだ箱は選び直した方がよいでしょうか、それと
もそのままの方がよいでしょうか?
図8 インスピレーションと確率の課題
図7 模擬店の売上の課題
(3)
(参考:モンティ・ホール問題)
単元モデルの作成
数学Ⅰは二次関数、数学Aは確率の単元で、「動機付けモデル」(図9)と「意義実感モデル」(図
10)をそれぞれ作成した。作成した単元では、生徒の興味・関心を高めることや、単元の学習意義を
実感させることを目指し「課題学習」を単元導入と単元後に位置付けた。
「動機付けモデル」と「意
義実感モデル」の「課題学習」では、同じ題材を用いたが、それぞれのモデルに応じた学習内容と
なるように設定した。
3
学習プランを用いた実践事例
学習
単元導入
単元末
「活用の時間」
「課題学習」
小・中学校で学んだ内容
を用いて、意見の交流や実
験を通して課題を解決させ
る。解決を通して、単元で
学ぶ内容を感じ取らせる。
「課題学習」と同じ
課題を単元で学習し
た内容を用いて再度
解かせ、定着度を把
握する。
「課題提示の時間」
ワークシートや演示
から結果を予想させ、
単元の見通しを持たせ
る。
学習の動機付けを行い、生徒の関心・意欲を高
め、学習を進める。
ア
単元末
「課題学習」
単元で学習した内容を
用いて、課題を解決させ
る。解決を通して、単元で
学んだことが日常に生か
されていることを感じ取
らせる。
単元で学んだ内容の学習意義を実感させる。
図9 動機付けモデルの流れ
(1)
学習
単元導入
図 10 意義実感モデルの流れ
動機付けモデルの実践事例
小・中学校の学習内容を生かす工夫
数学Ⅰでは、二つの数量の変化や対応について表やグラフを用いて特徴をとらえる活動を設定
した。この活動は小・中学校でも扱われている。また、数学Aでは、観察や実験などの活動を通
して確率について考察する活動を設定した。この活動は中学校2年生で扱われており、小学校で
は、順列や組合せを考える活動や具体的な事柄について起こり得る場合を順序よく整理して調べ
ることを学習している。
イ
単元導入での「課題学習」の時間
7ページの図11に示したように、
「課題学習」の時間を進め、興味・関心を持たせ、以後の学
習につなぐことを目指した。
- 6 -
数学科教育に関する研究Ⅱ
数学Ⅰ(二次関数) 「意見の交流」を通して解決
数学A(確率) 「実験」を通して解決
文化祭の模擬店についてのエピソードを交え
て、本時の課題や取組について知る。
中学校での確率の授業を振り返り、本時の課題
や取組について知る。
小・中学校で学んだ内容を生かして、解決方法
を探り、自力で挑戦する。
指導者の演示を見て、
「選び直す」
「そのまま」
「ど
ちらも同じ」から結果を予想する。
数量の値が変化する様子を表やグラフを用い
て、最大値をグループで類推する。(意見の交流)
紙コップとカラーマグネットを用いてグループ
で実験し、結果から確率を求める。(実験)
頂点、軸、最大値をキーワードとしたグループ
の発表を聴く。
クラス全体の結果と自分の予想を比較して、考
察する。
本時の課題を交えながら、目に見えないところ
で、二次関数が役立っていることに気付く。
本時の課題を交えながら、確率が生活に役立っ
ていることに気付く。
日常の事象と関数・確率とのつながりを感じ取り、以後の学習内容に興味・関心を持つ。
以後の学習へつなぐ
図 11
(ア)
動機付けモデルの「課題学習」の流れ
数学Ⅰ
「表やグラフをかいて解決したらいい」
という、
ある生徒の発言があり、クラス全体でその意見を
共有した。他の生徒も、試行錯誤しながら、表や
グラフをかき、グラフから気付いたことをそれぞ
れワークシートにかいた(図12)。さらに、かいた
放物線が中学校で学んだものと異なることに気付
き、疑問が生まれた。この疑問を全体で取り上げ、
単元の学習につなげた。
1時間の振り返りでは「とても身近なところに
放物線が使われていて驚いた。他にも放物線が使
われているかを調べてみたい」と、これからの学
びにつながる声があった。このことから、生徒は
日常の事象を放物線に表したことで、興味・関心
グラフから気付いたこと
・放物線になる ・グラフの頂点が原点にない
・230 円が最も高い売上金額になる
図 12
を持って、次の学習に入ったことがうかがえる。
(イ)
数学A
グラフからの気付き
実験を演示
する指導者
導入では、指導者が実験の演示をした(図13)。
具体物を用いたことで、生徒が授業に引き付けら
れている。結果を予想させた後、具体物を操作す
る活動を設定した。生徒は自分の予想を確かめよ
うと、積極的に活動をした。この時、
「生徒の予想
と実験結果が異なる」と予測される課題を設定し
たため、実験結果を見た後、多くの生徒が「なぜ」
図 13 実験の演示に注目する生徒
という発言をしていた。直感と実際の確率が異なることから「なぜ」が生まれ、その「なぜ」
を解き明かすには、起こりやすさを数値で表し判断することが役立つことに気付かせることは
必要であるが、生徒は最後まで学習に臨むことができた。
- 7 -
数学科教育に関する研究Ⅱ
ウ
学習状況を把握する「活用の時間」
単元導入の「課題学習」で扱った題材を用いて、単元を通して身に付けたことを活用させる時
間とした。導入では表やグラフから類推して解決した課題を、「活用の時間」では文字や式を用
いて解決することとした。
生徒は、一度取り組んだ課題であったので、課題の内容をすぐに理解した。生徒に単元で学ん
だ二次関数や確率の考え方を活用させたことで、生徒の学習内容の理解度や定着度を把握するこ
とができた。
(2)
意義実感モデルの実践事例
ア
見通しを持たせる「課題提示の時間」
単元の第1時に6ページの図7、8のワークシートを
数量の変化と結果の予想
配付し、単元末の「課題学習」で振り返ることができる
ようにノートに貼らせた。数学Ⅰでは、気付いたことを
ノートにかかせたところ、表から気付いた数量の変化や
結果を予想する記述が見られた(図14)。また、数学Aで
は、指導者の演示を見た後、結果を予想させた。これら
図 14
ワークシートから気付いたこと
の活動を通して、生徒に単元の見通しを持たせた。さらに、単元末には学んだことを用いて解決
できることを伝え、以後の学習につないだ。
イ 単元で身に付けたことを生かして解決する「課題学習」の時間
図15に示したように、
「課題学習」の時間を進め、二次関数や確率を学ぶ意義を実感させること
を目指した。
(ア)
数学Ⅰ
生徒は、二次関数の値の変化について、数や式、グラフを用いて考察し、最大値を求め、解
決した(図16)。このことから、生徒が単元で
付けたことを身近な事象の考察に活用できた
単元の学習
ことが分かる。生徒からは「まさかこの課題
に二次関数が役立つとは思わなかった」との
感想があり、二次関数の有用性を感じ取るこ
とにつながるものとなった。
「課題提示の時間」にノートに貼ったプリントを
見直し、自分の予想したことや、本時の課題につ
いて確認する。
身近な事象を解決するために、二次関数や確率の
単元で学んだことを振り返り、文字や式、グラフ、
図を使って、自力で挑戦し、自分の考えを持つ。
意見を交流し、指導者の助言を得ながら解決する。
(グループ学習)
~
省略
グループの発表を聴き、解決方法に二次関数や確
率の単元で学んだことが生かされていることを確
認する。
~
本時の学習を振り返り、他の場面でも二次関数や
確率の単元で学んだことが生かされていることに
気付き、有用性を感じ取る。
二次関数や確率を学ぶ意義を実感する。
図 15 意義実感モデルの「課題学習」の流れ
図 16 数や式、グラフを用いた生徒の記述
式
- 8 -
数学科教育に関する研究Ⅱ
(イ)
数学A
生徒は予想を振り返りながら、自分なりの考え
を持ち、グループでの解決に取り組んだ。活動当
初は活発な交流が見られたが、徐々に活動が停滞
した。そこで、他のグループと考えを交流する活
動を取り入れたことで、解決の糸口を掴む生徒の
姿が見られた。図17に示すように、場合分けを行
い、条件付き確率を事象の考察に活用した生徒の
記述が見られた。このことから、生徒が学習で身
に付けたことを活用したことが分かる。
図 17 単元で学習したことを活用した記述
また、生徒は「直感では曖昧だった予想が、確率を学んだことで解決できた。いろんな場面
で確率が使えると感じた」と振り返っている。
(3) 生徒の様子から学習を振り返る
学習プランを実践した後に、指導者が生徒の様子を振り返った内容を図18に示す。
・以前の授業ではあまり数学に興味を示さなかった生徒が、単元前に「課題学習」を設定したことで、単元で
の授業内容に興味を持った。興味を持たない生徒は全体的に減少した。
・これまでの授業と比べて、
「課題学習」を単元に位置付けたことで、授業で学んだことがどのような場面で役
立つかを生徒は理解した。なぜ数学を勉強するのか少し分かり、前向きに取り組む生徒が増えた。
図 18 生徒の様子に関する指導者の振り返り
このように、
「課題学習」を単元に位置付けたことで、学習内容に対して生徒の興味・関心を高
めることの一助となったと考えられる。また、単元後に「課題学習」を設定したことで、その単元
を学ぶ意義を感じ取らせることにつながったことが読み取れるが、何より指導者の授業に対する構
えも変わってきたことがうかがえる。
4
実践から分かったこと
(1)
単元モデルの有効性
実践を通して、動機付けモデルは興味・関心を持たせて学習を進めることに、意義実感モデルは
その単元を学ぶ意義を実感させることに有効であることが分かった。そこで、二つのモデルは生徒
の実態や学習状況に合わせて、活用することが望まれる。例えば、基礎的・基本的な知識や技能が
定着している生徒があまり多くないときは、動機付けモデルに合わせた単元を計画する。一方、基
礎的・基本的な知識や技能が定着できていると思われる生徒が比較的多いときは、意義実感モデル
に合わせた単元を計画するなどである。
(2)
意見の交流による意欲の高まり
学習プラン実施後、グループ学習に対する生
徒の意識を調査した。
「グループでの意見の交流
は、他の人の考えが自分に役立つか」という問
いに、82%の生徒が、あてはまる、ややあては
グループでの意見の交流は、他の人の考えが自分に
役立つか
33
49
あてはまる
あまりあてはまらない
15 3
ややあてはまる
あてはまらない
(数値は%・回答総数 119)
まると答えた(図19)。
図 19
- 9 -
グループ学習における生徒の意識
数学科教育に関する研究Ⅱ
指導者からは「これまでの授業でグループ学習を設定していなかったのは、生徒がどう感じてい
るか分からなかったからだ。苦手な生徒が一所懸命活動する姿が見られてよかった」や「これまで
生徒同士で教え合うことができていないことが課題となっていたが、今回の実践を経て、生徒同士
で質問し合う姿が見られた」との感想を得た。
これらのことから、グループで意見を交流する場を設定したことは、生徒の意欲を引き出すこと
につながったと考えられる。
(3)
日常生活へ活用しようとする意欲の高まり
授業で学習したことを普段の生活の中で活用でき
ないかと考える
学習プラン実施後の、アンケート調査において
「授業で学習したことを普段の生活の中で活用で
事前
きないかと考える」という項目では、肯定的な回
5
24
40
31
答をした生徒が増加した(図20)。
18
事後
生徒が学習して身に付けたことを日常生活へ活
44
用していこうとする態度が、自ら課題を見つけ解
あてはまる
決しようとする態度へとつながる。さらに、この
あまりあてはまらない
8
ややあてはまる
あてはまらない
(数値は%・回答総数 119)
ような態度は、主体的に学ぼうとする意欲の高ま
図 20
りにつながると考える。
5
30
新たな題材の設定
生活の中で活用しようとする生徒
テーマ 水槽の水を入れ替えよう
本研究では、二次関数と確率の単元において
学習プランを実践したが、他の単元でも「課題
学習」を効果的に生かせるように、新たに設定
した題材を示した(p.11の表1)。新たな題材で
は、単元モデルに合わせたワークシートを提案
し、各学校の生徒の実態に合わせて作り変えら
れるようにする。
1年○組の教室では、水槽でメダカ
を育てています。最近、水が汚れてき
たので、水を入れ替えようと考えまし
た。水槽に水が10ℓ入っていて、水
槽内の水を半分だけ入れ替えをしよう
と思います。
しかし、7ℓの大きい容器と3ℓの
小さい容器しかありません。
水槽内の半分の水を取り出すには、どうしたらよいでし
ょうか。
新たに設定した題材から「水槽の水」の課題
(図21)について紹介する。この題材は江戸時代
図 21
「水槽の水」の課題
じんこうき
に吉田光由が著した「塵劫記」の「油分け算」を作り変
えたものである。扱う内容は、数学Aの整数の性質で、
10 個の「おはじき」
生徒はユークリッドの互除法について学んだ後に、二元
一次不定方程式の解の意味について理解し、簡単な整数
解を求めることを学習する。
10ℓ
動機付けモデルの「課題学習」で実施するときは、図
22に示すワークシートを用いて、具体物の操作を通して
グループで解決させる。水1ℓをおはじき1個に置き換
3ℓ
えて、ワークシートの上で操作させる。生徒は視覚的に
7ℓ
課題を捉え、水の量を比較・検討しやすくなり、自分の
考えを説明したり、議論したりする活動を仕組むことが
図 22 「水槽の水」の課題のワークシートの
一部
できる。
また、意義実感モデルの「課題学習」で実施するときは、二元一次不定方程式を具体的な事象の考
察に活用させ、解の意味を考えることで、その有用性を感じ取らせることをねらう。
- 10 -
数学科教育に関する研究Ⅱ
科
目
テーマ
内容
単元
モデル
表1 新たに設定した題材
課題の
目標
題材のよさ
小・中学校
との関連
いろいろ 数と式
な長さの ・図形
比
と計量
具 体物か ら身 近にあ る
数と式、図形と計量の複数の内容に ○
小 比例の関係、比
意義実感 辺の比を考察し、無理数に またがった題材である。白銀比や黄金 の値、縮図や拡大図
モデル 関する理解を深める。
比を取り上げ、身近にある無理数を知 ○
中 図形の相似、有
り、その理解を深めることができる。 理数、無理数
何票入れ
数と式
ば当選?
一次不等式を具体的な
生徒は予想と反する結果を得るこ ○
小 数の意味や表し
意義実感 事象の考察に活用し、数量 とで、興味・関心を持つことができ、 方、不等号
モデル の関係を不等式で表す。
一次不等式の有用性を実感させるこ ○
中 不等式を用いた
とができる。
表現
校舎の高
図形と
さを測っ
計量
てみよう
数
教具を用いて校舎の高
体験的な学習を取り入れることで、 ○
小 比例の関係、縮
単元途中
さを測ることを体験する。 生徒に興味・関心を持たせ、小・中学 図や拡大図
に実施す
三角比の定義から校舎の 校とは異なる求め方を知り、三角比の ○
中 図形の相似、三
ることが
高さを測定する。
有用性を感じ取らせ、学習への意欲を 平方の定理
望ましい
高めることができる。
学 宅配便を 二次
身近な事象を表やグラ
宅配物の大きさを表やグラフを用
動機付け フを用いて考察し、中学校 いて考察し、二次関数のグラフが生か
モデル で学んだ y  ax 2 のグラフ されていることに気付かせ、興味・関
との違いに気付く。
心を持たせることができる。
送ろう
関数
Ⅰ
小 伴って変わる二
○
つの数量の関係、
比例と反比例
中 一次関数、いろ
○
いろな関数、関数
二次関数の単元で学ん
宅配物の大きさを二次関数を用い
y  ax 2 を 用 い た
意義実感
だことを日常の事象の考 て考察することで、その有用性を実感
事象のとらえ
モデル
察に活用する。
させることができる。
プランタ
二次
ーの片付
関数
け
直線上の移動距離を、表
プランターを集める場所と移動距 ○
小 伴って変わる二
やグラフを用いて考察し、 離の値の変化を表やグラフを用いて つの数量の関係、
動機付け
中学校で学んだ y  ax 2 の 考察し、二次関数のグラフが生かされ 比例と反比例
モデル
グラフとの違いに気付く。 ていることに気付かせ、興味・関心を ○
中 一次関数、関数
持たせることができる。
y  ax 2 を 用 い た
事象のとらえ
二次関数の単元で学ん
プランターを集める場所と移動距
意義実感 だことを日常の事象の考 離を二次関数を用いて考察すること
モデル 察に活用する。
で、その有用性を実感させることがで
きる。
降水量を
データ
比較して
の分析
みよう
データの四分位数や中
大津市と他府県の都市との降水量
意義実感 央値を求めて箱ひげ図を のデータを比較することで、生徒に興
モデル かくことにより、そのデー 味・関心を持たせ、統計の有用性を実
タの傾向をとらえる。
感させることができる。
場合の
ポーカー 数と確
率
ポ ーカー の役 の強さ と
具体物を用いて、事柄の起こりやす ○
小 起こり得る場合
意義実感 出る確率の関係を考察し、 さを数で表すことで、興味・関心を持 ○
中 簡単な場合につ
モデル 確率の理解を深める。
たせ、場合の数と確率について理解を いての確率
深めることができる。
数 生まれた
整数の
曜日は何
性質
曜日
学
17 段 目 整数の
の秘密
性質
A
水槽の水
整数の
性質
小 資料分類整理、
○
資料の活用
中 標本調査と母集
○
団の傾向
割り算の余りによる分
自分の生まれた曜日を計算で求め ○
小 文字を用いた式
意義実感 類を利用して、整数の性質 ることで、生徒が楽しみながら整数の ○
中 文字式で数量の
モデル を考察することで、整数の 性質の理解を深めることができる。 関係を説明する
性質の理解を深める。
倍数に関する事象を考
整数の性質について、おもしろさを
動機付け 察し、2段目と17段目の 気付かせることができる。
モデル 関係を説明できるように
する。
小 倍数、文字を用
○
いた式
中 文字式で数量の
○
関係を説明する
動機付け
操作活動を通して、具体
操作活動を取り入れることで、生徒 ○
小 倍数、約数、最
モデル 的な事象を考察する。
の興味・関心を高めることができる。 小公倍数、最大公
約数、素数の意味
単元で学んだ二元一次
二元一次不定方程式と日常生活の
意義実感
中 素因数分解
不定方程式を具体的な事 つながりを実感させることで、その有 ○
モデル
象の考察に活用する。
用性を実感させることができる。
- 11 -
数学科教育に関する研究Ⅱ
Ⅶ 研究のまとめと今後の課題
1
研究から明らかになったこと
(1)
「課題学習」の時間では、数学的活動を充実させたり、身近な事象を扱った課題を設定したりす
ることが、単元で学ぶ内容に興味・関心を持たせることや主体的に学ぼうとする意欲を高めること
に有効であった。
(2)
「課題学習」を単元に位置付けた単元モデルを展開したことが、生徒の学習に対する動機付けを
行なったり、学習の意義を実感させたりすることにつながった。
2
今後の課題
さらに学ぼうとする態度を育むためには、単元に位置付けた「課題学習」だけでなく、単元の各授
業においても数学的活動を充実させる必要があると考える。そこで、生徒に付けたい力を明確にし、
単元を通して、生徒の活動を充実させる学習プランを作成し、その効果を検証していく必要がある。
文
献
1)文部科学省「高等学校学習指導要領解説数学編」、平成21年(2009年)
吉田明史 『高等学校新学習指導要領の展開』、明治図書出版、平成22年(2010年)
相馬一彦 『「予想」を取り入れた数学授業の改善』、明治図書出版、平成7年(1995年)
トータルアドバイザー
国立大学法人滋賀大学教育学部講師
専
研
研
篠原
雅史
滋賀県立東大津高等学校校長
宮川
誠
滋賀県立八幡工業高等学校教頭
伊吹
直樹
滋賀県立甲西高等学校教諭
荒居
宏行
滋賀県立八幡高等学校教諭
草野
若菜
門 委
究 委
究 協
員
員
力 校
滋賀県立甲西高等学校
滋賀県立八幡高等学校
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